とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第288話 3年生お疲れ様会

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 学院が冬休みに入り2日目。
 本日は、オービン寮全員で3年生お疲れ様会を行う為、全員でメルトボーイ・クイーンコンテスト会場にもなった2階建ての円形状の建物に集まって準備をしていた。
 もちろん私も、食べ物や飲み物などを運んだり装飾の手伝いを行っていた。
 そもそも、3年生お疲れ様会と言うのは今までお世話になった先輩方に、感謝の気持ちを込めておもてなしをするものらしい。
 アルジュに訊いた話では、一般的には卒業付近で行うものだが3年生たちは第三期になると忙しくなり、学院に来れない人もいる事からオービン寮では、例年冬休み直後にやるらしい。
 ちなみに3年生の先輩たちも準備から一緒に携わってくれて、皆で最初から最後までやるのも恒例らしい。

 私は梯子で高い所の壁への装飾をしている途中で、下の方でヒビキがムスッとした顔で花の装飾をくっ付けている姿を目撃する。
 あっ、ヒビキ先輩だ……さすがに今日くらいはいるよね。
 私は一瞬ヒビキがいる事自体が珍しくと思ってしまったが、こういう自分が主役になりそうなものは好む性格だと思い出し「それはいるよね~」と勝手に納得していた。
 そして壁の装飾をし終えて、梯子を下りると突然ヒビキに話し掛けられる。

「おいお前、さっき俺のこと見て失礼な事思ったろ?」
「っ……思ってませんよ」
「嘘付け。目線が斜めに一瞬言ったろ」
「い、言ってませんって。見て下さいよ、この真っ直ぐな目を」

 するとヒビキは私の両頬を両手で挟む様に掴み、横へと投げ出すように逸らされる。
 私は掴まれた頬をさすって「何するんですか、急に」と文句を言うと、ヒビキは顔を逸らしてため息をつく。
 そして急に顔を近付けて来たのだった。

「俺はお前が女だって分かってるんだぞ。それを誰にも言わないのはどうしてだか分かるか?」
「!?」

 突然の事で、私は驚き黙って何も言い返せなかった。

「オービンに口止めされてるからだよ。それがなければ、今すぐにでもお前の正体バラす事も出来るんだからな」
「っ……」
「分かったら、あんまり俺をイライラさせんな」
「何をしているんだ、副寮長?」

 と、そこへ声を掛けて来たのはオービンであった。
 ヒビキはオービンの姿を見ると、小さく舌打ちした後「何でもねぇよ」と吐き捨てる様に言うと、私から離れてその場から立ち去った。
 私が少し震えて壁に寄りかかっていると、心配してオービンが近付いて来た。

「大丈夫かい、クリス君?」
「は、はい……」
「彼が機嫌が悪い日に目を付けられるとは、運が悪いね。ちょっと色々あったらしくて、朝からイライラしてるんだ」
「そう、だったんですね……あ、あのオービン先輩。さっきヒビキ先輩が言っていたんですけど、俺を庇ってくれてると言うのは、本当ですか?」

 するとオービンは私と同じ様に壁に寄りかかり、皆が準備している様子を見ながら話し出した。

「本当だよ。俺が彼に君について知った事は誰にも言わないでと、頼んだ」
「俺、そんな事知らなくて。ありがとうございます」
「いやいや、お互い様さ。君がここに居るのは、半分は母上のせいでもあるわけだし。それに、俺がヒビキにお願いしに行く前に、その話をして来たのは彼なんだよ」
「え?」

 私はその言葉を疑ってしまう。
 イライラして私に当たりに来て、更には脅して来た人がわざわざオービンにその話をしに行ったとは信じられなかったからだ。

「彼は意外とカンが鋭い時があって、この件に俺が関わっていると直ぐに思ったんだろうね。わざわざ夜に呼び出されたんだよ」
「それで口止めする様に、お願いしたんですか?」
「そうなんだけど、提案して来たのはヒビキなんだ」
「え?」

 そこで私は渋い顔をオービンに向けてしまう。
 訳が分からない? どうしてあの人がそれをオービン先輩に提案する意味があるの?
 と、私が考えていると直ぐにオービンが答えを教えてくれた。

「彼が提案して来たのは、黙る代わりに自分の行動を大目に見て欲しいと言って来たんだ。授業を抜け出したり、イベントへの不参加だったりをね。たぶん、街に遊びに行きたかったんだろうね。理由は分からないけど」
「……え、それって俺、ダシに使われたって事ですか?」

 私はヒビキの行動にあ然としていると、オービンは小さく笑い話し続けた。

「まぁ、簡単に言えばそうだね。でも、彼なりの信念もあっての行動だったと思うよ」
「信念ですか?」
「あぁ。彼はどんな事だろうと自分から女性を傷つけないとしているらしく、それに乗っ取って行動したんだと思うよ。もし仮に告発でもしてら、君は悲しむし傷つくだろ?」
「……まぁ、確かに」
「だから、わざわざ俺の所まで来て提案なんてして来た。あくまで自分の利益の為と言う風に……いや、どっちも彼のためにはなってるね。あ、一応俺の推測だけどね」

 私は少し納得いかない気持ちもあったが、オービンの推測で少しだけそうかもしれないと思ってもしまう。
 ヒビキ先輩の女性好きやほとんど外出している事を考えると、あり得るかもしれない……信念については――やっぱやめとこ。

「だからクリス君、あんまりヒビキの事を恨まないでやって欲しい。ちょっと気難しい性格だけど、副寮長も何だかんだ言ってこなして頼りになる奴だしさ」

 オービンの言葉を聞き、私が遠くにいるヒビキを見つけると何やら他の3年生たちがヒビキに絡みに行き、怒っている姿を目撃する。
 私はそんなヒビキを指さしながら、オービンに「あんな感じにですか?」と問いかける。
 するとオービンは苦笑いしながら「頼られ方は色々だからさ」と返す。
 急に絡まれて嫌な気分にはなったけど、私にとって不利益な事は一応されてないし、今回の事はもういいか。
 それに前にヒビキ先輩から近付くなとか、一方的に避けます宣言もされてたし。
 今後は機嫌が悪そうな時は、極力私からも避けるようにしよう。
 と、今日の事を教訓にしていると、そこへミカロスがやって来た。

「ここに居たのか、オービン。ん、クリスも居たのか」
「どうも、ミカロス先輩」
「お~ミカ。そっちはどうだ?」

 オービンは寄りかかっていた壁から離れ、ミカロスに視線を向ける。

「2階の方は、お前の言う通り俺だけで準備はしておいた」
「ありがとう。すまないな」
「え、ミカロス先輩だけで2階の準備したんですか? 言ってくれてれば手伝いましたのに」
「ありがとう、クリス。でも、2階は休憩所の様にするだけだから装飾とかいらないから、そんな大した準備はなかったんだ」
「そうだったんですね」

 すると遠くの舞台上からオービンとミカロスを呼ぶ声が聞こえ、2人はそちらに返事をして向かう事になる。

「それじゃ、また後で話せれば話そうねクリス君」
「一応これは助言だが、もみくちゃにされない様にしろよ」

 そう言うって2人は私の元から去って行った。
 もみくちゃにされない様にって、どう言う事? 寮の全員がいるけど、そんなに狭くなってないし、何かそう言うイベントでもやるのかな?
 私は最後に言われたミカロスの言葉について考えてたが、結局はよく分からなかった。
 その後、準備が全て終わり遂に3年生お疲れ様会が始まろうとしていた。
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