とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第297話 フォークロス家での日常

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 私は久しぶりの実家のベッドで気持ち良く寝ていると、閉じていたはずのカーテンが一気に開かれる。
 そして窓から眩しい朝日が私に直撃する。

「んぅっ!? ……何……まぶしい」

 しかし私は朝日から目を逸らすように寝返りをうち、窓から差し込む朝日に背を向ける。
 そのまま再び眠りにつことしたが、次の瞬間布団をはぎ取られてしまう。

「っ!? さむっ!」

 私は体を丸めて少し震えていると、マリアが声を掛けて来た。

「起きて下さい、アリスお嬢様」
「っんうぅ……布団、返してよ……」
「ダメです」
「うぅ~マリアのケチ」
「ケチなどではありません。ほら、起きて下さい」

 マリアはベッドの上で丸まっている私を起こす。
 だが、私は眠さに勝てず再びベッドへと倒れる。
 するとマリアは、呆れた顔でため息をつく。

「……リーリア様にバラしますよ、テスト成績」
「っ!?」

 私はその言葉でとろんとしていた目が、ぐっと開き完全に目が覚める。

「いや~実にいい朝。物凄く目覚めがいいな~」

 そのままベッドから起き上がり、窓へと近付き朝日を浴びながら背伸びをした。

「おはようございます、アリスお嬢様」
「う、うん。おはようマリア……で、さっきの話は」
「何の事でしょうか?」
「……うぅ、脅しとは卑怯な」
「何かおっしゃいましたか、アリスお嬢様?」
「何でもないわよ。シャワー浴びて来るわ」

 するとそこへ別のメイドがやって来て、私を洗面台へと案内する為に先導してくれた。
 そこまでしてくれなくてもいいんだけど、うちのメイドや執事は皆お節介って言えるほど色んな事をしてくれるのよね。
 確か昔お母様たちに理由を訊いた事があったような……忘れちゃった。
 私がそのままメイドの後に付いて行き、一度寝室を出て行くとマリアは一礼してそれを見送っていた。
 そして寝室に残ったマリアは、瞬時にベッドメイキングを行い、部屋にある小さいゴミなどを見逃さずに軽い掃除を行った。

「(うん。こんなところかしら。別段汚い事もないので、ほぼ掃除はいらないのだけど、この屋敷に仕えるメイドとしては塵1つ見逃す訳には行かないものね)」

 その後部屋に別のメイドがやって来た。

「マリアさん、アリスお嬢様のお部屋から何か持って行かれる物はありますか?」
「大丈夫よ。私の方で今持って行くから、貴方は他の部屋を回りなさいジェシカ」
「かしこまりました」

 ジェシカと呼ばれたメイドは一礼し、部屋から出て行くと、マリアは代えた枕・シーツ・布団を持って一度寝室を出て行く。
 その間に私はマリアと入れ替わる様に、寝室へと戻って来てそのままベッドに腰を掛ける。

「ふ~、やっぱり家のシャワーが一番ね。気兼ねなく浴びられるし、なによりクリスとして振る舞わなくていいのが楽よね~」

 と、私がくつろいでいると部屋の扉がノックされたので、私が返事をすると1人の執事が入って来た。

「アリスお嬢様、朝食の準備が整いました」

 お~そうだった、朝食が出来たら呼びに来るんだったね。
 ほとんど家に帰って来ないから、何か変な感じ。

「どうかされましたか、アリスお嬢様? もしや、私何か失礼な事を……」
「あ~いやいや、そんな事ないから。ちょっと驚いちゃっただけだから」
「やはり、私がアリスお嬢様のお機嫌を……」
「だから違うから。そんなに気にしてたら、お父様お母様の元でやっていけないよ」
「はい、すいません……しっかり精進させていただきます!」
「うんうん、その調子。え~と、リックだったよね? ごめんね、まだ皆の名前がふわふわしてて」
「いいえ! 名前を憶えて頂けているだけで光栄です、アリスお嬢様!」

 するとそこへ1人のメイドがやって来る。

「アリスお嬢様、リックが大変失礼いたしました。リック何してるの、アリスお嬢様を迎えに行ってと頼まれ、何足を止めさせてるのよ」
「ご、ごめんジェシカ……失礼しました、アリスお嬢様」

 あれ? 何か私が動かなかったから怒られてる?
 小声で何か言われてしまっているリックを見て私はそう思い、直ぐに立ち上がりリックとジェシカの元に近付く。

「そう怒らないであげて、ジェシカ。リックもわざとじゃないしさ」
「申し訳ありません、みっともない所をお見せしてしまい。それではリック、お連れして」
「はい。申し訳ありませんでした。では、こちらへ」

 そう言ってリックは私を先導する様に歩き出し、私はその後に付いて行く。
 後ろをチラッと振り返ると、そこではジェシカが私に対して一礼していた。
 私はその後前を歩くリックに小声で話し掛けた。

「ごめんね、何か私のせいで怒られちゃって」
「いいえ。アリスお嬢様のせいではありません。私がまだ執事として未熟なだけです。私も早くマリアたい――いえ、マリアさんの様になれるように精進いたします」
「マリアたい?」

 聞きなれない言葉に、私は軽く首を傾げていたがリックは「何でもありませんよ」と、少し声がうわずっていた。
 怪しい……あの秘密主義でもあるマリアの何かをリックは知っている感じがする。
 でも、どうせ聞いても教えてくれなそうだよな……いや、ここはボロをさっきみたいにだすかもしれないから、訊き続けて見るか。
 その後私は朝食が待つ場所までリックを質問攻めにしたが、結局はボロは出さずに食卓へと到着してしまった。
 残念、何か訊きだせると思ったんだけどな。

「何やらリックと親し気に話していましたが、何を話していたんですかアリスお嬢様」
「ちょっと秘密主義のマリアの何かしらの秘密を聞きだせるかな~って思ってさ」
「ほ~それは詳しく聞きたいですね。何故リックに訊かれたのですか?」
「それは何か聞きなれないこと――って、リックをこれで口止めするのなしだからね」
「そんな事しませんよ。それより、せっかくの朝食が冷めてしまう前に召し上がってください」

 マリアにそう言われ私は「そうね」と返し、朝食を食べ始めた。
 そう言えば、いつもはお父様お母様、それにお兄ちゃんもいるはずなのに今日はいないな。
 私は朝食を食べながら、そこで初めていつもとは違う雰囲気に気付く。

「マリア、お父様たちはどうしていないの?」
「はい。エリック様とリーリア様は、本日ご用事があると言う事で、既に外出されております。アバン様は朝食は既に取り終え、現在は朝の運動中でございます」
「あれ? って事は、私が最後? もしかして、物凄い寝坊したとか?」
「いいえ。そんな事はありません。いつも通りの時間ですので、皆様が今日はお早いだけですよ」

 そこで私は安堵の息をつく。
 既に帰省して3日が経ち、少し緩んでいるとは言え令嬢としての生活が微妙に慣れないが、学院にいる時よりは全然リラックス出来てはいる。
 なんせ学院ではクリスと言う男子として生活しなければならないし、今では慣れては来ているが性別が違う別人を演じると言うのは意外と疲れる。
 そうだ、ちょうどお兄ちゃんが運動中なら今日ゴーレム武装でも見てもらおうかな? うん、そうしよう!
 私はそう思い立ち朝食を食べ終え、立ち上がった。

「どこへ行かれるのですか、アリスお嬢様?」
「そりゃもちろん、お兄ちゃんの所。で、ゴーレム武装を見てもらう」
「ダメです」
「え、何で?」
「忘れたのですか? 今日も令嬢講習ですよ」

 その言葉を聞き、私はじっとマリアを見つめていると、マリアも私から視線を逸らさずに見つめて来た。
 直後、私はその場から逃げ出す様に走り出すが、マリアは瞬時に反応し私の襟を掴み逃走を阻止する。

「嫌だー! もう十分にやったじゃん! 少しは体も動かしたい」
「でしたら、今日の講習を受けた後にでも時間を作りますよ」
「とか言って、昨日も全然講習終わらないじゃん」
「それは、アリスお嬢様が何度も抜け出そうとするからですよ」
「だって」
「だってもありません。真面目に受けて頂ければ、直ぐに終わるのですからやりますよ。さぁ、このまま連行します」
「いや~だ~」

 そのまま私はマリアに連れて行かれる。
 食卓に残っていたメイドたちは、そんな光景を見て小さく微笑んでいた。

「マリアさんとアリスお嬢様の関係は、見ていて微笑ましいですね」
「そうですね。雰囲気で言えば姉妹の様にも見えますし」
「ほらそこ。談笑してないで、お皿を片付ける」
「「はい! 申し訳ありません、メイド長」」

 そこへ現れた貫禄あるメイドに注意され、メイドたちはテキパキと仕事をし始める。

「(全く、まだまだひよっ子たちね)」

 貫禄あるメイドはそのまま他のメイドたちと食卓の片付けをし始めるのだった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「はぁ~~~づがれだ~……」
「お疲れ様です、アリスお嬢様。これで令嬢講習は終了です」

 そのまま私は机に突っ伏した。
 マリアは教材を片付け、黒板に書いた文字を消し始める。

「これでやっと明日から自由だ~」
「あまり羽目を外し過ぎないでくださいね」
「分かってる~。あ、そう言えばマリアもクレイス魔法学院の第三期が始まる頃に戻るんだよね?」
「はい、そのつもりです。なので、アリスお嬢様と同じ頃に、お屋敷を出発する予定です」
「それじゃ、それまでは一緒に居れるって事ね。そしたらマリアにも意見を聞こうかしら。意外と鋭い意見とか言ってくれそうだし」

 私は起き上がり腕を組んで、ゴーレム武装をマリアにも見てもらおうかと検討し始めた。

「私もメイドとしての仕事もありますので、空き時間であれば付き合いますよ」
「本当!? じゃ、お願いするわ! 絶対に次はルークの奴に負けられないからね!」

 そう私が息巻いていると、マリアはふと思ったのか手を止めた。

「そう言えばですけど、アリスお嬢様。一応確認したいのですが、現在学院では何人にアリスお嬢様の正体がバレてるのですか?」
「え? ……急に何?」
「大切な事です。いい機会なので改めて現状確認を致しましょう。アリスお嬢様の為でもありますし、今後注意すべき人物なども一緒に確認しましょう」

 う~……まぁ、確かにここで現状確認するのは悪くないかも。
 初めはバレない様にしていた訳だけど、色々とあって数人にはバレてるし訳であるし……これ以上、厄介事を増やさない&自分の我がままを突き通す為に一丁やりますか。
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