とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第296話 どっちの成績表なの!?

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「アバン・ファークロス、ただいま戻りました」

 アバンは部屋に入るなり直ぐさまに、エリックとリーリアに改めて無事帰宅した事を伝える。

「うん。聞いていた時間より早かったけど、元気そうでなによりだアバン」
「アバン、お帰りなさい。マリア、アバンの分の用意を」
「かしこまりましたリーリア様」

 するとマリアは一礼し、一度ワゴンを押してアバンにも一礼してから部屋から出て行く。
 アバンがマリアに軽く手を上げて答えた後、私たちが座っている方へと歩いて来て、私の隣に座る。

「アリス~会いたかったぞ~」

 と、突然アバンが抱き着いて来ようとしたので咄嗟に私は避けると、アバンは悲しそうな顔で私を見つめた。
 するとアバンはスッと元の体勢に戻り、両手で顔を覆った。

「悲しい、悲しいよお兄ちゃんは。経った数カ月で、兄妹の挨拶を忘れてしまうなんて。昔はあんなにお兄ちゃん~って近寄って来てくれていたのに~」
「いつの話をしてるのよ、お兄ちゃん! と言うか、そんな挨拶なかったでしょ」
「さすが我が妹。記憶力が一流だ。そして、何より可愛い~」

 え、お兄ちゃんってこんな感じだったけ? いや、何か前より重症気味になってる?
 そう思ってしまった私は、少し体を引いてしまう。

「……あーすまない、アリス。久しぶりの実家と言う事とアリスに会えると思ったら、少しテンションがな……」
「あ、うん、そうなんだ……」

 何か急に素に戻ると、どうしていいか分からなくなるな。
 私が少し動揺していると、そこへマリアがお茶菓子とカップを持って帰って来る。
 そしてそのままアバンへ配膳し、紅茶を入れた。

「どうぞ、アバン様」
「ありがとう、マリア」

 そう言うってアバンは紅茶を一口飲む。

「そう言えばアバン、王国軍の見習い兵に戻れたそうね」
「はい。王女様の傍付として暫くの間働かせて頂き、先週より見習い兵へと戻りました」
「見習い兵としてはどうだ? 新しく友人も出来たとあったが、順調?」
「はい父上。同期たちは俺より先に、既に仮で部隊へ配属されていますが、俺も半年後には仮配属される様に精進しています」
「そうか。それはなによりだ」

 でもそれって、同期の人たちより遅れてるって事だよね。
 もしかして、それってあの時の事件のせいなんじゃ……
 私は直ぐに秋の誘拐事件の時に、助けてくれたお兄ちゃんを思い出していた。
 確かあの時、隊長って呼ばれている人と今後どうするかの話をしていた気がする……もしかしたら、あの一件でお兄ちゃんが責任を負って立場が悪くなったんじゃ……
 そう考えてしまい、私が俯いているとお兄ちゃんが声を掛けて来た。

「アリス。もしかして、あの時の事件で俺が何か悪い状況になってるんじゃないかと思ってるのか?」
「……はい」
「そうだったか。そんな思いをさせていたか。悪かった、アリス」

 お兄ちゃんはそう言って、私の頭に手を乗せて優しくポンポンとした。

「そんな心配する必要はないぞ。あの時も言ったが、俺はお前を助ける為に動いだ。もちろん、俺の意思だぞ。その結果、王国軍としての規律を破った。だから罰せられた。それだけだ」
「でも、そのせいでお兄ちゃんは皆より遅れて……」
「確かにそうかもしれないけど、まだ皆も見習い兵だ。そんな所で差がついても、俺なら直ぐ巻き返せる。お前も見たろ対抗戦の時に、俺の凄さを。しかも、あの時は王女様の傍付だったんだからな。中々そんな指名される奴はいないんだぞ~」
「そうだったの?」
「あぁ。一度は見習い兵ではなくなったけど、今はまた見習い兵に戻った。だから、お前が心配する事はな~んにもないんだよ」

 お兄ちゃんは笑顔でそう言ってくれ、私も先程まで考えていた事から切り替える事が出来た。

「……うん。ありがとう、お兄ちゃん」
「兄が妹の心配事になるのは嫌だからね」

 その後私たち家族は、何気ない話をし家族の時間を過ごした。

「そう言えば、お兄ちゃんはいつまでこっちにいれるの? 王国軍だと、ずっとは入れないんじゃない?」
「う~ん、年明け後の次の日には戻るよ。色々と準備があるからね」
「思ったより、長く居られるんだね。そしたら、少し魔法で相談したい事があるんだけど、いい?」
「あぁ、もちろんだ! 妹の役に立てるのなら何だってするさ! お兄ちゃんに任せなさい!」

 お兄ちゃんは勢いよく自分の胸を叩いてアピールした。
 ちょっと不安だけど、大丈夫だよね? ゴーレム武装を見てもらって思った事を聞くだけだし。
 するとそこでマリアが話し掛けて来た。

「そう言えばアリスお嬢様。言い忘れていましたが、クレイス魔法学院での成績表や学期の教本などご覧になられますか?」
「え、見る! 見る見る! 凄く見たい!」
「そう言うと思われました。アリスお嬢様、第二期の最終結果が散々でしたものね」
「……ん? ちょっと待て、もしかして私の成績知ってるのマリア?」

 それにマリアはにっこりと笑うだけで何を言わなかった。
 嘘だ! まだ、誰にも見せてないし、マリアだけには見せないつもりだったのに……どこから漏れたんだっ。

「あっ、すいませんアリスお嬢様。私とした事が成績表だけでもと思い、持ってきたつもりでしたが置いて来てしまいました。今すぐ持ってまいります」
「ちょっと待ってマリア!」
「はい?」
「それはどっちの成績表の事かな?」
「もちろん言わなくともお分かりかと、ふふふ」

 不敵に笑うマリアに、私は冷や汗が止まらなかった。
 マズイ、ひじょ~にマズイ。
 ここで第一期と第二期の成績をお母様に見比べられたら、サボってたんじゃないかと疑われてしまう。
 いや、そんな事ないかもしれないけど、何かそう思われるのが嫌だな……よし、ここはマリアと口裏を合わせるべきだね。
 私はそんな事を勝手に考えて、席から立ち上がる。

「お父様、お母様、お兄ちゃん。私は一足先にマリアと一緒に成績とか色々と見て来てもいいでしょうか? 気になって仕方ないんです」
「あぁ、構わないよ。行っておいで」
「ありがとうございます! さぁマリア、一緒に行きましょう!」
「もしやアリスお嬢様、成績を見られるのが――」
「何してるのマリア! 早く行きましょう! あ~マリアの成績が気になるわ~」

 私はわざとマリアの言葉に被せる様に言葉を言って、マリアより先に部屋を出て行った。
 するとマリアは、お母様たちに一礼して部屋から出て行った。

「まさか、マリアの言った通り本当に一緒に行くとはね。少し驚いたよ」
「だから言ったでしょ、あなた。アリスの事はマリアに任せておけば問題ないって」
「すいません父上、母上。急にあのような事を手紙で書いてしまって」
「いやいや、さっきの反応でアリスはまだあの事件を少し引きずっているようだからね。聞かせなくて正解だと思うよ」
「アリス、悪いお兄ちゃんを許してくれ」
「それでアバン、ティアとハンスから渡された物と言うのは?」

 アバンはそう言って、上着の内ポケットから手紙を2枚取り出し、机に置いた。
 それをそれぞれエリックとリーリアが手に取り、読み始める。

「誘拐事件の詳細な報告内容か」
「はい、父上が読まれているのは正にあの事件の詳細です。そして母上が読まれている方は」
「『モラトリアム』についてね」

 リーリアの言葉にアバンは頷く。

「未だ不明な部分はありますが、現時点の物を母上と共有する様にとハンス国王に頼まれました」

 そしてリーリアはその手紙の一番下に書かれている内容に目が止まった。

「(……バベッチ・ロウ)」

 その後リーリアは、それをエリックに渡し、アバンがハンスやティアから頼まれた伝言などの話を進めるのだった。
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