とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第301話 誕生日

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 この日私は朝食を終えてから着替えて、お兄ちゃんにも時間を作ってもらい中庭の特訓場に来てもらった。

「悪いなアリス。少し遅くなった」
「うんん、全然大丈夫。私のわがままに付き合ってもらってるんだし。お兄ちゃんの方こそ、何かやらなきゃいけない事があるなら、そっち優先でいんだよ?」
「何を言ってるんだ!」

 ビックリした……急に大声出すんだもん。
 私は目を丸くしていると、お兄ちゃんは急に大声を出した事を謝って来た。

「ご、ごめんよ。でも、俺の優先順位はどんな事だろうが、我が妹からのお願いがあれば、それが必ず最優先事項なんだよ!」
「ワーイ、ウレシイナー」
「? アリスよ、何故片言なんだ?」

 私はお兄ちゃんからの問いかけを無視して、先に準備運動を始める。
 あれ以上付き合ってしまうと、何かとてつもなく面倒な感じがしたので勝手に切り上げたのだ。
 その後準備運動をしながら、私はお兄ちゃんに改めて今日付き合ってもらう詳細な内容を伝えた。

「了解だ。以前一度見た、ゴーレム武装の改良版を見て意見が欲しいんだな」
「うん。この前の所感的な事から、自分なりに構築し直して見たんだけど、またちょっと行き詰まりかけてて……」
「分かったよ。前回は簡単にゴーレム武装を見せてもらっただけだったけど、今回は少し実践的に見せてもらおうかな」
「本当!? あ、でもそれだと万が一お兄ちゃんに何かあったら」
「アリス、誰の心配をしてるんだ? それとも分かった上で言ってるのか? そうだとしたら兄としてはちょっと嬉しい気もするが、まだまだアリスにも負けてる気はしないぞ」

 それから私はお兄ちゃんと軽い組み手をしてから、全力で模擬戦を行いその中でゴーレム武装を使用した。
 が、最初の模擬戦では使用した直後に出た隙を見つけられて負けてしまう。
 次の模擬戦では、使用前にやられてしまい、さらにその次の模擬戦では使用し形態を新たに構築したものを使おうとした所を狙われて負けてしまう。
 それ以降も私の体力と気合が続く限り、お兄ちゃんに付き合ってもらい模擬戦を行ったが、全敗で終わってしまった。
 しかも、全模擬戦で十分にゴーレム武装を使う事は出来なかったのだ。

「はぁー、はぁー、はぁー、お兄ちゃん本気出し過ぎでしょ」

 私は特訓場に大の字で倒れて息を整えている一方で、お兄ちゃんは立ったまま軽くタオルで汗を拭きながら、水分補給をしていた。

「何事も本気でやらなけきゃ意味がないだろ?」
「そうかもしれないけど、少しくらいゴーレム武装を使わせてくれてもいいじゃん」
「アリス、本番の試合でもそんな事言うのかい? 十分に使えなかったという事は、展開に問題がある。もしくは、展開するタイミングを見直すべきなのではと、言う事だよ」

 そこで私は体を起こし、そこであぐらをかいた。

「そうかもしれないけど、あんな的確に隙を突けたり、見破れるのはお兄ちゃんくらいじゃない?」
「アリスその姿勢は良くないよ。それに、俺に出来ると言う事は、誰かにも出来ると言う事だよ」

 私はお兄ちゃんに直ぐに注意されたあぐらを辞め、立ち上がり近くの椅子へと座り水分補給をした。

「そんな事ある? 私はそうは思わないけどな~」
「俺だって別に天才じゃない。相手を観察し、癖を見抜き、状況を判断する。それを組み合わせて魔法を使い、相手に全力を出させない様にする。昔からある戦術の1つだよ」
「はぁ~……これじゃ、課題が新しく増えただけだよ~」

 ベンチに思いっきり寄りかかり、私は上を向いて叫んだ。
 そんな私を見てお兄ちゃんは笑っていた。

「私にとっては、笑い事じゃないだけどな……」
「ごめんよ。でも、転入中に新しい技を創り出す事が、そもそも凄い事だよ。でも、それをまた改良するには一筋縄じゃいかないよ。そもそも、どうして改良しようとしてるんだい?」

 あ~そう言えば、その辺の経緯はお兄ちゃんに話してなかったな……どうしよう。
 ルークとの話を出すと、何か目の色変えて色々と教えてくれる可能性もあるけど、ルークの所に行って迷惑をかけそうな気もする……
 私は以前お兄ちゃんとルークが何やらもめて色々とあった事を思い出し、そうなる事を回避するためにルークの事は隠して、第二期期末試験でゴーレム武装が通じず改良するきっかけになったと伝えた。

「そう言う事だったか。でも同級生でゴーレム武装を破るとは、中々な奴だな。何て名前の奴だ?」
「えっ……あ~それは~」
「ご歓談中失礼いたします」

 と言って現れたのは、執事のウィルソンであった。

「ウィルソン、どうしたの?」
「はい、アバン様にお伝えしたい事がありまして」
「何だ?」

 するとウィルソンは、お兄ちゃんの方へと近付き何か耳打ちをし始めた。
 そしてお兄ちゃんは小さく「分かった」と答えた。
 何話してるんだろ? て言うか、小声で話さないといけない事なの?
 と、私は首を傾げているとウィルソンは話を終えて「失礼しました」と言って一礼してこの場から立ち去って行く。

「何の話をしてたの、お兄ちゃん?」
「大した事じゃないよ」
「じゃ言ってよ」
「えっ」

 そう言うとお兄ちゃんは、少し口元が引きつる。
 私はそんなお兄ちゃんを見て、直ぐに怪しいと思い問い詰め始める。

「えっ、って何? 何か悪い事なの? それとも私には言えない事? 教えてよお兄ちゃん」
「そ、それは」
「私が最優先なんでしょ? 私がお願いしてるのに、教えてくれないの?」

 私はここぞとばかり、お兄ちゃんの妹好きと言う弱点を徹底に攻める。
 これも戦略だよね? お兄ちゃん。

「うっっ……」
「お兄ちゃん、お願い」
「くっぅ……」
「お・ね・が・い」

 今まで出した事のないくらいの可愛らしい声で私は追い打ちをかけた。
 すると観念したのか、お兄ちゃんは小さくため息をついて教えてくれようとした時だった。

「アバン様、アリスお嬢様。もうそろそろお昼ですので、一度シャワーを浴びて来てはどうですか?」
「マリア? どうしたの?」
「いえ、アバン様が言いずらそうにしていましたので、代わりにと思いまして。差し出がましい事を言ってしまい申し訳ありません、アバン様」
「……いや、ありがとうマリア。助かったよ」
「え、じゃさっきウィルソンが伝えに来たのは、シャワーの事だったの?」
「そうなんだよ。でも、アリスはまだ模擬戦をやりたいかなと思ってさ、言いずらいなと思ってたんだ」

 そんな風には見えなかった気もするけど……
 私は少し疑いの目をお兄ちゃんに向けたが、確かにしっかり者のウィルソンなら言いかねないかもと思い、勝手に納得した。
 それにもうお昼近くであり、そんな時間までやっていた事に少し反省した。
 私は立ち上がり、片付けを始めた。

「ごめんお兄ちゃん。こんな時間まで付き合ってもらう予定じゃなかったの。次からは時間も気にするようにするね」
「いや、大丈夫だよ。俺も何も言ってなかったし。ほら、早く汗流してきな」

 そう言ってもらい私は一足先に荷物を持って特訓場を離れた。
 そして私が立ち去った後、お兄ちゃんは大きく息を吐いた。

「いや~我が妹の破壊力ヤバすぎる……危うく話してしまう所だった。本当に助かったよ、マリア」
「いえ、バレなかったのは幸いです。ウィルソンからも聞いたと思いますが、私たちの方で準備は万全に進めています。後ほど誕生会で着用する服は、確認お願い致します」
「あぁ。このままシャワーを浴びた後にでも、向かうよ。そう言えば、プレゼントの方は、まだ持ってていいのかな?」
「プレゼントに関しては、採寸の際に渡して頂けるのならジャックにお渡し下さい。もし難しようでした、昼食後にでもジャックを向わせますので、その時にお渡し下さい」
「了解した。にしても、まさか本人が気づいてないとはね。ちょっと驚きだな」
「そうですね。去年は行っていませんし、本当に忘れているんだと思われます」

 マリアの言葉に、小さくため息をつく。

「でも、その分最高の誕生日に出来そうで今から楽しみだよ」

 するとマリアも小さく笑い「私もです」と答えるのだった。
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