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第302話 最悪な誕生会
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「……ま、おき……」
ん? 何だろ? 誰かが何か言って来てる。
私はそこで閉じていた目を開けるが、視界は真っ暗であった。
徐々に意識が戻り始め途切れ途切れだった声もはっきりと聞こえ始める。
「アリスお嬢様、起きて下さい」
「……んぅ……その声は、マリア?」
「はい。そうです、アリスお嬢様」
しかし、未だに視界は真っ暗であり、更には何だか体が上手く動かなかった。
何かで手足を椅子の様な物に縛り付けられた感覚があり、感覚的に横に倒されている状態だと理解した。
「マリア? 声的に近くにいるのなら、助けてくれない? 何か手足が縛られてる感じで、視界も何も見えないの」
と、私はもがきながらマリアに助けを求めるが、何故か直ぐに返事が帰って来なった。
「マリア?」
私は不安になりもう一度名前を呼ぶと、遠くから何故かくすくすと笑い声が聞こえて来た。
笑い声? 何で? てか、どう言う状況なの?
視界が真っ暗で耳で音だけは聞こえる状況であったが、何も分からず動けない為、徐々に私はパニックになり始める。
するとそこでやっとマリアの声が再び聞こえて来た。
「アリスお嬢様、今のご自分の状況がお分かりですか?」
「分からないわよ! ただ縛られて、目隠しされてるくらいしか! いいから助けてよ、マリア! そこに居るんでしょ? 何で助けてくれないのよ」
「そんなに焦らないで下さいよ、アリスお嬢様。もっとよく耳を澄ませてください。そしたら、何となく状況が分かってくるはずですよ」
「そんなの目隠しを取ってくれれば分かるんだから、早くしてよ! 変な遊びとかいらないから!」
と、私がマリアの声がする方になんとなく首を向けて急かすと、突然背中を誰かに蹴られる。
幸い背もたれがある物に縛られていた為、私に直撃はせず蹴られた振動が伝わって来た。
何!? 蹴られた? 誰に?
「おいマリア、いつまで茶番をやってんだ。早く始末しろよ」
「ジェーン、何故貴方が私に命令しているの? アリスお嬢様とのこの時間は、私にとってメインディッシュなのよ? 邪魔をするなら、貴方の首を動体から切り離すわよ」
「っ……」
「ジェーン。隊長の邪魔をしないの」
「ちっ、分かったよイェレナ」
ジェーンにイェレナ? え、どう言う事? 今蹴ったのがジェーン? て言うより、マリアが隊長? 何なの? どう言う事なの?
私の頭の中は完全にパニック状態になっていた。
「ごめんなさい、アリスお嬢様。せっかくの時間がジェーンのせいで、壊されてしまったので状況を進めますね」
そう言うとマリアなのかは分からないが、倒れていた私を起こしてくれた。
私はその直後、恐る恐るマリアの名を呼ぶと私の背後から声が聞こえて来た。
「聞こえますか、アリスお嬢様?」
「何なの? どう言う事なのマリア? 何が起きてるの?」
「落ち着いて下さい。まずは私の言った言葉を――」
「落ち着ける訳ないでしょ! 何で私は縛られてるの? どうしてジェーンが私の事を蹴るの? 隊長ってどう言う事? どうして目隠しをしたままなの? さっきの会話はどう言う事なの? ねぇ! 答えてよマリア! マリアたっ――」
私が一方的に声を出し続けた直後、背後に居るマリアが私の髪の毛を掴み、下に突っ張り私は強制的に上を向けさせられる。
「アリスお嬢様、一方的に話さないで下さい。今主導権を握ってるのは私です」
そうマリアが言った直後、首元に冷たい刃の様な物を突き付けられた。
「もし、次また私の話を聞かずに話し続ける様でしたら、このまま首を裂きますよ? いいですか、まずは落ち着いて私の話を聞いて下さい。分かったら『はい』と言って下さい」
「……はい」
「流石アリスお嬢様です。では耳を澄ませていただき、何が聞こえるか口にして下さい」
私はマリアに言われるがまま耳を澄ませ、周囲から聞こえる音に集中する。
「……何かを燃やしてる音がする……それに、液体の様な物が垂れる音」
「素晴らしいです。後は何が聞こえますか?」
「後……後は……苦しそうな息づかい……」
直後、マリアが私にされていた目隠しを一気に外した。
そしてそこで私の視界に入って来た光景に、私は言葉を失った。
そこは家のリビングであったが、いたるところがボロボロで戦闘を行った様な形跡が残っていた。
更には、地面にお父様お母様、更にはお兄ちゃんまで倒れており皆腹部から血を流していた。
そして周りには、知っているメイドや執事が血だけの服装や武器を持った状態で一定間隔を空けて立っていた。
だがそこにはメイド長や執事長に執事次長など一部の人はいなかった。
「……何……これ?」
「どうですか? 突然目が覚めたら、家族や知人たちが知っている人の手で死にかけている光景を目の当たりにした感想は?」
マリアは私の耳元でそう囁いて来た。
えっ……どう言う事? これ、マリアがやったって事? いや、いやいやいや、意味が分からない。
最悪過ぎる夢だ……悪夢だ……早く、早く覚めてくれ。
そう私は願ったが、一向に夢は覚めない。
「ダメですよ~現実逃避しちゃ。目の前の光景が現実なんですから、しっかりと目に焼き付けて受け入れて下さい」
「嘘、嘘よ! こんなのあり得ないわ! だって信じられないもの!」
「嘘じゃありません。あれをやったのは私です。そして、私の昔の仲間たちです。あ、仲間と言うのはジェーンやイェレナたちです」
「マリアがこんな事、皆がこんな事するわけない! 皆お父様やお母様を慕っていたじゃない!」
「それはしてましたが、ある日気付いたんです。あ~私何をしているんだろって。いくら罪を償おうが意味はないんだ。なら、昔に戻った方が楽なんじゃないかって」
「こんな事する訳ないわ!」
「しますよ。だって私、昔傭兵で人を殺していましたし、皆は私の部隊の仲間たちですから同類です」
はぁ? 傭兵? 人を殺した? 何をさっきから言ってるのよ。
「アリスお嬢様も一度は聞いた事あるんじゃないですか、過去に戦争している中で子供たちが暗躍し暗殺を主とした部隊があった事を。それ、私たちの事なんです」
「……え?」
「いい反応ですね。まぁ、細かい事はもう言いません。長くなるので。要点だけ言うと、私はリーリア様のお陰で再び仲間と出会えた。でも、出会えたのにまた昔みたいに奴隷の様な仕事しているくらいなら、昔の様に皆で傭兵として生きた方が楽しいのではと考えたのですよ」
そう話しながらマリアは私の前へとやって来る。
「当然感謝はしています。ただ、私の性根が結局は腐っていたという事です。その結果、フォークロス家は巻き込まれた。私の理由なき悪意に」
「理由なき悪意?」
「はい。要は、誰でも良かったんですよ。昔の感覚を取り戻せれば、誰でも。その辺の村人でも、偶然通りかかった人とかでも。それがたまたま偶然、フォークロス家であっただけ。ただそれだけです」
「おかしい……狂ってるわ」
私は信じたくなかったが、もう目の前の状況やマリアの言動から、信じない訳には行かなかった。
私たちを襲ったのは紛れもなく、マリアとその仲間たちであると。
「確かに私は狂っているのかもしれないですね。なんせ、8歳の頃から人を殺して生きて来たんですから」
「っ……」
「あ~そう言えば、言い忘れていましたがまだエリック様やリーリア様、それにアバン様は虫の息ですが生きていますよ。残念ながら、メイド長など元々エリック様に仕えていた者たちは、既に殺させていただいたのでもう生きていません」
「!?」
マリアはそう言うと、うつ伏せで倒れているお母様に近付き、足で仰向けにさせた。
するとお母様は、むせる様に息をした。
「お母様!」
「ぐぅはぁ……ア、アリ……ス……」
「結構大変だったんですよ、この状態にするの。まぁ、実験体で執事長たちを使ったので、何とかなりましたけど」
私はそこで何かが切れた音が頭の中で響くと、一瞬でゴーレム武装を展開し両手足を縛っていた物を破壊する。
そしてマリアへ向かい踏み出そうとした時だった。
周囲から一斉にジェーンやイェレナたちが私に向かって来て、一瞬で取り押さえられてしまう。
完全に関節を抑えられてしまい、動こうとしたら関節が外れてしまうが、それでも私は構わないと思い力を入れる。
が、そこへ更にウィルソンがやって来て魔法で体を地面に縫い付ける様にされてしまう。
「このっ! 離せ!」
「……アリスお嬢様。何故私が貴方にだけ何をせずに、捕らえていたか分かりますか?」
「そんなの知りたくもない! 今すぐ頭を捕まえて、お母様たちを助ける!」
「それをさせる為ですよ」
「はぁ?」
訳の分からない事に、私は力が一瞬抜けてしまう。
するとマリアは私の目の前に1つの箱を置いた。
「いいですか、私はアリスお嬢様にここでの結末を選んで頂きたいのです」
「何を言ってるの?」
「今置いた箱は、アリスお嬢様の声に反応する魔道具です。それにはロックがかかっており、解除するパスワード4桁をアリスお嬢様が見事言い当てたら、私たちはこの場で身動きが取れなくなります」
そう言って、マリアは自分の胸元に大きな球体がついたベルトの様な物を巻き付ける。
同様に、マリア以外全員のメイドと執事たちが同じ物を胸に取り付け始めた。
「そして、見事アリスお嬢様は私たちを捕らえて、リーリア様たちを助けられる。後は、私たちを煮るなり焼くなり、ご自由に」
「……開けられなかったら?」
「その時は箱の魔道具内に仕掛けてある時限爆弾が起動し、3分後にはドン。デッドエンドです」
その言葉に、私は息を呑む。
「ではさっそく始めましょうか。いいですか、パスワードを言えるのは一度だけです。慎重に選んでください」
「一度だけ!?」
「そうですよ、何度出来たら意味ないじゃないですか。それに言いましたよね、私はアリスお嬢様に結末を選んで欲しいと」
「っ……こんなの不利過ぎるわよ! 元から殺すとしか思えないわ! 私に結末を選ばせると言うなら、せめてヒントくらい言いなさいよ!」
するとマリアは小さくため息をつく。
「アリスお嬢様はわがままですね~ですが、確かに私の方が有利過ぎるかもしれないですね」
「ならヒントをちょうだいよ」
「態度が――いえ、それは今はどうでもいいですね。それじゃヒントを上げましょう。パスワードの4桁は数字です」
「数字?」
「更にヒントを言えば、アリスお嬢様に関わる数字ですよ」
数字で私に関わる数字? え、何?
私はそこで一気に脳をフル回転させて考え始める。
しかし、マリアは私に長く考えさまいと制限時間を設けて来た。
「後3分以内で言って下さい。結構なヒントを上げたんですから、さすがに決められますよね? ヒントも時間も両方は上げられないですよ」
「ずるいわよ!」
「ずるい? そこは優しいと言って欲しいですね。私が決められる所を、わざわざアリスお嬢様に選ばせて上げていて、更にはアリスお嬢様に有利になるヒントまで上げているのですよ? これでずるいと言われては、さすがに耐えられずに私で結末を決めてしまいかねませんね~」
「くっ、わ、分かったわ。それでいい!」
「アリスお嬢様は物分かりがよくて助かります。では、後2分半でお願いします」
くそ! ダメだ! 時間があると余計に焦って考えられない……数字、4桁、私に関係あるもの……
私はいくつか候補が頭の中で現れて来るが、本当にそんな数字でいいのかと分からず、決められずにいた。
そんな事を繰り返しているうちに、マリアのカウントダウンが始まってしまう。
やばいやばい、もう決めないと! 何だ、何が正解なんだ……初めて話した日? マリアと出会った日? 魔法を使えた日? 怒られた日? 怪我した日? 泣いた日? 転入した日? 入学した日?
「3、2、1」
あ~くそ~! 4桁、4桁の数字で私に関係あるものあり過ぎて絞れない!
「0。はい、タイムアップです。答えが出なかったの――」
「待って!」
「待ちません。このまま」
「もう決めたから。今から言うから、待って」
私は覚悟を決めた目でマリアの方を見ると、マリアも黙ったままこちらを見つめ返して来ていた。
「……分かりました。では、その箱にパスワードをどうぞ」
そう言われ、私は小さく深呼吸した。
そして最後の最後で決めた4桁の数字を口にした。
その数字とは私の誕生日である。
「0103」
直後、目の前の箱のロックが解除されるとゆっくりと目の前の箱が開く。
するとそこには目を疑う様な言葉が書いてあり、私は口に出していた。
「アリス……お誕生日おめでとう?」
口に出した言葉と同時に、箱の中に仕掛けられていたバネの勢いを使ったおもちゃで、私は顔を思いっきり叩かれる。
すると、突然視界にヒビが入り世界が割れたのだ。
「!?」
何が何だか分からずにいると、突然今まで見ていた景色が嘘の様になくなり、目の前には皆が笑顔で私の方を見ていた。
そしてリビングには豪勢な飾りや食事が用意されているのが見えた。
「……え? ……何」
私は再び状況が分からずに動く事が出来ず、目だけきょろきょろさせているとお兄ちゃんが小さく「せ~の」と口にする。
「「アリス! 17歳のお誕生日おめでとう~!」」
すると勢いよくパンッパンッとあちこちで、誕生会でよく聞く音が響き渡ったのだった。
……ど、どう言う状況なのー!?
ん? 何だろ? 誰かが何か言って来てる。
私はそこで閉じていた目を開けるが、視界は真っ暗であった。
徐々に意識が戻り始め途切れ途切れだった声もはっきりと聞こえ始める。
「アリスお嬢様、起きて下さい」
「……んぅ……その声は、マリア?」
「はい。そうです、アリスお嬢様」
しかし、未だに視界は真っ暗であり、更には何だか体が上手く動かなかった。
何かで手足を椅子の様な物に縛り付けられた感覚があり、感覚的に横に倒されている状態だと理解した。
「マリア? 声的に近くにいるのなら、助けてくれない? 何か手足が縛られてる感じで、視界も何も見えないの」
と、私はもがきながらマリアに助けを求めるが、何故か直ぐに返事が帰って来なった。
「マリア?」
私は不安になりもう一度名前を呼ぶと、遠くから何故かくすくすと笑い声が聞こえて来た。
笑い声? 何で? てか、どう言う状況なの?
視界が真っ暗で耳で音だけは聞こえる状況であったが、何も分からず動けない為、徐々に私はパニックになり始める。
するとそこでやっとマリアの声が再び聞こえて来た。
「アリスお嬢様、今のご自分の状況がお分かりですか?」
「分からないわよ! ただ縛られて、目隠しされてるくらいしか! いいから助けてよ、マリア! そこに居るんでしょ? 何で助けてくれないのよ」
「そんなに焦らないで下さいよ、アリスお嬢様。もっとよく耳を澄ませてください。そしたら、何となく状況が分かってくるはずですよ」
「そんなの目隠しを取ってくれれば分かるんだから、早くしてよ! 変な遊びとかいらないから!」
と、私がマリアの声がする方になんとなく首を向けて急かすと、突然背中を誰かに蹴られる。
幸い背もたれがある物に縛られていた為、私に直撃はせず蹴られた振動が伝わって来た。
何!? 蹴られた? 誰に?
「おいマリア、いつまで茶番をやってんだ。早く始末しろよ」
「ジェーン、何故貴方が私に命令しているの? アリスお嬢様とのこの時間は、私にとってメインディッシュなのよ? 邪魔をするなら、貴方の首を動体から切り離すわよ」
「っ……」
「ジェーン。隊長の邪魔をしないの」
「ちっ、分かったよイェレナ」
ジェーンにイェレナ? え、どう言う事? 今蹴ったのがジェーン? て言うより、マリアが隊長? 何なの? どう言う事なの?
私の頭の中は完全にパニック状態になっていた。
「ごめんなさい、アリスお嬢様。せっかくの時間がジェーンのせいで、壊されてしまったので状況を進めますね」
そう言うとマリアなのかは分からないが、倒れていた私を起こしてくれた。
私はその直後、恐る恐るマリアの名を呼ぶと私の背後から声が聞こえて来た。
「聞こえますか、アリスお嬢様?」
「何なの? どう言う事なのマリア? 何が起きてるの?」
「落ち着いて下さい。まずは私の言った言葉を――」
「落ち着ける訳ないでしょ! 何で私は縛られてるの? どうしてジェーンが私の事を蹴るの? 隊長ってどう言う事? どうして目隠しをしたままなの? さっきの会話はどう言う事なの? ねぇ! 答えてよマリア! マリアたっ――」
私が一方的に声を出し続けた直後、背後に居るマリアが私の髪の毛を掴み、下に突っ張り私は強制的に上を向けさせられる。
「アリスお嬢様、一方的に話さないで下さい。今主導権を握ってるのは私です」
そうマリアが言った直後、首元に冷たい刃の様な物を突き付けられた。
「もし、次また私の話を聞かずに話し続ける様でしたら、このまま首を裂きますよ? いいですか、まずは落ち着いて私の話を聞いて下さい。分かったら『はい』と言って下さい」
「……はい」
「流石アリスお嬢様です。では耳を澄ませていただき、何が聞こえるか口にして下さい」
私はマリアに言われるがまま耳を澄ませ、周囲から聞こえる音に集中する。
「……何かを燃やしてる音がする……それに、液体の様な物が垂れる音」
「素晴らしいです。後は何が聞こえますか?」
「後……後は……苦しそうな息づかい……」
直後、マリアが私にされていた目隠しを一気に外した。
そしてそこで私の視界に入って来た光景に、私は言葉を失った。
そこは家のリビングであったが、いたるところがボロボロで戦闘を行った様な形跡が残っていた。
更には、地面にお父様お母様、更にはお兄ちゃんまで倒れており皆腹部から血を流していた。
そして周りには、知っているメイドや執事が血だけの服装や武器を持った状態で一定間隔を空けて立っていた。
だがそこにはメイド長や執事長に執事次長など一部の人はいなかった。
「……何……これ?」
「どうですか? 突然目が覚めたら、家族や知人たちが知っている人の手で死にかけている光景を目の当たりにした感想は?」
マリアは私の耳元でそう囁いて来た。
えっ……どう言う事? これ、マリアがやったって事? いや、いやいやいや、意味が分からない。
最悪過ぎる夢だ……悪夢だ……早く、早く覚めてくれ。
そう私は願ったが、一向に夢は覚めない。
「ダメですよ~現実逃避しちゃ。目の前の光景が現実なんですから、しっかりと目に焼き付けて受け入れて下さい」
「嘘、嘘よ! こんなのあり得ないわ! だって信じられないもの!」
「嘘じゃありません。あれをやったのは私です。そして、私の昔の仲間たちです。あ、仲間と言うのはジェーンやイェレナたちです」
「マリアがこんな事、皆がこんな事するわけない! 皆お父様やお母様を慕っていたじゃない!」
「それはしてましたが、ある日気付いたんです。あ~私何をしているんだろって。いくら罪を償おうが意味はないんだ。なら、昔に戻った方が楽なんじゃないかって」
「こんな事する訳ないわ!」
「しますよ。だって私、昔傭兵で人を殺していましたし、皆は私の部隊の仲間たちですから同類です」
はぁ? 傭兵? 人を殺した? 何をさっきから言ってるのよ。
「アリスお嬢様も一度は聞いた事あるんじゃないですか、過去に戦争している中で子供たちが暗躍し暗殺を主とした部隊があった事を。それ、私たちの事なんです」
「……え?」
「いい反応ですね。まぁ、細かい事はもう言いません。長くなるので。要点だけ言うと、私はリーリア様のお陰で再び仲間と出会えた。でも、出会えたのにまた昔みたいに奴隷の様な仕事しているくらいなら、昔の様に皆で傭兵として生きた方が楽しいのではと考えたのですよ」
そう話しながらマリアは私の前へとやって来る。
「当然感謝はしています。ただ、私の性根が結局は腐っていたという事です。その結果、フォークロス家は巻き込まれた。私の理由なき悪意に」
「理由なき悪意?」
「はい。要は、誰でも良かったんですよ。昔の感覚を取り戻せれば、誰でも。その辺の村人でも、偶然通りかかった人とかでも。それがたまたま偶然、フォークロス家であっただけ。ただそれだけです」
「おかしい……狂ってるわ」
私は信じたくなかったが、もう目の前の状況やマリアの言動から、信じない訳には行かなかった。
私たちを襲ったのは紛れもなく、マリアとその仲間たちであると。
「確かに私は狂っているのかもしれないですね。なんせ、8歳の頃から人を殺して生きて来たんですから」
「っ……」
「あ~そう言えば、言い忘れていましたがまだエリック様やリーリア様、それにアバン様は虫の息ですが生きていますよ。残念ながら、メイド長など元々エリック様に仕えていた者たちは、既に殺させていただいたのでもう生きていません」
「!?」
マリアはそう言うと、うつ伏せで倒れているお母様に近付き、足で仰向けにさせた。
するとお母様は、むせる様に息をした。
「お母様!」
「ぐぅはぁ……ア、アリ……ス……」
「結構大変だったんですよ、この状態にするの。まぁ、実験体で執事長たちを使ったので、何とかなりましたけど」
私はそこで何かが切れた音が頭の中で響くと、一瞬でゴーレム武装を展開し両手足を縛っていた物を破壊する。
そしてマリアへ向かい踏み出そうとした時だった。
周囲から一斉にジェーンやイェレナたちが私に向かって来て、一瞬で取り押さえられてしまう。
完全に関節を抑えられてしまい、動こうとしたら関節が外れてしまうが、それでも私は構わないと思い力を入れる。
が、そこへ更にウィルソンがやって来て魔法で体を地面に縫い付ける様にされてしまう。
「このっ! 離せ!」
「……アリスお嬢様。何故私が貴方にだけ何をせずに、捕らえていたか分かりますか?」
「そんなの知りたくもない! 今すぐ頭を捕まえて、お母様たちを助ける!」
「それをさせる為ですよ」
「はぁ?」
訳の分からない事に、私は力が一瞬抜けてしまう。
するとマリアは私の目の前に1つの箱を置いた。
「いいですか、私はアリスお嬢様にここでの結末を選んで頂きたいのです」
「何を言ってるの?」
「今置いた箱は、アリスお嬢様の声に反応する魔道具です。それにはロックがかかっており、解除するパスワード4桁をアリスお嬢様が見事言い当てたら、私たちはこの場で身動きが取れなくなります」
そう言って、マリアは自分の胸元に大きな球体がついたベルトの様な物を巻き付ける。
同様に、マリア以外全員のメイドと執事たちが同じ物を胸に取り付け始めた。
「そして、見事アリスお嬢様は私たちを捕らえて、リーリア様たちを助けられる。後は、私たちを煮るなり焼くなり、ご自由に」
「……開けられなかったら?」
「その時は箱の魔道具内に仕掛けてある時限爆弾が起動し、3分後にはドン。デッドエンドです」
その言葉に、私は息を呑む。
「ではさっそく始めましょうか。いいですか、パスワードを言えるのは一度だけです。慎重に選んでください」
「一度だけ!?」
「そうですよ、何度出来たら意味ないじゃないですか。それに言いましたよね、私はアリスお嬢様に結末を選んで欲しいと」
「っ……こんなの不利過ぎるわよ! 元から殺すとしか思えないわ! 私に結末を選ばせると言うなら、せめてヒントくらい言いなさいよ!」
するとマリアは小さくため息をつく。
「アリスお嬢様はわがままですね~ですが、確かに私の方が有利過ぎるかもしれないですね」
「ならヒントをちょうだいよ」
「態度が――いえ、それは今はどうでもいいですね。それじゃヒントを上げましょう。パスワードの4桁は数字です」
「数字?」
「更にヒントを言えば、アリスお嬢様に関わる数字ですよ」
数字で私に関わる数字? え、何?
私はそこで一気に脳をフル回転させて考え始める。
しかし、マリアは私に長く考えさまいと制限時間を設けて来た。
「後3分以内で言って下さい。結構なヒントを上げたんですから、さすがに決められますよね? ヒントも時間も両方は上げられないですよ」
「ずるいわよ!」
「ずるい? そこは優しいと言って欲しいですね。私が決められる所を、わざわざアリスお嬢様に選ばせて上げていて、更にはアリスお嬢様に有利になるヒントまで上げているのですよ? これでずるいと言われては、さすがに耐えられずに私で結末を決めてしまいかねませんね~」
「くっ、わ、分かったわ。それでいい!」
「アリスお嬢様は物分かりがよくて助かります。では、後2分半でお願いします」
くそ! ダメだ! 時間があると余計に焦って考えられない……数字、4桁、私に関係あるもの……
私はいくつか候補が頭の中で現れて来るが、本当にそんな数字でいいのかと分からず、決められずにいた。
そんな事を繰り返しているうちに、マリアのカウントダウンが始まってしまう。
やばいやばい、もう決めないと! 何だ、何が正解なんだ……初めて話した日? マリアと出会った日? 魔法を使えた日? 怒られた日? 怪我した日? 泣いた日? 転入した日? 入学した日?
「3、2、1」
あ~くそ~! 4桁、4桁の数字で私に関係あるものあり過ぎて絞れない!
「0。はい、タイムアップです。答えが出なかったの――」
「待って!」
「待ちません。このまま」
「もう決めたから。今から言うから、待って」
私は覚悟を決めた目でマリアの方を見ると、マリアも黙ったままこちらを見つめ返して来ていた。
「……分かりました。では、その箱にパスワードをどうぞ」
そう言われ、私は小さく深呼吸した。
そして最後の最後で決めた4桁の数字を口にした。
その数字とは私の誕生日である。
「0103」
直後、目の前の箱のロックが解除されるとゆっくりと目の前の箱が開く。
するとそこには目を疑う様な言葉が書いてあり、私は口に出していた。
「アリス……お誕生日おめでとう?」
口に出した言葉と同時に、箱の中に仕掛けられていたバネの勢いを使ったおもちゃで、私は顔を思いっきり叩かれる。
すると、突然視界にヒビが入り世界が割れたのだ。
「!?」
何が何だか分からずにいると、突然今まで見ていた景色が嘘の様になくなり、目の前には皆が笑顔で私の方を見ていた。
そしてリビングには豪勢な飾りや食事が用意されているのが見えた。
「……え? ……何」
私は再び状況が分からずに動く事が出来ず、目だけきょろきょろさせているとお兄ちゃんが小さく「せ~の」と口にする。
「「アリス! 17歳のお誕生日おめでとう~!」」
すると勢いよくパンッパンッとあちこちで、誕生会でよく聞く音が響き渡ったのだった。
……ど、どう言う状況なのー!?
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そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。
お願いですから、私に構わないで下さい!
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