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第307話 建前と本心
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「で、何でレストラン?」
私は手に持ったフォークで出されたメインの肉料理に突き刺した。
するとタツミは、フォークとナイフを使いマナーよく肉料理を一口食べた後口を開く。
「マナーが悪いぞ、マリア」
「っ……お前、いい加減目的を話せ」
私は直ぐに肉に刺したフォークを抜き、テーブル周りを整えフォークロス家の使用人として正しい作法で食事を続けた。
もしも自分の行き過ぎた行動で、フォークロス家の人間だとバレ泥を塗る様な事は出来ないと改めて思ったためだ。
今までタツミのせいで、それがおろそかになっていたので、改めて気を引き締めた。
その後、互いに黙ったまま食事が続きコース料理最後のデザートが運ばれて来た。
私は運ばれて来たデザートを見て、少し驚いてしまう。
うぅ……甘い物が多めだな。嫌いではないけど、そんなにいらないと言うか、何と言うか。
少し微妙な表情で目の前に置かれたデザートを見ていると、タツミは話し掛けて来る。
「何だ甘い物が苦手か?」
「違う。こんなに一気に食べらてないだけだ。と言うか、久しぶりに口を開いて言う事がそれかよ」
「食べきれなって言うなら、貰ってやるよ。俺甘い物好きだし」
私はスッと皿をタツミの方に押して「なら、好きなだけ食べろよ」と返事をした。
するとタツミは「遠慮なく」と口にして、私の皿からいくつかデザートを取って言った。
そして美味しそうにデザートを食べ始めた。
はぁ~私は何してるんだ、一体……
と、小さくため息をついた直後、タツミが急にここに来た目的を話し始めた。
「俺がここ来た理由は、最近街で流行ってる窃盗や誘拐事件の調査で来たんだよ」
「そう言えば掲示板にも書いてあったな。でも、どうしてお前がそんな事してるんだ?」
「頼まれたんだよ」
「誰に?」
「言えるわけないだろ。お前だってそう言う事は言わないだろ」
私はタツミの返しに小さく舌打ちをした。
もしかしたらボロでも出すかと思って聞いたが、さすがにそんなバカみたいな事はしないか。
私はそんな風に思いながら、再びタツミに視線を戻す。
「まぁ、今のは見なかった事にしてやる」
「ありがとうございます。で、何で急にそれを明かした? それが言えるなら私を拉致った理由も言えるよな?」
「猫を被ったり、それを直ぐに脱ぐのも凄いな。話した理由は、これからまた移動するからそれに協力してもらう為だ」
タツミはそう言ってデザートを食べきりフォークとナイフを置く。
私も少なくなったデザートを食べながら話を聞く。
「確かに拉致ったかもしれないが、さすがにあそこの二人を付けるのに一人じゃきついからな」
そう言うとタツミは手者のナイフをその人物たちの方に向けた。
私は軽く首を動かし、目線だけでその方を見ると、そこには少し裕福そうな家庭だとあえて訴える様にこぎれいな衣服を纏った私と同い年位の男女ペアが楽し気に食事をしていた。
何と言うか、着慣れていない感じで服に着られている感じだ。
それに、襟元に見える小さなバッチの様な物は何だ? 何処かの貴族家の模様な気がするな。
私はそこで一度タツミに視線を戻し問いかける。
「で、あのペアが目的の奴らだと?」
「かもしれないって所さ。途中で見失ってたんだが、警備団近くで見かけて咄嗟にレストランに入ったから、お前を連れて来たんだよ。金の心配はするな、俺が出すからよ」
「そんなの心配してない。それに探偵ごっこをするなら、一人でしろ。私を巻き込むな」
残っていたデザートを食べきり、私は料理代の金をとり出そうとしてこの場から離れようとするとタツミが不敵に笑う。
「いいのか? もしかしたら、ご主人様に何かしら悪さをしたり評判を落とす様な事件を起こされ、領地を荒らされたりするんだぞ? 現に、領地内で犯罪が多発し始めてる。それを知りながら使用人は放って帰るのか?」
あからさまな挑発だと分かった。
だが、言っている事は全てが的外れではない。
確かに知らなかったと言え、このままではもしかしたらフォークロス家の評判が下がるかもしれない。
それに、犯罪がこれから起こるかもしれないと言うのを知って、見過ごすのもどうかと思う。
もしかしたら既にエリック様たちは、手を打っているかもしれないが、このまま帰り領地内の誰かが傷ついたと知ったら、エリック様に合わせる顔がない。
するとそこでタツミが付けている二人が立ち上がり、店の出口へと向かい始める。
「どうするマリア? このまま見ぬ振りをして立ち去るか、俺に協力し正体を暴き徹底的な瞬間を抑えるか。二択だ。時間はないぞ、今決めろ」
「っ……分かった」
その返事にタツミは笑顔になり、直ぐに立ち上がり二人を追い始めた。
私は物凄く不本意ながらタツミの後を追った。
そして店を出てからタツミに話し掛けた。
「いいか、私はお前じゃなくてご主人様の為に動くだけだ。決してお前に屈した訳じゃないから」
「分かったよ。ほら、恋人設定なんだから離れるなよ」
「何でまだそれが続いてるんだよ。辞めろ」
「設定だし、その方があの二人を追いやすい。得意だろ、そう言う擬態」
「擬態言うな。そもそも誰が好きでお前な――」
と話している時だった、対象の二人が私たちの方に視線を向けて来たので私は咄嗟にタツミと腕を組み、引っ付き恋人の振りをした。
すると対象の二人は私たちを見て、ただの痴話喧嘩かと思ったのか直ぐに視線を前に戻した。
「何だやれば出来るじゃんよ。意外と乗り気だった?」
「黙れ……この街に危害を加えさせない為だ。調子に乗った事を言うな。次変な事言ったら、路地に連れ込んで裂くぞ」
「お~怖い怖い。それじゃ、改めてこっちも始めようか尾行作戦」
そうして私とタツミの尾行作戦が始まった。
が、対象の二人が行くのは何処もカップルが行くような場所で、ただ単に街を観光しイチャイチャして楽しんでいるだけであり、何処も怪しい感じが見られなかったのだ。
そんなこんなで遂に日も暮れ始め、対象の二人は出店のアクセサリー屋で足を止めていた。
「おい、話が全然違うんだが?」
私は少し怒りながらタツミに問いかけると、タツミはゆっくりとそっぽを向いた。
「お、おっかしな~……ははは……」
タツミが苦笑いした後、私たちの近くを数人を連行する警備団が通る。
「やっと捕まえたぞ。お前たちがここ最近の黒幕だったんだな」
「すいません~……もうしませんから、許して下さい~」
「いいから黙って歩け。全く手こずらせやがって、あんな地下に潜伏してるとは思わなかったぞ」
「ひとまずこれで街の犯罪も止まるな。領主様にも報告しておかないとな」
と言う会話を通り際に聞こえてしまい、私は黙ったままタツミの襟元を掴む。
「ちょ、ちょちょ、暴力は良くない。誰にだって間違いはあるだろ?」
「間違いと認めるんだな」
「あ、いや~それは何て言うか……」
そんなやり取りをしていると、私たちの所へ追っていた対象の二人が急にやって来て話し掛けて来た。
「あの、喧嘩は良くないですよ。私たちもよく喧嘩しますけど、いつも最後には仲直りするんです」
「それに今日は、やたらと行く場所も同じで勝手に親近感を覚えてしまって、そのほっとけなくて」
まさかの展開に私もタツミも暫く固まってしまう。
「その、もし仲直りの糸口がなければ何か互いにプレゼントしたらどうですか? 落ち着いて話すキッカケにもなりますし」
「俺たちもそう教えて貰ってこれまで関係が続いているんです」
「は、は~……」
「いや~恥ずかしい所を見られてしまったな~ちょっと俺が悪い事をしただけ何で、気にしなくて大丈夫ですよ。すいませんね~わざわざ」
と、タツミが怪しくない様に話しを合わせて返すと、二人も納得したのか「そうでしたか」と言って無駄に首を突っ込んだ事を謝って立ち去って行った。
その二人は互いに手を握って歩いて行くのだった。
「あれは、ただの恋人関係だったか。いや~まさか心配されるとはね。参った、参った」
「あのね~そんな話じゃ……はぁ~もういい。結局全部アンタの勘違いで、無駄足だったって事でしょ」
「まぁ~そうなるか、な」
その返事に私は大きくため息をつき落胆する。
ここでタツミを責めるのも違うし、結局は私自身がそう思い行動した結果なのよ。
結果的に解決もしたみたいだし、何もなくて良かったと思えばいいじゃない。
私はそう自分に言い聞かせて、その場を立ち去ろうとするとタツミに腕を掴まれた。
「何? まだ何か用? それとも謝罪の意味で殺して欲しいの?」
「今回は俺のミスだ、悪かった。でも、最初に約束した通り、手伝ってもらったお礼だ」
そう言ってタツミが紙袋に入った何かを渡して来たが、私はそれを突っぱねた。
「そんなのいらないわよ。あんたからのお礼品なんて貰いたくないし、貰う気もない。別の女性への贈り物にでもしたら?」
私は紙袋の小さな凹凸具合でネックレスだと分かり、そう返事をしてタツミを取り残して立ち去った。
そして取り残されたタツミは、受け取ってもらえなかったお礼品を見て、軽く肩をすくめそのまま内ポケットにしまった。
そのまま近くの路地に入り込み、壁に背を付けて座り込んだ。
「はぁ~疲れた……思い付きでやる事じゃなかったな。でも、一応任務完了だな」
タツミはそう呟き内ポケットから飴玉を取り出し、口へと入れる。
「うまっ。にしても、この街の警備団は優秀だな。アジト情報を伝えただけで、今日中に完全に捕まえるとは予想外だ。でももう一方の予定外要因は、何だかんだ言って協力してくれたお陰であの二人のシロと分かったし、良しとするか」
そう呟きタツミはゆっくりと立ち上がり、通路から出て差し込む夕日を眩しそうに見つめる。
「(だが学院長も警戒し過ぎでは? 怪しい動きをするハイナンス家の人を監視しろって、偽者騒動があったにしろこんなのがバレたら一大事だぞ。まぁ、バレない為に俺に頼んだんだろうけど……はぁ~とりあえずあの二人で最後だし、後は報告するだけだな)」
タツミはそんな事を思いながら背伸びをして、気怠そうに歩き始める。
私は手に持ったフォークで出されたメインの肉料理に突き刺した。
するとタツミは、フォークとナイフを使いマナーよく肉料理を一口食べた後口を開く。
「マナーが悪いぞ、マリア」
「っ……お前、いい加減目的を話せ」
私は直ぐに肉に刺したフォークを抜き、テーブル周りを整えフォークロス家の使用人として正しい作法で食事を続けた。
もしも自分の行き過ぎた行動で、フォークロス家の人間だとバレ泥を塗る様な事は出来ないと改めて思ったためだ。
今までタツミのせいで、それがおろそかになっていたので、改めて気を引き締めた。
その後、互いに黙ったまま食事が続きコース料理最後のデザートが運ばれて来た。
私は運ばれて来たデザートを見て、少し驚いてしまう。
うぅ……甘い物が多めだな。嫌いではないけど、そんなにいらないと言うか、何と言うか。
少し微妙な表情で目の前に置かれたデザートを見ていると、タツミは話し掛けて来る。
「何だ甘い物が苦手か?」
「違う。こんなに一気に食べらてないだけだ。と言うか、久しぶりに口を開いて言う事がそれかよ」
「食べきれなって言うなら、貰ってやるよ。俺甘い物好きだし」
私はスッと皿をタツミの方に押して「なら、好きなだけ食べろよ」と返事をした。
するとタツミは「遠慮なく」と口にして、私の皿からいくつかデザートを取って言った。
そして美味しそうにデザートを食べ始めた。
はぁ~私は何してるんだ、一体……
と、小さくため息をついた直後、タツミが急にここに来た目的を話し始めた。
「俺がここ来た理由は、最近街で流行ってる窃盗や誘拐事件の調査で来たんだよ」
「そう言えば掲示板にも書いてあったな。でも、どうしてお前がそんな事してるんだ?」
「頼まれたんだよ」
「誰に?」
「言えるわけないだろ。お前だってそう言う事は言わないだろ」
私はタツミの返しに小さく舌打ちをした。
もしかしたらボロでも出すかと思って聞いたが、さすがにそんなバカみたいな事はしないか。
私はそんな風に思いながら、再びタツミに視線を戻す。
「まぁ、今のは見なかった事にしてやる」
「ありがとうございます。で、何で急にそれを明かした? それが言えるなら私を拉致った理由も言えるよな?」
「猫を被ったり、それを直ぐに脱ぐのも凄いな。話した理由は、これからまた移動するからそれに協力してもらう為だ」
タツミはそう言ってデザートを食べきりフォークとナイフを置く。
私も少なくなったデザートを食べながら話を聞く。
「確かに拉致ったかもしれないが、さすがにあそこの二人を付けるのに一人じゃきついからな」
そう言うとタツミは手者のナイフをその人物たちの方に向けた。
私は軽く首を動かし、目線だけでその方を見ると、そこには少し裕福そうな家庭だとあえて訴える様にこぎれいな衣服を纏った私と同い年位の男女ペアが楽し気に食事をしていた。
何と言うか、着慣れていない感じで服に着られている感じだ。
それに、襟元に見える小さなバッチの様な物は何だ? 何処かの貴族家の模様な気がするな。
私はそこで一度タツミに視線を戻し問いかける。
「で、あのペアが目的の奴らだと?」
「かもしれないって所さ。途中で見失ってたんだが、警備団近くで見かけて咄嗟にレストランに入ったから、お前を連れて来たんだよ。金の心配はするな、俺が出すからよ」
「そんなの心配してない。それに探偵ごっこをするなら、一人でしろ。私を巻き込むな」
残っていたデザートを食べきり、私は料理代の金をとり出そうとしてこの場から離れようとするとタツミが不敵に笑う。
「いいのか? もしかしたら、ご主人様に何かしら悪さをしたり評判を落とす様な事件を起こされ、領地を荒らされたりするんだぞ? 現に、領地内で犯罪が多発し始めてる。それを知りながら使用人は放って帰るのか?」
あからさまな挑発だと分かった。
だが、言っている事は全てが的外れではない。
確かに知らなかったと言え、このままではもしかしたらフォークロス家の評判が下がるかもしれない。
それに、犯罪がこれから起こるかもしれないと言うのを知って、見過ごすのもどうかと思う。
もしかしたら既にエリック様たちは、手を打っているかもしれないが、このまま帰り領地内の誰かが傷ついたと知ったら、エリック様に合わせる顔がない。
するとそこでタツミが付けている二人が立ち上がり、店の出口へと向かい始める。
「どうするマリア? このまま見ぬ振りをして立ち去るか、俺に協力し正体を暴き徹底的な瞬間を抑えるか。二択だ。時間はないぞ、今決めろ」
「っ……分かった」
その返事にタツミは笑顔になり、直ぐに立ち上がり二人を追い始めた。
私は物凄く不本意ながらタツミの後を追った。
そして店を出てからタツミに話し掛けた。
「いいか、私はお前じゃなくてご主人様の為に動くだけだ。決してお前に屈した訳じゃないから」
「分かったよ。ほら、恋人設定なんだから離れるなよ」
「何でまだそれが続いてるんだよ。辞めろ」
「設定だし、その方があの二人を追いやすい。得意だろ、そう言う擬態」
「擬態言うな。そもそも誰が好きでお前な――」
と話している時だった、対象の二人が私たちの方に視線を向けて来たので私は咄嗟にタツミと腕を組み、引っ付き恋人の振りをした。
すると対象の二人は私たちを見て、ただの痴話喧嘩かと思ったのか直ぐに視線を前に戻した。
「何だやれば出来るじゃんよ。意外と乗り気だった?」
「黙れ……この街に危害を加えさせない為だ。調子に乗った事を言うな。次変な事言ったら、路地に連れ込んで裂くぞ」
「お~怖い怖い。それじゃ、改めてこっちも始めようか尾行作戦」
そうして私とタツミの尾行作戦が始まった。
が、対象の二人が行くのは何処もカップルが行くような場所で、ただ単に街を観光しイチャイチャして楽しんでいるだけであり、何処も怪しい感じが見られなかったのだ。
そんなこんなで遂に日も暮れ始め、対象の二人は出店のアクセサリー屋で足を止めていた。
「おい、話が全然違うんだが?」
私は少し怒りながらタツミに問いかけると、タツミはゆっくりとそっぽを向いた。
「お、おっかしな~……ははは……」
タツミが苦笑いした後、私たちの近くを数人を連行する警備団が通る。
「やっと捕まえたぞ。お前たちがここ最近の黒幕だったんだな」
「すいません~……もうしませんから、許して下さい~」
「いいから黙って歩け。全く手こずらせやがって、あんな地下に潜伏してるとは思わなかったぞ」
「ひとまずこれで街の犯罪も止まるな。領主様にも報告しておかないとな」
と言う会話を通り際に聞こえてしまい、私は黙ったままタツミの襟元を掴む。
「ちょ、ちょちょ、暴力は良くない。誰にだって間違いはあるだろ?」
「間違いと認めるんだな」
「あ、いや~それは何て言うか……」
そんなやり取りをしていると、私たちの所へ追っていた対象の二人が急にやって来て話し掛けて来た。
「あの、喧嘩は良くないですよ。私たちもよく喧嘩しますけど、いつも最後には仲直りするんです」
「それに今日は、やたらと行く場所も同じで勝手に親近感を覚えてしまって、そのほっとけなくて」
まさかの展開に私もタツミも暫く固まってしまう。
「その、もし仲直りの糸口がなければ何か互いにプレゼントしたらどうですか? 落ち着いて話すキッカケにもなりますし」
「俺たちもそう教えて貰ってこれまで関係が続いているんです」
「は、は~……」
「いや~恥ずかしい所を見られてしまったな~ちょっと俺が悪い事をしただけ何で、気にしなくて大丈夫ですよ。すいませんね~わざわざ」
と、タツミが怪しくない様に話しを合わせて返すと、二人も納得したのか「そうでしたか」と言って無駄に首を突っ込んだ事を謝って立ち去って行った。
その二人は互いに手を握って歩いて行くのだった。
「あれは、ただの恋人関係だったか。いや~まさか心配されるとはね。参った、参った」
「あのね~そんな話じゃ……はぁ~もういい。結局全部アンタの勘違いで、無駄足だったって事でしょ」
「まぁ~そうなるか、な」
その返事に私は大きくため息をつき落胆する。
ここでタツミを責めるのも違うし、結局は私自身がそう思い行動した結果なのよ。
結果的に解決もしたみたいだし、何もなくて良かったと思えばいいじゃない。
私はそう自分に言い聞かせて、その場を立ち去ろうとするとタツミに腕を掴まれた。
「何? まだ何か用? それとも謝罪の意味で殺して欲しいの?」
「今回は俺のミスだ、悪かった。でも、最初に約束した通り、手伝ってもらったお礼だ」
そう言ってタツミが紙袋に入った何かを渡して来たが、私はそれを突っぱねた。
「そんなのいらないわよ。あんたからのお礼品なんて貰いたくないし、貰う気もない。別の女性への贈り物にでもしたら?」
私は紙袋の小さな凹凸具合でネックレスだと分かり、そう返事をしてタツミを取り残して立ち去った。
そして取り残されたタツミは、受け取ってもらえなかったお礼品を見て、軽く肩をすくめそのまま内ポケットにしまった。
そのまま近くの路地に入り込み、壁に背を付けて座り込んだ。
「はぁ~疲れた……思い付きでやる事じゃなかったな。でも、一応任務完了だな」
タツミはそう呟き内ポケットから飴玉を取り出し、口へと入れる。
「うまっ。にしても、この街の警備団は優秀だな。アジト情報を伝えただけで、今日中に完全に捕まえるとは予想外だ。でももう一方の予定外要因は、何だかんだ言って協力してくれたお陰であの二人のシロと分かったし、良しとするか」
そう呟きタツミはゆっくりと立ち上がり、通路から出て差し込む夕日を眩しそうに見つめる。
「(だが学院長も警戒し過ぎでは? 怪しい動きをするハイナンス家の人を監視しろって、偽者騒動があったにしろこんなのがバレたら一大事だぞ。まぁ、バレない為に俺に頼んだんだろうけど……はぁ~とりあえずあの二人で最後だし、後は報告するだけだな)」
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