とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第313話 北東の廃鉱

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「マリア、どう?」

 私は男物洋服に裏路地で着替えマリアに見てもらう。
 マリアは私の姿を見回すと「問題ありません」と答えた。
 それを聞き私はゆっくりと息を吐き、自分の中のスイッチを入れ替える。
 アリスからクリスへのスイッチである。

「よし、大丈夫だマリア」

 私の言葉にマリアは頷いて答える。
 既にマリアは使用人服から着替え、動きやすく黒い服装へと着替えており更には、口元を隠すように布を巻いていた。
 そしてマリアは得て来た情報を私に共有し始める。
 現状、ジュリルが誘拐され20分程が経過しているが、未だに警備団は大きな動きは見せずにいる。
 またハイナンス家の使用人たちも建物内に集まっているらしく、こちらも大きな動きはなかった。
 しかし情報からジュリルが誘拐された相手は、間違いなく私が昼間に襲撃を受けた相手であると分かった。

 既に誘拐や窃盗をすると思われる連中は大方逮捕されており、残っている残党であり顔も見られている為であった。
 そしてその連中はジュリルを攫った後、逃げた方向も街の人々に目撃されており、逃げた方角から街の北東に存在する洞窟に潜伏していると予想されている。
 その洞窟は昔、採掘現場として掘り進めらていたが、掘り進めた先に取り除けない程の岩々や鉱物が少ない事から撤退され、現在も埋められずにそのままにされている廃鉱と呼ばれている場所であった。

「廃鉱か……中がどうなっているか分かるか?」
「いえ、そこまでは。現地で見て判断するしか現状ありません」
「分かった。それで移動手段の方は?」
「そちらは問題なく。既に馬を一頭確保しています」

 馬が一頭である理由は、私が乗馬が上手くないのでマリアに手綱を握ってもらう、それとより早くジュリルたちの後を追う為だ。
 ジュリルたちを助けた後は、犯罪者たちが乗っていた馬車の馬を奪い帰還予定だ。
 もし馬がなければ、私が手綱を持ちジュリルを乗せ逃げる。
 マリアは最悪自分は走っても逃げられるし、殿も務められると言って来たので私はその作戦に異を唱えずに従った。
 相手との戦闘は予想されるが、基本はマリアが担当し私はジュリルの救出と言う役割分担である。
 分かっている相手は4人であり、一番の強敵はフードを被った人物だ。
 どの様な展開であれ、フードを被った人物が出て来た時点でマリアが足止めして私は進む。

 例えその先に残りの相手がいようが、私の力で突破する事は可能だとマリアが判断したのだ。
 しかし、相手が私たちが把握している以上の人数の際は撤退する選択肢を取るしかなくなる。
 そうこの救出作戦は、相手が4人であることが最低条件なのだ。
 こちらは私とマリアのみ、レオンにも声を掛けるか迷ったが、今のクリスの説明が面倒になり時間ロスと判断し2人だけの実行となっている。

「それじゃ行こう、マリア」
「お待ちくださいクリス坊ちゃま」
「っ、何?」

 するとマリアは、私が脱いだ服を回収すると一緒に持ってきた袋へと入れると、袋を斜めに高く投げると同時にナイフを投げつけると袋は壁に突き刺さる。

「ひとまず服が見つかる事はないので、後で回収し着替えましょう。それと名前についてですが、これより私の事はマリと及び下さい」
「わ、分かったわマリア、じゃなくてマリ」
「クリス坊ちゃまの事も念の為、リース様と呼ばせて頂きます。それとこの帽子をお被りください」

 そう言って、私はマリアからつば付き帽子を受け取り言う通りに被った。
 これはマリアなりの偽装であると何となく私は悟った。
 誰かに見られたとしても、私がクリスとバレる心配も減りマリアも気付かれる確率も減る。
 だが、街中でこの様な格好をしていれば必ず人の目に入るが、最終的には目立つ物は捨てその特徴がある人物事消すと言う事だろう。
 マリアはそこまでは言わなかったが、私はそうなのではないかと勝手に思いあえて深く帽子を被った。

「それでは行きますよ、リース様」
「あぁ、マリ」

 そしてマリアは用意していた馬に乗り、私がその後ろに乗ってマリアの腰に手を回す。
 そのままマリアは勢いよく馬を走らせて目的地へ向けて街を走り抜けて行く。
 予想通り街の人に見られるが、私はなるべくマリアの背に顔を寄せて俯き続けた。
 それから10分もすると、あっという間に街を抜け整った道の上を走っていた。
 街を抜けるには門番が居る所を超えるのだが、そこは事前にマリアが門番に話を通していたらしく裏口からこっそりと出してもらった。
 マリアが門番に何を話したかは教えてはくれなかったが、その門番の人はやけににやけた顔で媚びをへつらう感じであった。
 私が街の外に出てからも、ずっとマリアにしがみついているとマリアが声を掛けて来た。

「もう顔を上げても問題ないですよ、リース様。後は、このまま目的地に一直線ですので」
「分かった」

 一瞬馬の速さで当たる風に帽子が飛ばされそうになったが、瞬時に片手で抑えた。
 そのまま深く帽子を被り直し、振り落とされない様にマリアに少しだけ強くしがみつく。

「マリ。もう少し飛ばしてもいいぞ」
「これ以上飛ばすと馬の体力がもちませんので、ご理解下さい。ですが、出せるギリギリの速さで向かってはいるのでご安心下さい」

 そうして北東の廃鉱目指して、馬を飛ばした。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「ふっ、中々いい獲物が取れた。昼間のあいつじゃないが俺たちの邪魔をして来たバツだ!」

 男は未だに意識を失っているジュリルを牢の中の鎖につないだ後、牢を出て鍵をかける。
 そこへフードを被った人物がやって来る。

「何だお前か。つうか、あんなに戦えるなら昼から本気だせっての」

 そう言うと男はフードを被った人物の胸を軽く叩く。
 フードを被った人物はそれに対して、軽く頷いた。

「まぁいいや。とりあえず、お前も警備してろ。外の2人だけじゃ不安だし、もしかしたら警備団が直ぐに来るかもしれないしな」
「……」
「ん? その女か? まだ目も覚めねぇし放っておけ。朝には予備のアジトに移動するんだから、それまでの仮の牢だ。ここはほぼ一本道に近いからアジト向きじゃねぇ」

 そう言うと男はフードを被った人物を残して去って行く。

「予備のアジトはあの『モラトリアム』が使ってたって噂の場所らしいし、隠れるのには最高な場所だろ? テンション上がるだろ?」
「……」
「なんだよ、反応なしかよ。俺は今からあいつ等2人の様子見て来るから、てめぇも持ち場に戻って警戒してろよ」

 男はフードを被った人物を残して、走って入口へと続いている道を走って行った。
 それを見送ったフードを被った人物は、牢に閉じ込められたジュリルの方をじっと見つめる。
 そのままゆっくりと牢の方へと近付くと顔を牢に押し付けるとうっすらと不敵な笑みを浮かべて呟くのだった。

「こい……こい……早くこい……イヒィィィィ」
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