とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第314話 改めて実感する

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「到着しました」
「あそこが、目的地の廃鉱……」

 マリアは廃鉱が見える茂みの中で馬を止めた。
 周囲には誰もいなかったが、もしかしたら敵が見張りとしているかもしれないと考えての行動だった。
 馬から降り、マリアは馬を近くの木に手綱を縛り、周囲の偵察へと向かった。
 私は馬が騒がない様に撫でつつ、マリアから受け取った器に水をたっぷりと入れ馬に呑ませた。
 ここにジュリルがいる……待っててジュリル、必ず助けだすから。
 溢れ出るその思いをぐっと抑えつつ、私は冷静に状況を見つつマリアの帰りを待った。
 それから数分後にマリアが帰って来て偵察の結果を報告し始めた。

「結果から言えば、ここが逃げ込んだ場所で間違いありません。ここから少し離れた場所に馬車と馬を確認しました。それと他に入口な様なものは確認できませんでしたので、ここから見えるあそこが入口であり出口でもあります」
「そう、分かった。偵察ありがとうマリ」

 マリアは私の言葉に軽く顔を横に振った。
 それから改めてマリアとの作戦を立て、周囲には誰もいないのでこのまま乗り込む事にした。
 が、中の構造も不明なため全力突撃ではなく、警戒しながら忍び込む形で行く事となった。
 そうしてマリアが先頭を行き私がその後ろを付いて行く状態で進み始め、私たちは廃鉱へと入って行く。
 廃鉱内は、所々に明りが灯されており真っ暗ではなく、道も特に大きな障害物もなく広い一本であった。
 周囲に身を隠す物がない為、私たちは隠れる事ができなかったので、どの様な状況でも直ぐに対応できるようにとマリアは真ん中を歩き始める。
 私は二歩程間を空けてマリアの後を付いて行く。
 暫く廃鉱内を進んだが、全く人の気配がしなかったが突然マリアが止まり、私に端に寄る様に指示を出した後単身で先の様子を見に行く合図を送って来た。
 私はそれに頷くと、マリアはそのまま先へと進んで行き暫くすると戻って来て私へと駆け寄り、小声で話し始めた。

「この先に開けた空間があります。そこには2人の男が見張りの様に立っていました」
「ジュリルはいた?」
「いいえ、見当たりませんでした。そこはここよりも明るく完全に開けた場所です。先に進むにはその2人を素早く倒すほかないかと」

 マリアはそう言うと、地面にざっくりとその場所の俯瞰図を描き始めた。
 そしてマリアがそれを元に、見張りの2人を素早く気絶させ、他の者に気付かせない様にする作戦を提案して来たので、私は頷いて賛同した。
 私も戦闘に参加しようかと提案を考えたが、元傭兵のマリアの方がこの様な状況経験が豊富であり、敵に気付かれずにジュリルを救出すると言う目的の為にはマリアに従うのが一番だと思い、私の考えは辞めマリアに従った。
 その後、私はマリアと開けた場所の近くまで行き、私は待機しマリアを見送った。

「ふわぁ~~~……」
「何呑気にあくびしてるんだよ」
「だって、誰も来ないのに見張りしてても仕方なくない?」
「なら、今からそれを兄貴に言って来いよ」
「え、いや、兄ちゃんに反論する訳じゃないって言うか」
「だったら、言われた通り俺たちは見張りしてればいんだよ! どうせ朝になったら移動するんだから、それまでの辛抱だ」
「はぁ~~い。でも、よくそんなにきりっと出来るよね~僕は無理」
「また弱音言いやがって、しっかりしろ。それが俺たちのし――っ!? おい、お前! 何でここにいる?」
「っ!?」

 マリアは堂々と正面から見張りをしていた2人の前に姿を現した。
 突然現れたマリアに2人は驚き、1人は直ぐに戦闘態勢をとるがもう1人はおどおどしつつ、槍を構えた。

「(対象は2、一方は戦闘慣れしている雰囲気だが、もう一方はそうではない)」
「止まれ! 誰だが知らないが、そのまま近付いて来るなら容赦なく攻撃する!」
「こ、攻撃するぞ!」
「(直ぐに攻撃をせずに、わざわざ忠告。魔法を使う雰囲気もなし。装置起動時間も長くないので、一気に片付ける)」

 そして男がまた口を開いた直後だった、マリアは突然低い姿勢となり2人の見張りの視界から一瞬で消えた。
 想像もしない状況に2人の見張りは、何が起きているのか理解出来ずに困惑する。
 その時マリアは足元から『ガスト』の魔法を使用し宙へと飛び上がっていたのだった。
 直後槍を持っていない男の背後に宙から降り、瞬時に顔を片手で掴みもう片腕で抱き込む様に肩を掴んだ。

「っ!?」

 男はそこで初めて背後に回れた事に気付き、声を出そうとしたが急激な眠気に襲われ、そのまま意識を失う様に眠ってしまう。
 だがもう一方の男がマリアの存在に気付き槍を向けた。

「お前、いつの間に後ろにいたんだ!?」

 マリアはそれに焦る事無く、眠らせた男から直ぐに手を離し槍を持つ男と距離を詰める。
 が、男も槍のリーチを使いマリア目掛けて突きだした。
 するとマリアは槍を身軽に横に体をずらしてかわし、相手の槍を持っていた手を叩く。
 相手はたまらず槍から手を離すと、マリアは顎目掛けて真下から左手の付け根部分を勢いよく突き上げ、相手を突き飛ばした。
 そのまま相手は宙を舞い、地面へと落ちるがそこで既に意識を失っていた。
 マリアは突き飛ばした相手に近付き、片手を顔に近付け魔法をかけると私の方へと戻って来た。
 その途中で何かを地面から広い戻って来た。

「状況終了です。行きましょうリース様」
「あ、あぁ」

 マリアにそう言われて、私は圧倒されたままマリアに小走りで後を付いて行く。
 その途中で私はどうしても気になり、先程の戦闘の事をマリアに近付き小声で訊ねた。

「マリ、帰りに何か拾ってなかった?」
「あれは小型魔道具です。一定範囲を防音状態にして声など外に漏らさない様にする物です。戦闘向きではないのですが、この状況では役に立つので使いました」
「なるほど、そんなのがあるのか。それと手をかざしてたのは、何かの魔法でいいの?」
「はい、あれは簡易な睡眠魔法です。『スリープ』の下位に位置するもので、両名にはあのまま眠ってもらいました。かなりの至近距離で掛けたので、数時間は眠ったままかと」

 何かとても簡単な事の様に言っているけど、普通そんな事出来ない。
 そもそも睡眠魔法自体が高度な魔法だし、それの下位としても使える人は始めて見た。
 傭兵とか昔の話は聞いてはいたけど、改めてマリアって想像してたより物凄い人なんじゃ……
 私は、この一件が終わったら魔法とかの意見をもらおうかなと密かに考えつつ、マリアの後を付いて行った。
 その後、道は変わらず一本道であり特に大きな変化はないまま進んで行くと、また開けた場所に出た。

「さっきよりは、少し狭いけどまた開けているな」
「そうですね。ここにも誰もいな――っ」

 そう口にした直後、マリアは足を止め私の前に手を出して足を止めさせた。
 すると奥の道からフードを被った人物が歩いてやって来た。

「来た……か……」
「リース様。この先は作戦通りに」
「……うん、分かった」

 私は返事をするとマリアは小さく頷き、戦闘態勢をとる。
 それを見てフードを被った人物も戦闘態勢をとり、やる気満々であった。
 直後、マリアが先制攻撃を仕掛けに突撃しフードを被った人物の足止めをし、それを見て私は一気に駆け抜け奥へと進む。
 マリアはフードを被った人物が奥に行かせないと動くかと思っていたが、何故かフードを被った人物はマリアから視線を逸らさずに組み合った状態を維持し続けた。

「(何故アリスお嬢様の方を見ない? 先に行かせない様にすると思っていたが、そうではない……行かせても問題ないと言う事か? それとも、作戦を変えた?)」

 そう考えつつ、マリアはフードを被った人物に蹴りを叩き込むがフードを被った人物は俊敏にカードをし防がれる。
 が、マリアはそこで一度フードを被った人物と距離をとる。
 それでもフードを被った人物はアリスの後を追わずに、道を塞ぐように立っていた。
 するとフードを被った人物は、あえてマリアを挑発する様に片手でかかって来いというジェスチャーをする。

「(私に挑発。一度退けたレオンと同等と思われている? まぁ、私としては舐められていた方がいい。それよりも、なるべく早めに片づけてアリスお嬢様を追わなくては。何か嫌な感じがする)」

 一方で私は、そのまま走って進んで行くとまた開けた場所に辿り着いた。
 しかもそこは、今までよりも広い空間となっており私は足を止めて周囲を見回してしまう。
 周囲にはそこから先に続く道は見つからず、荷物の様な箱などが積まれており、ここで行き止まりかと思っていると正面の奥に一番大きく布で覆われた物を見つけた。

「何だあれ?」

 するとそこから何かがもがく音や、ジタバタする音が聞こえて来て、私はもしかしたらジュリルなのではと思い声を掛けた。

「ジュリル!?」
「っっぅ! ぅぅっ!?」

 布で覆われて見えないが、私の声に反応しているのでジュリルの可能性はあると思い近付こうとすると、その背後から思いもしない人物が現れ私は足を止めた。

「どうして……どうして貴方がここに?」

 私の前に現れたのは、今はマリアと戦闘しているはずのフードを被った人物であった。
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