とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第316話 嘘の代償

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 どうしてジュリルが!? いや、それよりも今私の名前を呼んだ? 今はクリスの姿なのに、どうして……
 私がゆっくりと立ち上がると、ジュリルは纏っていたフードを脱ぎ捨てた。

「どうして黙っているのです? クリス」
「……」
「もしかして、私が偽者ではないかと疑っています? ご心配なく、偽者なんかではありませんわ」

 するとジュリルは布で覆われて見えなかった部分の布を勢いよく引っ張ると、そこには大きな牢屋があった。
 牢屋の中には、昼間私を襲った男が完全に拘束され、口元も塞がれた状態で何かを訴えていた。

「見ての通り、既に犯罪者は捕らえていますのでご心配なく。それと、ここには他に犯罪者がいない事は既に確認済みですので、そちらも気になさらずに」
「……本当に貴方はジュリルなの?」
「えぇ。学院で月の魔女について話した事も、落ち込む貴方を励ました事もあるジュリルですわ。何でしたら、この場で一から会話内容をお聞かせしましょうか?」
「いいや、それで十分だ」
「それは良かったですわ。では話を戻しましょうか、クリス……貴方は、アリス・フォークロスなのでしょ?」

 その問いかけに私は再び黙り込んだ。
 するとジュリルは軽く肩をすくめた。
 何がどうなっているの? ジュリルが誘拐されたと言うのは嘘だった? 正体を隠して私と戦った意味は? それじゃあの時のレオンの言葉も嘘? あー何が本当で何が嘘なの!?
 私は次々に疑問が出て来てしまい疑心暗鬼になりつつあった。

「どうやら、核心よりもどう言った経緯で今の状況になったか知りたい様子ですわね」

 ジュリルからの問いかけに、私は小さく頷くとジュリルは小さくため息をついてから語り始めた。
 そもそも、別荘に来たと言うのは嘘ではなく本当に偶然家族で来ていた。
 ジュリルはもしかしたら、クリスと接触する事が出来るのはないかと思いつつ、街へと繰り出した日に窃盗や誘拐事件が起きている事を知る。
 この時ジュリルはクリスがアリスなのではないかと怪しんでおり、その確認が得られるかもしてないとも考えていた。
 そんな中でレオンと共に街を散策している時に、フォークロス家の話を偶然耳にし、マリアたちの存在を知りクリスと言った人間が領地内なのに知られていない事を知ったのだった。

 話を聞いたのは一組だけであるので、たまたま知らないだけと言う可能性も考えてが、フォークロスが治める領地内で領主の子の名前を知らないと言うのはあり得るのだろうかと疑い始める。
 何かしらの理由で伏せられている可能性とも思ったが、ジュリルの中では一番はクリス=アリスと言う考えがより濃厚となったのだった。
 そして街で窃盗や誘拐をしていたグループが一斉摘発された日に、残党と思われる存在を目にしある計画を立てた。
 その計画とは、残党に取り入りクリスが現れた際に、自分を誘拐させ助けに来る様に誘導し、最終的に戦って見極めると言うものであった。
 以前対抗戦で一度アリスとは戦っている為、その時の癖や行動などは知っていた為だ。

 更には、敗戦してからは更に映像で見返していたりしており、仮に助けに来たとしてもアリスではなく、別の姿として来ると予想しており、そこで擦り合わせて正体を暴こうと考えていた。
 もし違ったとしてもいいように、この計画に警備団とハイナンス家の使用人にも手伝ってもらう様に作戦を組み立てたのだった。
 その結果最終的に出来上がった作戦は、事前に警備団に残党の存在を伝えハイナンス家が協力する様に申し出る。
 ハイナンス家の使用人が、残党と接触し用心棒として入り込み、ジュリルを餌としてあえて誘拐させる。
 そして潜んでいるアジトを突き詰め、残党も一網打尽にすると言う作戦になったのだった。
 その為、事前に警備団と連携しながらレオンが正体を隠し残党と接触し用心棒として雇われたのだ。
 だが途中からジュリルもクリスありきの計画だと言う事を忘れ、犯罪者たちを捕らえ街の治安を守る為に行動し始めていた。

「それにしても、アリスがターゲットになった時は驚いたわ。犯罪者一網打尽計画がトントン拍子で進んでいた中で、まさかそれに巻き込まれるとはね」
「あれは偶然だったと?」
「えぇ、残党の動きはレオンが近くで見張っているから変に行動は起こさせないと思っていたのだけど、この男は勢いで突っ走った結果誘拐未遂が起きたのよ」
「それじゃ、あの時にいたフードを被った人物がレオン!?」

 私の問いかけにジュリルは頷く。
 あの時はジュリルも少し焦っていたらしく、レオンに対しても少し本気で攻撃をしていたと明かす。
 その後はレオンはハイナンス家の別の使用人と入れ替わり、ジュリルと合流し私たちと会っていたのだ。
 それからジュリルは突貫ではあったが計画を実行する決断をしたのだった。

「それからはレオンから聞いた通りの展開ですわ。まぁ、それも本当に上手く行くかは賭けに近かったですが。貴方が私が思った通りの人で良かったわ」
「っ……俺は、まんまとジュリルの計画通りに動いたってか?」
「そう言えますわね。あと一時間もすれば、警備団がここへやって来て一網打尽計画完了です。とまぁ、ざっくりと説明結果今に至ると言う訳ですわ」
「レオンがやれたと言うのは?」
「あれは本当ですわ。あの時の用心棒は警備団の方と入れ替わって本気で戦って頂き、後々既にアジトの場所を聞いていたレオンが後を追い入れ替わったのです」
「警備団やハイナンス家の使用人たちが直ぐに動かなかったは?」
「事前の作戦通り、私とレオンがアジト状況を報告するまで待機して貰っていたのです。どうやら他に残党もいないと判断し、リーダー格は先に捉えてこうして牢屋に入れているのです」
「……俺やマリがした事は無駄だったという事か」
「いえ、残りの残党も片付けてくれましたし、なにより私にとっては最大の成果です。貴方が誰だか、ハッキリさせられたのですから」

 その言葉に、私は少し退いてしまう。

「さぁ、知りたかった事はほぼ話したのですから、次は貴方の番です」
「っ……」
「この状況でまだ話さない気ですか? それとも言い訳を考えるのに必死ですか?」

 その通りだ……この状況は私にとって最悪の事態だ。
 クリスであり、更にアリスと同一人物であると知られてしまったのだから。
 このまま認めてしまったら、このままジュリルから話が伝わり学院にもいられなくなるし、一番は家の立場が危うくなるという事だ。
 性別を偽り学院に潜り込み、更には両親はそれを同意していたなんて知られたら全て終わる。
 なので、そんな事にならない様にここでジュリルと交渉し何とか黙っていてもらえないかと頭をフル回転させていた。

「先に言っときますが、貴方の交渉には乗りません。私だけでなく、モランにルーク様そして学院の皆をも騙していたのですから。例え悪さをしていなかったとしても、学院のルールに違反していますわ」

 ダメだ……これは本当に打つ手がない。
 どうする? どうすればいい? 何も思い付かない、逃げ出しても意味がない、真実を言った所でそれが正当化される訳でもない……いつかこうなる日が来るかもしれないと思っていた。
 だけど、心のどこかではバレずに最後までいられるかもしれないと、甘く考えていた……これまでも何度か危ない場面はあったが、何とかなっていた。
 だからこそ、次も何とかなるだろうと思ってしまっていたのだ。

 これは自分のせいだ、自分がわがままを言ったからだ……あそこで言われた通りにしていればこんな事にはならなかった。
 せっかく皆が協力してくれていたのに、私が甘く考えてしまったから、気が緩んでしまっていたから……マリアにも注意をされていたのに。
 ……あ~そうか……この嘘は、暴かれるべくして暴かれるものだったんだな。
 決して自分のわがままの為に突き通すものではなかったんだ……いや、突き通してはなかった事なんだ。
 そう考えてしまった直後、体から何か抜け落ちた感覚に陥り急に無気力な気持ちになってしまう。
 そしてジュリルに向かって私は何も考えずに口を開いていた。

「俺が……いや、私はアリス・フォークロスよ」
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