とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第318話 再戦

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 ジュリルからの宣言に私は声を上げて驚いてしまう。

「自主退学!?」
「えぇ、それが貴方の為でもあるからですわ。この先また誰かに正体を暴かれる可能性があるからです」

 それはジュリルの言う通りだ。
 今回の様に私が知らない所で、私を疑い調べている人もいるかもしてない。

「自主退学を提示したのは、私のわがままを受けてくださる譲歩ですわ。なので、正体は誰にも言いませんし、秘密は一生守ると誓いますわ」

 譲歩か……ジュリルからの再戦の申し出を受けなければ、正体をバラされて終わり。
 もし再選を受けたとしても、勝てなければ自主退学。
 だが正体はバラされる事はないか。
 再戦を受ければ何とか首の皮一枚つながるが、ジュリルに勝てる見込みはほぼゼロだ。
 それは既に私の持ち手は出し切ってしまっているからである。
 対抗戦時には、まだゴーレム武装を披露してなかったからジュリルに勝てたと言う所が大きい。
 今再戦をしたとしても、ジュリルの事だから既にゴーレム武装に対しての対策もしているだろうし、なによりもつい先ほどゴーレム武装の特化も見せてしまったという点もある。

「さぁ、どうしますのアリス? 再戦を受けますの? それとも怖気づいて逃げますの?」
「ジュリル様、さすがにそれは脅は――」
「待ってマリア」

 私はマリアの発言を止める様に手を横に出した。
 そして私は小さく深呼吸した。

「ジュリル、貴方の再戦受けるわ」
「そう」
「だけども、私の魔力はほとんど使い切ってしまって、再戦したとしても一方的にやられて終わってしまうわ」
「それは大丈夫ですわ。しっかりと回復用の薬も揃えていますので」

 するとジュリルは私へと近付いて来て、未開封の回復薬一式を手渡しして来た。
 それは国でも有名な研究所が作成しており、太鼓判をおされている回復薬であった。

「もちろん何も細工などはしていない新品ですわ。それでも気になさるのなら、マリアさんと共に確かめて頂いても構いませんわ」

 ジュリルはそう言って私から離れて行く。

「ジュリルがそんな事をする様な人なのは分かっているわ」
「アリスお嬢様!?」
「?」

 私はその場で渡された回復薬を一気に飲み干した。
 それにはマリアもさすがに驚き、ジュリルも振り返り何も確認などせず飲み干していた私に驚いていた。

「貴方、何の確認もせずに飲みましたの?」
「? そうよ。現に何もないし、魔力が回復していくのも感じているし。と言うより、何でジュリルがそれを言うのよ」
「この様な状況下で、相手から渡された物を警戒もせず飲み干す貴方の方が変なのですわ!」
「アリスお嬢様、本当に大丈夫なのですか?」

 マリアも心配し声を掛けて来たので、私は残った回復薬を手にマリアに近付いて、それを手渡した。

「マリアも怪我しているし、これを飲んで。ジュリル、マリアに飲ませてもいいわよね」
「……はぁ~もう好きにしなさい」
「ありがとう」

 その後マリアは少しだけ回復薬を口に入れてから、何かを確認してから飲み込んだ。

「アリスお嬢様、この回復薬は何の異常もない物でしたが、相手から貰った物ならば本来問題ないかを確認すべきなのですよ!」
「っ……だってジュリルだよ。そんな変な事する――」
「だとしてもです! ご自身の身分を少しは考えてください!」

 マリアに叱られ私は萎縮しつつ「ごめんなさい」と謝った。

「はぁ~ジュリル様に悪意はなく、話を聞くかぎり純粋にアリスお嬢様との再戦を本当に願っているだけとは思います。ですが、状況はあまりよくありません」
「えぇ、それは分かっているわ。ジュリルに勝たなければいけないという事でしょ」
「それもそうですが、今のジュリル様なら交渉が出来るのではないですか? わざわざこのような時に戦う必要はないと思います。別日に改めてでも」
「それは出来ないわ」
「何故ですか?」

 私はそう言って来るマリアを背にし、ジュリルの方へと向かって行きながら答えた。

「それは……これがジュリルの優しさだと思うから、かな」
「優しさ、ですか」

 そしてマリアから離れた所で足を止め、ジュリルの正面する位置に立った。

「準備は出来たのですか?」
「後もう少しって所かな」
「そうですか。それじゃ、再戦のルールでも話しましょうか」
「えぇ」

 マリアはたぶん、私がジュリルに勝てる勝算がない事を見抜いていたんだと思う。
 それにジュリルが、わざわざ私が負けた時に出した条件が正体をバラすではなく、自主退学と言ったことからジュリルなりにの優しさなのではないかと思ったのだ。
 そう思えたのは、私から身を引けばアリスとしてもフォークロス家も何も特に失わない。
 更には学院にも迷惑を掛けないし、元の生活に戻るだけで平和的な解決方法だと思ったからだ。
 あえて少し脅迫する様に私に再選を宣言して来たのは、本気で対抗戦時のリベンジをしたいと思っていたからだと思う。

 ああ言えば、私は必ず本気で戦ってくれるだろうと予想していたのだろう。
 だけども先程私が回復薬を飲み干した際には、厳しさを維持出来ずにまさかそんな行動をするとは思わず、あのような態度をとったのだろう。
 と言っても、勝負の条件を最終的になしにしてくれる訳ではないだろう。
 彼女の二代目月の魔女としての立場がそうはさせないからだ。
 だから、私はこの再戦に勝たなければいけない! まだ王都メルト魔法学院で学びたい事も、決着をつけなければいけない相手もいるのだから! 負ける訳には行かない!
 そう私が覚悟を決めると、ジュリルがルールの説明を始めた。

「ルールは対抗戦時と同じで、どちらかが魔力切れ、もしくは戦闘不能状態で決着。審判は……マリアさんにお願いしますわ」
「マリアに?」

 私がマリアの方を向くと、マリアは先程よりも顔色が良くなっていた。
 回復薬が効いて来たんだと私は思い、安堵の息をついた。

「審判ですか。アリスお嬢様も引かないようですので、引き受けても構いませんが良いのですか? 私はアリスお嬢様寄りの判断をするかもしれないのですよ」
「そうかもしれませんが、この場に他に審判をしてくださる方が居ませんので。それにアリスも、その様な判断をされたくありませんよね?」
「マリア、公平な審判をお願い出来る?」
「……分かりました、アリスお嬢様がそうおっしゃるのであれば。では、これより私が審判として、この再戦を仕切らせて頂きます」

 そのままマリアは、私とジュリルの中間地点辺りに移動し、改めてルールの確認を始めた。

「勝敗判断につきましては、私の方で行います。もちろん先程おっしゃっていたルール上で判断いたします。その他に何かありますか?」
「あ、追加と言うより確認したいんだけど。あの辺の木箱とかの障害物? はどう言う判断にする? 遮蔽物として使っていいとか?」
「事前に木箱の中身は確認して、全て食材関連でしたので特に問題はありませんので、どの様に使っても問題ありませんわ。壁に使うのもありにしましょう。が、この牢屋は例外ですわ」
「分かったわ。それで私もいいわ」
「承知いたしました。この空間の隅の方に存在する木箱関連につきましては、使用自由。牢屋に関しましては除外ですね」

 マリアの言葉に、私とジュリルは頷くとマリアは「他には?」と訊ねて来たが、私もジュリルも特に付け加えたりする事はなかった。

「では、準備が出来ましたらお声掛けください」
「私の方は準備万端ですわ。後はアリス次第ですわ」
「うーん、もう少しで完全に魔力が戻りそうかな。そんなに時間はかからないはずだから、もう少しだけ待ってもらえる?」
「全然かまいませんわ」

 ジュリルはそう言うと、軽く体を動かし始めた。
 私も準備運動をしながら魔力の完全回復を待ちつつ、作戦を考え練り直し始めた。
 ジュリルは基本、魔法の同時発動により圧倒的な力で相手を倒す戦法をとる。
 また、魔力創造の多発使用で数体の動物ゴーレム生成も可能であり、一番厄介なのが先程の感覚接続したゴーレムだ。
 しかしその反面、魔力や魔法がその時は使えないようだから完全無欠と言う訳でもないと分かっている。
 だとしても、圧倒的な魔力量と多彩な魔法使用から二代目月の魔女と言われる由縁らしいく、私と比べるとその差は歴然だ。

 冷静に考えれば、一度勝てているのが奇跡な様なものだな……だからと言って、勝てないと考えるのはダメだ! 私の今の強みを活かした戦いに持って行けば、前回の様に押し切れるタイミングがあるはずだ。
 ジュリルはこれまで接近戦は得意としていない、なので私は開始直後から一部ゴーレム武装で一気に懐に入り込み接近戦に持ち込む。
 そうすれば厄介なゴーレムも一時的に封じられるし、距離さえ取らなければ魔法の餌食になる事もないはず。
 まぁ、これまでのデータからだから必ずうまくいくとは限らないけど、勝つためには自分の得意な状況に持って行き押し切るしかない。
 今回は前回の様に切り札も既に見せてしまっているし、勝率は物凄く低い……けど、負ける気はない!
 そして私はゆっくりと深呼吸し終えてからマリアに「準備出来たわ」と返事をした。

「では両者準備完了と言う事ですので、これより試合を開始します。試合……」

 マリアがそう口にした後、私とジュリルは同時戦闘態勢をとる。
 そして片手を上げたマリアがそのまま振り下ろした。

「開始!」

 直後私は両脚にゴーレム武装を展開させようとした時だった。
 私の視界に入って来たのは、瞬時に懐に飛び込んで来て拳を振りかぶったジュリルであった。
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