とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第323話 カーネリアン

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 あれから私は街へと戻る馬車の中で、ジュリルとレオンに対して全ての事情を打ち明けた。
 レオンについては既に私が女子と言う事は分かっていたのでそこまで驚いてはいなかった。
 一方でジュリルは色々と質問して来たので、答えられる範囲で答えたがほとんどの質問がルークに関する事であり、答えるのに困ってしまった。
 私の話がいち段落した所でマリアが話題を変え、捕らえた犯罪者たちの話をし始めた。
 マリアは勝負の時に一人全ての会話を聞いていた犯罪者の事が気になってどう対処しているのかジュリルに問いかけると、ジュリルは抜かりなく対処をしていたのだ。
 事前に捕らえていた犯罪者の耳には完全に音を遮断する耳栓型の魔道具を突っ込んでおり、視界も奪う魔法『ブラックアウト』をかけていたので、相手は何が起きているのか何も把握していなかったのだ。
 その為、あの会話を他の誰かに聞かれている事はないとジュリルは言い切るのだった。

 それを聞き私は納得し、マリアもジュリルが嘘はつかないし用意周到に物事をこなす相手だと今回身をもって理解したので、マリアの懸念は消えた。
 そんな会話をしている間にあっという間に街に到着するのだった。
 時刻は私たちが街を出て、ちょうど1時間半を超えている時刻であった。
 馬車内から時刻を確認するとマリアは、すぐさまこの後の予定を話し出した。
 現状私もマリアも元の服装などを街に隠しているので、マリアは馬車が止まり次第それの回収と、先に迎えに来ているであろうジェシカの元へと向かう。
 そして心配をかけない様に理由をつけ、暫くジェシカには待ってもらいその間に戻って来て着替えて帰宅すると言う流れをマリアは話した。
 ジュリルもその間は馬車内で待っていても良いと言ってくれたので、その言葉に甘える事にした。
 その後馬車は大通り近くの馬車置き場に止まった。

「急いでいる様でしたから、一番近くに馬車を止めましたが大丈夫かしらマリアさん?」
「はい、問題ありません。こちらこそ、わがままを聞いていただき感謝いたしますジュリル様」
「レオンを動ける様にまでしていただいた、お礼と考えていただければ構いませんわ」

 ジュリルの言葉にレオンは苦笑いをする。
 マリアは軽く頭を下げた後、私の方に視線を向けた。

「ではアリスお嬢様、すぐさま先程伝えた事を行って来ますので、暫くお待ちください」
「うん。マリアに全部任せっきりでごめんね」
「いいえ、アリスお嬢様の使用人として当然の事をしているだけですので、お気になさないでください」

 そう優しい笑顔で答えるとマリアは馬車の扉を開け、軽く一礼した後扉を閉めて直ぐに裏道へと入って行くのだった。

「本当にマリアさん、うちに欲しいくらいの人材だわ」

 と、呟きながらレオンの方をじーっと見つめるジュリル。

「どうしてそれを、僕の方を見ながら言うのですかジュリル様」
「だってレオン、ハイナンス家の使用人としてまだまだですもの」
「マリアさんと比べないでくださいよ。ジュリル様も僕の序列知ってますよね? まだ見習いで最下位ですよ?」

 私は「序列?」と気になった言葉を訊き返すと、ジュリルが答えてくれた。

「ハイナンス家の使用人には序列制度と言うのものがありますの。全体的なステータスや性格などを総合的に判断して1位から順位付けをしていますのよ」
「へぇ~そうなんだ。その順位は付けられた時点で固定なの?」
「年に一度査定をしますので、その結果で変わる事もありますが皆優秀ですので、あまり変わる事はあまりませんわ」
「マリアさんの様な使用人となると、うちの使用人だと序列1位の人だけだと思いますよ」
「何かレオンが敬語なの変な感じがするね」
「し、仕方ないだろ。今は学院じゃないし、僕はハイナンス家の使用人として雇われている身なんだから」

 レオンが学院で接している時の口調に戻り、私は違和感が消えいつも通りだなと頷いていると、ジュリルが軽くレオンを肘で突いた。
 するとレオンは軽く咳払いすると使用人の口調に戻った。
 それからジュリルからレオンのこれまでの失敗談などを教えてもらい、その話で私たちは少し盛り上がった。

「さてと、レオンの話で憂さ晴らしも出来た事ですし、話題を変えましょうか」
「ジュリル様、憂さ晴らしとはどう言う事ですか? 僕はただただ恥ずかしい思いをされたのですが?」
「そんなの私が負けたと口にした罰に決まっているではありませんか」
「うっ……」

 ジュリルの言葉にレオンは気まずい顔をし、そっとジュリルから顔をそむけた。

「あー僕は、ちょっと外でマリアさんの帰りを待ちますね」

 そう言ってレオンは扉を開けて馬車の外へと出て行った。
 逃げた? いや、気まずくなったのかな?
 と、私が考えているとジュリルが口を開いた。

「レオンには、あぁ言いましたけども、私としては意外と気が利く方だと思いますの」
「どうしたの急に?」
「先程私が話題を変えると言いましたわよね? それはアリス貴方と2人っきりで話したいと思っていましたの」
「え、じゃまさかさっきのは、物凄く遠回りにレオンにそれを伝えたって事?」
「まぁ、そう言う事ですわ。憂さ晴らしと言うのは本当でしたが。なので、あれだけでレオンは私の言いたい事を察してくれ外にわざわざ出て行ってくれたのだと思っていますのよ」
「私はてっきり気まずくなったのか、もしくは逃げたのかと思ったよ」
「もしかしたら、私の勘違いでアリスの言う通りかもしれませんわ。今回はレオンにも色々と手伝ってもらいましたので、いい方にとらえますわ」
「何だかんだ言って、ジュリルもレオンの事気に入っているんだね?」
「そうではありませんわ。最初の頃のただの教育係から、色々と経てやっと主人と使用人と言う関係性が始まっただけですわ」

 そう話すジュリルの口元は、少し笑っていた。

「それよりも、私がアリスと話したい事はレオンなど一切関係ないのですわ。ルーク様の事をどう思っているのかですわ!」
「っ……またその話するの?」
「当然ですわ! 私の気持ちを知っておきながら、ずっと近くに居て告白までされるなんて許せませんわ!」
「告白なんて一度も――あっ」
「やっぱり! 先程ぼかした所は告白だったのですわね! さてと、じっくりと話してもらいましょうかア~リ~ス~?」

 ひぃぃぃー! マリアー! 早く帰って来てー!
 その後、私はジュリルにこってりと問い詰められるのと同時に、今後の振る舞いや身バレの注意など釘を十分にさされたのだった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「はぁ~……最後の最後が一番辛かった……」

 私はジェシカが御者を務める馬車の中でため息をつくと、正面に座っていたマリアが心配して声を掛けて来た。

「どうされましたか、アリスお嬢様? 気分が優れないのならば一度馬車を止めますが?」
「あー大丈夫大丈夫。何か凄く長い1日だったな~と思ってただけ」

 マリアがジュリルの馬車へと戻って来てから私は馬車内で着替えさせてもらい、そこでジュリルとレオンとは別れた。
 別れ際に「また近いうちに会いましょう」と言われ、年の瀬であり年が明ければまた直ぐに学院生活が始まるのだと実感した。
 その後はプレゼントの中身を確認し、マリアと共に少し急ぎ足で待たせているジェシカの元へと向かったのだ。
 そして現在は、屋敷へ帰る馬車の中であり、私の隣にはお母様たちへ渡すプレゼント袋を置いている。

「プレゼント買いに来ただけなのに、あんな事になるとはね……」
「はい、最終的には大事にならずに良かったです。ですが、今日の事はリーリア様たちにはきっちりと私の独断行動含め、報告いたしますのでお忘れなく」
「うっ……そ、そうよね……」

 さすがにあんな事態に身勝手にマリアを巻き込んだんだし、そうなるのは仕方ないよね。
 でも、本当に大事にならずに済んで良かった……正体はバレるし色々と聞かれるし、注意もされたから全然良くはないんだけど。
 とりあえず丸く収まったし、私の中では良しとしておこう。
 ……今回の件は、いいきっかけにはなったし改めて今の事や先の事を、改めて冬休み中に考えておこうかな。
 そんな事を考えていると、ふとプレゼント袋に目が行く。
 そうだった、これは一番最初にって思ってたんだ。
 私はそのままプレゼント袋へと手を入れて、そこから半透明のオレンジ色のブレスレットを取り出し、マリアへと手渡す。

「これは?」
「私からマリアへのプレゼントだよ。いつもの感謝の気持ち。それと、前に言ったノートの代わりの物。あれ恥ずかしいからさ」

 するとマリアは黙ったままじっと私が渡したブレスレットを見つめていた。

「マリア? ……もしかして、気に入らなかった? それだったら、別の」
「そんな事ありません! 嬉しいです! 感動で言葉が出なかっただけですので! 一生大切にします、アリスお嬢様!」
「そ、そう。それなら良かった」

 私はマリアが珍しく食い気味に来たので驚いてしまう。
 そして私はまたプレゼント袋からマリアに渡した同じブレスレットを取り出して、自分の腕に付け笑顔でマリアに話し掛けた。

「これでお揃いだよ、マリア。これからもよろしくね」
「っ! はい! アリスお嬢様! 貴方様の事も私が一生を懸けて、おまもりいたします」
「うん。……で、新しいプレゼントも渡したし、あのノートはもう止めてくれるよね?」
「いえ、あちらも一生使わせていただきます」
「そんな~」

 そう笑顔で答えるジュリルに、私は落胆するのだった。
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