とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第324話 年越し、そして新年

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 あれから3日が過ぎ、無事に今日一年の締めくくりである年越しの日をを迎えた。
 屋敷では慌ただしくパーティーの準備が進められいた。
 既に今日までにメイド長、執事長筆頭に指示を出し屋敷の掃除や荷物整理などあらかたの事は全て終わらせていた。
 私人身も部屋の掃除や服や本などの整理を行い、しっかりと大掃除を終えている。
 そして今日は、一年最後の日を屋敷全員で楽しく過ごそうという事でパーティーの準備を進めているのである。
 調理場では時間をかけた調理が行われており、リビングでは私の誕生日の時の様な装飾が行われていた。
 私は料理が苦手なので基本的には食器運びや部屋の装飾をジェーンとフェルマと共に行い、準備をほぼ終え後は完成した料理を待つというだけとなったので一息つき始めた。

「ふ~後は料理だけね。う~ん、匂いだけでもおいしそうだと分かるわ~」
「アリスお嬢様、またそのような事を言っているとマリアに注意されますよ」
「うっ……それは嫌だな、じゃなくて、嫌ですわね」

 私が咄嗟に口調を変えると、注意してくれたジェーンは優しく笑いかけてくれた。
 するとそこへやって来たのは、大きな袋を持ったシェラとルディンであった。

「アリスお嬢様、お休みの所失礼致します。ジェーンさん、暇なら手伝って下さい」
「あぁ、もしシェラがこのまま大きな袋を持ったまま足元が見せずに転んでしまい、頭をぶつけ記憶喪失になったりしたら」
「いや、そんな事には絶対にならないでしょ?」
「私だけでは対処しきれないです。なので、ジェーンさんにも手伝ってもらいたいのです」
「え、いやルディン、私の話聞いてた? 2人で絶対に大丈夫だと思うけど」
「ほら、ルディンもこう言っているのですからジェーンさんも手伝って下さい」

 そう言ってシェラは、ジェーンに強引に余っていた大きな袋を持たせた。
 そしてシェラとルディンは私に一礼してから袋を持ったままリビングから出て行くと、ジェーンも仕方なく歩き出す。

「ではアリスお嬢様、私も行ってまいります」
「う、うん。頑張ってね」
「ありがとうございます」

 ジェーンも私に一礼すると少し足取り重くシェラたちの後を追って行った。
 そして私も暫く休憩していると、料理が完成し始めたのでその料理を私も運び始め最後の準備に取り掛かった。
 その後料理も全て完成し、配膳も終え皆も着替えてリビングに集まるとお父様からの挨拶が始まった。

「皆、年越しのパーティー準備御苦労さま。料理から装飾など大変だったと思うが、ここからは全力で楽しんでくれたまえ。本当に皆、一年御苦労であった」

 するとお父様が手に持っていたグラスを掲げたので、私たちも同じ様にグラスを掲げた。

「では、乾杯!」
「「乾杯!」」

 お父様の掛け声と同時に部屋中にパーティーを盛り上げる音楽が流れ始め、年越しパーティーが開始されたのだった。
 皆は自由に語り、食べ、この日ばかりは失礼のない程度に無礼講と言った感じでお父様やお母様が執事たちやメイドたちに積極的に話掛けて一年間の仕事を労っていた。
 お兄ちゃんも同様にあまり屋敷に帰って来れてない分、メイド長や執事長に感謝の言葉を伝えていたりした。
 私もマリアとお揃いのブレスレットを身につけ、あまり親交のなかったリックを中心に執事たちを周り軽い雑談をし、メイドたちとも女子ならではの会話で盛り上がった。
 その後は本当に各自自由に年越しパーティーを楽しみ始め、お酒を飲みながら語り合う者やお菓子の食べ比べをしている者、この日の為に一芸を披露する者など様々であった。
 そんな中私は以前買ったプレゼント袋を持ち、お母様たちを探し始めた。
 え~と、誰が今空いているかな……あ、お兄ちゃんがちょうど空いたわね。
 私はお兄ちゃんを見つけ、すぐさまお兄ちゃんに駆け寄った。

「お~アリスの方から来てくれるとは、何て最高の一年の締めくくりなんだ。このまま逝ってもいい……」
「何を言っているのよ、お兄ちゃん」
「あ、あ~すまない。ちょっとな。で、どうしたんだ、我が愛しの妹よ」
「……」
「……? あ~おほん! どうしたんだ、アリス?」

 お兄ちゃんが私の冷たい視線で何かを察したのか、言い直して来たので私も気を取り直して本題に入った。

「今日はお兄ちゃんに渡したい物があって」
「渡したい物?」

 そう言って私は、プレゼント袋から一つのネックレス取り出し手渡した。

「これは?」
「ホワイトコーラルって言う石で作られたネックレスだよ。悪運を遠ざけて幸運をもたらす石なんだってさ。お兄ちゃんには色々と迷惑もかけたしそれのお礼と、これから王国軍の兵士として頑張って行ってほしいからお守りとして」
「アリス……」
「これからも頑張ってね、お兄ちゃん!」

 するとお兄ちゃんは、直ぐにそのネックレスを首から下げてくれた。

「ありがとうアリス。嬉しいよ」
「気に入ってくれたのなら良かったよ」
「ずっと肌身離さず身に付けるからな! 何なら一生の宝物として保管しておきたいくらいだが、それだとアリスの気持ちを無下してしまうからそれはやめる」
「うん。それをされるとお守りとしての意味が、ね」

 その後お兄ちゃんとも学院の事や何故かルークの話をしたりした後、私は残りのプレゼントを渡す為にお母様とお父様を探し始めた。
 そして次に捕まえたのは、お父様である。

「お父様」
「おや、アリス。楽しんでいるかい?」
「はい。とても賑やかで楽しい時間です」
「それは良かった。それで、どうしたんだい?」
「はい。今日はお父様に日頃のお礼にプレゼントをと思いまして」
「私にかい?」

 私は直ぐにプレゼント袋からお父様用のプレゼントを取り出して、手渡した。
 私が用意したお父様へのプレゼントは、ネクタイとネクタイピンである。
 お父様はよく、ネクタイを使用されるとマリアから情報をもらったのでそれに使える物を選んだのである。
 実はお父様へのプレゼントが一番迷った物である。
 何が一番お父様の為になるかと考えて、迷いに迷った結果ネクタイとネクタイピンなのだ。
 私としてはアクセサリーよりも、このような実務で使える様な物の方が喜ばれると思ったからである。
 お父様は私からそれを受け取ると、少しの間じっと見つめていたが直ぐに優しく微笑みかけてくれた。

「ありがとう、アリス。実用的で好みの色でもあって、それに合うピンまで。難しかっただろ、ネクタイ選びは」
「はい。とても迷いましたが、これならお父様も気にいるかと思いまして」
「うん、アリスの言う通り私の好きな色で本当に嬉しいよ。今すぐにでも付けたいけど、これは次のパーティーで皆に自慢する用にとっておこう」
「そ、そんな恥ずかしい事しないで下さいお父様」
「あはは。いいじゃないか、娘からのプレゼントを自慢しない親はいないぞ」
「もう……」

 それから私は久しびりにお父様と2人っきりで話をした。
 新しい発見や新しく出来た友人たちの話、そして私が改めて考えたこれからの話など、少し真面目な話もした。
 それに対してお父様は私の決めた事ならその通りにしてみなさいと優しく背中を押してくれたのだ。
 そして最後に軽く私の頭を撫でながら「成長したねアリス」と言葉を掛けてもらい、物凄く嬉しかった。
 するとそこへお母様が偶然やって来たのだ。

「何を2人っきりでお話をしているのですか?」
「それは私とアリスの内緒さ。こればかりは、リーリアにも教えられないな」

 そう言った後、お父様はその場から私がお母様にもプレゼントがあるのだろうと分かったのか、ゆっくりと立ち去って行った。

「それで、どんな話をしていたのアリス?」
「内緒です。お母様」
「そう言われると余計に気になるのよね、私」
「でしたら、そんなお母様に私から日頃の感謝を込めてプレゼントがあります」
「え?」

 少し驚くお母様を横目に私は最後のプレゼントを取り出し、お母様に手渡した。
 それは銀色の三日月型のイヤリングである。
 理由としては私の直感で、絶対にお母様に似合うと一目ぼれしたからである。
 お母様の綺麗な金色の髪に、銀色のイヤリングの姿が目に浮かび、これはいいと思い一番最初に買ったプレゼントでもある。
 そしてお母様はそんな私の理由を聞くと、笑われたが嫌な顔などせず直ぐにイヤリングをその場で付けてくれた。
 それは私がイメージしていた通りの姿でとても似合っていた。

「お母様、とてもとてもお似合いです」
「そ、そう? 貴方がそう言うならそうなのでしょうね。ありがとうアリス。嬉しいわ」

 するとお母様は、少し思いにふけた表情をしていた。

「どうかしましたか? もしかして、似たような物をお持ちでした?」
「いや、そうじゃないのよ。ちょっと昔の事を思い出していたの。ちょうど貴方と同じ学院生の時の事をね」

 そしてお母様は軽く昔話をしてくれた。
 今私がいる王都メルト魔法学院に通い、ちょっとやんちゃをしていた頃の事など私が知らないお母様の話に私は夢中になっていた。
 友人やライバルと出会い、様々な事を体験してきたがそれは今でもかけがえのない日々であったとお母様は語ってくれた。
 そんな話を聞いていた直後、外から新年になった合図の花火が街の方から上がった音が響いて来たのだった。

「あら、もう日をまたいでしまったの?」

 そう言って私とお母様は花火が見える窓の方へと近付いた。
 既にリビングで寝てしまっている者もいたが、起きている者は同じ様に花火を見ていた。
 そして花火を見ながらお母様は口を開いた。

「あけましておめでとう、アリス」
「はい、お母様。あけましておめでとうございます」

 私は新年の挨拶を済ませた後、お母様に次は私が語る番だと言われ、私は出来るだけかいつまんで今までの出来事や悩み、進路などを時間が許す限り全てを話したのだった。
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