とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
333 / 564

第332話 宣戦布告

しおりを挟む
「オービン先輩!?」

 私だけでなく、一気に皆が突然現れたオービンへと視線を向けた。

「やぁ皆。新年あけましておめでとう」

 皆もオービンに対して挨拶を返した。

「兄貴、学院に来てたのか」
「まだ一応は副寮長だし、最後まで学院にはいるつもりだよ」

 そう言えば、今更だけど寮内と学院でも第3学年の人をあまり見なかったな。
 私がふとそんなことを考えていると、トウマがその答えを口にしてくれた。

「第3学年の先輩たちって、最終学期は登校自体自由でしたよね?」
「そうだね。現に、寮に来てない人もいるし、卒業までどう過ごすかは各個人の自由。研究するもよし、卒業先の経験を積むもよし、学院で気楽に過ごすもよしと決まりはないね」

 なるほど、そういうことだったのね。
 するとそこへもう一人の生徒がオービンの後ろからやって来た。

「オービン、俺たち第3学年が首を突っ込むのはよくないんじゃないか?」
「ミカ寮長」
「その呼び方止めてくれくよ、オービン」

 オービンの背後から現れたのは、現寮長であるミカロスであった。
 寮長がオービンからミカロスに変わったが、寮名自体はミカロスの意見で変わらずにオービンのままにしているのである。
 ミカロスは眼鏡を軽く上げると、話の中心であるトウマとルークの方を交互に見つめる。

「(ルークにトウマか……確かにこれまでのことを考えると、そうなるのは必然か。俺としてはクリスという線もあるかと思ったが、さすがに考え過ぎたか)」
「で、兄貴。さっきのはどういうことだ?」
「そのままの意味だけど? ルークとトウマ君で次期寮長の座を競えばってこと。聞いていたけど、他に候補者もいないし周りも二人のどちらを推しているようだし、二人も互いに推薦してるしさ」

 その言葉にルークもトウマも黙ってしまう。
 一方で周囲はオービンの提案に賛成し出す。

「ここで言い合っていても仕方ねぇし、互いに支持する方について次期寮長選挙だ!」
「いいね~面白れぇ! やってやるよ!」
「おいおい、勝手に話を進めるなよ」
「待て、まだ俺はやると決めた訳じゃないぞ」

 周囲が勝手に次期寮長選挙を進めるのに対してルークとトウマは止めようとするが、周りは止まらなかった。

「(くっそ、ダメだ。全然話を聞かねぇ……俺もトウマと言い合っていたのが悪いが、まさか兄貴が来てあんなことをいいだすとは)」

 ルークはオービンの方を軽く睨むと、オービンはにこやかや表情をみせる。

「(まさか兄貴、俺を寮長にでもしようとしてるのか?)」

 するとそこでフェルトがオービンに話し掛ける。

「オービン先輩、次期寮長選挙は俺たちで決めることですけど、見届け人として参加してくれませんか? これまでも先輩方が下の代の次期寮長選挙に関わったりはしますし」
「俺としては元からそのつもりだけど、そういうの決めるのは代々寮長だから」

 オービンはそういいながら隣のミカロスへと視線を向けると、ミカロスは小さくため息をついた。

「俺が反対してもお前はどうせ首を突っ込むだろうが。というより、この状況を作り出したんだから、責任持って見届けろ。だけどお前だけじゃ、何を急にするか分からないから俺も一緒にやる」
「さすがミカ寮長、俺のことよく分かってる~」
「はぁ~どれだけお前に付き合っていると思ってるんだ」

 ミカロスの言葉にオービンは笑って返すと、ミカロスもうっすらと笑う。

「さて、寮長と副寮長も見届け人として参加してくれるって事で、どうやって決着をつけようか決めようか」
「フェルト、お前にしてはやけに乗り気だな。こういうことは、興味がないと思っていたが?」
「ニック俺だってこの寮の一員だぞ? 自分の代の寮長決めようって時くらい、俺だって他人任せにはしないだけ」

 フェルトとニックが対立している構図に私は、近くにいたピースに話し掛けた。

「なぁピース、ニックとフェルトがあそこまで対立してるの初めて見たんだけど、ああいうことって今までにあるか?」
「う~ん、あったようななかったような……」

 何故曖昧? ピースってよくあの二人ともいるし、昔から仲いいと思ってたけど違うのかな?

「僕はフェルトとニックとは、初等部の最終学年からの知り合いだから、その以前の関係性はよく知らないんだよね」
「そうなの?」
「うん。ニックとフェルトは初等部の第1学年の時からの知り合ったらしくて、あまりその頃の話は聞いたことないんだけど、昔はそこまで仲が良くなかったらしいよ」
「へぇ~」
「僕はニックの放って置けない性格きっかけと、同室になったことで話すようになってフェルトともそれからの関係なんだ」

 そうだったのね。
 私はてっきり三人の雰囲気的に、ピースがニックと仲良くなって後からフェルトが入って来たのかと思っていたけど、違かったのね。
 ちょっと私的には意外だったかも。

「ニック、何かこういうの懐かしいな~初等部の時を思い出すよ俺は」
「そんな昔のこと、今関係ないだろ」
「冷たいな~まぁその通りだけど。なぁ皆! 俺から次期寮長選挙について提案なんだけどさ、俺たちの寮の雰囲気からいってさ話し合いで決着って感じじゃないだろ?」

 突然のフェルトの話に、皆は耳を傾け頷く者もいた。
 そこへルークが割り込んで行く。

「ちょっといいか、フェルト。このタイミングだ、皆もいいか。一回落ち着いてくれ。俺はトウマを推し、トウマは俺を推してる。で、互いに寮長に立候補するきはない。この状況で、この話を進めるのはよくないんじゃないか?」
「なるほどね~ルークのいいたいことは分かった」
「フェルト」
「だけども、もうこうなった以上他の立候補者なんていないよ。というか、お前ら二人以外に俺たちの上に立てる奴はいないよ。それに、うちのトウマは何だかんだいって、こういう風に持ち上げられるとやる気になっちゃうタイプなんだよね~。なぁ! トウマ?」
「え!? あ、いや、俺は――」
「見たかルーク? まんざらでもない顔してるだろ?」

 フェルトは強引にトウマの話を切って、前に立って話し続ける。

「って、わけだからさルークがやる気がないっていうなら、このままトウマ推薦で皆に寮長候補を辞退するっていってくれよ? これは、お前も願ってた展開だろ?」
「(確かにトウマを推すとは言ったが、何かこの状況で言われた通りに何をするってのはちょっとな……)」

 ルークはフェルトにいいように使われている感じがして、返事を渋っていたが元より寮長はやる気がなかったので、ひとまずそれだけは伝え決め方についてもう一度話そうと思った時だった。
 ニックが前にやって来て先に口を開いた。

「ルーク、あいつの口車には乗るな。こうやって出しゃばって来た時のあいつは、だいたい何か企んでるんだよ昔から」
「何だよニック、せっかく俺が上手くまとめようとしてたのによ~」
「どこがだよ。うちの寮長候補を辞退させようとしてた奴が、よくいうよ。そうしないと、そっちの寮長候補は勝てないってか?」
「っ……そんな訳ないよ。ちょっとした前哨戦だよ? なぁ、トウマ?」
「おい! そこで俺に振る――」

 そうトウマがいい返そうと背後からリーガとライラックがフェルトの話に乗っかりだす。

「さっすがトウマ! もうフェルトをとり込んでいたのかよ。気付かなかった……」
「密かに寮長を狙っていたんだな。悪い、俺たちが鈍感なせいで力になれなくて……」
「いいんだ、いいんだ。トウマは俺に相談してくれた時に、お前たちが一番応援してくれるって言ってたし、力にもなってくれるだろうって照れながら言ってたんだよ」
「「トウマ!」」
「いや、ちょっと!?」

 トウマはリーガとライラックに抱き着かれてしまい身動きが出来なくなってしまう。

「相変わらず口だけはよく回るな、フェルト」
「? 何のことだか、よく分からないなニック」
「ルーク、お前には悪いがこのままトウマと次期寮長を競ってもらう。それにこうも意見がクラスで別れた以上、白黒はっきり付けた方がいいしな」

 ニックの言葉にルークは黙ったままであった。
 その沈黙をニックは了承したと勝手に捉えて、トウマ派のフェルトに宣戦布告する。

「どっちが次期寮長に相応しいか、決着つけようじゃないか!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です

オレンジ方解石
恋愛
 結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。  離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。  異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。  そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。  女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。 ※追記の追記を少し直しました。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。 ※後日談を更新中です。

9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑! 10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。 もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。 (頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)

処理中です...