とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第333話 互いの思い

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「いや~面白い展開になったねミカ」
「ああいう風にしたのは、お前だろうがオービン」
「そうだけどさ、まさか本人たちじゃなくて周りが盛り上がるとは予想外だったよ」

 オービンはミカロスと寮の自室で椅子に座って話していた。
 既にオービン寮、次期寮長選挙の話題は学院中に広まっており、どの寮からも注目されていた。

「確かに、このままじゃ本人の意思ではないまま、寮長が決まりかねないな」
「あんまりやりたくもないことを、周囲から押し付けられるのは辛いけど、大抵そういうのは意外なキッカケで変わったりするもんさ」
「そういえば、オービンも初めは寮長やる気なかったよな?」
「そうね。あの頃は色々とあったし、寮長どころじゃなかったんだけど、前寮長の言葉とかルークのこととか自分の立場とか考えた結果、やってみようかなってなったんだよね。結果、色んなキッカケをつくれたしやって良かったけどな」

 オービンはそういうと、机の上の写真立てに入れた写真に視線を向けた。
 そこには、新寮長就任式という弾幕と共に他の寮長たちと映っていた。

「懐かしいな」
「ちなみに、オービンはどっちを次期寮長として考えているんだ?」
「俺は――」

 オービンとミカロスがそんな話をする一方で、オービン寮第2学年のクラスも大変なことになっていた。
 クラス内ではルーク派とトウマ派に勢力が確立しており教室を半分に勢力が固まって授業も受けるほどであった。
 また、未だにどちらにもついていない中立派の人もおり、互いの勢力は中立派を引き込もうとしていたりもしていた。
 しかしその中心にいる、ルークとトウマは自分たちの意思とは関係なく進む次期寮長選挙に頭を抱えているのだった。

「(はぁ~どうしてこんなことに……)」

 トウマは放課後になると直ぐに教室を出て、中庭でベンチに座っていた。
 するとそこへトウマが来ることを分かっていたように、フェルトがやって来て隣に座った。

「やぁトウマ、偶然だね」
「げ、フェルト……何でここに? 何か用か?」
「そんな分かりやすく嫌な顔をしないでおくれよ。ここに来たのは本当に偶然なんだから」
「本当か? あの時みたいに平然と嘘をつくお前を信じられないんだが」
「あははは……そこを突かれると厳しいな」

 苦笑いするフェルトに対してトウマは小さくため息をついてから、どうして自分を次期寮長として推して勝手に話を進めたのかを改めて問いかけた。

「それはトウマに嘘なく寮長になって欲しいと思ったからさ。ニックは俺が何か企んでいると言っているが、企みなんて一切ないよ。まぁ、確かに昔ニックに対して色々としたから、そう思われるのは仕方ないんだけど」
「フェルト、ニックに昔何したんだよ?」
「あれ? 知らない? ニックが相手に勝負売られて、指定場所に行ったら結局誰も来ずに野次馬たちにただ注目され続ける事件とか、それきっかけに何故か頼られるわ言い寄られるわの意味不明な人気者事件」
「ニックがやけに注目されている時期があったのは知ってるけど、そんな名前ついてたのか?」
「俺がそういう風に仕向けたから、俺が名付けてるだけ」
「え!? それって……」
「うん。俺がニックがそうなる様に企んだんだよ」

 フェルトはそう笑顔で答えると、トウマは何ともいえず表情が引きつるだけであった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「ルーク、ちょっといいか?」

 そう廊下を歩くルークを呼び止めたのは、ニックだった。

「どうした? また次期寮長選挙の話か?」
「それもあるが、少しフェルトについてな」
「……分かった。なら場所を変えるか」
「悪いな」

 そうして二人は、放課後は人の少ない大食堂奥のテーブル席に座った。
 二人の前には温かい飲み物をニックが購入し、置かれていた。

「で、話ってのは?」
「まずは次期寮長のことだが、改めて伝えるが俺は本心でお前のことを推している。寮長として成績や実力も申し分ない。お前なら俺たちを引っ張っていってくれると思ってるから、寮長に推薦している」
「そう思ってくれていることは嬉しいよ。だけど、俺は寮長っていう器じゃないんだ。お前も知ってるだろ、兄貴にしか考えてなかった頃の俺を。そして人の話も聞かない、自己中心的な結果兄貴には負けて、周囲からも呆れられた。そんな奴が寮長なるべきじゃないんだよ」
「でもお前は変わったろ。皆から頼られ、それに応えられる力もある。他の寮長候補たちにも気圧されたりしない」
「そんなことを言うならトウマもそうだろ? 対等に話もしてるし、信頼もある。実力に関してもニックからしたら足りないかもしれないが、あいつは周囲に助けられながら、それに応え力を与えられることが出来る奴だと思ってる」

 ルークはそう答えると飲み物を少し飲むと、ニックが口を開く。

「確かにトウマにはルークにはない何かを持っているのは感じる。が、それでも次期寮長として俺が推すのはお前だルーク」
「……そうか」

 そしてルークはもう一口飲み物を飲む。

「お前の気持ちは分かった。で、フェルトについては何だ?」
「あぁ。ルーク、フェルトの行動についてどう思う? 急にトウマを次期寮長として担ぎ上げて、何か企んでいると思わないか?」
「まぁニックが言っていることも分からなくないが、今回に関して何もないんじゃないか? 俺としてはフェルトがいつも何を考えているか分からない認識だし、特に何とも思ってないよ」

 ルークの返事にニックは少し難しい顔をする。
 その顔を見てルークは続けて話した。

「お前が昔ニックに振り回されて、大変な目にあったのも知ってるし今回のフェルトに違和感を感じるも分かる。が、今回はお前と同じように俺とトウマを比較して、トウマについたってだけなんじゃないか? 俺の感覚だが」
「……そうとも考えられるが、俺としてはどうしてもフェルトが表立って動くと変に警戒する癖があるんだよ。悪さをする訳じゃないと分かっているが、誰かが変に巻き込まれて少しでも嫌な思いをするんじゃないかと思うとな」

 ニックはそういいつつ、机に片肘を付き頭を抱える。

「それで今回はお前の性格にしては、対立するように前に出たってことか?」
「あぁ、それが半分。ルークを次期寮長として推したいが半分って所だ」
「なるほど」

 そう答えるとルークは飲み物を飲みつつ、窓の外へと視線を向けるのだった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「という訳だし、トウマ次期寮長としてやる気になったか?」
「いやいや! 今の話をどうとってそうなるんだよ? そもそも俺は次期寮長としてはルークを推してるって言ってるだろうが!」
「だから、俺はお前に寮長になって欲しいんだよ。ルークにはないトウマの魅力があるから、俺は寮長に推すんだよ。ルークよりも成績もよくないし、実力があるわけじゃないけど、トウマの魅力に俺や他の奴が寮長として推薦するって言ってるんだよ」
「ルークにない俺の魅力?」

 首を傾げるトウマにフェルトは答えた。

「応援したくなるっていうか、俺たちに力を与えてくれるって感じがするんだよ。俺はあの期末試験の話を聞いて、ビビっと来たんだよ」
「……え、それだけ?」
「あぁ、それだけ」
「ほらもっとさ、ルークにここが勝ってるとか、凄いとかじゃないの? それだったら、ルークにもあるだろ」
「確かにそうだけども、ちょっと違うんだよな~こう言葉に出来ないこの感じ? 分かる?」
「いや、分からんよ」

 トウマの返事にフェルトは「あちゃ~」っという態度をとるが、そのまま話し続けた。

「それじゃちょっと視点を変えてみよう。仮にトウマが寮長になったとしたら、皆からの信頼もあって今までにない感じの寮長になると俺は思うんだよね」
「想像が出来ないんだが……」
「ほら、いつもみたいに他の寮長候補たちと話していた感じでいいから」
 そう言われトウマは、渋々そのイメージをし始める。
「確かに寮長は大変だけども、そだけじゃない。頼られ下級生や女子たちには憧れの的になるに違いない。現に、寮長たちの女子人気は強いだろ」
「……確かに」
「しかも、あのルークを抑えての寮長なら、その人気は更に高くなるに違いない」
「……うん、確かに」
「寮の顔になり、他の寮長たちにも臆さず、学年No1のルークに認められた男、寮長トウマ!」
「おぉ!」
「そして下級生からの一番の憧れの的であり、トウマの様になりたいと言われる日々」
「おおぉ!」
「更に、女子からもキャーキャー言われること間違いなし! もし好意を寄せている相手がいるなら、その相手もトウマの魅力にメロメロだぞ」
「おおおお!」

 その時トウマの頭の中では、アリスの姿があり頼られる存在になった自分の隣にいて、遠くにはルークがそれを悔しそうに見ているという光景が出来ていた。

「うん、悪くはないな」
「だろ? だから、次期寮長選挙頑張ろうぜ」
「あっ……ちょちょっとだけ、ほんのちょっとだけ考えておくよ。じゃ、今日はこれで」

 トウマはそう告げて、ベンチから立ち上がり寮へと戻って行くのだった。
 それをフェルトは軽く手を振って見送るのだった。

「(少しいいことばかり言い過ぎたかな? でも、それで少しでも前向きに寮長を目指してくれたらいいんだけど)」

 フェルトはベンチに座ったまま、軽く息を吐いて白い息を出す。

「(暗部組織や潜入任務に関係している訳でなく、今回は純粋にルークよりもトウマを推しているだけだ。ニックの時は潜入初めで色々とやらせてもらったが、まさかそれがここで変な風に出るとはな)」

 その後日も陰って来たので、フェルトは校舎内に入る為に立ち上がる。

「(ルークも悪くないが、俺はお前が期末試験で見せた、諦めずに挑む姿勢や期待に応えようとする気持ちが次期寮長としていいんじゃないかと素直に思ったんだよ。だから、あの状況で推してみる価値はあるかもと思って、前に出ただけなんだよ)」

 そんな事を思いながら、少し急ぎ足で校舎へと入って行くのだった。
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