とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第331話 次期寮長選挙

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「次期寮長選挙?」

 私はアルジュに言われた事をそのまま訊き返した。
 アルジュはこれが自分の役目だと言わんばかりに、説明を始めてくれた。

 ――次期寮長選挙とは、毎年第三期直後に始まるイベントであり、メインは第2学年の各寮である。
 名前の通り、次年度の各寮長を決める選挙である。
 とは言っても、現状で次期寮長候補と言われている存在が基本的には次の寮長になるのだが、学院では寮長選挙を行いそこで一番支持を得た人を正式に次期寮長として任命されるのである。
 決めるのは寮長だけであり、副寮長はその後寮長の指名や他に指示があった者が副寮長として任命される決まりなのだ。
 投票権があるのは、自分の寮だけであり現第2学年と第1学年だけで他の寮長への投票権はない。
 選挙と言ってはいるが、特にルールはなくその寮独自の選挙方法でよく、演説している年の寮もあったり、いきなり投票を行う年の寮、更には立候補者のトーナメントなどと寮や年によって様々な選挙方法があるのだ。
 元々は、立候補者が演説し支持を受けた者が寮長という全うな選挙をしていたが、年々と独自にやりだす寮が増えて行き今では名前だけ選挙だけとも、言われていたりもする。
 そして今年は遂に自分たちの代の次期寮長を決めるという事で物凄く盛り上がっているのだが、うちのクラスが盛り上がっているのはもう一つの訳があるとアルジュは教えてくれた。

「うちの寮だけ、次期寮長候補がいないからなんだ」
「え? そうだっけ? 俺はてっきりいつも他の寮長候補と対等に話していたトウマだと思っていたけど」
「あ~分かる、分かる。他の寮の人もそんな事言ってたけど、そもそも本人がそうじゃないって言ってるし、誰かがそう言い出した訳でもないんだよね」
「あぁ、トウマは他の寮の次期寮長候補と代表して話す人として、クラスで一番問題なくこなせる人って事で決まったんだよ」
「あの頃は、ルークという意見もあったけど今と全然違うし、他にって言った時に出て来たのがトウマだったんだよね」

 なるほど、確かに初期のルークは言われても絶対やらなかっただろうな。
 トウマは誰に対しても話せるし、クラスでもムードメーカー的な感じだったから選ばれたのは納得ね。

「あれ? じゃ、うちの寮は誰が次期寮長として立候補するの? というか、そもそもどうやって次期寮長決めるの?」

 と、私がアルジュとシンリに問いかけると二人は一度顔を見合わせた。

「そこなんだよね」
「あぁ、決まってないんだよ。どうするか」
「……え!?」

 その後、授業も始まってしまい昼食時にまた改めて状況を訊いたのだった。
 そしてひとまず今日の午後寮で、どうするかの話し合いが行われる事になり私も昼食を食べ終えた後、寮へと戻るとリビング兼食堂に皆が集まっていた。
 私が到着してから暫くすると、最後にピースと共にニックとフェルトが来て全員集合したのだった。

「で、どうするんだ次期寮長選挙は?」

 そう最初に口火を切ったのは、以外にもルークであった。
 まさかの人物に皆が少し驚いていると、トウマが次に口を開いた。

「めんどくさい事考えるより、寮長に立候補する人がいるか確認すればよくね? 誰が立候補したい奴いないか?」

 トウマの問いかけに皆は周囲を見るが、誰も立候補者はいなかった。

「ありゃ? いねぇか……」
「そういうお前は立候補しないのか、トウマ? これまで他の寮の次期寮長候補たち似た仕事してたろ」

 ルークの思わぬ切り返しにトウマが反論する前に、少数が「確かに」と納得し始めていた。

「いやいやいや! あれは仕方なくやっていただけで、別に誰もやらないから俺になっただけって話だろうが」
「でもよ、そういつつもしっかりとこなしてただろ? 意外と他の寮長候補たちとも馬が合うからいいんじゃないか」
「そうだな。俺たちも手助けしたりしてたが、トウマはしっかりとこなしてたな」
「あぁ、言われてみればそうだな」

 ガイルの発言に、リーガとライラックも乗って来て徐々にトウマが次期寮長候補として押し上げられて行く。

「(やばいやばい! このままじゃ、なりゆきで次期寮長とかになっちまう……いや、光栄な事かもしれなんだが、俺はそんな器じゃないっていうか、そういうのはルークって思ってたのに)」

 そう考え始めたトウマがルークへと話を向けようとした時だった。
 割り込む様に話し始めたのは、ニックだった。

「確かにトウマは、これまでの実績とかクラスのちょっとした中心だったのは分かる。現に、他の寮の人たちもトウマが次期寮長だと思っている人もいるしな」
「(ニック! 何お前まで俺を後押ししてくれてるんだよー!)」
「だけどよ、寮長ってのは寮の顔だろ。俺の考えだが、寮長ってのは器用にこなせるっていうのもいいが、この人になら絶対に大丈夫だっていう安心感がある人だと思うんだよ。今のオービン先輩みたいにな」

 ニックの発言に皆が少しざわつく。

「別にトウマにそれがないとは言わないが、もっと適している奴だがいると俺は思うんだ。なぁ、ルーク?」

 その言葉に一気に皆の視線がルークに向けられる。

「俺か?」
「ニックの言っている事も一理あるな」
「そもそも、最初に他の寮長候補たちと話し合いの場に立つ奴を決める時も、一番初めはルークの予定だったもんな」

 そこで一気にルークも次期寮長として話に出始めるのだった。

「いや、ちょっと待て。俺は兄貴みたな人間じゃないぞ。それに寮長っていう器じゃない」
「それは俺も一緒だっての!」
「なにいってるんだよトウマ、お前は俺よりも実績もあるし、何でも器用にこなせるタイプだろ?」
「それをいうなら、お前がトップに立つ方が合ってるだろが! それに俺よりも強いし、他の次期寮長たちよりも強くて威厳もあるしよ!」
「寮長を強さで決めるのは、ライオン寮の所だけだろう。うちはそうじゃないだろ。皆からの支持もあって、力もある奴が寮長になるべきだろ?」
「だったらルークがピッタリだろうがよ。力もあるし、最近じゃ昔みたいに親しみやすくもなって信頼もある。寮長にピッタリだ!」
「俺は力だけだ。皆を無視して一匹狼だったのを忘れたのか? それに無能な第二王子だし、下級生にも示しがつかないだろ? だから、俺はトウマを推薦するぞ」
「ああ! ずりぞ! 自分でそれをいうのかよ! 人にそういわれたら怒るくせに、自分でそれをいいやがった! 俺はな、お前が寮長になるべきだってずっと思ってたんだぞ! 他人がどういおうが、お前は人の上に立つ人間だ! だから、寮長はルークお前がやれ!」

 二人が互いに互いを推薦し始めると、周囲も次第にそれにつられる様に話がヒートアップして行き、しまいにはルーク派、トウマ派と別れ始めたのだ。
 あーあ……どうするのこの状況、手に負えなくなってるじゃない。
 私はどちらの派閥には入らずに離れた場所で、様子を見ていると私以外にもベックス、ガウェン、モーガン、ピースがどちらにもつかずに状況を見ていた。
 もうどうすることもできないと思い、一度落ち着くまで私は黙って巻き込まれない様にしようと身を縮めた時だった。
 ルークとトウマに声を掛けられ、私の意見を求められてしまう。
 更にはその声で皆からの視線を一気に集めてしまい、皆私がどちらを答えるのかと無言の圧力をかけられ始めてしまう。
 や、やばい……これは答えないといけない雰囲気だけど、私としては特に決まってないし、出来れば中立の立場でいたいんだけどな……
 そんなことを思いつつも、それをいったら余計に変なことになりそうだと思い黙り続けていると、突然私の後ろから声が聞こえて来たのだった。

「そこまで互いのことを推薦するなら、いっそ二人で次期寮長選挙すればいいんじゃん?」
「「……え!?」」

 そこへ突然現れて話に割り込んで来たのは、オービンであった。
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