とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第351話 カッコ悪いぞ

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「『サンダー』!」

 トウマはベックスに向けて魔法を放つが、ベックスはそれを避ける事無く魔力を纏った腕で弾く。
 だがトウマはひるむ事無く、続けて『バースト』や『アイス』などを次々に遠距離から放つ。
 しかしベックスは、素早く回避し弾けるものは蹴り飛ばしたり、殴り飛ばしして弾き飛ばすのだった。

「(くっそ、やっぱりダメか。何とかシールドで防げはするが、今の攻撃を防ぐのには魔力をかなり使う。これじゃ、ジリ貧だ)」

 トウマはひとまず的にならない様に、動きながら作戦を考え始める。
 それをベックスは目で追っていたが、様子を見ているのか攻めて来る事はなかった。

「(俺の魔法での遠距離攻撃はほぼ弾かれる。かと言って、近距離なんて無謀過ぎる……あれ、勝ち目なくね?)」

 そんな事を思ってしまうが、すぐに首を振って切り替えてベックスにダメージを与える方法を絞り出す。

「(よし、とりあえず一人じゃなく複数で行こう。連携だ)」

 トウマは足を止めすぐさまゴーレムを荒削りでいびつな形で三体創り出し、そのままベックスに向けて突撃させる。
 ベックスは動かず突撃してくるトウマのゴーレムをその場で迎え撃つ。
 三体のゴーレムの内、一体はそのまま突撃してきて他の二体は左右から飛び掛かって来た。
 するとベックスは、まずは突撃して来たゴーレムの核目掛けて正拳付きを叩き込み、すぐさま回し蹴りで飛び掛かって来た内一体のゴーレムを砕き、最後にもう一体のゴーレムに対して足を突きだした。
 あっという間にトウマのゴーレムは撃破されてしまうが、ベックスは最後のゴーレムの壊れ方に違和感を感じていた。

「(今のは俺が壊したというより、魔力切れで崩れた感じだった気が……)」

 その直後、最後に撃破したゴーレムの背後からトウマが飛び掛かって来て、シールドを展開させ突っ込んで来た。

「っう!?」

 そのままトウマはシールドでベックスを地面へと押し付けて、身動きを封じた。
 完全にシールドで真上から力強く押し付けられているが、ベックスはなんとか動こうと身に纏った魔力で弾こうとしたが弾かれてしまう。

「完全に特攻で、破られたら俺の負けだがこれしか思いつかなかったんだよな」
「まさかそんな風に使って来るとはな、予想外だ」
「だろ。唯一対抗できるのが、これだけだからな」
「だけど、これでさっきの話の続きが出来る」
「はぁ? どう言う事だよ?」

 ベックスは先程よりも魔力を抑えつつ、抜け出そうという感じを出しつつもトウマへと語り掛け出した。

「さっきも言ったが、この試合に俺が出ているのはルークがお前と本気で戦えない為だ。で、ルークに頼まれて俺が代わりに出場してるんだ」
「その話かよ。変な挑発なら、もういらないぞ」
「挑発じゃない。お前が勝ってにそう受け取っただけだ。これはそうじゃなくて、ルークと戦わせてやるって言う提案だよ」
「? 何言ってるんだ、ベックス」

 そこでベックスとトウマのシールドに両手を当て押し返し始める。
 トウマは話に意識を向けていた為、少し力が緩んでいたが直ぐに押し返し始める。

「そのまま拮抗状態で頼む、トウマ。まずは話を聞いてくれ」
「ふざけるな。そうやって油断させようとしてるんだろ。その手には乗らないぞ」
「俺はな、決着はやっぱり自分で付けるべきだと思ってるんだよ。トウマもルークと直接戦ってケリを付けたいだろ?」
「っ……そりゃそうだが、もうあいつは出てこない。最終競技は始まってるんだ。そんな話をされても」
「いや、強引に引きずりだして戦わせる事は出来る。いや、俺は最初からお前とトウマも戦わせるつもりで、これに出場したんだ」

 その言葉を聞いたトウマは訳が分からず力を弱めてしまうと、ベックスがトウマを押しのけて立ち上がる。
 そしてそのままシールドをまだ展開しているトウマへと距離を詰めて、話を続ける。

「このまま戦いながら、話を聞いてくれトウマ。ルークは未だにお前が次期寮長になるべきだと考えている。だから、この競技に出たらわざと負けてしまうかもと言って来て、俺に代わりに出場を頼んで来たんだよ」
「!? そんな訳あるか! あいつはあんな次期寮長になるって宣言をしたのに、今更そんな事あるかよ」
「そうならこの場にルークは立っているだろ? わざわざ全てが決まる競技を、他人任せにする性格かよルークが」
「……確かに」

 ベックスはそこでトウマを押し飛ばすと、トウマに片手で挑発する様なポーズを行いトウマは再び突撃し、二人は激突する。
 そのまま何度かそんな接近するやり取りをしつつ、トウマに向けてベックスがルークに言われた事を全て伝える。

「なんだそりゃ。ルークの奴、何考えてんだ」
「と言う訳で、後はルークと直接聞いて、決着でもつけてくれ」
「いや、どうやってこの状況からルークが出て来るんだよ?」

 するとベックスは小さく笑う。

「そこは俺に任せてくれ。俺が強引に舞台に上げるから、トウマはそこへ俺へと攻撃する流れで魔法でも放ってくれ」
「はぁ? どういう事だよ?」
「とりあえず、今から端まで距離をとるから、そこで直ぐにルークを舞台に上げたら魔法を俺に放って来ればいいんだよ」
「あーもう、訳分からんがとりあえず離れてから、一息入れて攻撃すればいんだな? それでルークと直接戦えるって事だろ?」
「そうだ。じゃ、行くぞ!」

 そこでベックスは大きく振りかぶりトウマのシールド目掛けて拳を勢いよく叩き込み、トウマを舞台の端まで一気に押し飛ばす。
 トウマは寸前で堪えて、留まる事が出来たが舞台から落ちる寸前の所であった。

「(あっぶな! ベックスの奴、ここまでやる必要ないだろうが! てか、そんな強く殴るなら先に言えよ! もうすぐで場外だったぞ)」

 一方で、ベックスはトウマを殴り飛ばした後直ぐに自分も一気に後退し、派閥の皆が居る近くまで下がっていた。
 そして派閥の先頭にいたルークへと視線を向けて軽く手招きして、呼び寄せる。
 ルークは何事かと思い、少し近付いた時だった。
 ベックスがしゃがみルークの腕を掴み、舞台へと引っ張り上げたのだった。

「っ!? 何するんだベックス!?」
「何って、やっぱり最終競技は互いの代表者でやるべきだと思ってな。そう思うだろ、ニック?」

 そこでベックスはニックへと問いかけると、ニックは驚くが小さく「理想ではあるな」と呟く。
 直後、ベックスとルークに向かって『サンダー』の魔法が迫って来るのだった。
 トウマは言われた通り、一息入れてからベックスに向けて放ったが、まさか本当にルークが出て来た事に驚いていた。

「ほらルーク、防がないと直撃だぞ」
「ベックス、お前な」

 と、ルークは口にするが迫って来る魔法に対して片腕を向け『ブリザード』を放ち相殺させるのだった。

「さすがだな、ルーク。と言う訳で、ここからは選手交代って事で」
「はぁ? 何言ってんだ」
「トウマや、見ている人たちも、もうお前とトウマも戦いを望んでいるだろ?」

 そう言われルークが周囲に目を向けると、先程よりも歓声が大きくなっており、審判も何故か何も言わずにいた。

「なぁ? 分かったろ。もうこなったら、引き下がるなんて言わないよな?」
「っ……ベックス、最初からこうするつもりだったのか?」
「俺の考えは最初に伝えていたはずだぞ。それを分かった上での判断だったんじゃないのか? ルーク」
「はぁ……俺もまだまだ甘かったって事だな」

 ルークはそう答えると、ゆっくりと前へと歩き出した。
 ベックスはその場で身に纏っていた魔力を解除し、舞台から降りる事無くその場で見送った。
 するとトウマが口を開く。

「ルーク、ベックスから聞いたぞ。お前、訳分からん事を言ってたらしいな!」
「普通はそれだけじゃ分からないが、ベックスの奴トウマに話したのか」
「何が本気で戦えないだ! 逃げるなよ! カッコ悪いぞ、ルーク」
「(……確かにそうかもな。こんなんじゃ、例の勝負も負けるかもな)」
「うっ、黙ってないで何かいつものように言い返して来いよ! 調子が狂うだろうが!」
「ちょっと反省して、耳に入らなかっただけだ。やっぱり、当人同士でケリをつけるのが、遺恨が残らないよな。俺が間違ってたよ」
「最初からそうしてろっての!」

 そう言ってトウマは拳を構える。
 ルークは大きく深呼吸してから、肩から力を抜きだらっとした。

「行くぞ、ルーク!」

 トウマはその掛け声と共にルークへと突撃する。
 するとルークは戦闘態勢をとり、待ち構える。

「来い、トウマ」

 そして互いに魔法も魔力も使わずに、拳を相手に突きだすのだった。
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