とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第352話 オービンの考える次期寮長像

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 舞台上では、ルークとトウマが己の体だけで戦い合っていた。
 魔法も魔力も使わない珍しい戦いというより、喧嘩っぽい戦いに周囲も雰囲気の流れで盛り上がる。
 一方で、審判であるデイビッドは少し険しい顔をしていた。
 その理由は、ベックスがルークを舞台に引き上げた時に背後の舞台下からオービンに言われた事であった。
 デイビッドはその瞬間に、ベックスの行動を止め別の人物を舞台に上げる事は認められていない事を注意しようとしたが、オービンに止められたのだった。

「デイビッドさん、ここだけでいいので少し目を瞑ってくれませんか?」
「何故だ? ルールにはない行動を、何故止める?」
「彼なりの考えがあっての行動だと思うからですよ。確かに審判者をお願いしているので、これを言うのは違うと思いますが。次期寮長選挙は、彼らが主役なのでそこは大目に見て欲しいんです」
「……確かに、次期寮長選挙は各寮の生徒が主導して行われるものだな。学院長からも、あまり口出ししない様にと釘を刺されていたのだった」

 そう納得したが、やはりルール的にどうなのかと言う疑問が晴れずいるとオービンがそれについて元々考えていたのか話続けた。
 デイビッドはオービンの話を聞き「……分かった」としぶしぶ了承するのだった。
 そしてオービンはそのままミカロスの元へと戻って行く。

「何を言って来たんだ、オービン?」
「ただ、この戦いを見守って欲しいと伝えただけさ。後は、ちょっと判断についてもな」
「最終競技でこんなイレギュラー。誰にとっても予想外のはずだが、お前が動じない姿を見てると何でもこうなるとでも、分かってた様な言い方に聞こえる」
「もしかしたらと、考えていただけだ。なんせ、ルークの事だしな」
「怖い兄貴だ。考えが読まれるとか、勘弁だね」

 ミカロスはそう言って、少しオービンから離れる。

「可能性としての話だよ。別に四六時中考えている訳じゃないんだから、そこまで引くなよ」
「はいはい。でも、この流れだとお前の推していたトウマは負けそうだな」
「いや、まだ分からないよ。彼は絶対に諦める事はしないし、ルークも彼の強さを分かっているからこそ、本気で戦わないと意味がないと考えていたんだろうね」
「以前理由も聞いたが、俺としてはルークを推すね」
「あははは、あれは俺の勝手な想像に過ぎないし、そうなったらいいなと言う願望も含めてトウマ君を推しているんだよ」

 オービンは以前ミカロスからルークとトウマならどちらを次期寮長として考えているのかを問われた時に、オービンはトウマと答えていたのだ。
 その理由は、皆に支えながら頼りないかもしれないが、信じられる相手と言う人が寮長になるのもいいのではないかと考えていたからである。
 寮長は伝統的に、実力も強くリーダーシップが取れる存在や、寮長に認められた人など寮ごとに決まった流れで似たような人が寮長になる傾向があった。
 オービンも全寮長から認められたという点や、全寮長の様にリーダーシップもあり実力があるからとほぼ決まった形で寮長になっていた。
 しかし、そんな中で現エメル寮の寮長エメルは、全寮長とは異なった性格や雰囲気、更には周囲からの信頼度など異質な状況で寮長となった事に驚いたのだ。
 しかも破綻などせず、副寮長スニークの支えやエメル自身の行動で皆から徐々に信頼を得て、新しい寮長としての形を創り上げていた。
 それを見続けているなかで、オービンも新しい寮長像というものを考え始め、つい最近の第二期期末試験の時にその像が明確にイメージ出来たのである。
 そのイメージこそが、トウマであった。

 直接戦った中で、トウマの諦めない気持ちや仲間を守る姿勢、更には鼓舞したり信頼に応える行動力に、オービンは彼には寮長の素質があるのかもしれないと思ったのだった。
 その考えはミカロスはあまり賛成的ではなかった。
 成功例としてのエメルはトウマと比べるとまた違った相手であり、今までにそんな寮長聞いたことがないと少し否定的であった。
 だがオービンは、このまま同じ様な人が寮長になる事に疑問を持っていると明かし、そんな寮長がいてもいいんじゃないかと伝えるのだった。
 あくまでオービン独自の考えであり、最終的に誰になるかも分からないが、今変わり始めた学院内の寮どうしの関係性などもっと皆が切磋琢磨して行けるのではないかと、一つの可能性を見いだしていたのである。
 それは失敗するかもしれないが、やらなければ何も変わらないし、いずれ継続や維持だけでは限界があり衰退する事もあり得ると考えていた事もあり、新しい挑戦としてオービンはトウマを次期寮長として推していたのであった。

「それに私の考えとは違うかもしれないが、トウマ君を支持するクラスメイトもいる。彼もルークと同じ様にクラスの中では、中心である証拠だと俺は思うよ。かなりトウマ君側の意見だが」
「全くだ。だが、こういう寮長選挙も悪くないな。どちらになるか最後まで分からない、自分も支持して応援したくなる、支持者の力になれる。人選やカリスマ性、更には実力も見れ、ある意味これまでの寮長選挙で、一番適している形式かもしれないな」
「それは同感だ。俺もミカとこれをやってみたかったよ」
「もしやったとしても、俺は辞退したね。お前にいろんな面で敵う訳ないだろ。やったとしても、俺の方に付いてくれるのはヒビキくらいだよ」
「そんな事ないと思うぞ、ミカロス寮長」
「ここでそれを口にするな、オービン」

 二人はそんな会話をしながら、中央舞台上で戦い続けるルークとトウマを見守るのだった。
 そんな中ルークとトウマは、互いに相手へと拳を入れダメージを与えあっており、かなり息が上がっている状態であった。
 両者とも、距離をとった状態で息を整えると再び拳に力を入れると同時に踏み出し、相手との距離を詰め叫びながら力を込めた拳を突きだした。
 そして互いの拳は、クロスカウンターで相手の頬へと叩き込まれると二人は同時に後ろへと倒れるのだった。
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