とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
362 / 564

第361話 トウマ幼女連れ込み事件発生

しおりを挟む
 その日事件は突然起こった。
 私は用事があり、ルークとトウマの部屋を訪ねに行き、扉をノックし返事があり待っていたが、中で大きな物音がしたので何事かと思い扉を開けた時だった。

「なっ……」

 私は部屋の中での光景を見て絶句した。
 そこでは、上半身裸のトウマがベッドで見知らぬ幼女を襲おうとしている姿であったのだ。


 ――遡る事1時間前。
 私はいつもの様に早朝のエリス先輩との朝練を終え、競技場で汗を流した後寮へ戻っていた時だった。
 偶然学院の廊下で担当教員に声を掛けられた。

「クリス休日に悪い、今いいか?」
「はい、別に大丈夫ですけど何ですか?」
「大した事じゃないんだが、この用紙をルークとトウマに渡してくれないか? 新学期からの現状のスケジュール表だ。ルークに昨日頼まれてな」

 担当教員から渡された紙には、4月からの簡易的なイベント一覧などが記載されていた。

「あの、これ俺が見てもいいやつなんですか?」
「問題はない。毎年この時期には、共有スペースに来年の予定スケジュールを張り出しているからな」

 そうなんだ。知らなかった。

「それはそこで張り出している縮小版だ。来年に向けて何か相談で使うと言っていたから、早めに準備して渡しに行こうとしていたが、昨日は会議が急に入って渡せなかったんだ」
「なるほど。それで今日それを渡しに行こうとしていたんですね」
「ああ。でも教員が急に寮に行くのもどうかと思ってた所に、クリスが現れてくれたから頼んだと言う訳だ。一応二人は外出する予定はないから、渡せば分かると思うが頼めるか?」
「はい、そう言う事なら分かりました。たぶんまだ朝の時間ですし、部屋にいると思うので渡しておきますよ」
「すいまない。それじゃ頼んだよ」

 そして私は担当教員から資料を受け取り、別れた後寮へと戻った。
 帰る途中で外出しに行く何人かとすれ違い、挨拶をしてちょっとした雑談をしたりして寮へと辿り着いたのだった。

「さてと、先に頼まれた資料を渡しに行こうかな」

 そう思い朝食を食べる前にルークとトウマの部屋に向かおうとした時だった。
 正面からルークとガウェンが話しながら向かっていたのだ。
 私は直ぐにルークに声を掛けた。

「どうしたクリス?」
「ごめん、話しているところ割り込んで」

 ガウェンは私の言葉に軽く首を横に振って「気にするな」と言葉を掛けてくれた。

「さっき先生に会ってな、ルークが頼んでいた資料出来たから渡しといてくれって言われてさ」
「あーあの資料か。今受け取りたいが、ちょっとガウェンと行く所があってな」
「そうなのか。じゃ、トウマに渡しとけばいい? 部屋にはいるんだろ?」
「あいつはまだ部屋で寝てたはずだから、クリスがノックでもすれば飛び起きると思うから渡しといてくれるか」
「分かった。それじゃ、後でトウマの部屋に行って渡しとくよ」
「悪いなクリス」
「気にするなって」

 そこで私はルークとガウェンと別れた。
 そのままトウマの部屋に向かおうと思ったが、まだトウマが寝ていると言っていたから先に朝食を食べてもいいかと思い、食堂兼リビングへと向きを変えて歩き始めた。
 そして休日メニューから少し遅めの朝食を、食堂兼リビングにいたガードルとベックスと軽く話ながらとり終え、私はトウマの部屋へと向かい始めた。
 へぇ~新学期からのスケジュールはあまり今年のと変わらないんだな。
 私は歩きながら担当教員から渡された資料に目を通していた。
 今が1月下旬だから、2月は特に学院としてのイベントはなく、そのまま3月の上旬から中旬頃に最終期末試験が始まって、下旬には卒業式か。
 こう見ると冬の修学旅行が学院としてのイベント的には最後の方なのかな? 試験とか除いてだけど。
 そっか、冬の修学旅行が終わると後は試験と卒業式か……早いな。
 もしかしたら変なイベントとか誰かがやるかもしれないけど、こういうスケジュールを見ると残されている時間はそう多くないと突きつけられている気がするな。
 ふと私はそんな事を思ってしまったが、直ぐに後ろ向きな考えは止めて、資料から目を離してトウマの部屋へと向かった。

「着いたけど、何かこうして部屋に来るのは久しぶりな感じがするな。さて、トウマはもう起きているかな」

 私は部屋の扉をノックしようとした時だった、中から何か物音が聞こえたのでトウマは起きているのだと思いノックをし声を掛けた。

「トウマ、起きているか? クリスだけど、頼まれて資料を持って来たんだが」
「え、え!? クリス!?」
「お、おう。そうだけど」
「ちょちょちょっと、今行くから」

 ? 何か慌ててるのか? タイミング悪い時に来ちゃったかな。
 部屋の中で何かバタバタとしている音が微かに聞こえ、私はただ扉が開くのを待っていた。
 その時だった、突然部屋の中から大きな物音が聞こえて来て、何かあったのかと思いトウマに声を掛けたが返事がなかったので、一声かけて直ぐに部屋の扉を開けた。

「トウマ! 大丈夫か? 何か凄い物音が……」
「……え、クリス」
「なっ……」

 私は部屋の中での光景を見て絶句してしまった。
 そこでは、上半身裸のトウマがベッドで見知らぬ幼女を襲おうとしている姿であったのだ。
 私は部屋へと踏み入れた足を一歩下げた時だった、直ぐにトウマが声を掛けて来た。

「ま、待ってくれ! 違う! これは違うぞ! 何か誤解している!」

 トウマは幼女に覆いかぶさっていた状態からすぐに起き上がり、上半身裸のまま私の方へと近付いて来た。

「いやいやいや! トウマ、それはやばいって!」
「だから違うんだって! まずは俺の話を聞いてくれ、クリス!」

 そのまま私は部屋から後ずさりしながら出て、窓側へと下がりきってしまう。
 トウマも誤解を解こうと必死で、自分が上半身裸の事など忘れて、部屋から出て来ていた。

「何であんな子を連れ込んでいるのさ、トウマ」
「いや、それには訳があって、長い経緯が」
「まさかトウマが犯罪に手を出すとは……」
「違うんだって! これはだな」

 するとそこへ偶然フェルトが通りかかる。

「ん? おークリス、トウマ。おは――えっ!? トウマ何してんだ!? 上半身裸で!」
「フェルト!? って、うわぁ! 忘れてた!」
「トウマ今から自首しに行こう。俺も付いて行くから……まさか、トウマが幼女を連れ込むなんて」
「待て待て、これには深い訳が」
「何だって!? トウマが幼女を誘拐してきただと!?」
「おい! フェルト! 聞き間違えてるぞ! って、何処に行くんだフェルト! 待て! そんな事を寮で――」

 と、トウマがフェルトが次に何をするのか察し、止めようとしたがそれは間に合わず、フェルトは走りながら大声で叫ぶのだった。

「大変だー! トウマ幼女連れ込み事件発生だー!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です

オレンジ方解石
恋愛
 結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。  離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。  異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。  そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。  女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。 ※追記の追記を少し直しました。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

処理中です...