とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
373 / 564

第372話 安らぎの城『ジュヴェリアヴァーベン城』

しおりを挟む
 冬の修学旅行初日、私たちが最初に向かう場所はローデングスと言う場所である。
 そこには、歴史的にも有名で現在では人気の観光場所とされている、安らぎの城『ジュヴェリアヴァーベン城』がある地域なのだ。
 ローデングスはベンベルから更に北の場所に位置し、冬は気温も更に低く常に周囲は雪に覆われている。
 だが、天候は常に悪い訳ではなく太陽が出ていると、木々に積もった雪も輝き美しい光景だと言われている。
 その地域で一番の有名な所が、安らぎの城『ジュヴェリアヴァーベン城』なのだ。

 そもそもは、『ジュヴェリアヴァーベン城』と言う名の城であるが、歴史的に別名で安らぎの城とも呼ばれている。
 何故そんな名前で呼ばれているかと言うと、過去の戦争で『ジュヴェリアヴァーベン城』は戦争の最前線から少し離れた場所にありつつ、戦争地域で唯一残った城である。
 そんな『ジュヴェリアヴァーベン城』では、負傷した兵士たちが治療や休息をする為に使っていた事から安らぎの城と兵士たちが口にしていたと言う噂から、現在でも別名で安らぎの城と呼ばれているのだ。
 今でもその当時の戦争の傷跡は建物として問題ない箇所は残っており、当時の歴史を知れる建物でもある。

「へぇ~詳しいなクリス」
「いや、それくらい普通でしょトウマ」
「え? そうなの?」

 トウマは隣に座っていたフェルトに訊ねると「常識だよ」と答えた。
 そしてシンがそんなトウマに小声で「しおりにも簡単にだけど説明されてるから読むといいよ」と声を掛けると、トウマは急いでしおりを取り出し顔を近付けて読み始めた。
 さすがに修学旅行で回る所くらいは知っておこうよ、トウマ。

「そう言えば、『ジュヴェリアヴァーベン城』って少し高所の場所だったよな。坂は歩くんだろうな」
「たぶんそうだろうね。あっても馬車だけだろうし、魔道車で通る訳はないと思うよ」
「それも観光の楽しみだろ。近くに湖もあるし、坂から見る景色もいいらしいぞ」
「クリス詳しいな。観光ブックでも読んだか?」
「っ……」

 フェルトの問いかけに、私は図星をつかれてしまい少し耳を赤くなってしまう。

「わ、悪いかよフェルト!」
「そんな事ないよ。そう恥ずかしがるなよ、クリス~」
「別に恥ずかしがってなんてないよ!」
「またまた~」
「違うって言ってるだろ!」

 目的地へと向かう魔道車内では、私たちはそんな会話をしつつ終始和気あいあいとした雰囲気が続いた。
 その後、北部地域に入りローデングスまで残り半分となった所で一旦休憩として、魔道車はクュードと言う地域に停車した。
 私たちは魔道車から降りて、暫くこの周辺で集合時間まで自由行動となった。

「おーもうこの辺から雪が積もってるのか。北側に来たって感じだな」
「うぉ~ここも人が多いな~」
「ここは、ローデングスに行く観光客たちが必ず通る地域と言う面もあるし、美味しいパン屋がいくつもある地としても有名だから多いんだろうな」

 確かにいい匂いがそこら辺から風に乗って来ているね。
 私はアルジュの話を聞き、パンの焼きあがったいい匂いを嗅いでいると魔道車から勢いよく飛び出て行く人影を見て驚いた。

「な、何だ今の!?」

 トウマが驚いているとフェルトが「たぶんピースだよ」と答えた。
 すると魔道車からニックがその後に降りて来た。

「おい、ピース! 勝手に――って、もういねえし。はぁ~たっく」
「ありゃりゃ、あの状態だとかなり空腹だったのかな?」
「何人事みたいに言ってるんだフェルト、お前も探すの手伝えよ」
「分かってるて。じゃ、そう言う訳だから俺は行くな」

 そう言って、ニックとフェルトはピースの後を追って行くのだった。
 すると、他の魔道車からも他の寮生たちが同じ様に話ながら街へと入って行くのを目にした。
 それを見て私たちも街へと向かおうとした時だった。

「やぁ、クリス。それにルーク、トウマも」
「レオン」
「何だよ、レオン」
「そんな冷たい態度をとるなよ、ルーク」

 そこでルークは何故かレオンを警戒していて、私は何か二人の間にあったのかと思っていたが、変につつくのは止めておこうと思い口にはせずに黙って見つめていた。
 そんな雰囲気をトウマも感じていたのか、直ぐにレオンに訊ねた。

「それで、どうしたんだレオン? わざわざ俺たちに声を掛けて来て」
「せっかくの自由時間だしクリスたちと回ろうかと思ってな。別に寮ごとの行動じゃないし、楽しいかと思ってさ」
「なるほどね。俺は別にいいと思うけど、二人は?」

 トウマは私とルークの方に問いかけて来ると、ルークは黙ったまま私の方をチラッと見て来た。
 え、どう言う視線? 私が先に答えろって事? まぁ、別にいいけど。
 私は勝手にそう解釈してトウマの問いかけに答えた。

「せっかくの同学年での修学旅行だし、いいんじゃないか。この後は基本班行動だし、他の寮の人と回れる事も少ないだろうし」
「……まぁ、確かにそれもあるな」

 ルークは少し不満そうな口ぶりであったが、特にレオンを拒否する事はなくレオンを含めて私とトウマ、ルークの四人で自由時間を過ごす事にした。
 基本的には自由に話して、レオンの班のメンバーや魔道車内の様子などを互いに話して盛り上がりつつ、美味しいパン屋の一店舗でおすすめのパンを購入して、皆で食べ歩きをした。
 その後集合時間が迫って来て、私たちは魔道車近くまで戻って来た。

「それじゃ、また向こうで会えたらその時な、レオン」
「ああ、またなクリス」

 私はそこでレオンと別れて先に魔道車へと乗り込んだ。
 トウマもその後にレオンに声を掛けて、魔道車へと乗るのだった。
 だが、ルークはその場でとどまってレオンに話し掛けていた。

「これが、お前の攻めってやつか?」
「? あーそう言う事ね。まぁ、そうとも言えるね。だって僕は君やトウマとは違って寮も違うから、こういう機会を逃さずに行かないね。でも、君たちと自由時間を過ごしたいって言うのは嘘じゃないからね」
「……別にそれは疑ってない。俺も変にお前を警戒し過ぎた。悪かった」

 ルークがレオンに謝ると、レオンは少し驚いた顔をしていた。

「な、何だよその顔は」
「いや、まさか謝られるとは思ってなくて。でも、ライバルに謝ってちゃいつか足をすくわれるぞ」
「なっ」
「冗談冗談。じゃな、ルーク」

 そのままレオンはルークに背を向けて、自分の魔道車へと向かって行くのだった。
 ルークはそんなレオンの後ろ姿を見つめて、軽くため息をついた。

「(ライバルか……この前の一件で急に距離を詰め過ぎたと思って遠慮してたが、あまりうかうかもしてられないかもな……)」

 するとそこへルークとフェルトが、ピースに肩をかした状態で戻って来た。

「ルーク、丁度いい所にいた。ちょっとこれ持ってくれないか? ピースが想像以上に食べ過ぎて歩けない上に、買い物してて重いんだ」
「分かったよ。荷物の方でいいんだろ?」
「悪いな、ルーク」
「ごめんよ、ルーク」

 ピースが苦しそうに話して来たのでルークは軽く手で気にするなと合図を送った後、フェルトから荷物を受け取り先に魔道車と戻り、その後にピースたちが乗り込むのだった。
 その後ピースの状態を見つつ、魔道車はローデングスに向けて出発した。
 ちなみに、ピースが買い込んだのはパンばかりで、量も多かった事や皆に迷惑かけたという事で魔道車内の皆へと配られたのだ。
 そして1時間半後には、ローデングスの宿泊するホテルに到着したのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です

オレンジ方解石
恋愛
 結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。  離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。  異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。  そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。  女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。 ※追記の追記を少し直しました。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

処理中です...