とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第388話 中途半端な男

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「……」
「……」
「(何、この状況……)」

 クリスはレオンと偶然出会い、そのままレオンは特に何も言わずにクリスの座るベンチに少し距離を空けて座った。
 そして互いに黙ったまま何も発さないまま時間が過ぎる。
 周囲では子供たちが無邪気に遊ぶ声や大通りから微かに聞こえてくる賑わいの声、そして小さな噴水から流れる水の音が聞こえていた。

「(とりあえず何も話さないで座ったままってのは、どうかと思うからそろそろ声でも掛けようかな)」

 と、クリスが意を決してレオンの方へと顔を向け口を開こうとした時だった。
 レオンも同じことを思っていたのか、振り向いた時が同時で目線が合ってしまいクリスは驚き、声が出なかった。
 一方のレオンも驚いた顔をしていたが、止まる事なくそのまま先に話し始めた。

「悪いクリス。急に来て、そのまま何も話さずに横に座ってしまって」
「え、あ、ああ。そ、そうだね……でも、俺も何も言わなかったのも悪いかなって」
「いや、声を掛けておいてそのまま黙って座る僕の方が悪いよ。それで、クリスはどうしてこんな所に一人でいるのかい?」
「あー……」

 クリスはレオンにそう問われた直後、目線を外しはぐれて迷子になっている事を誤魔化そうかと思ったが、誤魔化すよりもレオンがルークやトウマたちを見ていないか訊いて合流する方法を考えた方がいいと判断し、現状を話すのだった。

「なるほど。ルークたちとはぐれてしまったと」
「はい……恥ずかしながら、迷子です」

 全てを打ち明けクリスはそっとレオンの顔を見上げた。
 レオンは優しく笑っていたが、クリスは「たぶん呆れられているんだろうな」とネガティブな風に勝手に捉えていた。

「そう落ち込まなくても大丈夫じゃないかな?」
「え?」
「たぶんルークたちの事だから、心配して探してくれてると思うよ。特にあの二人が」
「……迷惑かけちゃったな」
「クリス、向こうはそんな風に思ってないと思うよ。君も合流しようと行動して、今はここでむやみに動かずにいるし、こうして僕とも偶然出会えて相談してくれた。卑屈的になる過ぎるのも良くないよ」
「レオン、ありがとう。そうだね、俺少し卑屈的になっていたかも。自分がはぐれたのが悪い、浮かれ過ぎたからだとかさ。心の中で自分のせいで皆の時間を奪ってしまったと考えたら、どうしようって」
「分かる。何でもかんでも自分が悪いって思っちゃうんだよね。でも、それは結局自分一人で考えて出した結果に過ぎない。その気持ちを相手に伝えて、ようやく答えが分かるんだ。思っているだけじゃ相手には伝わらないし、今みたいに口にしてようやく理解してもらえる」

 そう言うとレオンは視線を前へと向けた。

「自分の気持ちや考えを口にするのは、恥ずかしい気持ちも分かるけどね。こんな偉そうな事言って、僕も必ず出来てるって訳じゃないから説得力ないけどね」

 レオンは苦笑いしながらクリスの方を向いた。
 そんな顔を見てクリスは、小さく笑った。

「ううん。ありがとう、レオン。何かこうして話してるだけだけど、さっきよりも気持ちが楽になったよ」
「そうかい? それは良かった。それじゃ後は、ルークたちとの合流だけだね」

 レオンはそのままどうするべきがいいかを考え始めたので、クリスは咄嗟に声を掛けた。

「いやレオン、それを考えてくれるのはありがたいけど、自分の班はどうしたの? と言うか、レオンも一人なの?」
「うちの班かい? うちは今自由観光にしてるんだ。自分が好きなように好きな所を回っていいって時間。あと一時間もしたら、集合場所に戻る約束なんだよ」
「そうなんだ。じゃ、レオンもはぐれたって訳じゃないんだね」
「そうだよ。ごめん、変に勘違いさせちゃったかな?」

 クリスは少し慌てながら勝手に自分と同じなんじゃないかと、少しでも思ってしまった事を謝った。
 特にレオンは怒る事もなく、笑って流すのだった。
 それからレオンは簡易マップを持っていたので、現在地とクリスがどの辺に居たかを探しつつ、どれくらい現在地が離れているかを改めて確認し、動くべきかこのまま探しているであろうルークたちを待つかを話し合った。
 結果的に、もうしばらくここで待機してから、元居たであろう場所へと向かうと決めるのだった。
 レオンとしてはそこまで物凄く距離が遠いって訳でもないので、付いて行きながら戻る方を押したが、クリスがもうしばらくここに居ると決めその意見となったのだった。
 クリスはレオンがずっとここに居てもらう必要はないから、離れて好きな所を観光して来てもよいと口にしたが、レオンは離れずに座り続けた。

「え、行かないの?」
「行かないよ。僕は君が心配だし、この時間も楽しいからね。こんな直ぐにまた二人っきりだし」
「っ……」

 レオンの突然の言葉に、クリスはゆっくりと視線を外すのだった。
 そのまま再び沈黙の時間が始まったが、直ぐにクリスがその沈黙を破った。

「ねぇ、レオン。こういう時だけど、この前の話の続きをしてもいい?」
「……この前の話って言うのは、ホテルでの事かい?」

 クリスはその言葉に、ゆっくりと頷くとレオンは少し黙った後「いいよ」と答えた。

「この前の話ではさ、私とレオンが私が記憶を失う前は秘密の関係性だって言ってたよね」
「うん。そう答えたよ」
「……それに間違いはないんだよね?」
「それはどう言う事だい?」

 レオンからの返しに、クリスは直ぐに答えず黙ってしまうが、暫くしてから答え始めた。

「その、何て言うか、ちょっと前に記憶が断片的に蘇ってさ」
「……記憶が、戻った?」
「いや、完全じゃないよ。ただそこで見る記憶は、相手の顔とか分からないけど、断片的に私がこれまで体験して来た事だと思うの。それで、レオンが言う様な関係性と思える記憶も偶然見て、レオンの言ってた事は本当かもって思ってたんだ」
「……」
「えーっと、何の根拠もないんだけど、その相手がレオンじゃない気がするんだよね。何となくでしかないんだけどさ……」

 その言葉を聞いたレオンは、少し俯いて小さく息を吐いた。

「(そっか……何となくか……)」
「本当に何となくでしかなくて、こう言う風に訊くのもどうかと思ったけど、モヤモヤしているより訊いてしまった方がいいと思って」

 クリスはそう言うとレオンの方を真っすぐに見つめた。

「(そんなに真っすぐに見られると、辛いな……)」

 するとレオンは俯いたまま、小さく深呼吸してからクリスの方へと顔を向けた。

「僕が嘘をついているって事かな?」
「それが嘘かどうかを確かめたいの、私は」

 そのまま二人は互いに見つめ合っていたが、先にレオンが目線を外した。

「はぁー……ダメだな、僕は」
「? 何、急にどうしたの?」
「自分で選択したのに最後まで最低な男になりきれない、中途半端な男だなって自分の意思の弱さに失望しただけさ」
「?」

 レオンが何を言い始めたのか理解出来ず、クリスが首を傾げるとレオンは「今のは理解しなくていい事だから」と口にする。

「クリス、君の言う通り僕は君に嘘をついたかもしれない」
「ついたかもしれない? それってどう言う事レオン?」
「それを確かめるには、まずクリスいや、アリスがあの時僕が言った秘密の関係性って言葉をどう理解しているかだよ」
「……え?」
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