とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第400話 罪な男

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 モランはクリスから学院生活での記憶を失っている事を聞き、現状のクリスは学院前のクリスだと理解する。
 また今のクリスの状態を知り周囲にバレない様に手助けしている協力者の存在も知る。
 ルーク、トウマ、レオン、タツミ、そしてジュリルの五名であり、その内ジュリルに関しては他の四名は事情を知らないと思っている関係性である事も知るのだった。

「徐々にだけでも、思い出してはいるって認識でいいの?」
「まあ、本当に一部とかでしかないけどな」
「ルーク様たちが先に話はしているお陰で、関係性とかも一応理解はしているわ」
「詳しいのね、ジュリル」
「昨日本人から直接聞いたからですわ」
「なるほど」
「それでなんだけど、この事は他の人には言わないで欲しんだモラン。頼む」

 クリスはそこでモランに対して頭を下げてお願いをした。
 その姿を見てモランは直ぐに顔を上げさせた。

「誰かに言うつもりはないよ。それに、それならさっきの会話も納得できるし」
「さっきの……あーそれは、その、ごめん」
「何かしたんですの、クリス?」

 ジュリルから問いかけにクリスは申し訳なさそうに、どうにか疑われない様にジュリルとの会話を逸らしていた事を明かした。
 そしてジュリルはモランの表情を見て、何かを察したのか突然「それは酷い事をしているわね、クリス」と返した。

「そう言われると、何も言い返せない」
「なら、改めてここで二人だけで話さないとですわね」
「へぇ?」

 モランは突然のジュリルの発言に変な声で驚いてしまう。

「へぇ? ではありませんわよ、モラン。せっかく心配していたのに、クリスはその優しさを跳ね除けたんですのよ。当然ですわ、これくらい」
「うぅ……本当に申し訳ない、モラン」
「ほら、クリスもこう反省していますし、改めて話したい事を話すといいですわ。上の皆には私が適当に言っておきますので、気にせずゆっくりとしなさい」

 そう話すとモランの横を通り過ぎて二階へと戻ろうとした時にボソッと呟く。

「二人だけで話がしたかったのですわよね?」
「! 何でそれを」

 するとジュリルは笑顔で「顔に出てましたわよ」と返して、その場から立ち去って行くのだった。
 そうしてジュリルの計らいで、モランは当初の目的であったクリスと二人だけになる。
 急に二人だけになったからなのか、二人は暫く黙っていると先にクリスの方が沈黙を破った。

「その、さっきは変にやり過ごそうとしてごめん。改めてになってしまうけど、俺はクリス。モランって呼べばいいかな?」

 そこでクスッとモランは笑う。

「何で笑うんだよ」
「だって、今更自己紹介って変じゃない。うふふ」
「うっ……そうかもだけど、今の俺としたら初対面みたいなもんだし、その記憶も全くないわけじゃないけど、一応しておこうかと思ってだな」
「ごめん、そうね。笑ったりして悪かったわ。私はモラン、貴方とは今年の春に初めて会っているわ」

 そしてクリスはモランに自分との出会いや、何を話していたかを聞いたりし始める。
 徐々にぎこちない感じがとれて行き、よく二人の時にも話していた魔法や魔力の話しで盛り上がったり、友人であるシルマやミュルテの話もするのだった。
 その後二人は時間を忘れて話に夢中になっていると、二階からマートルがやって来て声を掛ける。

「全然戻ってこないと思ったら、二人共こんな所で話していたのね」
「マートル」
「盛り上がるのはいいけれど、心配はかけないようにしてくれるとありがたいわ」
「ごめんなさい」
「ごめん」

 二人はマートルに謝った後、一度皆の所に戻るのだった。
 それからクリスは、モランとも話しつつもシルマやミュルテとも会話をして有意義に時間を過ごした。
 食後の小休憩も一段落した所でお会計をし、クリスたちは店を後にし裏道を抜けて大広場に辿り着く。

「ルーク様は、これから何処へ向かうのですか?」
「次の場所か。トウマ、次はゴンドラに乗るでよかったんだよな?」
「その予定だぞ。シン、ここからだと乗り場は何処になる? マップ見れるか?」
「ああ、今出す」
「良かったら私たちのマップ見ます? 今手に持っているので」
「いいの? ありがとう、マートルさん」
「いいえ。ゴンドラ乗り場ですと、この辺かと思いますけど」
「あの、モーガンさん良かったら私の事占ってくれませんか?」
「貴方をですか?」
「おいおいミュルテ、いきなり失礼じゃないか」
「いいですよ」
「やったー」
「いいのか! だ、だったら、あたいも見て欲しいんですが」
「あれれーシルマちゃんは占いとか興味なかったんじゃ?」
「う、うっさいわい!」
「喧嘩しないでくださいね。簡単な物になりますけど、それでもいいですか?」
「「かまいません!」」

 皆がそれぞれに話をしている光景を、クリスが見つめているとモランが話し掛けて来た。

「クリスは、今楽しいですか?」
「楽しいよ。色んな所を見れて、優しく助けてくれる人もいて、今の俺を受け入れてくれる人もいて」
「そう」
「でも、悩む事考える事がなかった訳じゃないけど、こんな今を楽しまないのはダメだと思う。だから、楽しめる時はその時に身を任せて楽しんでいるんだ。だから、最ッ高に楽しいよ」

 クリスの満面の笑みに、モランは少し頬を赤くすると顔を逸らす。
 そして暫くしてクリスがモランに対して、思っていた事を訊ねる。

「あの、モラン」
「っどうしたの?」
「そのだな、えーと……」

 そう言ってクリスはモランに近付き、小声で話し始める。

「記憶でモランが俺の頬にキスをする時のがあるんだが……あれは」

 そこでモランはクリスの額に軽くデコピンをする。

「いた」

 クリスがデコピンされた所を片手さすりながらモランを見ると、モランは何も言わず人差し指を口に当て少し笑顔で頬を赤くしながら「シー」という表情をしていた。

「っ!」

 そのままモランは何も言わずにクリスから離れて、シルマとミュルテの元へと向かった。
 クリスは先程のモランの表情が忘れらず、何度か瞬きをしていた。
 そしてゆっくりとモランが向かった方へと顔を向けて小さく呟くのだった。

「以前の私は、何て罪な男を生み出しているんだ」
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