とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第407話 ヴァンとの関係性

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 修学旅行8日目、これまで通り朝食を食べた後、チェックアウトする為にホテルのロビーに荷物を持って各寮ごとに集合していた。

「あ~あ、もう8日目か。修学旅行ももうおしまいかよ」
「そうだな~早かったな」
「早すぎじゃね?」
「確かに。委員長もそう思うだろ?」
「急になんだよ、お前ら」

 アルジュが、突然話を振って来たリーガとライラックの方を軽く睨む。

「そう睨むなよ、委員長。朝だから、機嫌が悪いのか?」
「朝食で少し腹を下してテンションが下がっているんだ」
「おいガウェン! 言うなよ!」

 同室のガウェンに少し詰め寄るアルジュを見て、リーガとライラックは「なるほどな」と頷いているとアルジュが「変に納得するな!」と声を出すのだった。
 そんな光景を見てフェルトは笑い、ニックは真顔で見つめ、ピースはくすねた朝食のパンを食べていた。
 一方ではヴァン、ノルマ、モーガン、ガードルで昨日見て回ったモ・サロの話しで盛り上がっており、またマックスがガイルに話し掛けそこにケビンがマックスに呼ばれる形で参加して、そちらも盛り上がっていた。

「今日はいつもよりも、騒がしい感じだね。まるで教室みたいだよ」
「そう、だね」
「? どうかしたかクリス? 何か考え事か?」
「あ、いや。朝食少し食べ過ぎて、苦しいだけだよシン」

 私の返事にシンは心配してくれ、ガードルに相談したらと提案までしてくれた。
 ガードルならば頭痛や腹痛と言った時の薬などを所持しているので、シンはそう提案してくれたのだろうが、そんなに深刻的に辛い訳じゃないので気持ちだけ受け取った。
 するとそこに、ルークとトウマが近付いて来て声を掛けて来た。

「今日はいつもよりも騒がしいな、うちの所は」
「それトウマが言うのか?」
「何だよルーク、いいだろ別に」

 シンはそんな二人のやりとりを見て、小さく笑う。
 するとルークが私の方を見て来て何か話し掛けようと口を開けたタイミングで、担当教員がやって来て集合する様に言われ、皆は担当教員の元へと移動し始めた。
 私はルークが何か言いたげな気がしたので、再びルークの方へと視線を向けたが既にルークは担当教員の元へとトウマと向かい始めていた。
 気のせいだったかな? それとも変に気にし過ぎたか?
 結果的にはよく分からないが、その後話し掛けて来る様子はなかったので私からも特にルークに話し掛けずに、そのまま担当教員からの話を聞きづけた。
 その後話も終わると、魔道車へと乗り込み始めて修学旅行最後の目的地であるベンベルへと向けて出発するのだった。
 今日の予定では、午後にはベンベルに到着する予定ではあるが、本日はベンベルの自由観光はない。
 理由は、夕方から学年全員にてベンベルで有名な劇場で観劇をする為である。
 その為各自ドレスコードをする時間が必要なので、自由観光の時間はないのだ。
 既にドレスコード事態は向こうのホテル側で用意されているので、後はサイズ合わせだけなど細かい事だけらしい。
 ドレスコードか……人前で服を脱いだりはしないよね。
 私はそんな不安を感じつつも、魔道車内はざわざといつもの様に各々が話しをして盛り上がっていた。
 そんな中私の隣に座っていたのは、ヴァンであった。

「……」
「……」

 互いに終始無言でヴァンは魔道車内から外を見ており、私も何だか話しかけづらいので黙っていた。
 何故!? どうしてあのヴァンが私の隣に座っているの?
 私はヴァンから顔を逸らしつつ、頭に片手を軽く当てて考えているとヴァンが突然話し掛けて来た。

「おいクリス、何してるんだお前」
「えっ……」
「何だその驚いた顔は? 僕が話し掛けるのがそんなに変か?」

 その問いかけに、私は無意識にゆっくりと首を縦に振ってしまうと、ヴァンはため息をついた。

「確かに僕は君の事はあまり好かないが、別にもう敵視してる訳でもない。一応、もうクラスの一員として見ている」
「っ……」
「君は僕が、君の事を敵視しているからとか、関係性があまり良くならないからあまり近付いても来ないようだから、改めてこの場で関係性をハッキリさせておくよ」

 ヴァンからの言葉に私はどう返すべきか分からず、口を開けるも何も言葉が出てこず黙ったままになってしまう。

「その変な顔はどう言う意味だい? 僕を馬鹿にでもしているのか? 人がこうしてわざわざ隣の席に座ってまで話してやっているのに」
「え、あ、そ、それを言う為に隣に座ったの?」
「それ以外に、わざわざクリスの横に座る事はない」
「そ、そうですか……」

 ヴァンの言葉に私は納得してしまう。

「とりあえず、俺がヴァンをどんな風に思っていたのかは分かった。これからはあまり避けずに挨拶程度とかには話し掛けても問題なって事だよな」
「? ……まあそうだな。これで僕が言いたい事は終わった」

 そう言って一方的に会話を終わらせて、ヴァンは再び外の景色へと視線を向けた。
 何て言うのかな、本当に嫌ってないんだよね? 態度だけで見ると、そんな風には見えないけど……わざわざ隣の席に座ってまで言って来たのだから、そこは嘘じゃないだろうな。たぶん。
 私はそんな風に解釈し、ヴァンも特にこれ以上話す気はないって雰囲気だったので、これからどうしようかと思い始めた時、偶然ヴァンの手元に今夜ベンベルで観劇する物や他の演劇に関する冊子が見えた。
 あれって確か、今日の夜に見る演劇だったよね? えーと、ある一国のお姫様を狙う謎の仮面を付けた者と婚約者がそれを阻止するって感じだったかな?
 私はうる覚えながら今日観劇する内容を思い出すと、ふと口が無意識に動いてしまう。

「ヴァンって演劇好きなのかな?」
「っ!?」

 そこで突然ヴァンが勢いよく振り向いて来て、私は驚いてしまう。

「クリス、それはどういう意味だ?」
「え? 何が――あっ、もしかして口に出てた?」

 するとヴァンは自分の手元に置いていた冊子に気付き、何故クリスがそんな事を口にしたのか理解する。
 ヴァンはそのまま冊子を手に取ってクリスに見せて「これか」と訊ねると、クリスは直ぐに首を縦に振った。
 クリスの反応を見てヴァンは冊子を下ろし黙る。

「……ご、ごめん。無意識に口に出ちゃってて。最近考え事する事が多くて、つい口に出しちゃうことがあってさ」
「……」
「もしかして知られたくなかった、感じ?」

 私が恐る恐るそう訊ねると、ヴァンがようやく口を開いた。

「そういう訳じゃないが、あまり趣味の話をしないだけだ」

 そこで私は初めてヴァンの趣味を知り、そんな一面があるのだと少し驚くのだった。
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