とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第433話 豹変

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 スニークの攻撃に反応が遅れたオービンは、背中に強い衝撃を受けるもそのまま自ら前へと体重を移し、威力をほんの少しだけやわらげた。
 そしてスニークの方へと身体を向けるが、スニークは止まらずに低い姿勢で追撃してくる。

「くっ」

 すぐさま構えるオービンに対し、スニークは足元をすくうように蹴りを繰り出すが、オービンは飛び上がりかわす。

「やめろ、スニーク!」
「……」

 スニークはオービンの言葉を無視し、攻撃を続ける。
 その場で回し蹴りをオービンに叩き込み、芝生の方へと蹴り飛ばす。
 オービンはスニークの蹴りを両腕で防いでおり、芝生の方で受け身をとり体勢を立て直すが、スニークが迫って来ていた。

「エメル! スニークを止めさせろ!」

 しかし、叫ぶ声もむなしくエメルは動かずただじっとこちらを見ているだけであった。
 するとスニークが近付いて来ながら、片耳に付けている鈴を人差し指を弾き鳴らす。
 鈴の音がオービンに向けて放たれると、咄嗟に耳を塞いだ。

「(音に魔力を乗せた攻撃……聞き続けたら感覚がおかしくなるやつだな。ここまでするか)」

 スニークは鈴の音を放ちながらオービンに掌底打ちを仕掛ける。
 両手で耳を塞ぎながらオービンは後退しながら攻撃をかわし続ける。
 だが、いつまでもかわし続けられず一瞬の隙をつかれ、腹部に掌底打ちを受けてしまい吹き飛ばされる。
 するとそこでエメルがスニークに声を掛け、近寄って来る。

「スニーク、一度それも止めろ」
「はい、寮長」

 エメルの言葉に直ぐに従い、音を鳴らしていた鈴を片手で握って音を止める。
 それを見ながらオービンは未だに両手で耳を塞ぎながら立ち上がる。

「スニーク、さっき攻撃までするか普通?」
「当方は寮長のみの指示しか聞かない。ましてや、お前の言葉などに耳を傾ける事もない。それはお前が一番分かっているだろ」
「オービン、いつまで耳を塞いでいるつもりだ? もうとっても大丈夫だぞ」

 エメルの言葉にオービンは音が止んでいる事は分かりつつ、何かの罠ではないかと警戒して外さずにいたが、ゆっくりと手を耳から離した。

「……まだこんな事を続けるのか?」
「いや、ひとまずは止めるよ。確信出来たからね」
「そうか、やっと分かってく――」
「お前が思ってた通り、偽者だったって事が」
「!? な、何でそうなるんだエメル!」

 オービンは理解出来ずにエメルに問いかけると、エメルは小さくため息をつく。

「いいか、オービンって奴はそもそも普通の奴とは違うんだよ。さっきみたいに簡単にスニークの攻撃も受けないし、無様に耳を塞いだりしないんだよあいつは」
「何を」
「何を言ってるんだって? そんなの僕に言うなよ……偽者さん。それが僕が見て来て理解している、オービンって奴なんだからよ」

 その言葉にオービンは黙って軽く俯く。

「そうだな、本物だったらそもそも僕と話し始めた時点でスニークの存在に気付き、軽く目線を向けたりするだろうなって、そんな事言っても仕方ないか」

 そこでスニークが軽く構え、エメルが片手を腰に当てる。

「観念しなよ。君が悪かった訳じゃないよ、選んだ相手と見つかった相手が悪かっただけさ」

 直後、俯いたオービンから絶対に聞かない舌打ちが聞こえ、急に手をポケットに引っ掛ける様し態度が変わる。

「何なんだよ、お前。同級生なんだろ? 仲悪いのか? ここまで攻撃しないだろ、普通よ」
「おーおーこれはこれは、オービンでそんな事を言われるのが新鮮で、ちょっと面白い」
「ちっ……面倒だな」

 するとオービンが背中から短剣を取り出すと、スニークが瞬時に距離を詰め顎目掛けて真下から掌底打ちを放つ。
 が、オービンは先程までの動きとは違い後ろに倒れるようにスニークの攻撃をかわすと、そのままバク転し足でスニークを蹴り上げる。
 宙に蹴り上げられたスニークに目掛けてオービンは手に持っていた短剣を投げつける。
 咄嗟にスニークは向かって来る短剣を手で刃先を握り止めた。

「ぐぅっ」

 オービンはそのまま落下してくるスニークに対し、飛び上がり真上から頭を掴み抑えつけ、地面に叩きつけた。
 強い衝撃がスニークの頭部に入ったはずだが、スニークは気を失わずに短剣を投げ捨て、手袋を外して乗っかっているオービンに向けて手を伸ばすが、寸前でオービンは離れる。

「危ない、危ない。お前は確か特殊体質なんだよな。魔力を吸われたらたまったもんじゃない」
「スニーク」
「寮……長……すいません。油断しま……した」
「エメル、お前の得意な技も知ってるぞ。魔力の高濃度圧縮にて、それを相手に注入し相手自身を制御不能にさせるんだろ。対策は簡単、近付かなければ問題ない」
「(まだ見せてすらないのに、そこまで既に知られているのか。それにスニークの特異体質情報も知っているときた。何処から情報を得ているんだ、こいつは)」

 そう一瞬考えつつ、スニークに目線を向けオービンに再び戻すと、そこにオービンの姿がなくなっていた。

「!?」
「ダメじゃないか、相手から少しでも目を離したら」

 直後オービンに背後をとられており、そのままひざ裏を蹴られ体勢を崩してしまい、そのまま地面に押し付けられるように倒されてしまう。
 するとオービンは新しい短剣を取り出し、エメルの両手首を軽く斬るのだった。

「ぐうっ!」

 更に、長細い紙の様なものを二本取り出すと、それをエメルの両腕に打ち付けると、それが地面に腕を完全に固定するのだった。

「大丈夫。今のは固定する魔道具だ。魔力に反応し、感知し続けるまで固定し続ける物だ。で、手首からドクドクと血が流れて行くのを感じるだろ」
「くそっ」
「おいおい、そんな力入れると血がすぐになくなるぞ。じわじわとお前は死んでいくようにしたんだから、死に急ぐなよ」

 そう告げるとオービンは立ち上がり、スニークの元へと向かいエメルと同じ様に両手首を軽く斬り、両腕を地面に固定させるのだった。

「これで二人仲良く死ねるぞ。一人じゃないから怖くないよな」
「このやろう!」
「一瞬の隙が、命取りになると身を持って分かったかな。まあ、それを活かす次の機会はもうないけどな」

 オービンはそのまま二人の元から離れて行きオービン寮へと向かい始める。

「もって一時間だろ。それまでに助けが来るといいな」
「待て、オー……」

 その瞬間エメルは、急激な目まいに襲われる。

「(まずい、思った以上に血が体から出ている影響が……このままじゃ……)」

 エメルは絶体絶命の状況に何も打つ手も出来ず、思考もうまく働かなくなりつつあり、死が迫って来るのを感じ始めた時だった。

「君たち!」

 そこへ救世主の様に現れたのは、副学院長のデイビッドであった。
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