とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
435 / 564

第434話 終決

しおりを挟む
 デイビッドは直ぐに倒れているスニークへと駆け寄ると、オービンは足を止めデイビッドの方を無言で見つめる。

「大丈夫か、スニーク君! それにエメル君も!」
「副学院長……」

 エメルはかすれた声を口にすると、デイビッドはこちらを見ているオービンへと視線を向けた。

「オービン君……これはどういう事か説明してくれるかい?」
「……はぁ~説明もなにもないですよ。もう見ての通りですよ」

 その言葉を聞きながらデイビッドは、魔力創造で固定された箇所の地面を盛り上げて拘束を解き、スニークから手当てを始める。

「何を考えてこんな事をしたのか分からないが、事情はしっかりと答えてもらうからな」

 オービンはデイビッドの言葉に黙っていると、短剣を手にしスニークの手当てをしているデイビッド目掛けて投げつけようとする。
 エメルは声を掛けようとするも、上手く声が出なかった。

「(脳天なら一撃だろ)」

 と、思い短剣を振り抜こうとしたが、次の瞬間背後からその腕を掴まられる。

「!?」

 オービンが咄嗟に振り返ると、そこには学院長であるマイナが腕を握っていたのだった。

「今すぐ剣を離しなさい」
「っ……」
「離しなさい」

 マイナの言葉にオービンは従わずにいると、オービンはその場でマイナ目掛けて回し蹴りを繰り出した。
 すぐさまマイナはオービンの手を離し後退しかわす。
 オービンは後退するマイナを目にすると、そのまま短剣を握ったまま後方に倒れているスバンの元へと近付き、首元目掛けて短剣を振り下ろす。
 しかし、オービンの体は真横からの突然の突風により吹き飛ばされる。
 その後も連続して、突風がオービンを襲い引き離されて行く。

「ぐっ! 『ガスト』か」

 オービンは体勢を立て直し、直ぐにマイナへと目を向けた。

「オービンさんの姿をしている様だけど、貴方は何者?」
「それは言えないな、マイナ学院長」
「そう。なら、捕らえて王国軍に引き渡すまでよ!」

 その直後、マイナが両腕を軽く振り下ろすとオービンの真上から鉄砲玉の様な『ガスト』が連続で降り注ぐ。
 だがオービンは寸前でかわし、マイナへと近付き始める。

「あんたの攻撃だけは、当たらないよ」

 オービンはそのまま次々にマイナの魔法攻撃をかわし続け、迫って来るがその時オービンが踏み出した先の地面が急に盛り上がり、オービンを宙へと放り投げた。

「相手は一人じゃないぞ」
「ちっ! めんどくせぇ……」
「デイビッド」
「学院長、サポートはお任せください。二人の応急処置も終わらせていますので」
「流石、副学院長ね。そしたらサポートはお願いね。彼は絶対に逃がしません!」
「承知しました」

 デイビッドはすぐさま、周囲の地面を壁の様に盛り上げさせ、完全にオービンを包囲する。
 あっという間に逃げ場を失ったオービンは目を見開く。
 そこへマイナが『サンダー』を宙のオービンに頭上から落とすが、オービンは自身を護れる魔道具を投げて魔法にぶつけ身を護る。
 オービンはその間に着地するも、次の瞬間にはデイビッドが包囲した周囲の壁からオービンを拘束しようと魔力創造で土柱を伸ばしていた。
 しかし咄嗟にオービンはしゃがんで回避し、マイナたちの方へと踏み出すが、同時に踏み出した足場から『アイスピラ』により氷柱が出現するが、それすらも寸前で顔を逸らし避ける。
 だが、マイナはそれを見越し連続で魔法を使用し『アイスブランチ』によって、その氷柱から周囲へ氷を枝状に放つ。
 さすがにこればかりは避けきれず、オービンの身体に氷が突き刺さる。
 マイナはそこへ畳みかけ『ストーム』の中に『ガスト』を混じらせ放ち、オービンを包囲した壁へと吹き飛ばす。
 そのまま逃がさない様に『ストーム』で身動きを封じ、デイビッドに拘束する指示を出す。
 デイビッドは指示通りに張り付けられている壁から、魔力創造で全身を覆うように壁に拘束する。

「ぐっ……」
「貴方は、このままここで拘束させてもらうわ。王国軍に引き渡すまではね」
「学院長さすがにオービン君の顔をさらして拘束というのは」
「分かっているわ、デイビッド。口と鼻以外残して拘束を。それと私はここで彼を見張るから、数人教員をこっちに連れて来て。もちろん治療できる教員も含めてね」
「承知しました」

 デイビッドはすぐさま行動し、その場から立ち去る。
 それからデイビッドが教員たちを連れて戻って来た時だった。
 王城の周囲を囲っていた結界が解除されていき、それとほぼ同時に王都を囲っていた結界も同じ様に解除されて行く。
 マイナはその場から結界がうっすらと解除されいくのを感じ、王城の方へと視線を向ける。

「(ひとまずは終わったという事かしら? でも、王都内は大混乱ね。ハンスたちも無事だといいけど、先に自分の方ね)」

 そう思いマイナは拘束しているオービンの方へと視線を戻すのだった。
 それから暫くして、王都内全域に向け国王のハンスが話し掛け事態を包み隠さず、現時点で分かっている事を丁寧に人々の不安を取り払う様にゆっくりと説明し始めるのだった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ――王都襲撃事件から三時間後。
 王城の一室では、各地での細かな状況の報告の整理をおえ、ようやく事件の全貌が見え始めていた。
 未だ各地では王国軍の隊長たちが筆頭に兵士たちが人々への説明や、怪我の手当て、行方不明者の捜索など様々な事にあたっていた。
 その為、王城内も慌ただしくなっていた。

「まだ全てではないが、状況がやっと見えて来たか」
「そうね。こう見ると事前に下調べした上での行動に見えるわね」

 ハンスとティアは、現時点で集まっている情報を元に王都内の地図を照らし合わせ今回の事件を再度振り返っていた。
 一室には二人以外にリリエルが立ち会っており、それ以外の人は誰もいなかった。

「ハンス、あとここには誰か来るのか?」
「いえ、今の所は誰も来ませんよ。隊長たちにも休息してもらってから王都内の対応に出てもらってますし」
「そう。それで襲撃して来た奴らはいまどうしてるの?」
「それは地下牢にて厳重拘束した上で、各隊の中隊長と数名の兵士が交代しながら監視中ですよ」

 するとそこへ扉をノックしてくる音がし、ハンスが返事をすると外の兵士が入って来る。

「失礼します。先程新たに今回の事件に関わっていると思われる者を受け取りました」
「受け取った? どういう事だ」
「それがですね」

 と、兵士が少し戸惑った様子を見せているとその後ろから突然一人の人物が部屋の中へと入って来るのだった。

「そこから先は私自身が説明しますわ」
「あ、お待ちください! まだ入られては」

 部屋に入って来た人物を見て、ハンスとティアは少し驚く。
 そこへ現れたのは、マイナであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

悪役令嬢はやめて、侯爵子息になります

立風花
恋愛
第八回 アイリス恋愛ファンタジー大賞 一次選考通過作品に入りました!  完結しました。ありがとうございます  シナリオが進む事のなくなった世界。誰も知らないゲーム後の世界が動き出す。  大崩落、王城陥落。聖女と祈り。シナリオ分岐の真実。 激動する王国で、想い合うノエルとアレックス王子。  大切な人の迷いと大きな決断を迫られる最終章! ーあらすじー  8歳のお誕生日を前に、秘密の場所で小さな出逢いを迎えたキャロル。秘密を約束して別れた直後、頭部に怪我をしてしまう。  巡る記憶は遠い遠い過去。生まれる前の自分。  そして、知る自分がゲームの悪役令嬢であること。  戸惑いの中、最悪の結末を回避するために、今度こそ後悔なく幸せになる道を探しはじめる。  子息になった悪役令嬢の成長と繋がる絆、戸惑う恋。 侯爵子息になって、ゲームのシナリオ通りにはさせません!<序章 侯爵子息になります!編> 子息になったキャロルの前に現れる攻略対象。育つ友情、恋に揺れる気持<二章 大切な人!社交デビュー編> 学園入学でゲームの世界へ。ヒロイン登場。シナリオの変化。絆は波乱を迎える「転」章<三章 恋する学園編> ※複数投稿サイト、またはブログに同じ作品を掲載しております

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。 ※後日談を更新中です。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

天咲リンネ
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

処理中です...