とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
436 / 564

第435話 遡及

しおりを挟む
「マイナ!?」
「お久しぶりです、ハンス国王、ティア女王」

 そうマイナは口にし、礼儀正しく頭を下げて顔を上げると部屋にリリエルがいる事に気付き、二度見をしてしまう。

「リ、リリエル先生!?」
「学院祭以来だな、マイナ」
「ななな、何でリリエル先生がここに?」

 マイナは動揺し二人の方を見ると、ティアは小さく笑う。

「あ、あのこちらの方とご知り合いなのですか?」
「そうだ。このまま彼女を通してもらって構わない。先程の報告は彼女から直接訊くから大丈夫」
「承知いたしました。では、私はこれで」

 兵士は一礼し部屋から出て行き扉を閉めていくのだった。

「さてとマイナ、リリエル先生の事は説明するけど、王城に来た理由から教えてもらってもいいかい?」
「分かりましたハンス国王」
「あ~ここには俺たち以外に誰もいないから、呼び捨てでいいよ」
「そうよマイナ。他に誰の目がない時は、昔のままでいいと言っているでしょ」
「そうだったわね」

 その後マイナが学院にて、オービンの姿をした偽物が現れた事を話し始める。
 王城に来た目的は、その偽者を王国軍に引き渡した上で直接報告しようと輸送と共にやって来たのだった。
 現状学院は、副学院長であるデイビッドを筆頭に教員たちが対処しているのであった。

「学院側は他に被害は出てないのか?」
「生徒が二名負傷したわ。でも、直ぐに病院へ運んでもらい、命に別状はないわ。外出していた生徒の安否確認も終えて全員無事を確認したわ」
「そう、負傷者が出てしまったのね。学院にも侵入するなんて……しかも息子の姿でなんて」

 ティアの苦虫を噛み潰したよう顔しているのをハンスは横目で見て、マイナに話し掛ける。

「学院も例の事件以来警戒を強めていたはずだ。姿だけを似せても内面の魔力までは真似る事は出来ないはずで、それも感知する様な物ではなかったか?」
「ええ、学院の入口でスキャンされ判定されるはずよ。でも、何故か反応せずにすんなりと偽者は入って来た」
「確かそれって、学院側で操作が出来る物よね。誰かが装置をオフにしていたという事は?」
「可能性としては考えられるわね。ただ、装置のオンオフは私以外には出来ないの。鍵と私の魔力の二重認証で切り替える物だし」
「なら既に登録している人間の魔力を書き変えたのだとしたら?」

 リリエルが突然会話に参加して来て、三人はその言葉にハッとする。

「確かにそれが可能なら、学院に何の問題なく侵入は可能だ」
「書き変えるって言いましても、確かに出来なくはないですが、学院でもそんな事が出来る人物は絞られてくるわけで」
「……誰かがバベッチと繋がっている」

 ティアの呟きにマイナはティアに視線を向ける。

「何でここでバベッチの名前が出て来るのよ」
「それは……」
「ティア、その話は私がしよう」

 リリエルがそう言ってマイナに近寄る。

「ハンスとティアには簡易的にだが話しているが、改めて二人も聞いて欲しい」
「どういう事なんですが、リリエル先生。何で20年以上も前に死んだバベッチの名が、今出るんですか?」
「それはなマイナ、バベッチ・ロウは20年以上も前のあの日に死んではなかったからさ」
「えっ……」

 衝撃の告白にマイナは言葉を失うと同時に自分の耳も疑った。

「正確に言うとバベッチは今回の襲撃事件の中心人物でもある」
「リリエル先生! それはまだ」
「隠しても意味はないだろ、ハンス。いずれ知る事だ。それにこれから話す事にもそれを知った上の方が話しやすい」
「……そんな……バベッチが生きていて、この襲撃の犯人?」

 すでにマイナの頭は理解出来ずにパンク寸前となり、軽くよろけて机に手をつく。
 ティアはマイナに駆け寄り手をとり、近くの椅子へと座らせた。

「ありがとう、ティア」
「ううん。そうなるのは当然よ。リリエル先生、もう少しマイナの事も考えてください」
「そんな悠長な事を言っている場合じゃない。バベッチは既に王都をこんなにも混乱させられる力を得ていると考えろ。しかも簡単に王都に侵入も出来るんだぞ。再び襲撃されてもおかしくない状況だぞ」
「っ……」

 その言葉を聞きマイナはティアに声を掛けた。

「私は大丈夫よ、ティア。リリエル先生、突然の事で驚いただけですので話を続けて下さい」
「マイナ」
「これでも学院長よ。一国の危機にうろたえてられないわ」

 そう振る舞うマイナの手は少し震えていたが、ティアはその事は口にせず軽く唇を噛みリリエルの方を向くのだった。
 リリエルは二人の顔を見てからハンスの方を向く。

「ハンスも、いいな」
「……分かりました」

 三人の覚悟した顔を見て、リリエルは以前学院祭でリーリアを含め同じ話をした時の事を思い出す。

「(そう言えば、この話をするのは二度目だな。あの時は介入し過ぎたと思い後悔して、全員の記憶を消して別の記憶を埋めたが、今回はもうそんな事はしない)」

 そうしてリリエルは、24年前に起きた王国でのクーデター事件まで遡って話を始めるのだった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 時間は、冬の修学旅行最終日に衝撃的な話をされたアリスたちへと戻る。

「これが現時点で分かっている、王都襲撃事件の全貌だ」

 教員の言葉に私を含め全員が言葉を失っていた。
 私自身もどう受け入れればいいのか、分からなくなっていた。
 そんな中で教員は話し続けた。

「王都は厳戒態勢中の為、本日戻る予定であったが一日延期し王都近くの街で一泊し、翌日王都に戻るスケジュールとなった」

 この日私たちは最高の旅行気分から、一気に奈落の底へと突き落とされたのだ。
 それから私たちは、暫く出発までの時間まで考えを整理するや気持ちを落ち着ける時間として部屋で待機する事になった。
 その場から動かない者や、とりあえず話して気を紛らわそうとする者、王都の知り合いを心配する者などと様々な行動をとっていた。
 私は自由に閲覧して良いとされた、王都襲撃事件の資料を手にとり恐る恐る中身を読み始めた。

「(各所で被害が出ているのね。でも、復興も進んでる感じよね……で、これが学院にも被害が出た箇所ね)」

 資料をめくり私は学院の被害報告の箇所で止め、改めて報告内容に目を通した。

「(死者はいないものの、生徒二名が負傷。学院長と副学院長により、侵入者を拘束し被害が大きくならずに済む。未だ侵入者は黙秘を続けており、目的は不明か……)」

 そこまで読み私は資料を閉じ、資料を机へと戻した時「クリス」と背後から声を掛けられ私は振り返る。

「ルーク」
「その資料、俺に見せてくれないか?」
「あ、ああ」

 私は机に置いた資料をルークに渡すと「ありがとう」と言われ、ルークは資料を持ってその場から立ち去って行くのだった。
 そんなルークに私は何も声を掛ける事が出来ず、ただ立ち去って行くルークを見る事しか出来なかった。
 するとそんな私の元へ、タツミがやって来るのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です

オレンジ方解石
恋愛
 結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。  離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。  異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。  そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。  女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。 ※追記の追記を少し直しました。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。 ※後日談を更新中です。

9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑! 10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。 もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。 (頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)

処理中です...