とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
444 / 564

第443話 嵐の様な特急便

しおりを挟む
 私は呼び出された先で、まさかクリバンス王国の女王ティア・クリバンスがいると思わず固まってしまう。
 ティアの服装は女王という様な格好ではなく、ラフな格好であった。

「クリスとしては、始めましてね。でもここではクリスとして振る舞う必要はないわ、アリスちゃん」
「!?」
「急にごめんなさいね。リーリア、貴方のお母さんから話は聞いているの」

 それを聞き、私は咄嗟に部屋にいるタツミとリリエルの方を見る。

「私はどちらでも大丈夫よ。クリスでも、アリスでも」
「お前は覚えているか分からないが、俺は修学旅行のあの一件でもう知っているぞ」

 リリエルとタツミの反応から、既にこの場の全員が私の正体を知っているのだと理解する。
 そしてゆっくりと深呼吸した後に、ため息をついた。

「そう、ですか。それじゃ、アリスとして振る舞ってもいいですか?」
「もちろんよ、アリスちゃん」
「っ……何て言いますか、その、ちゃん付けされるの慣れていないので少し恥ずかしいです、ティア王女様」
「ごめんなさい。つい、昔の癖で」

 少し慌てた表情で謝るティアに私も慌てて「ただ慣れてないだけですので」と答える。
 そんな様子を見てリリエルが小さく笑う。

「あのティアがリーリアの娘と話しているなんて、あの頃は思いもしなかったわ」
「そう言えば、リリエルさんはお母様が学院生の時の教員だったんですよね。それでティア王女様とも知り合いって事は」
「そうよ。リーリアから聞いてないかもしれないけど、私と貴方のお母さんとは同級生よ」

 今までお母様からそんな事聞いた事なかったんですけど!? 嘘、お母様ってティア王女様と同級生だったの!?
 私が驚いていると、リリエルが更に情報を付け足して来る。

「ちなみに、今通っている学院の学院長のマイナだが、あいつもリーリアとティアの同級生だぞ」
「えぇ!? 学院長もですか!?」

 まさかの情報に少し混乱していると、リリエルがそんな私の状態を見て笑う。

「リリエル先生、あまりアリスちゃ……アリスさんをいじめないでください」
「別にいじめてた訳じゃないだろ。お前らの関係性を教えてあげただけだ。そもそも、リーリアが教えていればこんな風にはならなかったろ?」

 その後暫く落ち着く時間をもらい、私は情報を整理しひとまず落ち着いた。

「すいません、もう大丈夫です」
「そうか。それじゃ、早速本題に入ろうかアリス」
「あのリリエルさん、そもそもなんですが何で私呼ばれたんです? しかも、ティア王女様もいてこれから何を話すんですか?」

 するとティアがその問いかけに答えた。

「そうね。まずはそこからよね。今日アリスさんをこうして呼び出したのは、貴方に今後危険があるかもしれないという事を伝えるためよ」
「っ!? 危険、ですか?」
「ええ。この前の王都襲撃事件については既にマイナ、学院長から話があったかしら?」

 私はつい先程その話を聞いた事をティアに伝えると「そう」と口にする。

「その、私に危険があるかもってどういう事ですか? 私何に巻き込まれているんですか? 今回の事件に関係があるんですか?」

 思わぬ言葉に私は動揺が隠しきれずにティアに対して質問攻めしてしまうが、そこにリリエルが割り込んで来る。

「アリス。こっちを見て」
「っ」
「まず今回の事件にアリスは関係ない、貴方がどうって事じゃないからそれは考えないでいい。次に危険があるかもというのは、可能性があって確定じゃない。そして最後に、何故危険があるのかというのをこれから根拠を一から説明する」

 リリエルはゆっくり私が理解出来る速さで知りたい情報を渡してくれた。
 私はそれを聞き、少しだけ落ち着いたが未だに状況が理解出来ずにいた。
 私自身が分からない所で何かに巻き込まれているって事よね? しかもそれはティア王女様が出て来る程の事で、リリエルさんやタツミ先生もそれに関わってるって事。
 あーもう、頭がいっぱいっぱい。
 一体私は何に巻き込まれているの?
 私はその場で片手で頭を抱えてしまう。

「これは当然の反応だと思いますよ。大切な事ですし、もう一度時間をとった方がいいのではないですか?」

 そう口を挟んだのはタツミであった。
 タツミの言葉にティアも頷き、再び休憩する時間をとる。
 そこでティアは立ち上がり、気分転換にと皆の分の飲み物を買いに行くと口にし一度部屋から出て行く。
 その姿を見てリリエル「何も聞かず出て行くやつがいるか」と呟き、ゆっくりと立ち上がりティアの後を追う。
 私は座ったままでいると、部屋に残ったタツミが話し掛けて来た。

「外の景色でも見ると、少しは楽になるぞ」

 そう言われ、私は言われるがまま立ち上がり窓の方へと歩いて行き、景色を見つめた。

「……私、自分が思っていた以上に頭のスペース狭いかも、です」
「色々言われたら、誰しもそうなるもんだ」

 一方でティアを追いかけたリリエルは、部屋からかなり離れた場所でティアを見つける。

「おいティア、こんな反対側の端まで来る事ないだろ」
「リリエル先生……やっぱり、彼女に伝えないとダメですかね」
「……絶対じゃない。だが、彼女にあいつが手を出さないとも言い切れない。これは私の独断だ、最終的にどうしたいかはティアお前が決めることだ」
「昔からリリエル先生は変わらないですね。判断は自分で決めろっていうところ」

 ティアは窓に映る自分を見つめながら、そこに移るリリエルに視線を向ける。

「お前が私が伝えると言ったら、自分に一任させて欲しいと言ったからだろ。リーリアの娘だからなのか、昔の自分と重ね合わせているからかは分からないが、どうするのかは改めて今決めておけ」
「そこまで分かってて、私に一任させてくれたんですね。まさかあの頃の自分の方まで見抜かれているとは、思ってなかったですよ」
「魔女っていうのは大抵何でも知っているものよ」

 リリエルの言葉にティアは振り返り苦笑いをする。

「それでどうするんだ、ティア」

 そこでティアは小さく深呼吸した。

「……伝えます。彼女を、大切な親友の子を護るために。リーリアは何を勝手にと怒るかもしれないですが、それは覚悟の上です」
「リーリアに言う時くらいは、私の名前を出せばいい。そもそもは、私からの提案なのだからな」
「では、遠慮なくリリエル先生に押し付けますね」
「怖い女王様になったもんだ」

 そして二人は飲み物を買い部屋へと戻って行くのだった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「そんな訳で、俺やミカロスは暫くはこのままだ。それにその後は王国軍からの聴取があるから、直ぐに寮には戻れない」
「そうなんですね」
「それでこの手紙で次期寮長、副寮長の俺たち二人を呼んだのか」

 ルークは再び手紙を手に持ってオービンに見せる。

「そう言えば、そんなのいつ届いたんだルーク」
「昨日来たろ、嵐の様な特急便がさ」

 トウマはルークの言葉にピンと来ず首を傾げると、オービンが笑う。

「気になるんだが、どんな風にあいつから受け取ったんだいルーク?」

 ミカロスからの問いかけにルークは手紙を四つ折りにしながら答え始める。

「飲みかけの飲み物の下に、こんな風に張り付けた状態で渡されましたよ。偶然手で触れなかったら、気付かずに捨ててましたよ」
「あははは、ヒビキ奴面白い渡し方する」
「危うく捨ててたか。全く、あいつは」

 そこでトウマも気付いたのか声を上げる。

「え!? あれ? あの最後にヒビキ先輩から渡された、あれについてたのか?」
「そう。でも兄貴、何でわざわざ手紙なんて送って来たんだよ。事件について話があるってさ」
「その方が、お前は素直に来てくれると思ったんだよ。どうせ呼び出しても、変な理由を付けて来ないっていう可能性もあったからな」
「そんな事は……ねえよ」

 目をそらして答えるルークに、オービンは優しく微笑む。
 すると突然部屋の扉が開き誰かが入って来た。

「あーもう、同じような事聞かれるし、拘束長いわだし、本ッ当に疲れたわ……って、ルークにトウマじゃない」

 そこへ現れたのは、エリスであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です

オレンジ方解石
恋愛
 結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。  離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。  異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。  そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。  女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。 ※追記の追記を少し直しました。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

処理中です...