とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
456 / 564

第455話 甦る思い出

しおりを挟む
「もしかして予定ある?」
「いやいや、それ以前に何で俺? 二人で行くんじゃないのか?」
「それがこれに参加するには、三人一組でないといけないのですわ」
「だけど、誘おうとしていた他の皆がもう予定が入ってるって事で、もう一人探していたの。で、そこでクリスを見つけたって所」

 モランがいうには、シルマにミュルテ、更にはウィルとマートルも掲示板依頼を受けており予定が入っているらしい。
 週末の王都内イベントの関連で街内で似た様なイベントが開催されており、モランがその掲載を見つけ楽しそうだと思いジュリルを誘っていたのだった。
 チョコ作り体験会は学院生だけではなく、一般の人も参加するものでありチョコを作っている料理人が直接教えてくれるらしく、参加費のみ支払えば材料などは向こうが全て用意してくれるものだと説明してくれた。

「参加に一人足りないのは分かるが、そこにわざわざ俺を入れなくてもいいんじゃないか? 俺、男だし参加しても肩身が狭い思いをするだけだと思うしさ」
「そうですわね、男子がこれに参加するとは思いませんものね」
「だろ? 俺なんかより、他にそれに興味ありそうな女子を誘った方がいいって」
「他にって言われても、ね」

 モランはそう口にしながらジュリルの方へと視線を向ける。
 ジュリルはその視線に気付き、その場で他に誰かいたかと考え始める。

「いないわね。モランは誰か思い当たる人いますの?」
「私も声を掛けられる人はもう声を掛けてるし、他にはいないかな」

 そこで再び二人は私の方へと視線を向けて来る。
 えー本当にいないの? いないからって私じゃなくてもいいでしょ。
 別にチョコが嫌いとかじゃないしどちらかというと面白そうだけど、クリスとして行くのはちょっとどうなのって感じだし。
 とういうか、ジュリルは私の正体知ってて誘ってるよね?
 私が二人からの視線にしり込みしていると、ジュリルが何かひらめいた表情をする。
 その時、何となく嫌な胸騒ぎがした。

「クリス、女の子に興味はありません?」
「っ……そ、それはどういう意味だ、ジュリル?」
「ジュリル?」
「簡単な事ですわ。男子として参加するのではなく、女子として参加してもらえばいいのですわ」

 何を言ってるんだこの人ー! 私に正体を明かせって事? いや、さすがにそうじゃないよね。そうだよね、ジュリル?
 私は内心ドキドキしながらジュリルの方を見ていると、モランが私の代わりに問いかけてくれた。

「それってクリスを女子に見せるって事?」
「そうですわよ、モラン。クリスに女子になってもらうのですわ。そうすれば、クリスが肩身の狭い思いもしませんし、一緒に楽しめますわ」
「何で俺がもうそれをやる前提で話を進めるんだよ」
「あら、やらないのですか?」
「普通はやらないだろ、そんな事」

 その時、真逆の事をやっている自分に自分で言い放った言葉が突き刺さる。
 また一度クリスとして女装をした、メルトボーイ・クイーンコンテスト前哨戦の時の事が脳裏に浮かんだ。
 するとジュリルは少し考えた後に、再び口を開く。

「修学旅行中に色々としてさしあげた恩を仇で返されるとは、私悲しいですわ」
「なっ」

 ジュリルはそう口にしながらチラッと私の方を見て来た。
 まさか、脅して来るとは……しかも修学旅行中の件で。

「え、何かしたの?」
「相談に乗っていたのですわ。記憶喪失であることがバレない様に、クリスが今まで関わって来た他の人へとの振る舞いなどを教えてあげたのですわ」
「そうだったんだ」
「あの時は助けて差し上げたのに、私が困っている時には助けてくれないのですねクリス」
「っ……そ、それは」
「友達だと思っていましたのに」
「うっ……」
「そう思っていたのは、私だけだったのですね。悲しいですわ」
「あー分かった! 分かったから、それ以上変に揺さぶるのは止めてくれ」

 するとジュリルは笑顔で「という事は、共に参加してくれるのですね?」と再度確認して来た。
 私は抵抗する事は諦め「ああ」と返事をした。
 そう返事をしたが、半ばもうどうにでもなれという投げやりな感じであった。

「クリス、本当にいいの?」

 モランが心配そうに問いかけて来たので、私は軽く息を吐いてから答えた。

「二人には修学旅行中の時の事もあるし、俺で本当によければ数合わせになるよ。それに少し面白そうではあるし……まあ、どんな格好になるか不安だけども」

 私の返事にモランは参加してくれることに「ありがとうクリス」感謝してくれた。
 最後の呟きはモランにも聞こえていないが、喜んでもらえたなら良かったかな。
 するとジュリルが私の方へと近付きながらモランに話し掛けた。

「それじゃ申し込みの方は頼みましたわ、モラン。私はクリスとどの様に参加するかちょっと話しますので」
「おい、ちょっと」

 ジュリルは私の背を押しながら移動し始めた。

「わ、分かった。それじゃ申し込みはしておくね」
「よろしくお願いしますわ」

 そうジュリルは返事をし私はジュリルに押されるがまま、その場から離れ校舎を出て、人目がない校舎裏へと移動した。

「で、さっきのは何ですかねジュリルさん?」
「そう怒らないくださいよ、クリス。貴方にとってもいい息抜きにと思って誘ったのですから」
「息抜き?」
「たまには、女子だけの時間もあっていいと思いましてね。なかなか無いのでは?」
「そうだけど、なら事前にそういってよ。私の事知ってて、あんな意地悪してるのかと思ったんだからね」

 思わずアリスとして話すとジュリルは小さく笑い「ごめんなさいね、唐突で」と口にした。

「それと誘ったのには息抜き以外に貴方とこうして学院で一緒にいられるのも、後少しですので友達として学院生らしい体験を一緒にしたかったのですのよ」
「そう、だったのか。何かそう言われると嬉しいな」
「それでは了承して下さったという事で、早速どのような格好で参加するか決めましょうか、クリス」

 今まで以上に笑顔で迫って来るジュリルを見て、私はもしかしてジュリルは今の私を女の子に着飾りたい為に誘って来たのではないかと思ってしまった。
 その後ジュリル主導で、髪型や服装を決められた。
 そして放課後、私はモランとジュリルと合流し共に外出し、チョコ作り体験会の場所へと向かう前にジュリル行きつけの店に向かい、そこの一部を貸し切りにして私は着替えさせられたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です

オレンジ方解石
恋愛
 結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。  離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。  異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。  そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。  女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。 ※追記の追記を少し直しました。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。 ※後日談を更新中です。

9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑! 10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。 もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。 (頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)

処理中です...