とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第465話 協力者

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 突然の目の前から消えた二名の教員にデイビッドは何の反応もせず、その場から動かずに立ち続ける。
 バベッチたちも何の反応もせずに、ただ黙っているのだった。

「(何が起こったの? 急に先生方が消えた? どうして? デイビッド副学院長が触ったから? どういう事ですの?)」

 ジュリルが状況を理解しようと頭をフル回転させていたが、何一つ分からず焦りが増すだけであった。
 すると隣にいたモランがデイビッドに声を掛けた。

「デイビッド副学院長、今先生方が消えましたよね?」
「……ああ、そうだな」
「何が起きたんですか? そこの不審者に何かされたのですか?」
「……いや違うぞ。彼らは一足先に学院外に移動してもらったんだ」

 そこでデイビッドはゆっくりと振り返り、ジュリルとモランの方を見る。

「私が彼らを移動させたんだよ。邪魔だからね」
「っ!? どういう事か説明していただけますか、デイビッド副学院長」

 するとそこへ騒ぎを聞き、後方から同行していた残りの教員とマートルとミュルテがやって来る。

「デイビッド副学院長、どういう状況ですか? 他の教員は何処に?」
「君たちは下がっていなさい」

 四名の教員がジュリルたちを下げ、参加者たち側へと寄せ雰囲気から異常事態だと察し構え始める。
 だが次の瞬間、一番前に立っていた教員にデイビッドが瞬時に距離を詰めて来て前から肩に手をかけて話し掛けた。

「君たちの方から来てもらって、面倒な手間が省けたよ。ありがとう……そして、さようなら」
「な――」

 再び瞬きを一度した直後に、四名の教員が目の前から姿を消していたのだった。
 それを始めて目にしたマートルとミュルテは言葉を失い、ジュリルはある確信をし皆の前に立つ。

「貴方、先程から何をしているのですか? デイビッド」
「副学院長に向ける目ではないですよ、ジュリルさん」
「今の貴方はどう見ても、私たち側の人ではありませんから。それとそれ以上近付かないで下さい。一歩でもこちらに踏み込んだ時は、貴方の脚を撃ち抜きます」

 ジュリルは魔法発動一歩手前まで魔力を溜めており、ジュリル自身からデイビッドを威嚇する様に魔力を少し溢れ出させハッタリではないとさせていた。
 が、デイビッドは小さくため息をつく。

「今撃たない時点で、それは何の意味も持ちませんよ。やはり、所詮はまだ学生。二代目月の魔女といわれていても、浮かれている一学生に過ぎませんね」
「なっ! 私は本気ですわ! 本当に貴方に向けて魔法をは――」
「では何故今放たないのですか?」
「っ……」

 動揺するジュリルの顔に、デイビッドは薄ら笑いを浮かべる。

「分かりますよ、その気持ち。訳の分からない状況に、冷静な判断も出来ない。ですが、いやがおうにも選択を迫られる経験したことのない状況。そんな時一番真っ先に出て来るのが、怖さなんですよ」

 そしてデイビッドが一歩踏み出し始める。
 ジュリルは「動かないでください!」と声を上げるだけで、魔法を放たない。
 デイビッドはそのまま一歩、また一歩とゆっくりとジュリルとの距離を詰めていきながら話し続ける。

「恐怖で体は強張り、小さく震え出す。これはその場でどうにかなるものではありませんからね」
「止まりなさい!」
「普段の貴方なら迷わずに行動していたかもしれません。ですが、必ずしも万全という状況ではないものです」
「本当に撃ちますよ! そこで止まって下さい!」
「貴方も分かっているだずだ、理解しているだずだ、私が貴方たちに危害を加える存在だと。だが、それを理解しても体はいうことを聞かない。歯がゆいですよね。どうしてこうも無力なのか、どうして自分は何も出来ず、何も発揮出来ないのか。あんなにも努力して力や知識を身に付けたのに、肝心な時に何も出来ない」

 そしてデイビッドはジュリルの目の前に立ち、突きだしていた腕を掴みゆっくりと下ろさせた。

「ああ、今までの時間は自分は何だったんだとなりますよね? こうもあっさりと時間を掛けて積み上げてきたものを、小さな出来事で崩されるんですから」
「っはぁー……はぁー……はぁー……」
「でも落ち込む必要はありませんよ。力なんて簡単に――」
「ジュリルから離れて!」

 モランがジュリルに囁く様に話していてデイビッドを腕を振るって、遠ざける。
 デイビッドは咄嗟に後方へと飛ぶ。

「なるほど、仲間ですか」

 そう呟くデイビッドの視線の先には、ジュリルを囲うようにモラン、マートル、ミュルテが立っていた。

「大丈夫ジュリル! 貴方は一人じゃないわ!」
「そうよ。ここには私たちもいる。一人で全て抱える必要はないのよ」
「ジュリルちゃんは一度深呼吸をして。それとデイビッド副学院長、生徒を脅すなんてどういうつもり?」
「皆……」

 自分を護るように立ったモランたちが、その時小さくそれぞれ震えていたのが目に入り、自分と同じ様にいや、それ以上に恐怖を感じているのだとジュリルは理解する。
 そしてジュリルはそこで大きく息を吸ってはいてを数回繰り返し、デイビッドを睨みつけた。

「元通りですか。これは残念。まさか、お仲間がこうも早く向かって来るとは予想外でした」
「デイビッド、もういいだろ」

 突然そう声を掛けたのは、バベッチであった。
 バベッチの言葉にデイビッドは残念そうにため息をつくと、横へとずれバベッチたちが進みデイビッドと並び立つ。

「デイビッド、貴方何者なのですか?」
「私は見ての通り、彼らの協力者……いや、仲間ですかね」
「な、何が目的?」

 モランは少し震えた声でジュリルに続き問いかけると、バベッチがにこやかに答える。

「君たちには人質になってもらうだけさ」
「人質? そもそも、貴方は誰なのですか?」
「流石は二代目月の魔女だね。臆さない感じが似てるね。まあさっきの感じがあるから、プラマイゼロって所だけど。あーごめん、俺の事だったね。そうだね、俺はさっき言った通りこの学院の卒業生さ。同期だと今の学院長とか、国王に女王もそうだね」
「(マイナ学院長と同期? 嘘、そんな容姿に見えないし、適当に嘘を付かれてる? そもそも答える気がないと受け取るべきかしら それに人質ってどういう事?)」

 難しい顔をするジュリルに対しバベッチは「変に抵抗しようと考えなければいいよ」と声を掛ける。

「とりあえず、おとなしくしていてくれればいいだけですよジュリルさん。細かい事は考える必要はないんです」
「……黙って貴方たちのいう事を聞けと?」
「そう。あ、後言っておくけど助けが来るとは思わない方がいい。この学院は既に特殊な結界で囲んで、更には学院の防衛システムも利用しているから、簡単に人は入ってこれないから」
「嘘、結界? いつの間に」

 そこでジュリルは、デイビッドが内部から色々と仕掛けていたのなら可能だと推理する。
 ジュリルの予想は的中しており、バベッチがデイビッドの協力のお陰で外と分離した現状を作る事が出来たと明かす。
 更には、特殊な結界が学院内にいる男性のみを学院外に移動させる魔法も仕組んでいると何故か明かすのだった。

「おっと、つい力作が上手く行ったから話してしまった。まあ、いいか。という訳だから、教員さんたちには場外に行ってもらったわけさ」
「(そんな事が可能なの? いや、今はそれよりも私たちだけでなく学院案内に参加している人達をどう守るかじゃないの?)」

 するとモランたちもジュリルと似た様な事を考えていたのか、小声でどうするかジュリルに話し掛けコソコソと話し始めると、バベッチが忘れていた事を思い出し「あ!」と声を出す。
 それに対し、ジュリルたちや怯えだす参加たちも一斉にバベッチの方へと視線を向けた。

「そうそう、言い忘れたけど君たちが今腕に付けてるリング。それ、もしも用の爆弾だから、本当に変に抵抗しないでね」
「リングって、これ?」
「そう言えばこれって、今日の案内用に付けるようにデイビッド副学院長から……あっ!」
「その場にいる参加を含め、全員付けているそれですよ。案内中だという印として、最初に配った物ですね。ちなみに私もつけてますよ」

 デイビッドはそう答え、腕に付けているリングを見せる。
 一方でバベッチの発言を聞いた、一部の参加者がリングを強引に外そうとし始めるが、全く腕から取れる事がなかった。
 ジュリルたちも同じ様に外そうとしたが、外れなかった。

「無駄ですよ。それは解除コードを入れないと取れない仕様ですから。それと爆発したら身体は簡単に弾け飛ぶ位の威力はありますから、変に刺激を加えない方がいいですよ」
「デイビッド、それを口で言っても説得力がないんじゃないか?」
「? では、どうしろと?」

 そこでバベッチは小さく不敵に笑う。

「簡単だよ、実際に君が見せればいいのさ。本当に爆発したら死んでしまうという事を」
「え?」

 次の瞬間だった、バベッチが何気なく軽く手を一度叩くとデイビッドに腕に付いていたリングが爆発し、デイビッドだった物が周囲に飛び散るのだった。
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