とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
491 / 564

第490話 魂はあると考えるか?

しおりを挟む
「(っ、いつまで逃げ回る気だ?)」

 バベッチは新たなゴーレム武装を見に纏ったアリスに対し、遠距離から魔法攻撃を仕掛けていたがアリスは反撃する事無く、防ぎかわし続け周囲を探索する様に逃げ回っていた。
 アリスは出入り口以外に建物内からの脱出口を探し続けていた。
 だが、向かう先向かう先外へとつながる窓や場所には必ず出入り口と同じ様に結界で覆われており、脱出する事が出来ずにいた。
 更には一度身を隠したとしても、バベッチの攻撃が必ず追撃して来てあぶり出されていた。
 くそっ! またここもダメ。どこもかしこも結界で覆われていて、出口はないの?
 直後、背後からバベッチが放った雷の矢が迫る。
 アリスは咄嗟に真横へと飛んで回避すると、雷の矢は部屋の壁へと突き刺さると同時に爆発を起こし、アリスはその爆風で二階の部屋から押し出されホールへと飛ばされる。
 するとホールにいたバベッチは、宙に放り出されたアリス目掛け氷の槍を複数創り出し一斉射撃した。
 この体勢だと避けたり逃げるのは難しい。あまり万能型からチェンジさせたくないが、そうも言ってられない。
 アリスはすぐに中心部の魔力を両腕へと回し、ゴーレム武装の形態を変化させ叫ぶ。

「『バースト』!」

 空中でアリスは身体を捻じらして武装した腕を振るい、向かって来る氷の槍を『バースト』にて吹き飛ばした。
 通常の『バースト』よりも数段威力が上がっており、一度の爆発が広範囲に広がりバベッチの放った氷の槍を一度の『バースト』で一掃するのだった。
 アリスは自身で放った魔法の威力で地面へと吹き飛ばされるが、上手く受け身をとり身体を転がし飛ばされた勢いを殺す。
 その間に特化させたゴーレム武装を元の状態に戻して、すぐに顔を上げバベッチの方へと向けた。

「っ!」

 アリスの視界にその時入って来たのは、更なるバベッチの追撃であった。
 無数の風の斬撃波が迫り、アリスはすぐさま中心部の魔力を脚へと流し、再び特化型へと変化させ間一髪避けきる。
 飛んで避けた先でアリスは息を切らしながら、バベッチを見つめた。

「今のはさすがに避けられないと思ったけど、それまで避けるとは凄いよアリス」
「はぁー、はぁー、はぁー」
「かなり息が上がっているようだね。それで脱出口は見つかったかい? もう探せる場所は探し尽して分かったろ。この建物からの脱出口なんてないよ。俺を倒さない限りね」
「っ……」
「もう逃げるのはやめて、俺と戦いなよ。まあ、嫌ならこれまで通りの事を続けるだけだけどね。そのゴーレム武装はいつまで続くかな? いくら新しい形態だからといっても、ずっとは持たないだろ」

 確かにもう考えられる場所は探し尽して、どこも結界が張られていて逃げ道はない。
 それにバベッチには、ゴーレム武装が長く使えない事もバレている。
 この万能型は、通常よりも長く使用できるけども、さっきみたいに連続して特化型に変えると一気に魔力を使うから、万能型でいられる時間が短くなる。
 何とかこの状態で脱出できればと思ってやったのだけれども、考えが甘かった。
 お母様にこだわり私にもこだわっている相手が、用意周到に準備しない訳がないじゃない。
 アリスは自分の甘い考えを悔いつつも、立ち上がりすぐに攻撃に対応出来る様に構える。

「アリスは、俺の学院生時代の研究内容を知っているかい?」

 突然の脈絡もない問いかけに、アリスは困惑した表情を見せる。

「ここの学院生の研究発表とか見ていたんだろ? 気になる物とか、手に取って読んだりしていたろ?」

 バベッチはまるでアリスの行動を近くで見ていたかの様に口にし、アリスは恐怖を感じる。

「……貴方の何て見たことないわ」
「そっか。それもそうだよな。俺のは完成してなかったし、当然卒業生研究発表資料室にはないよな。あっても図書館倉庫にでも埋まってるかだな。学院の事だから捨てる事はしてないと思うが」

 アリスは黙ったまま構え続けていたが、バベッチはそのまま自身の研究内容について話し続けた。

「俺の研究内容はね『魂と身体と魔力の関係性』っていうタイトルでやっていたんだ。簡単にいうと、魂という存在がありそれに対して器として身体が存在していると仮定し、それを結び付けるように魔力が存在しているのではないかという研究さ。アリスはどう思う? 魂はあると考えるか?」
「……」
「この研究に正解なんてないし、あくまで俺の考えでしかない。だが、遠い過去にはそういう考えがあり、魔法により入れ替えたという書物もあるんだ。面白いと思わないか? 魔法は未だ未知な部分があり、様々な可能性を秘めている。俺はそんな可能性の一つを研究してたんだ」

 魂がどうとか、そんなの私にはよく分からないし、考えた事もない。
 だけど、魔法はまだ未知の部分があるのは分かるし、前にリリエルさんからもそんな話をされて印象に残ってもいる。
 でもどうして今そんな話をする訳?
 バベッチが過去の自分の研究を思い出し、浸った表情をしていた時だった。
 アリスの両足が地面に飲み込まれる。

「っ!?」

 急に地面が柔らかくなり、沈み始めたのだ。
 どうにか抜けようと試みたが、抜ける事が出来ず脛辺りまで沈んだ所で止まり、地面から完全に抜けられなくなってしまう。

「アリス、君は警戒が足りないよ。だから、こんな手に引っかかるだ」

 呆れた様にバベッチが話すと、ゆっくりと身動きの取れないアリスへと近付き始める。
 アリスはどうにか抜けだそうとあがくも、完全に足が埋まっておりどうする事も出来ずにいた。

「俺がどうしてオリジナル体の分身体として、ここまで変わらずに存在出来ているか分かるか? 分身体というだけの理由じゃないぞ」

 そのバベッチから問いかけにアリスは耳をかさず、どうすればこの状況から脱せられるかだけを考えていた。
 バベッチも特にアリスから返答を求めている訳ではなかったのか、気にせず話し続けながら近付いて行く。

「俺はこれまでに数回消えかけた時があった。だが、それをある方法で乗り越えて今に至る。何だか分かるかい、アリス?」

 さっきから何か言っているけど、そんなの気にしてる場合じゃない。
 どうする、私? 焦り過ぎるな、足が埋まっているが感覚がないわけじゃない。
 埋まっている部分の周囲が逃げられない様に固定していると考えたら、その周辺に攻撃し崩せれば抜け出せるはず。
 そう考えアリスはすぐさま、両腕に魔力を流し一瞬的な爆発力を生み出せる特化型へと変化させる。
 そしてアリスは足元の地面目掛けて『バースト』を叩き込み、周辺の床が衝撃で壊れアリスの足も抜けると、すぐさま後退した。
 が、バベッチはそうすることを読んでいたのか、アリスの魔法範囲外で一度足を止めており、アリスが抜け出した所を見計らって一気に距離を詰めた。

「ぐっ!」
「さっきの答えは俺の研究さ。この身体にも魂が存在していて、その魂を移植したんだよ。こうやってね」

 バベッチはアリスの懐に潜り込み、両手に瞬時に魔力を溜めるとそれをアリスの腹部へと叩き込むのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です

オレンジ方解石
恋愛
 結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。  離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。  異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。  そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。  女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。 ※追記の追記を少し直しました。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。 ※後日談を更新中です。

9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑! 10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。 もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。 (頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)

処理中です...