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第491話 許可証
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――王都北部。
――地下の遺跡への入口が存在する広場近くにて。
「あそこが地下遺跡へと続く入口がある広場よ」
マイナは近くの建物に身を隠しながら、同行しているオービンとミカロスそしてルークに場所を教えた。
その場所には王国軍兵が二名常駐しており、こんな事態でも誰も中に入れない様に警戒をしていた。
「マイナ学院長、もしかしてですが強行突破しようとかではありませんよね?」
「……そんな事しませんよ」
「(今間があったけど、本当かよ)」
ミカロスの問いかけの答えを聞いていたルークがそんな事を思っていると、広場を警備していた王国軍兵の元に新たに三人の王国軍兵がやって来て合流する。
「増えましたね。何かしら事前に連絡して入れてもらえるって状況じゃないんですよね」
「ええ。こっちの独断ですし、例え事情を話した所で入れてもらえる場所じゃないわ」
「そんな所に今から無断で立ち入ろうとしている訳ですね」
改めてミカロスが状況を整理すると、オービンの方に視線を向ける。
「何だよミカ?」
「オービンお前の地位と権力で何とか穏便に入れないのか? それか、ルークとの合同でもいいが」
「確かに、オービンさんとルークさんはこの国の第一王子と第二王子でしたね。すっかり抜けてましたよ。これは隠れる必要もないですね」
「いや、それは俺にもルークにも出来ない。あの場所に関しては、父上の許しがない限り俺たちでも立ち入りは出来ない」
ルークはオービンの言葉に軽く頷き、マイナは軽く肩を落とした。
「警備は厳重、ハンス国王から許しが出た者しか入れない場所。振り出しですね」
「てっきりマイナ学院長が、父上から許しを貰ったからこの場所に来たんだと思いましたよ」
「あー……そうではないんですよね」
「で、どうするんです? 強行突破するんですか?」
ルークからの問いかけにマイナは腕を組み「さすがに強行突破とはね」と口にどうすべきかを考え始めた。
マイナとしては、こういう事態が王都内で発生したい為警備が手薄になり、どうにか侵入できるだろうと考えてここまで来ていたが思っていた以上の状況に考えが甘かったと反省するのだった。
以前見た時より、警備状況が変わっており周囲は魔道具により透明の塀で囲われており、突破したとしても敷地内に別の魔道具が見える事から、それで何かしら検知されると考えれる状況であった。
正面からの入口には王国軍兵が警備をしており、簡単には侵入出来ない場所となっていた。
「(あまり来てないうちに、凄い警備になっていたのね。前は魔道具での警備はしてなくて普通の塀だったのに。ハンスがあんな一文を残したから、もしかしたら簡単に入れると思ったけれど、全然じゃない! いやハンスに怒るとかじゃないか。それよりも、どうするかね)」
と、マイナが頭を悩ましているとオービンがとある提案をし出す。
「さすがに王国軍と問題を起こすのは避けたいんで、こういうのはどうですか? 俺があの場の王国軍兵を第一王子として気を引き、あの場から引きはがします。その直後、入口と引きはがした王国軍兵の間を分断してくれませんか?」
オービンの作戦とは、自身が父ハンスの命を受けこの場にいる王国軍兵も王都内で起きている事態の収拾に向かうようにと伝令に来たとし、警備している王国軍兵を少しでも引きはがす。
そして警備場所から彼らが離れた所で、遠隔から残ったメンバーにて魔力創造にて壁を創り出し、一時的に入口の確保と王国軍兵の視界を奪うというものであった。
だがこの作戦は、必ずしも警備している王国軍兵が全員引きはがせる訳ではないという点が欠点であった。
その点についてはミカロスがすぐに指摘をする。
「成功率が高いとも言い切れないな。あの場で警備する王国軍兵の能力が低い訳でもないだろうし、オービンの一声で任されている任務をすぐに放棄するとも思えない」
「確かにそれはいえるわね」
「オービンが気を引くという点でいうなら、ハンス国王から特別に許可をもらっているというていで侵入は不可能なのか?」
「たしか、あの場に入る者には許可証が渡されるんだ。警備の者もそれは知っていて、必ずそれを確認される。仮に偽物を作ったとしても特別な用紙での許可書だから、見破られて終わりだ」
「そうか」
再び皆が長考し始めそうになった所で、ルークが思い出したかのように口を開く。
「そういえば、兄貴。かなり昔の話しだけども、許可証がなくてもあの場に行った人がいなかったか? その時はうる覚えだが、親父の一文を許可証代わりにしてた気がするんだが」
「……あ~それってまだ俺たちが十歳くらいの時の事だろ? よく覚えていたなルーク」
「その頃って親父が仕事する所を、母さんがよくこっそりと見せてくれた時だったから記憶にあるんだよ」
ルークの記憶の引き出しが開くと共にオービンもその頃の記憶が甦り、許可証の代わりに父直筆の一文であの場所へと入る事を許可されていたことを思い出す。
内容は誰に対して遺跡に立ち入る事を許可するという文で良かったとオービンは口にし、父の直筆だという所と専用の用紙が大切な所だと語る。
「字は何とかなるかもしれないが、その専用の用紙がなくては意味ないんじゃないのか?」
「それなら大丈夫。何かの時ように俺が王城から持って来て、常備しているから」
ミカロスの問いかけにオービンは懐から専用の用紙を取り出した。
その紙は、一般ていな白色ではなく薄青色の紙であり王国の紋章が対照的に紙の端に印字されている物であった。
「ハンス国王の字なら私に任せてください。そういう事務的な事は学院長として、色々とやって来て得意なのです」
「(人の字を真似るのと、学院長の仕事で関係性あるか?)」
ルークが首を傾げていると、マイナはオービンから紙を受け取るとためらうことなく、サラサラと文章を書き皆に見せる。
それを見たオービンとルークは驚くのだった。
「凄い。父上の字ですよこれ」
「本当だ。真似したとは思えない、親父が書いた字にしか見えない」
「俺はハンス国王の字は全然見たことがないが、二人がそこまでいうって事は瓜二つなんだろうな。凄いですね、マイナ学院長。何でそんな事出来るんですか?」
「昔人を真似ることをしてた時期があって、その時の経験と手先の器用さからだと思うわ」
その答えにオービンたちがそんな事で出来るレベルじゃないと思いつつも、今はひとまず一つの突破口が出来たのでそちらに意識を向けるのだった。
一方でマイナは心の中で、学院生時代にリーリアにこの手先の器用さや真似る技術を変にいたずらに使用されたなと思い出し、苦笑いをした。
「(あの頃ハンスの字を真似て、いたずらさせられたな。まさかその経験がこんな所で役立つとは、何があるか分からないわね人生って)」
その後マイナたちは、改めて作戦を立て直しこの偽の国王からの一文にて遺跡へと立ち入る事作戦を立てる。
第一王子のオービンを筆頭に、父ハンスの命で遺跡内にも敵が潜んでいないかを調査する様に指示されたというていでルークや信頼出来る者と共に遺跡へと侵入しようというものであった。
基本的に警備兵たちと会話をするのはオービンが担当し、他のメンバーは任務を一任されたオービンが選抜した者として指示に従ってやって来た者という設定にするのだった。
そうして時間も長く無駄に出来ない為、簡単な打ち合わせをしすぐさま作戦を実行に移す。
――地下の遺跡への入口前にて。
オービンを筆頭に遺跡入口前に姿を現すと、そこで警備にあたっていた王国軍兵たちがすぐにオービンの存在に気付き驚きの声を上げた。
「オービン様!?」
「どうしてこんな所に?」
「おい、オービン様だけでなく、ルーク様もいるぞ」
「何事だ?」
そうしてオービンたちが入口前で立ち止まり、驚きを隠しつつ冷静な態度をとる王国軍兵にオービンが声を掛ける。
「警備お疲れ様です、皆さん」
「ありがたきお言葉ありがとうございます。して、オービン様がこのような場所にどのようなご用件で? この場所はオービン様やルーク様も知っている通り、ハンス国王より許可証がない限り通す事は出来ない場所となっております」
王国軍兵はオービンにうろたえる事無く、自らの任務を全うする。
「ええ、分かっています。ここには父上、いえハンス国王よりの命を受けてやって来たのです」
「ハンス国王からの命ですか?」
その言葉にその場に居た王国軍兵たちは一瞬驚く。
そしてオービンはすかさず、先程マイナが書いたハンスの一文が入った封書を取り出した。
「今回は緊急時の為、ハンス国王から許可は得ていますが許可証の発行に時間が掛かるため、直筆の一文を許可証代わりにするようにと言われています」
「確かに、許可証の発行には時間が掛かりますので緊急時には、今おっしゃった様な形式もあると記憶しています」
「皆さんも現状の王国の状況は報告を受けていますよね?」
オービンの言葉に対し王国軍兵たちは軽く頷いた。
そしてオービンはそんな現状の中、どの場所にどんな相手がいるかの調査と人々の対応を行うとした際に、比重は人々の対応が上であり調査に割ける人員は少ないと説明し出す。
更には現在遠征中で王国軍の部隊数も限られおり、二次被害を出さない為にもと王子である自分たちにも極秘で任務を与えられていると詰まる事無くスラスラと話し続けるのだった。
その姿を黙って後ろから見つめるマイナたちは、よくもこんなに全て本当かの様に話せるなと変に関心していた。
「(この状況を逆手にとってのあり得そうな話だから、嘘だとは思えないわね。それにまさか第一王子が嘘を言っているとは思わないものね)」
「(さすがに俺でも、あそこまで詰まらずに作り話は話せんな。あれはこれまでの経験やオービン自身の頭の回転の速さがあるから出来ることなんだろうな)」
「(俺にあそこまでの話術はない。改めて兄貴の凄さを実感するな。兄貴は大した事じゃないというだろうが、今のままの俺じゃ到底兄貴の補佐なんて務まらない。今の自分の立ち位置と夢までの距離を痛感するな)」
そしてオービンの話を完全に信用した王国軍兵は、オービンからの封書を受け取り中身を取り出し、マイナが書いたハンスの文を確認する。
すると、その者が他の王国軍兵を目線で呼ぶと近くにやって来て複数名で確認し始める。
そんな姿にマイナの心臓の鼓動が速くなり、オービンたちも沈黙が続く状況にバレていないかと緊張が走る。
暫くして王国軍兵たちが何かやり取りをした後、オービンに対して口を開く。
「確かにこちらは、王城内で扱われる専用用紙で、ハンス国王が直接書かれた物で間違いないと思われます」
その言葉に、マイナたちは内心で安堵の息をつく。
「では――」
「ですが、まだ通す訳にはいきません」
「どういう事ですか? そちらが認められないと?」
「いえ、許可証以外の場合は文の確認ともう一点確認している事があるのです。そちらの確認が取れましたら、こちらを通すことになっていますので今からそちらの確認を行います」
「もう一点の確認?」
思わぬ発言にマイナたちの表情が少し硬くなる。
「はい。許可証以外の場合の直筆の際には、こちらの様に専用の用紙に一文を書かれるのですが、過去にこちらの用紙が盗まれ字を真似こちらに侵入しようとした未遂事件がありまして」
「(え、嘘……)」
「(これは)」
「(何てピンポイント)」
「それ以来、その様な事件を防ぐため直筆の際には専用の用紙にとある細工がされているので、そちらかどうかを確認させていただいているのです」
「……なるほど。そうだったんですね。あまり直筆はない事なので、知りませんでした」
オービンも知らなかった為、返事をするのに少し間が開いてしまう。
「この事を知る者は限られていますし、知らなくて当然かと思われます。確認といっても至って簡単な事です。こちらの用紙に、一定の魔力を流すだけです」
「魔力を流してどうなればいいのですか?」
「隠された王国の紋章が浮かび上がれば本物です。王城内でも浮かび上がる用紙はこういう時様にしか使われていませんので」
「個人的な興味での質問ですけどもし違う場合は、どうなるんですか?」
「燃えてなくなります。まあ、そんな事はないと思いますが。では、早速始めます」
そうして王国軍兵は、オービンたちに手紙を見せつつ自身の魔力を手紙へと流し始める。
そして数秒後、オービンが渡した手紙は燃え消えるのだった。
――地下の遺跡への入口が存在する広場近くにて。
「あそこが地下遺跡へと続く入口がある広場よ」
マイナは近くの建物に身を隠しながら、同行しているオービンとミカロスそしてルークに場所を教えた。
その場所には王国軍兵が二名常駐しており、こんな事態でも誰も中に入れない様に警戒をしていた。
「マイナ学院長、もしかしてですが強行突破しようとかではありませんよね?」
「……そんな事しませんよ」
「(今間があったけど、本当かよ)」
ミカロスの問いかけの答えを聞いていたルークがそんな事を思っていると、広場を警備していた王国軍兵の元に新たに三人の王国軍兵がやって来て合流する。
「増えましたね。何かしら事前に連絡して入れてもらえるって状況じゃないんですよね」
「ええ。こっちの独断ですし、例え事情を話した所で入れてもらえる場所じゃないわ」
「そんな所に今から無断で立ち入ろうとしている訳ですね」
改めてミカロスが状況を整理すると、オービンの方に視線を向ける。
「何だよミカ?」
「オービンお前の地位と権力で何とか穏便に入れないのか? それか、ルークとの合同でもいいが」
「確かに、オービンさんとルークさんはこの国の第一王子と第二王子でしたね。すっかり抜けてましたよ。これは隠れる必要もないですね」
「いや、それは俺にもルークにも出来ない。あの場所に関しては、父上の許しがない限り俺たちでも立ち入りは出来ない」
ルークはオービンの言葉に軽く頷き、マイナは軽く肩を落とした。
「警備は厳重、ハンス国王から許しが出た者しか入れない場所。振り出しですね」
「てっきりマイナ学院長が、父上から許しを貰ったからこの場所に来たんだと思いましたよ」
「あー……そうではないんですよね」
「で、どうするんです? 強行突破するんですか?」
ルークからの問いかけにマイナは腕を組み「さすがに強行突破とはね」と口にどうすべきかを考え始めた。
マイナとしては、こういう事態が王都内で発生したい為警備が手薄になり、どうにか侵入できるだろうと考えてここまで来ていたが思っていた以上の状況に考えが甘かったと反省するのだった。
以前見た時より、警備状況が変わっており周囲は魔道具により透明の塀で囲われており、突破したとしても敷地内に別の魔道具が見える事から、それで何かしら検知されると考えれる状況であった。
正面からの入口には王国軍兵が警備をしており、簡単には侵入出来ない場所となっていた。
「(あまり来てないうちに、凄い警備になっていたのね。前は魔道具での警備はしてなくて普通の塀だったのに。ハンスがあんな一文を残したから、もしかしたら簡単に入れると思ったけれど、全然じゃない! いやハンスに怒るとかじゃないか。それよりも、どうするかね)」
と、マイナが頭を悩ましているとオービンがとある提案をし出す。
「さすがに王国軍と問題を起こすのは避けたいんで、こういうのはどうですか? 俺があの場の王国軍兵を第一王子として気を引き、あの場から引きはがします。その直後、入口と引きはがした王国軍兵の間を分断してくれませんか?」
オービンの作戦とは、自身が父ハンスの命を受けこの場にいる王国軍兵も王都内で起きている事態の収拾に向かうようにと伝令に来たとし、警備している王国軍兵を少しでも引きはがす。
そして警備場所から彼らが離れた所で、遠隔から残ったメンバーにて魔力創造にて壁を創り出し、一時的に入口の確保と王国軍兵の視界を奪うというものであった。
だがこの作戦は、必ずしも警備している王国軍兵が全員引きはがせる訳ではないという点が欠点であった。
その点についてはミカロスがすぐに指摘をする。
「成功率が高いとも言い切れないな。あの場で警備する王国軍兵の能力が低い訳でもないだろうし、オービンの一声で任されている任務をすぐに放棄するとも思えない」
「確かにそれはいえるわね」
「オービンが気を引くという点でいうなら、ハンス国王から特別に許可をもらっているというていで侵入は不可能なのか?」
「たしか、あの場に入る者には許可証が渡されるんだ。警備の者もそれは知っていて、必ずそれを確認される。仮に偽物を作ったとしても特別な用紙での許可書だから、見破られて終わりだ」
「そうか」
再び皆が長考し始めそうになった所で、ルークが思い出したかのように口を開く。
「そういえば、兄貴。かなり昔の話しだけども、許可証がなくてもあの場に行った人がいなかったか? その時はうる覚えだが、親父の一文を許可証代わりにしてた気がするんだが」
「……あ~それってまだ俺たちが十歳くらいの時の事だろ? よく覚えていたなルーク」
「その頃って親父が仕事する所を、母さんがよくこっそりと見せてくれた時だったから記憶にあるんだよ」
ルークの記憶の引き出しが開くと共にオービンもその頃の記憶が甦り、許可証の代わりに父直筆の一文であの場所へと入る事を許可されていたことを思い出す。
内容は誰に対して遺跡に立ち入る事を許可するという文で良かったとオービンは口にし、父の直筆だという所と専用の用紙が大切な所だと語る。
「字は何とかなるかもしれないが、その専用の用紙がなくては意味ないんじゃないのか?」
「それなら大丈夫。何かの時ように俺が王城から持って来て、常備しているから」
ミカロスの問いかけにオービンは懐から専用の用紙を取り出した。
その紙は、一般ていな白色ではなく薄青色の紙であり王国の紋章が対照的に紙の端に印字されている物であった。
「ハンス国王の字なら私に任せてください。そういう事務的な事は学院長として、色々とやって来て得意なのです」
「(人の字を真似るのと、学院長の仕事で関係性あるか?)」
ルークが首を傾げていると、マイナはオービンから紙を受け取るとためらうことなく、サラサラと文章を書き皆に見せる。
それを見たオービンとルークは驚くのだった。
「凄い。父上の字ですよこれ」
「本当だ。真似したとは思えない、親父が書いた字にしか見えない」
「俺はハンス国王の字は全然見たことがないが、二人がそこまでいうって事は瓜二つなんだろうな。凄いですね、マイナ学院長。何でそんな事出来るんですか?」
「昔人を真似ることをしてた時期があって、その時の経験と手先の器用さからだと思うわ」
その答えにオービンたちがそんな事で出来るレベルじゃないと思いつつも、今はひとまず一つの突破口が出来たのでそちらに意識を向けるのだった。
一方でマイナは心の中で、学院生時代にリーリアにこの手先の器用さや真似る技術を変にいたずらに使用されたなと思い出し、苦笑いをした。
「(あの頃ハンスの字を真似て、いたずらさせられたな。まさかその経験がこんな所で役立つとは、何があるか分からないわね人生って)」
その後マイナたちは、改めて作戦を立て直しこの偽の国王からの一文にて遺跡へと立ち入る事作戦を立てる。
第一王子のオービンを筆頭に、父ハンスの命で遺跡内にも敵が潜んでいないかを調査する様に指示されたというていでルークや信頼出来る者と共に遺跡へと侵入しようというものであった。
基本的に警備兵たちと会話をするのはオービンが担当し、他のメンバーは任務を一任されたオービンが選抜した者として指示に従ってやって来た者という設定にするのだった。
そうして時間も長く無駄に出来ない為、簡単な打ち合わせをしすぐさま作戦を実行に移す。
――地下の遺跡への入口前にて。
オービンを筆頭に遺跡入口前に姿を現すと、そこで警備にあたっていた王国軍兵たちがすぐにオービンの存在に気付き驚きの声を上げた。
「オービン様!?」
「どうしてこんな所に?」
「おい、オービン様だけでなく、ルーク様もいるぞ」
「何事だ?」
そうしてオービンたちが入口前で立ち止まり、驚きを隠しつつ冷静な態度をとる王国軍兵にオービンが声を掛ける。
「警備お疲れ様です、皆さん」
「ありがたきお言葉ありがとうございます。して、オービン様がこのような場所にどのようなご用件で? この場所はオービン様やルーク様も知っている通り、ハンス国王より許可証がない限り通す事は出来ない場所となっております」
王国軍兵はオービンにうろたえる事無く、自らの任務を全うする。
「ええ、分かっています。ここには父上、いえハンス国王よりの命を受けてやって来たのです」
「ハンス国王からの命ですか?」
その言葉にその場に居た王国軍兵たちは一瞬驚く。
そしてオービンはすかさず、先程マイナが書いたハンスの一文が入った封書を取り出した。
「今回は緊急時の為、ハンス国王から許可は得ていますが許可証の発行に時間が掛かるため、直筆の一文を許可証代わりにするようにと言われています」
「確かに、許可証の発行には時間が掛かりますので緊急時には、今おっしゃった様な形式もあると記憶しています」
「皆さんも現状の王国の状況は報告を受けていますよね?」
オービンの言葉に対し王国軍兵たちは軽く頷いた。
そしてオービンはそんな現状の中、どの場所にどんな相手がいるかの調査と人々の対応を行うとした際に、比重は人々の対応が上であり調査に割ける人員は少ないと説明し出す。
更には現在遠征中で王国軍の部隊数も限られおり、二次被害を出さない為にもと王子である自分たちにも極秘で任務を与えられていると詰まる事無くスラスラと話し続けるのだった。
その姿を黙って後ろから見つめるマイナたちは、よくもこんなに全て本当かの様に話せるなと変に関心していた。
「(この状況を逆手にとってのあり得そうな話だから、嘘だとは思えないわね。それにまさか第一王子が嘘を言っているとは思わないものね)」
「(さすがに俺でも、あそこまで詰まらずに作り話は話せんな。あれはこれまでの経験やオービン自身の頭の回転の速さがあるから出来ることなんだろうな)」
「(俺にあそこまでの話術はない。改めて兄貴の凄さを実感するな。兄貴は大した事じゃないというだろうが、今のままの俺じゃ到底兄貴の補佐なんて務まらない。今の自分の立ち位置と夢までの距離を痛感するな)」
そしてオービンの話を完全に信用した王国軍兵は、オービンからの封書を受け取り中身を取り出し、マイナが書いたハンスの文を確認する。
すると、その者が他の王国軍兵を目線で呼ぶと近くにやって来て複数名で確認し始める。
そんな姿にマイナの心臓の鼓動が速くなり、オービンたちも沈黙が続く状況にバレていないかと緊張が走る。
暫くして王国軍兵たちが何かやり取りをした後、オービンに対して口を開く。
「確かにこちらは、王城内で扱われる専用用紙で、ハンス国王が直接書かれた物で間違いないと思われます」
その言葉に、マイナたちは内心で安堵の息をつく。
「では――」
「ですが、まだ通す訳にはいきません」
「どういう事ですか? そちらが認められないと?」
「いえ、許可証以外の場合は文の確認ともう一点確認している事があるのです。そちらの確認が取れましたら、こちらを通すことになっていますので今からそちらの確認を行います」
「もう一点の確認?」
思わぬ発言にマイナたちの表情が少し硬くなる。
「はい。許可証以外の場合の直筆の際には、こちらの様に専用の用紙に一文を書かれるのですが、過去にこちらの用紙が盗まれ字を真似こちらに侵入しようとした未遂事件がありまして」
「(え、嘘……)」
「(これは)」
「(何てピンポイント)」
「それ以来、その様な事件を防ぐため直筆の際には専用の用紙にとある細工がされているので、そちらかどうかを確認させていただいているのです」
「……なるほど。そうだったんですね。あまり直筆はない事なので、知りませんでした」
オービンも知らなかった為、返事をするのに少し間が開いてしまう。
「この事を知る者は限られていますし、知らなくて当然かと思われます。確認といっても至って簡単な事です。こちらの用紙に、一定の魔力を流すだけです」
「魔力を流してどうなればいいのですか?」
「隠された王国の紋章が浮かび上がれば本物です。王城内でも浮かび上がる用紙はこういう時様にしか使われていませんので」
「個人的な興味での質問ですけどもし違う場合は、どうなるんですか?」
「燃えてなくなります。まあ、そんな事はないと思いますが。では、早速始めます」
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または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
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