とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
493 / 564

第492話 嘘から出たまこと

しおりを挟む
 王国軍兵たちは思ってもいなかった結果に、目を疑い言葉も失う。
 一方でオービンは既にこの状況からどう行動すべきかの思考をし始めていたが、未だ答えは出ていなかった。
 だが幸いにも、王国軍兵の思考が停止していた事によりオービンに思考する時間が与えられ頭をフル回転させ、まずは疑われない様にすべきだとし咄嗟に知っていたかの様な表情は一切悟らせず、驚きの表情をした。

「……燃え、た?」

 オービンの驚きながら放った一言に王国軍兵は困惑し始める。

「こ、これはどういう」
「燃えたという事は、偽物という事。だが……」
「……オービン様、これはどういう事ですか?」

 王国軍兵がオービンに訊ねるが、オービンも自分には分からないとし偽物など用意してないと訴えた。
 マイナたちはバレてしまったと思い、咄嗟に身体を動かせるように軽く反応したがオービンの態度を見て動くのを止めた。

「そう言われましても、こちらとしては封書が偽物だったのは明らかなので通す訳にはいきませんし、どの様な相手だとしても偽物を持ってきた時点で聴取はさせていただきます。これはオービン様だけでなく、一緒にこられた皆様に受けていただくルールとなっていますのでご理解ください」
「何かの手違えという事はないんですか? 確かに父上から受け取った封書ですよ。それか、書かれる用紙を間違えたという事も考えられますよね?」
「この場では何とも分かりません。こうなってしまった以上、こちらのルールには従ってもらいますオービン様」
「直接父上に確認しに行く事はダメなのですか? 一緒に付いて来て頂ければいいのでは?」
「出来ません。この場にはこの場の定められたルールと任務があるので。申し訳ありませんが、いくつかの質問と身体検査をさせていただきます」
「(身体検査はまずい。内ポケットに専用用紙があるのがバレると立場が余計に悪くなる。さすがにその言い訳までは通せない)」

 オービンは近付いて来る王国軍兵をどうやってかわそうかと瞬時に考えていると、背後からルークが口を開いた。
「何で俺たちが悪者扱いされないといけないんだ? こっちは親父から頼まれて、封書まで貰って来てるんだ。そこまでされなくても、親父に直接訊けばいいだろ? どうせ通信用魔道具もあるんだろ、王城との直接つながっているやつがさ」

「っ……確かにルーク様のおっしゃる通り、王城との連絡用に通信用魔道具はございますが、ルールはルールですので」
「貴方たちの任務も分かるが、こちらの任務も分かって欲しい。今、王都は脅かされているかもしれない。だが、今ならそれを未然に防ぐことが可能なんだ。後でいくらでも聴取でも罰でも俺が受けるから、兄貴だけでも通させて欲しい。許可証うんぬんで貴方たちも後々、王都に更なる被害が出たと知ったら嫌だろ?」

 ルークの言葉に足を止める王国軍兵。
 だが、すぐに言い返される。

「いくらルーク様といっても、今のはさすがにアウトです。例え、そんな意志がなく勢いと思いで出てしまった言葉だったとしても、脅しと捉えられますよ」
「っ! 俺は――」
「ルーク、今のは彼の言う通りだ。どんな理由であろうと、俺たちの立場であの様な事を言ってはいけない。気持ちは分かるが、言葉にも気を付けないとダメだ」
「……悪かった。感情を強く出し過ぎた」
「俺からも今の事は謝罪させていただきます」

 そう言ってルークとオービンは軽く頭を下げた。
 王国軍兵はその姿を見て、すぐに二人に頭を上げるように伝える。

「横から口出してごめんない。気になるのですが、聴取と身体検査を拒否したらどうなるのですか? あくまで興味本位です」

 マイナの問いかけに王国軍兵は「重要参考人として、捕らえさせていただきます」と淡々と答えたのを聞き、マイナは続けて問いかけた。

「結局のところ、聴取というなの拘束なのですよね? その間に王城側と確認をとられるという認識であってますか?」

 その問いかけに対し、暫く黙っていた王国軍兵だったが中心にいた人物がゆっくりと頷いて返事をするのだった。

「(なるほど。それでそんな許可証は発行してないとバレた時点でアウトってわけね。さて、この状況から逃げるのもかなり犯行を認めている事になりかねないわね。どうしたものか)」
「(ひとまずオービンの身体検査を後回しさせるべきだな)」

 そう黙ったままミカロスはスッと前に出て行き、自分から身体検査をして欲しいと伝える。
 あくまで身の潔白を証明する為だといい、王国軍兵も特に断る理由もなく最初の身体検査を始める
 その時チラッとオービンに目配せをし、この間に内ポケットにある専用用紙をどうにかしろと合図を送るのだった。

「(どうにかしろって言われてもな、そうしたいのは山々だが不審な動きが出来る状況じゃないんだよね、ミカ)」

 内ポケットにある物をどうにかするにしても、必ず手元が内ポケットに入るため、それを王国軍兵にでも見られたらすぐに証拠品が抑えられておしまいだと思い、動くに動けない状況であった。
 そうしている間にミカロスの身体検査が進むと、残っている王国軍兵がオービンたちの元へとやって来て一斉に身体検査をし始める。
 もうこうなってしまっては強行突破しかないのではと、皆の頭の中には浮かぶ。
 このまま拘束されている時間もないし、確認された所で嘘だというのは明確の為、やるなら相手が油断している今しかないと考える。
 するとオービンが後ろのマイナたちと前の方から視線を向けて来ていたミカロスに視線を送り、小さく頷く。
 そしてオービンの内ポケットへと王国軍兵の手が伸び、その手をオービンが掴みに行こうとした時だった。
 遠くから大声で声が聞こえてくる。

「そこの王国軍兵! 身体検査を一度やめて欲しい!」
「!? 誰だ?」

 その場の全員が声のした方へと振り向くと、そこには王国軍の紋章が入ったマントを羽織り何故かフードを被った王国軍兵だと思われる一人の人物が立っていた。
 オービンたちも強行突破の行動を止め、誰が来たのかと思っているとその人物がこちらへと近付いて来ると、とある物を取り出し王国軍兵たちに見せる。

「ハンス国王より、オービン様に渡された封書に間違えがあったということで本物を届けに来ました」
「(本物? どういう事だ?)」

 オービンが驚いていると、マイナたちもどういう事かとオービンの方を見るが、オービンは小さく首を横に振る。

「確認してください」

 王国軍兵はフードを被った人物から別の封書を疑いつつも受け取ると、先程と同じ様に数名で確認作業を行い、最後に魔力まで通す。
 だが、先程のように燃えたりする事はなく本物であると証明されるのだった。

「……確かにこちらは本物の様です。ですが、貴方はいったい誰なのですか? 王国軍のマントを身に付けているようですが、何故顔を隠すのです?」
「顔を見られる訳にはいかないからです。私の所属は、国王直下暗部組織なので。この姿も偽っており、本当の私の姿ではありません」

 暗部組織は王城内でも明確にされている部隊ではなくあくまで噂として存在しているものであった。

「(暗部組織? 本当に存在するか分からないものを口にして、こちらが信じるとでも? だが、受け取った新しい封書は本物。これを届けられるということは、ハンス国王に近しい者、もしくはその側近に仕えている者と考えるべきか?)」

 王国軍兵が半信半疑になりつつ、どう対処すべきか考えているとフードを被った人物がオービンの隣に立つと、小声で何かを呟く。
 それを聞いたオービンは驚きの顔をし、フードを被った人物にどういう事かを訊ねようとしたが、その人物はそのまま悩む王国軍兵たちの方へと向かって行ってしまう。

「さあ、封書も本物だと分かったのです。オービン様方を通してください」
「待って下さい。貴方の事がどうしても信用しきれないのです。なので、貴方の名前を王城の方に伝え、本当にいる人物が確かめさせていただきます。オービン様方にもその確認が終わるまでは、こちらに待機していただきます」
「通してはくれないのですね」
「はい。こちらも任務ですので。では、貴方の名前を――」

 その直後だった、フードを被った人物が周囲に集まっていた警備の王国軍兵全員を一気に凍らせたのだ。
 そしてフードを被った人物は振り返り、オービンたちに声を掛けた。

「さあ、今のうちに行きますよ」

 そういって、その人物は遺跡の方へと走り出すのだった。
 オービンたちは突然何が起こったのか驚いていたが、このまま突っ立ていても仕方ないと思いその後を追いかけ、遺跡の中へと入って行くのだった。
 そして暫くすると先頭を走っていたフードを被った人物が足を止める。

「もうここまで来れば大丈夫でしょう」
「……貴方は一体誰なんですか? 急にあんな事をして、どういうつもりですか?」

 ミカロスの問いかけに対し、フードを被った人物がオービンたちの方へと身体を向けた。

「ああいうことを君たちもしようとしていたんだろ? それに時間がないのだろ、あんな所で足止めされている余裕はなかったはずだ」
「っ……」
「さすがに私が誰か気になる様だね、オービン」
「当然ですよ。王城内でも噂の暗部組織を語り、突然の強行突破宣言。そして本物の封書を持って現れ、俺たちを助けてくれた。貴方は誰なんですか?」

 そう言われるとフードを被った人物が、何のためらいもなくフードをとり素顔を見せた。
 そしてその素顔を見て、オービンたちは驚くのだった。

「あ、貴方だったのですか!?」
「どうしてここに? いや、何故あんなタイミングよく現れたのですか?」
「……」
「まさかですね。あんな事をして大丈夫なのですか?」

 と、皆が一斉に質問等を投げかけるとその人物は苦笑いをしながら、とりえず目的地に向かいながら話しますとし再び歩き始める。
 そうしてオービン一行は、とある人物の協力を得て何とか地下遺跡への侵入に成功したのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です

オレンジ方解石
恋愛
 結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。  離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。  異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。  そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。  女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。 ※追記の追記を少し直しました。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

処理中です...