とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
496 / 564

第495話 若返り

しおりを挟む
 ――王都メルト魔法学院内、一階通路にて。


 エリスは、ロバートの結界魔法にて軽く浮かせられた状態で壁に押し付けられていた。

「ぐっぅ……!」
「……」

 何とか脱出しようと試みるも、完全に壁と正面からの結界に押しつぶされており、身動きが取れない状態であった。
 ロバートはピクリとも表情を動かさず、口も聞かずエリスを結界で押し殺そうとしていた。

「(ま、まずい……本当に何も出来ない……声すら出せなく……なってきて……る)」

 徐々にエリスが苦しみの表情を浮かべ始めると、表情を変えなかったロバートがうっすらと笑う。
 その表情をエリスは、苦痛に顔を引きつらせつつ目にし「最低な奴」と思いつつ抵抗を続けていると、突然ロバートが何かに気付き廊下の奥の方へと視線を向けた。
 そして何故か自身の前に結界を展開し、防御状態をとるとその直後遠くからロバート目掛け氷の礫が放たれて来たのだ。
 ロバートはそれが分かっていたのか、結界を展開していた為全くの無傷であった。
 そのまま氷の礫が放たれた方をロバートが見つめていると、こちらに走って向かって来る二人の人影が見えロバートを視界にとらえた所で足を止めると、声を掛けた。

「その子を今すぐ解放しなさい、ロバート・ベンズ」

 しかし、その問いかけにロバートは応じずただじっと二人の方を見つめていると、ゆっくりと口を開いた。

「やっぱりお前、ティアだろ? ティア・ムーン。それに隣のお前は、リーリアか? リーリア。メイルか」

 ロバートは、目の前にやって来たティアとリーリアに対し何故か初めて会ったかの様な態度をとった。
 二人は、既に一度学院内にてバベッチと共にいる場面で遭遇しているはずなのに、どうしてそんな反応をするのか不思議に考えてしまう。
 油断を誘う為、わざと何か考えがあってなのかと考えていると、目の前のロバートに思ってもしない変化が起こり始めた。
 突然ロバートの見た目が、若返り始め徐々にその面影が昔王都転覆事件時に出会った頃への姿へと変わって行くのだった。

「(どういう事?)」
「(何が起きているの?)」

 そして完全に若返ったロバートは声色まで変わっていたのだった。

「いや、懐かしいな。覚えているか、あの日の戦いを? 俺は昨日の様に覚えているよ。って、何か声も身体の調子も変だな」

 ロバート自身もそこで自分の身体の異変に気付き、何かを察し小さく呟く。

「バベッチの奴、しくじったか」
「?」
「まあそんな事はどうでもいい。保険が上手く作用した事が大切だ。それにしても、今はあれから何年経った? 二十年くらいか? そうだとしたら、お前ら年齢のわりには若く見えるな」
「……」
「せっかく褒めてやってるのに黙るなよ。俺の中じゃあの日の姿のままだから、魔力を感知して現れたお前らを見て少し困惑したぞ」

 そうロバートはまるで、昔のロバートが現代に突然やって来たかの様な態度をとり続けた。
 ティアとリーリアはロバートの態度に驚きつつも、仮にそうだと推測をしバベッチとの契約かそれ以外でロバート自らが何か仕組んでこの状況を生み出しているのではないかと考えていた。

「ティア、今あのロバートは最初に会ったロバートと同一人物?」
「いえ、そもそも魔力量が全然違うわ。それもあの日戦ったロバートと類似している。というより、まるでその人よ。途中まで私同様の年齢で年相応のロバートだったけど、今じゃ何から何まであの頃のロバートだわ」
「……そう。それは厄介ね」

 二人は気持ちを引き締め直し、戦闘態勢をとるとロバートは二人に対し自身の魔力でプレッシャーを掛け始めた。
 それに対し二人は冷や汗が流れるが、初めての経験ではないので退く事なくその場に立ち続けていると、ロバートが小さく鼻で笑う。

「強がるなよ。身体の衰えには勝てないだろ? それにその状態だと、ここに来る前に一戦やって来てるだろ。そんな状態で、昔の全盛期の俺に勝てるわけないだろ」

 ロバートはそう口にすると、更にプレッシャーを与える魔力を強めた。
 さすがにその魔力に、ティアもリーリアも少し押されてしまう。
 一方でその溢れ出る異常な魔力を、一番近くで感じたエリスは抵抗する手の震えが止まらなかった。

「(何、この魔力? 冷たくて怖くて向き合うのも苦しいって思える魔力。こんなの初めて感じた)」
「ん、あーそう言えばこっちもやってたわ」

 そこでロバートはエリスの存在に改めて気付くと、今まで押し潰そうとしていた結界を解除すると、少し宙に浮いた状態でエリスを捕らえる様に結界を展開し直した。
 結界内に閉じ込めらたエリスは、結界内から声を出すも外には一切聞こえていないのだった。

「別にこんなの必要ないが、とりあえず人質とさせてもらうよ。何だか大切そうにしている様だし、返して欲しければ俺と戦って奪ってみろよ」
「っ……とりあえずの人質? 本当に貴方はあの時から変わらないわね」
「相手をムカつかせて、手段なんて選ばない、人の心も弄ぶ。あいつはそういう男でしょ、ティア」
「そうそう。よく分かってるじゃないか、ティア、リーリア」

 見下すような笑みを見えるロバートに、ティアは不快な表情で睨み、リーリアも睨みつけた。

「それじゃそろそろ、あの日の続きといこうか!」

 そんな掛け声と共にロバートは片腕を勢いよく突きあげると、ティアとリーリアをそれぞれ閉じ込めようと真下から結界を展開させる。
 しかし、二人もロバートの手口は知っていた為、すぐに反応し後退してかわすとそのままロバート目掛け、氷魔法と風魔法を互いに息を合わせて放つ。
 放った魔法は互いに干渉し、合わさってロバートへと向かう。
 ロバートは一度防いだ様に結界を展開し防ぐかと思われたが、途中までその動作をした所で何かを思いたのか動きを止め、突然飛び合上がって二人の魔法をかわす。
 そして放たれた魔法は、ロバートの背後に浮いていたエリスが閉じ込められた結界に直撃すると、結界に閉じ込めれたエリスは突然の事に、両手を前に出して防ぐ姿勢を咄嗟にとっていた。
 その光景を目にしティアは驚いてしまう。
 だが、直撃した結界が破壊される事はなく、エリスも無事でありティアは安堵の息をついた。

「どうだ、驚いたか? もし俺が結界解除もしくは、強度を落としていたら今の魔法でこの子は重傷を負っていたかもしれないな。魔法を放つ先は考えましょうねって、習わなかったのか?」

 ロバートは飛び上がって回避した後、エリスを閉じ込めている結界の上に降り立ち、結界をコンコンと叩きながら二人の方を見つめた。

「ロバート!」
「ティア、むやみに攻撃し――」

 リーリアが止めようとしたが、既にティアはロバートに向け氷魔法を連発で放ち始める。
 しかし、ロバートはティアを嘲笑いながら結界で防いだり、余裕な表情でかわし続けティアをあおり続ける。

「腕が落ちたな、月の魔女。昔はもっと凄かったろ? どうした、どうした全然当たらないぞ~ほらほら、よ~く狙って狙って」
「こっのーー!」

 ティアは次にロバートが降り立つ場所を予測し、そこ目掛け鋭く高威力で創り出した氷柱を放った直後、リーリアがティアの名を叫ぶ。

「ティア止めろ! 忘れてたのか、あいつの結界は反射も出来る!」
「っ!」
「もう遅いよ。さすがにこれだけ鋭い氷柱だと、俺の結界でも耐えられないだろうな」

 気付いた時には既に魔法を放っており、ロバートも反射可能な結界を展開し、反射方向をエリスへと向けるのだった。
 そしてエリスの放った魔法はロバートの結界に反射し、勢いよくエリスの結界へと跳ね返される。

「月の魔女リーリア、敵に放ったはずの魔法で女子学院生を殺害。これは衝撃的だな!」

 ティアは自分が一時の感情に流され視野が狭ばった事を悔いつつ、自らの魔法を破壊または方向を変えようとすぐに魔法を使用するも、ロバートが目の前に結界を展開し妨害した。
 一方でリーリアは、エリスを守ろうと先に動いておりエリスの放った魔法目掛けて、自らの炎魔法を放つ。
 が、それすらもロバートはティアへ展開させた結界の延長線上で結界を伸ばし、防ぐ。

「(ぐっ! こんな所まで伸ばせるのか)」
「さあ、見届けよう。彼女の命が消える瞬間を」

 そして氷柱がエリスの結界へと直撃する寸前だった。
 氷柱の真下の地面が槍の様に盛り上がり、氷柱をピンポイントに串刺し氷柱は結界を破りエリスの目と鼻の先で止まった。

「!?」

 二人が驚いているなかで、ロバートは小さくため息をつく。

「せっかくいいところだったのによ。誰だよ、邪魔した奴はよ?」
「私よ、ロバート」

 そう声を出し、リーリアとティアの背後にやって来たのはマイナであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です

オレンジ方解石
恋愛
 結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。  離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。  異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。  そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。  女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。 ※追記の追記を少し直しました。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

処理中です...