とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第506話 シンリからの提案

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「おう、おはようヴァン」

 トウマの挨拶に対しヴァンは何も返さず、横目でクリスの方を見つめる。

「(え、俺のこと無視!?)」

 何も話さずただ見つめるというより、睨んでいる様にも見えるヴァンに対しクリスが口を開く。

「朝から雰囲気悪いよ、ヴァン」
「肉なんて食うのか、君」
「え? あーうん。リハビリの時からの流れで、体力つけるために肉料理食べてたからさ今も続けてるんだ」
「君そんな奴だったのかよ。あほらしい」

 突然暴言を吐くヴァンにクリスは驚き、トウマもさすがに黙ってられず立ち上がろうとすると、そこにノルマが慌ててやって来る。

「ちょちょちょっとヴァン、朝から何言ってるんだよ」
「何って、クリスの雰囲気が気に入らないから口にしただけだ」

 そうやって言いたいことだけ言ってヴァンは、謝る事すらせずにその場から離れて行く。
 クリスは怒る事もなくただ呆然とするだけだった。

「おいヴァン! ……ごめんクリス、朝から嫌な思いさせて。あいつの代わりに俺が謝るよ」
「ノルマが謝る必要はないよ。それに俺は元々ヴァンに嫌われてるのは知ってるしさ」
「そう言うがなクリス、さすがに今のは言い過ぎだろあいつも。次期寮長としても今のは見過ごせないぞ」
「トウマもそんなに気にしなくていいから」

 立ち上がったトウマをクリスがなだめると、トウマは一度席に座る。

「ヴァンには改めて俺の方からも言っとくよ。でもどうしたんだヴァンの奴、修学旅行の時はあそこまで険悪な仲じゃなかったよな」
「まーちょっとは仲良くなかった気がしたけど、その時の雰囲気とかもあるし」
「何か嫌な事があって気が立ってるとか?」
「う~んどうだろうね、ここんところちょっと何でか不機嫌なんだよね。とりあえずヴァンの件は本当にごめんよ。朝から気を悪くさせて」
「ううん、本当に気にしないでノルマ」

 ノルマはそれからもう一度軽く頭を下げた後、ヴァンの後を追って行く。
 それを見届けてからトウマがクリスに問いかける。

「優し過ぎじゃないか、クリス。さすがにあれはヴァンが悪いと俺は思うぞ」
「たまたまヴァンの機嫌が悪い時に当たっただけだって。別に傷ついてもないし、あれがヴァンなりの会話だと思えば何ともないさ」
「ちょっとポジティブに捉え過ぎじゃないか、それは」

 などと会話を二人でしていると、シンリが元気よくやって来る。

「おっはーお二人さん! 朝から肉料理とは凄いね~クリスも肉食うとか意外過ぎなんだけど」
「おう、おうはようシンリ。テンション高いな」
「おはようシンリ」

 そのままシンリはトウマの隣に座った。

「朝食食べながらでいいんだけど、話聞いてくれるかい?」

 シンリからの問いかけに二人は頷くと、シンリは「ありがとう」といって話し始めた。
 内容は昨日行った勉強会についての事であった。
 各々得意分野があり、互いに教えたり教えてもらったりが出来いい時間を過ごせたと改めて振り返り二人も思い出して頷く。

「そこでなんだけど、よかったら今日も勉強会やらない? 昨日のメンバーで」
「俺はいいけど、シンとかにも聞かないとそっちは分からないよ」
「やるなら俺はもちろん行くぞ! 楽しかったしな」
「一応ベックスにも話はしてあってオッケーは貰ってるから、あとはシンだけって感じかな。良かったらルークも誘ってみたら」
「そうだな。ルークの方には俺から聞いておくよ」
「ああ、そうそう言い忘れてたけど今日の勉強会内容は、昨日みたいな筆記対策じゃないんだよね」

 突然の発言にトウマとクリスは首を傾げ、二人からの注目を集めた所でシンリが胸を張って答え始める。

「試験は筆記だけじゃなくて、実技もあるだろ。だから、今日はそっちの特訓もしてみたいんだよ。まあイメージ的には模擬戦かな」
「「模擬戦!?」」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 放課後、クリスたちはオービン寮の訓練場に集まっていた。
 今回のシンリからの提案された勉強会こと実技試験に向けた勉強会に参加したのは、クリス、シン、シンリ、ベックス、トウマの五名であった。
 メンバーは昨日筆記の勉強会を行ったメンバーと変わりはせず、トウマがルークも誘うも断れてしまっていた。

「朝シンリから提案された時はビックリしたが、ちょっと今じゃワクワクしてる自分がいるな」
「実力試験に向けた勉強会で模擬戦をしようなんて考えもしないからね。シンリくらいじゃないかな、こんな考えをするの」
「昨日お風呂に入っている時に思い付いたんだよ。中々いい案だと思うだろ?」

 シンの言葉にシンリは自慢げに胸を張った。
 今回の実力試験は第一期の実力試験と類似しているが、一部変更点が存在している。
 それは、事前にゴーレム勝負を行うのかそれとも直接魔法や体術での戦闘を行うのかを互いに選択できるという制度である。
 選択した内容で勝負が行われ、勝敗がつけられるのだ。
 その為今回に関しては、ゴーレムだけを鍛える必要はなく自分に合ったスタイルや対戦相手との相性などを見て勝負が行える為、様々な戦い方が要求される試験ともなっているである。

「それで、どんな感じで模擬戦をするんだい? 魔法の打ち合い的なゴリゴリの戦闘じゃないだろ」
「一応そこはゴーレム勝負で、時間制にしようかと思う。激しくなりすぎて怪我でもしたら元も子もないし」
「うん、いいんじゃないかな。僕は賛成」
 シンリの提案にシンが賛成し、残る皆も特に反対はなくそのまま細かいルールややり方などを決めてから模擬戦の対戦相手を決め始めるのだった。


 模擬戦独自ルール
 ・総渡り戦で制限時間は五分間。
 ・勝敗はゴーレムの状態で判断。
 ・制限時間内に相手のゴーレムを行動不能にした方の勝利。
 ・使用魔法については制限し、魔力分類については制限なし。
 ・審判役は試合をしてないメンバーで判断。
 ※試合を行いながら随時ルールの見直しあり。
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