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第515話 偏見中傷
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タツミから聞いた話では、明日の日中に学院長室にタツミと出向きそこでこれまでの経緯の確認や今後についての話し合いを学院長を含めた代表者と行うという内容であった。
また、その場に誰がいるかまでは口にはしなかったが、タツミは付き添うだけで話し合いのメンバーには含まれていない感じの言い方であった。
「言われた内容はこれだけだ。明日は色々と聞かれると思っていた方がいいぞ、アリス」
「はい」
「……昨日の今日で呼び出しまでされるとはな。もうどう対処するかまで決まったのかもな」
「タツミ先生、やっぱりこのままだと退学、ですよね」
クリスの言い方からタツミは何かを感じとり「何か気になる事でもあるのか?」と訊き返すと、暫く黙った後にアリスが小さく頷く。
「その、物凄い我儘なんですが最後の試験だけは受けたい、と思いまして」
「どうしてだ?」
「ここで学んで来た集大成といいますか、自分の中で区切りと決めた所だったので、それを目の前にして立ち去りたくないなって……こうなるかもと考えはしてましたが、今まで通りに何かあっても乗り越えられる、後少しなんだから大丈夫と思っていたので」
アリスは自分が三月末で自ら学院から身を引こうとしていた事をタツミに明かした。
自身の将来についての悩みやこれからどうするべきか、現時点で決めている事などを全て吐き出した。
誰にも言えていなかった事も含め、話出したら止まらず全てタツミに話していたのだった。
それをタツミは遮る事無くアリスの話を聞き続けた。
「一教員というより、人生上の経験からだがそれだけ将来で悩めているのはいい事だと思うぞ。真剣に自分の今後を考えている証拠だからな。俺は何となくで学びをし、目標もなく流されるまま傭兵とかもして、運よく学院長に拾われて今はこうしてられる」
「そうだったんですか? もっときっちりした人生かと」
「人は見た目によらないんだよ、意外とな。まあ、俺が言えるのはそれくらいだ。人の人生に対してどうこう言える程じゃないし、何て言われようが何て思われようが最後に決めるのは自分なんだしおおいに悩んで決めろ。時間を掛けて悩めるなんて、学院生の時くらいだと思うぞ」
「教員なのに、それでいいんですがタツミ先生」
「いいんだよ。俺は教育を行う人というより、医務室の先生としているんだからな」
タツミはそういうと白衣のポケットに手を突っ込むと、そこから棒付きの丸い飴を取り出しアリスの前に置き、もう一本取り出し飴を包装している物を剥がし口へと運ぶ。
「悔いがあるなら、どうすれば残らないかを考えてみればいいんじゃないか? 方法が何もないわけじゃないだろ」
「え? それってどういう――」
アリスが訊き返した所でタツミはその場で背を向け、片手を上げ「明日また迎えに来る」とだけ言い残し立ち去って行く。
一人になったアリスは視線を立ち去ったタツミの方から、持って来てもらった夕食に向け小さくため息をつく。
何だかスッキリしたような、してないような感じだな。
最後のは何だったの? タツミ先生なりのアドバイスなのかな? いや、アドバイスになってるのかあれは?
そんな事を思いつつ夕食に手をつけ始め、完食した所でタツミが置いて行った飴に手を伸ばし食後の口へと運ぶ。
暫くボーっと何も考えずにただ飴を舐め続けていたが、そのまま今ある心残りについて考え始める。
このまま何も出来ずただ退学を待つしかないのかな。でも、今の私が何か出来る訳じゃないし、そもそも今後の事を考えるべきなんじゃないの?
どういう風な処分をされるかにもよるけど、お父様やお母様に迷惑が掛ける訳に行かない。
我儘で継続して通い続けた訳で、こういうリスクがあると分かった上でやって来たのだから、どうにか自分だけにしか迷惑がかからないようにしてもらわないと。
アリスはその後今後の身の振り方や明日に聞かれるであろう事を推測し、それに対しての準備をするなどしその日の残り時間を過ごすのだった。
――翌日。
タツミがアリスのいる部屋にやって来るとカーテンで囲われている前で足を止め、アリスに声を掛けた。
その声にアリスが反応するのを確認し、タツミはカーテンを開ける。
「準備は出来てるか、アリス?」
「はい」
アリスはベッドから降りると、既に全身綺麗な学院服に着替え終えていた。
この時身に付けていた服は女性用ではなく男性用であった。
「本当にそっちでいいのか?」
「こっちの方が何だかんだいって、着慣れていますし。違和感はあるかもしれませんが、こう髪をまとめれば格好はつくかと」
金色の髪をアリスは一本にまとめ用意して貰ったリボンで結う。
クリスがアリスである事は既に知れ渡ってしまっている為、偽った姿ではなく今の自分自身であるアリスとして堂々と外に出て向かうと決心していたのだった。
ただ女性用の制服を着るのは何だか足がスースーしてしまい気になるので、着慣れた新しい物をタツミに用意して貰っていた。
さすがにそんな理由までは言えてないけど、こっちの方がしっくりくるな。しっくりきちゃダメなんだけどね。
自分で自分に突っ込みながらアリスはタツミの後を付いて行き始める。
部屋を出て競技場の地下の廊下を歩きながらタツミがアリスに話し掛ける。
「今日戻って来てからだが個室の方で暫く過ごしてもらう。ベッドもあるし、寒い部屋じゃないから安心しろ」
「まあ今まで所は医務室的な所でしたし、変わるのは当然かと。体調も悪くありませんし」
「理解が早くて助かる」
それだけ会話を交わすとそれ以降は特に会話はせずに地下から地上に登り、競技場を出て学院の方へと向かい始める。
時刻は十時を過ぎているが、校舎外にはちらほらと生徒の姿があった。
休み時間だからだろうなとアリスは思いつつ、特に他の生徒の方に視線は向けずにただただタツミの後に付いて行く。
しかし徐々に生徒たちがアリスの存在に気付きざわつき始める。
「おいあれ見ろよ。噂の奴だろ?」
「マジだったのな。男装までして入り込むとか何考えているんだ?」
「それだけ男好きだって事だろ」
などと、いわれのない事を好き勝手コソコソと言われ始める。
だがアリスは、それに対し何の反論も立ち止まる事もせずに聞き流し歩き続けた。
物凄い言われようだな。ここまでとは、ちょっと考えてなかったな。
少し引きつった表情をするも、この場で何を言っても意味がないと思い無視し歩き続ける。
そんな中タツミも特に噂話をする生徒に対し何も注意する事はなかったが、鋭い視線をチラッと噂話をする生徒に向けたりしながらアリスを先導するのだった。
すると突然、真後ろからある人物が大声でクリスの名を呼びかけたのだ。
思わぬ出来事にアリスもタツミも足を止め振り返り、周囲の皆もその方へと視線を向けるとそこに立っていたのは、オービン寮かつクラスメイトのヴァンであった。
また、その場に誰がいるかまでは口にはしなかったが、タツミは付き添うだけで話し合いのメンバーには含まれていない感じの言い方であった。
「言われた内容はこれだけだ。明日は色々と聞かれると思っていた方がいいぞ、アリス」
「はい」
「……昨日の今日で呼び出しまでされるとはな。もうどう対処するかまで決まったのかもな」
「タツミ先生、やっぱりこのままだと退学、ですよね」
クリスの言い方からタツミは何かを感じとり「何か気になる事でもあるのか?」と訊き返すと、暫く黙った後にアリスが小さく頷く。
「その、物凄い我儘なんですが最後の試験だけは受けたい、と思いまして」
「どうしてだ?」
「ここで学んで来た集大成といいますか、自分の中で区切りと決めた所だったので、それを目の前にして立ち去りたくないなって……こうなるかもと考えはしてましたが、今まで通りに何かあっても乗り越えられる、後少しなんだから大丈夫と思っていたので」
アリスは自分が三月末で自ら学院から身を引こうとしていた事をタツミに明かした。
自身の将来についての悩みやこれからどうするべきか、現時点で決めている事などを全て吐き出した。
誰にも言えていなかった事も含め、話出したら止まらず全てタツミに話していたのだった。
それをタツミは遮る事無くアリスの話を聞き続けた。
「一教員というより、人生上の経験からだがそれだけ将来で悩めているのはいい事だと思うぞ。真剣に自分の今後を考えている証拠だからな。俺は何となくで学びをし、目標もなく流されるまま傭兵とかもして、運よく学院長に拾われて今はこうしてられる」
「そうだったんですか? もっときっちりした人生かと」
「人は見た目によらないんだよ、意外とな。まあ、俺が言えるのはそれくらいだ。人の人生に対してどうこう言える程じゃないし、何て言われようが何て思われようが最後に決めるのは自分なんだしおおいに悩んで決めろ。時間を掛けて悩めるなんて、学院生の時くらいだと思うぞ」
「教員なのに、それでいいんですがタツミ先生」
「いいんだよ。俺は教育を行う人というより、医務室の先生としているんだからな」
タツミはそういうと白衣のポケットに手を突っ込むと、そこから棒付きの丸い飴を取り出しアリスの前に置き、もう一本取り出し飴を包装している物を剥がし口へと運ぶ。
「悔いがあるなら、どうすれば残らないかを考えてみればいいんじゃないか? 方法が何もないわけじゃないだろ」
「え? それってどういう――」
アリスが訊き返した所でタツミはその場で背を向け、片手を上げ「明日また迎えに来る」とだけ言い残し立ち去って行く。
一人になったアリスは視線を立ち去ったタツミの方から、持って来てもらった夕食に向け小さくため息をつく。
何だかスッキリしたような、してないような感じだな。
最後のは何だったの? タツミ先生なりのアドバイスなのかな? いや、アドバイスになってるのかあれは?
そんな事を思いつつ夕食に手をつけ始め、完食した所でタツミが置いて行った飴に手を伸ばし食後の口へと運ぶ。
暫くボーっと何も考えずにただ飴を舐め続けていたが、そのまま今ある心残りについて考え始める。
このまま何も出来ずただ退学を待つしかないのかな。でも、今の私が何か出来る訳じゃないし、そもそも今後の事を考えるべきなんじゃないの?
どういう風な処分をされるかにもよるけど、お父様やお母様に迷惑が掛ける訳に行かない。
我儘で継続して通い続けた訳で、こういうリスクがあると分かった上でやって来たのだから、どうにか自分だけにしか迷惑がかからないようにしてもらわないと。
アリスはその後今後の身の振り方や明日に聞かれるであろう事を推測し、それに対しての準備をするなどしその日の残り時間を過ごすのだった。
――翌日。
タツミがアリスのいる部屋にやって来るとカーテンで囲われている前で足を止め、アリスに声を掛けた。
その声にアリスが反応するのを確認し、タツミはカーテンを開ける。
「準備は出来てるか、アリス?」
「はい」
アリスはベッドから降りると、既に全身綺麗な学院服に着替え終えていた。
この時身に付けていた服は女性用ではなく男性用であった。
「本当にそっちでいいのか?」
「こっちの方が何だかんだいって、着慣れていますし。違和感はあるかもしれませんが、こう髪をまとめれば格好はつくかと」
金色の髪をアリスは一本にまとめ用意して貰ったリボンで結う。
クリスがアリスである事は既に知れ渡ってしまっている為、偽った姿ではなく今の自分自身であるアリスとして堂々と外に出て向かうと決心していたのだった。
ただ女性用の制服を着るのは何だか足がスースーしてしまい気になるので、着慣れた新しい物をタツミに用意して貰っていた。
さすがにそんな理由までは言えてないけど、こっちの方がしっくりくるな。しっくりきちゃダメなんだけどね。
自分で自分に突っ込みながらアリスはタツミの後を付いて行き始める。
部屋を出て競技場の地下の廊下を歩きながらタツミがアリスに話し掛ける。
「今日戻って来てからだが個室の方で暫く過ごしてもらう。ベッドもあるし、寒い部屋じゃないから安心しろ」
「まあ今まで所は医務室的な所でしたし、変わるのは当然かと。体調も悪くありませんし」
「理解が早くて助かる」
それだけ会話を交わすとそれ以降は特に会話はせずに地下から地上に登り、競技場を出て学院の方へと向かい始める。
時刻は十時を過ぎているが、校舎外にはちらほらと生徒の姿があった。
休み時間だからだろうなとアリスは思いつつ、特に他の生徒の方に視線は向けずにただただタツミの後に付いて行く。
しかし徐々に生徒たちがアリスの存在に気付きざわつき始める。
「おいあれ見ろよ。噂の奴だろ?」
「マジだったのな。男装までして入り込むとか何考えているんだ?」
「それだけ男好きだって事だろ」
などと、いわれのない事を好き勝手コソコソと言われ始める。
だがアリスは、それに対し何の反論も立ち止まる事もせずに聞き流し歩き続けた。
物凄い言われようだな。ここまでとは、ちょっと考えてなかったな。
少し引きつった表情をするも、この場で何を言っても意味がないと思い無視し歩き続ける。
そんな中タツミも特に噂話をする生徒に対し何も注意する事はなかったが、鋭い視線をチラッと噂話をする生徒に向けたりしながらアリスを先導するのだった。
すると突然、真後ろからある人物が大声でクリスの名を呼びかけたのだ。
思わぬ出来事にアリスもタツミも足を止め振り返り、周囲の皆もその方へと視線を向けるとそこに立っていたのは、オービン寮かつクラスメイトのヴァンであった。
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