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第516話 お前の事が嫌いだ
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ヴァン!?
アリスと同様に皆もヴァンが声を掛けた事にざわつき始める。
ヴァンはそのままアリスへと近付いて行き、正面に立つと足を止める。
「クリス、お前俺たちを騙してたんだな」
「っ……」
アリスはヴァンの言葉に何も言い返せず、視線を逸らしてしまう。
何も言い返してこないアリスに対しヴァンの表情はしかめ面へと変わる。
「何か言ったらどうなんだよ、クリス」
「……騙していたのは本当だし、弁解はない」
「お前は何しにこの学院に来たんだよ。男装を見せびらかす為か? 男子にちやほやされたい為か? 僕たちが見抜けない事を馬鹿にして嘲笑う為か? さぞ滑稽だっただろう僕たちがお前を男子としてしか見えてない事はよ」
「違う! そんな事してない! 馬鹿に何て一度も」
「じゃあどうして男装までして、この学院に来たんだよ。答えろよ、クリス」
「それは……」
ヴァンの問いかけにアリスはルークの一件の為と答える訳にもいかず、自分が憧れていた月の魔女がいた学院だからと答えても信じてもらえないのではと思い込んでしまい、完全に黙り込んでしまう。
言葉が続かないアリスの態度にヴァンは苛立ち始める。
「何だよ言えないのか? 言えないって事はやっぱりやましい事の為だったて事でいいのか?」
「違う、そうじゃない。そうじゃないけど……言えない」
「そこまで否定しておいて、何で言えないんだよ! これまでの日々は全て上っ面だけの嘘の生活で、僕たちを騙して欺いて下に見て陰で笑って楽しかったんだろ! それが目的だったんだろ? それならそういえばいいだろうが!」
「だから違うって!」
感情的なヴァンの言葉にアリスは更に大きな声でそれを否定した。
アリスの言葉に周囲の皆も一気に黙り込み、静寂が周辺を支配する。
タツミは言い合う二人を止めに入らず、ただその場で二人を見守っているのだった。
「俺……いや私が皆に嘘を付いていた事は本当に悪かったと思ってる でも、ここでの生活に偽りはない! 心底楽しかった! 皆との時間が本当に楽しかった! 馬鹿騒ぎも試験勉強も色んな時間を過ごして、皆に感化され自分が今まで以上に成長出来た実感もしている! 友達も親友も出来て、ここにこれて本当に良かったと心の底から思ってる!」
「……」
「ここに来た動機は最初は不純な物だったよ。月の魔女が通っていた学院と知って、そこで私も学びたいと思ったからここに来た。私の憧れであって目標としている人だからね」
それからアリスはルークの件だけは一切出さずに、自分の立場など考えず自らの事を考えていた事を目の前のヴァンに思いっきりぶつけた。
ヴァンはそれをただ黙って聞き続けていたが、途中で口を開く。
「そうだったのか、それなら仕方ないなって話じゃないよな。好きだからって何でも許される訳じゃねぇんだよ、この世の中」
当たり前過ぎる言葉にアリスは何も返せなかった。
「僕は最初からお前が気に入らなかったよ。仲良くしようとも思わなかった。お前が女だからとかじゃなく、よそ者だからだ。僕のいるクラスの雰囲気をどんどんと変えていき、クラスの中心となっていくお前が嫌いだったよ」
「……うん、嫌われてるのは何となく分かってた」
「人の好きで馴染んだ空間に土足でやって来て、無意識に変えていった奴が正体を身分を偽った奴だった! 最悪だよ。本当にお前の事が嫌いだよ。これは僻みさ、僻みで何が悪い? 僕は元からこういう性格なのは知ってるだろクリス」
アリスは小さく頷く。
「クラスが自分の行動で変わっていくのを感じられて気持ち良かったろ? 自分がいい影響を周りに与えている、受け入れられていると思えてよ……」
そこでヴァンは少し俯く。
アリスはそんなヴァンを目にし「私は」と声を掛けた直後、周囲に集まった生徒たちをかき分けてライラック、リーガ、ノルマの三人が現れてヴァンを捕まえる。
「何やってるんだよお前は!」
「ほら行くぞ」
ライラックとリーガに捕まれるとヴァンは二人の拘束を振りほどく。
「掴むな! そんな事されなくても、もう戻る」
そう声を荒げアリスに背を向ける時に小さく「クソがっ」と呟き立ち去って行く。
ライラックとリーガはアリスの方をチラッと見るが何も言わずに、立ち去るヴァンの方へと顔を向け歩いて行く。
アリスは黙ったまま立ち去って行く皆を見つめていると、残ったノルマはアリスの事を暫く見つめていた。
ノルマは何か口にしようとしたが、直前で口をつぐみライラックたちと同様にアリスに背を向け立ち去って行った。
まあ、そうなるよね。声なんて掛けないよね、皆を騙していたんだし掛ける必要もないしね。
何かしら言われると思っていたが、何も言われなかった事に何処か安心していたが、心の内はざわざわとした気持ち悪さが残っていた。
暫くヴァンたちの事をただ見つめているとタツミから声を掛けられ、アリスは振り返り彼らとは逆方向に歩き始める。
その時、周囲に集まった生徒の中にルームメイトであるシンにガードル、シンリ、アルジュの姿が目に入る。
だが彼らがアリスに声を掛けることもなく、ただ集まった生徒たちに隠れるようにアリスの事を見るとすぐに背を向けて立ち去った。
アリスも一瞬だけ視界に入っただけであり本当に彼らだったかまでは正確に分かっていなかったが、その場で足を止めて確認する事はせずにタツミの後を付いて歩いて行くのだった。
その後アリスを見に来る生徒たちの中に、ルークやトウマ、レオンやジュリルといったアリスの事情を知った人物たちが現れることなく、アリスは学院長室前に辿り着く。
「俺が案内するのはここまでだ。後は、心の準備が出来たら目の前の扉をノックすればいい」
「分かりました」
少し低いトーンでの返事にタツミはここまでの道中で受けて来た生徒たちの視線などを思い出す。
「(あんな視線を受ければ誰でもこうなる。わざわざ生徒たちの視線に触れないと来れないこの場所を、どうして指定したんだ学院長は。いや、もしくは指定させられたか)」
タツミはそんな事を思いながら、その場を後にする。
アリスはタツミが立ち去ってからゆっくりと深呼吸をし始め、気持ちを整え始める。
ここまでの皆の視線や態度は考えられるものであったが、ヴァンたちとの事が思っていた以上に心に引っかかっていた。
引きずってもどうにもならないだろ私。あの場で言い訳しても何も変わらないでしょ。
そしてアリスは両手で両頬を軽く叩き少し俯いた顔を上げる。
「前を向け私、落ち込むのも考え込むのも後回しにしろ。悔いを残さないようにするんだろ」
小さく口にそう出すと最後に息をゆっくり吐いた後、学院長室の扉をゆっくり三度ノックした。
学院長室内から「入れ」と男性の声で言われ、アリスは「失礼します」と口にしてから扉を開け学院長室に入って行く。
部屋に入るとそこには学院長のマイナと副学院長であるデイビット、そして第3学年のオービンとヒビキを除く各寮長、副寮長たちが集まっていたのだった。
アリスと同様に皆もヴァンが声を掛けた事にざわつき始める。
ヴァンはそのままアリスへと近付いて行き、正面に立つと足を止める。
「クリス、お前俺たちを騙してたんだな」
「っ……」
アリスはヴァンの言葉に何も言い返せず、視線を逸らしてしまう。
何も言い返してこないアリスに対しヴァンの表情はしかめ面へと変わる。
「何か言ったらどうなんだよ、クリス」
「……騙していたのは本当だし、弁解はない」
「お前は何しにこの学院に来たんだよ。男装を見せびらかす為か? 男子にちやほやされたい為か? 僕たちが見抜けない事を馬鹿にして嘲笑う為か? さぞ滑稽だっただろう僕たちがお前を男子としてしか見えてない事はよ」
「違う! そんな事してない! 馬鹿に何て一度も」
「じゃあどうして男装までして、この学院に来たんだよ。答えろよ、クリス」
「それは……」
ヴァンの問いかけにアリスはルークの一件の為と答える訳にもいかず、自分が憧れていた月の魔女がいた学院だからと答えても信じてもらえないのではと思い込んでしまい、完全に黙り込んでしまう。
言葉が続かないアリスの態度にヴァンは苛立ち始める。
「何だよ言えないのか? 言えないって事はやっぱりやましい事の為だったて事でいいのか?」
「違う、そうじゃない。そうじゃないけど……言えない」
「そこまで否定しておいて、何で言えないんだよ! これまでの日々は全て上っ面だけの嘘の生活で、僕たちを騙して欺いて下に見て陰で笑って楽しかったんだろ! それが目的だったんだろ? それならそういえばいいだろうが!」
「だから違うって!」
感情的なヴァンの言葉にアリスは更に大きな声でそれを否定した。
アリスの言葉に周囲の皆も一気に黙り込み、静寂が周辺を支配する。
タツミは言い合う二人を止めに入らず、ただその場で二人を見守っているのだった。
「俺……いや私が皆に嘘を付いていた事は本当に悪かったと思ってる でも、ここでの生活に偽りはない! 心底楽しかった! 皆との時間が本当に楽しかった! 馬鹿騒ぎも試験勉強も色んな時間を過ごして、皆に感化され自分が今まで以上に成長出来た実感もしている! 友達も親友も出来て、ここにこれて本当に良かったと心の底から思ってる!」
「……」
「ここに来た動機は最初は不純な物だったよ。月の魔女が通っていた学院と知って、そこで私も学びたいと思ったからここに来た。私の憧れであって目標としている人だからね」
それからアリスはルークの件だけは一切出さずに、自分の立場など考えず自らの事を考えていた事を目の前のヴァンに思いっきりぶつけた。
ヴァンはそれをただ黙って聞き続けていたが、途中で口を開く。
「そうだったのか、それなら仕方ないなって話じゃないよな。好きだからって何でも許される訳じゃねぇんだよ、この世の中」
当たり前過ぎる言葉にアリスは何も返せなかった。
「僕は最初からお前が気に入らなかったよ。仲良くしようとも思わなかった。お前が女だからとかじゃなく、よそ者だからだ。僕のいるクラスの雰囲気をどんどんと変えていき、クラスの中心となっていくお前が嫌いだったよ」
「……うん、嫌われてるのは何となく分かってた」
「人の好きで馴染んだ空間に土足でやって来て、無意識に変えていった奴が正体を身分を偽った奴だった! 最悪だよ。本当にお前の事が嫌いだよ。これは僻みさ、僻みで何が悪い? 僕は元からこういう性格なのは知ってるだろクリス」
アリスは小さく頷く。
「クラスが自分の行動で変わっていくのを感じられて気持ち良かったろ? 自分がいい影響を周りに与えている、受け入れられていると思えてよ……」
そこでヴァンは少し俯く。
アリスはそんなヴァンを目にし「私は」と声を掛けた直後、周囲に集まった生徒たちをかき分けてライラック、リーガ、ノルマの三人が現れてヴァンを捕まえる。
「何やってるんだよお前は!」
「ほら行くぞ」
ライラックとリーガに捕まれるとヴァンは二人の拘束を振りほどく。
「掴むな! そんな事されなくても、もう戻る」
そう声を荒げアリスに背を向ける時に小さく「クソがっ」と呟き立ち去って行く。
ライラックとリーガはアリスの方をチラッと見るが何も言わずに、立ち去るヴァンの方へと顔を向け歩いて行く。
アリスは黙ったまま立ち去って行く皆を見つめていると、残ったノルマはアリスの事を暫く見つめていた。
ノルマは何か口にしようとしたが、直前で口をつぐみライラックたちと同様にアリスに背を向け立ち去って行った。
まあ、そうなるよね。声なんて掛けないよね、皆を騙していたんだし掛ける必要もないしね。
何かしら言われると思っていたが、何も言われなかった事に何処か安心していたが、心の内はざわざわとした気持ち悪さが残っていた。
暫くヴァンたちの事をただ見つめているとタツミから声を掛けられ、アリスは振り返り彼らとは逆方向に歩き始める。
その時、周囲に集まった生徒の中にルームメイトであるシンにガードル、シンリ、アルジュの姿が目に入る。
だが彼らがアリスに声を掛けることもなく、ただ集まった生徒たちに隠れるようにアリスの事を見るとすぐに背を向けて立ち去った。
アリスも一瞬だけ視界に入っただけであり本当に彼らだったかまでは正確に分かっていなかったが、その場で足を止めて確認する事はせずにタツミの後を付いて歩いて行くのだった。
その後アリスを見に来る生徒たちの中に、ルークやトウマ、レオンやジュリルといったアリスの事情を知った人物たちが現れることなく、アリスは学院長室前に辿り着く。
「俺が案内するのはここまでだ。後は、心の準備が出来たら目の前の扉をノックすればいい」
「分かりました」
少し低いトーンでの返事にタツミはここまでの道中で受けて来た生徒たちの視線などを思い出す。
「(あんな視線を受ければ誰でもこうなる。わざわざ生徒たちの視線に触れないと来れないこの場所を、どうして指定したんだ学院長は。いや、もしくは指定させられたか)」
タツミはそんな事を思いながら、その場を後にする。
アリスはタツミが立ち去ってからゆっくりと深呼吸をし始め、気持ちを整え始める。
ここまでの皆の視線や態度は考えられるものであったが、ヴァンたちとの事が思っていた以上に心に引っかかっていた。
引きずってもどうにもならないだろ私。あの場で言い訳しても何も変わらないでしょ。
そしてアリスは両手で両頬を軽く叩き少し俯いた顔を上げる。
「前を向け私、落ち込むのも考え込むのも後回しにしろ。悔いを残さないようにするんだろ」
小さく口にそう出すと最後に息をゆっくり吐いた後、学院長室の扉をゆっくり三度ノックした。
学院長室内から「入れ」と男性の声で言われ、アリスは「失礼します」と口にしてから扉を開け学院長室に入って行く。
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