とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
520 / 564

第519話 放たれた光の正体と下された結論

しおりを挟む
 思わぬ展開にその場にいた全員が硬直してしまう。
 が、光が頭を貫通したミカロスは何故か何処も負傷しておらず身体にも異変もなく、頭に光が貫通した後すらなかったのだ。

「ミカ?」

 オービンが恐る恐るミカロスに声を掛けるも、ミカロスはエリスに手を伸ばした状態から一向に動かなかった。
 するとスニークとマルロスが問答無用でエリスを捕らえようと動く。
 しかし、エリスは二人の動きに反応し両手をかざし、ミカロスに放った光を同様に二人の頭目掛け瞬時に放ち貫通させる。
 光が貫通した二人は、ミカロス同様にその場で完全に動きが停止したかのように微動だにしなくなる。
 一瞬の出来事に他の皆は驚きつつ、自分たちは今エリスと思われる人物に攻撃を受けているのだと判断し始める。
 その直後、エリスは問答無用で光を残る各寮長、副寮長に放つ。
 対処できる速さでない為、光に頭を貫通されてしまいオービンを除く寮長、副寮長は完全にその場で動きが固まってしまう。
 エリスはそのままデイビット、マイナ、オービンを同時に光で頭を貫く。

 こうして学院長室は、アリスを除く全員がエリスの放った光により動かなくなってしまう。
 アリスも次々起こる出来事に何も出来ず立ち尽くしており、残った自分がいつエリスが放つ光に撃ち抜かれるかと冷や汗をかいていた。
 何、何が起きているの? エリス先輩が皆に攻撃しているけど、外傷はない。というか、あの光何!? あんなのエリス先輩使えたの!?
 もう何に驚いていいのか分からなくなっているアリスの元へエリスが無言で近付いて来る。
 アリスは近付てい来るエリスに対し、一歩また一歩とじりじりと下がり始める。
 エリスから自分が知っているエリスの雰囲気を感じられず、まるで別人になってしまったのではと感じ直感的な恐怖が身体を動かしていた。
 だがいつまでも逃げられる訳なく、壁に背が当たってしまい逃げ場を失うアリス。

「エ、エリス先輩、どうしたちゃったんですか?」

 アリスの問いかけにエリスは黙ったまま近付き片手をアリスに突き出し近付いて行く。
 このままじゃいけないと思ったアリスはすぐさま魔力を全身に流し、ゴーレム武装をしようとするもその前にエリスが距離を一瞬で詰めアリスの顔を片手で掴む。
 その時アリスはふと今のエリスは、自分の時の様に誰かに操られているのではと思い始める。
 まさかバベッチが、と思考していると突然知っている様な知らない様な声がアリスの頭の中に響き渡る。

「(安心しなさい、これは攻撃ではない。彼らもマイナにも打ち込んだ光はただの情報。その処理に脳が追いつかず完全に止まっているだけよ)」
「(え、誰? ……いや、知らないはずだけれど何処かで聞いた事がある気が……)」
「(無理に思い出す必要はないわ。今から貴方にも抜けている箇所の記憶の補てんをする。少しだけ意識が飛ぶけれど、問題ないわ)」
「(ちょっと待って、貴方の名前を教え――)」

 アリスの問いかけに相手は答えず、皆と同じ様に光を頭に放たれ意識がゆっくりと遠のいていく。
 そんな中で今まで話していた相手の声が微かに聞こえてくる。

「(私が助けられるのはここまで。後は貴方次第よ、アリス)」

 その後アリスの意識は完全になくなり、次に目を覚ますとその場で座り込んでいた。
 そして目の前にはエリスがうつ伏せで倒れているのだった。

「エリス、先輩」
「っぅう……」

 アリスの声に反応しエリスの身体が動き、身体を起こし始める。
 そのままアリスは周囲に視線を向けると他の皆も自分と同じ様に地べたに座っていたり、倒れていたがエリス同様にゆっくりと動き始める。

「あれ、アリス? どうして貴方が?」
「エリス先輩、もしかして覚えてないんですか?」

 首を傾げるエリスにアリスはこの場で起きた事を伝えると、目を大きく見開き耳を疑う。
 エリスはそんな記憶もなく、それにいつの間にか学院長室に来ていた事に頭を抱えていた。
 記憶がないの? それじゃやっぱり誰に身体を乗っ取られていたんじゃ。

「ここに来た事もそうだけど、頭の中で知らない記憶があるのも変な感じよ。貴方がバベッチと呼ばれる人に身体を乗っ取られていた事とかね」
「っ!? どういう事ですかそれは」

 アリスが追求し始めた所でスニークが突然エリスを地面に押さえつける。

「っ! いったいんだけど! 何するのよ急に!」
「黙れエリス。お前こそ、急に攻撃して来て何のつもりだ? さっきのは何だ?」
「知らないわよ! 私も全然分からないの! いいから少し抑えつける力弱めなさいよ、女子にやる力じゃないわよ!」

 だがスニークはエリスの要求は受け入れずそのまま抑え続けていると、ミカロスが声を掛けて近付いて来る。

「スニークそこまでする事ないだろ」
「黙ってろミカロス。こいつがした事は見逃せないだろ。こうしなければ、また攻撃でもされるぞ」
「まずは事情を訊く。さっきのエリスは何処か変だった」
「問いただすならこのままでもいいだろ。拘束解いて逃げられる方が面倒だ」

 二人のやりとりにマイナが入って来て、スニークに拘束を解くように伝える。
 その際にマイナは一時的にエリスの両手を魔法で拘束する事で、スニークを納得させエリスに事情を訊き始める。
 エリスは先程アリスから事情を聞いた事を話し、全くここまでの記憶がない事、攻撃した覚えてもない事を伝える。
 そして知らない記憶がある事も口にすると、何故か皆それに関しては同じ現象が起きており、しかも頭の中にある記憶が全員同じである事が判明する。
 その内容がバベッチのこれまでの計画とアリスの身体を乗っ取ってからの記憶であった。

「全員同じ現象が起きているというのならば、考えられるのは先程の光だろうな。あれによりこの記憶を植え付けられたと考えるのが妥当だろう」
「作られた感じではないね。実際にその人物の視点や、それを見る人物からの視点が複数あって本物だと思えるよ」

 エメルとイルダの意見に続き、デイビットがこれまでのアリスの行動を既に他の者たちからの聴取でまとめており、植え付けられた記憶と行動が一致していると証言する。
 そこから改めてアリスに皆の頭にある記憶の内容を確認し始め、アリスがバベッチに身体を乗っ取られておりその状態でルークの事件を起こしたのだと皆が理解するのだった。

「普通に考えればあり得ない事だが、これほどの証拠といえる誰かの記憶からそれが真実としか思えなくなっているよ」
「そうですね。にわかには信じがたいですがマルロスの言う通りこの記憶からだど、バベッチが今回の事件の犯人だと思えますね。マイナ学院長、これはどういたしますか?」

 マイナはデイビットからの問いかけに腕を組み暫く考えてた後、一度アリスとエリスを別室待機させ、改めてそれ以外のメンバーで話し合いを行う事を提案する。
 他の皆はマイナの提案に反対せず賛同した為、デイビットが一度タツミを呼びに向かい、タツミが来た所でアリスとエリスを別室へと案内させる。
 その後学院長室内で、追加の情報にオービンが持って来た王城側からの意見を元にアリスの処遇とエリスの対応を話し合い結論を出すのだった。
 そして再びアリスとエリスが学院長室に戻って来た所で、マイナから二人に対し話し合いで出た学院側の結論を告げ始める。

「まずはエリス・クリセント。今回の一件は、一旦不問とするが改めて詳しく聴取を行わせてもらう。こちらの意見としては、貴方も何者かに操られていたり異常な魔力残滓があるという意見から再調査させてもらう。その後改めて判断を下す」
「分かりました」

 頭を下げるエリスを見た後、マイナはアリスへと視線を向ける。

「次にアリス・フォークロス。結論だがここに関しては変わらず『退学』とする。しかし、ルークの殺傷未遂に関しては例の記憶から本人でない可能性があり、王城側からも現在大きな追求などもない為こちらに関して学院側では退学の一判断要素とさせてもらう。また転入に関しては身分を偽っての転入は校則上認められていないかつ、身分詐称もある事から退学の主な要因とさせていただく」
「はい」

 それで話は終わりかと思われたが、マイナの話しは続く。

「しかし今回の転入に関しては私やオービンの責任もある為、全責任を負わせず『退学』に関して情状酌量を与えることに決まった」
「情状酌量ですか」
「ええ、退学までに一定期間の猶予を与えます。他生徒との面会や勉学の為の大図書館使用など、付き添いありですが限定的に許可します。これが学院側の決定となります」

 それを聞きアリスの中である気持ちが込み上がり、片手を上げる発言の許可をもらう。

「一つだけ。その情状酌量についてですが、私の希望が通るか聞いてもいいですか?」
「どうぞ」

 マイナの許可が下りた所で、アリスは真っすぐにマイナを見つめ自らの希望を口にした。

「私を最終期末試験に参加させてください」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です

オレンジ方解石
恋愛
 結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。  離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。  異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。  そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。  女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。 ※追記の追記を少し直しました。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

処理中です...