521 / 564
第520話 本の著者
しおりを挟む
アリスは学院長室での話し合いを終え、タツミに連れられ競技場の地下に戻って来ていた。
そのまま個室へと入り、準備されていたベッドに腰かけそのまま天井を眺める。
「つい勢いで言ってしまったけど、検討してくれるとは。言ってみるものだ」
今回出された結論に対し、情状酌量となった事は自分でも驚きながらも自分として悔いが残りそうであった最終期末への参加が検討された事でどこかほっとしていた。
退学に関しては覚悟していた事であり、一度自ら選択していたからか思っていたよりすんなりと受け入れられたのだった。
「でもまさか、マイナ学院長にオービン先輩から全て話すとは思ってなかったな。それにルークの件も、皆に乗っ取られたという事実が伝わったというか、理解された事でこうなったのは良かったと捉えるべきかな?」
未だにエリスが起こした行動に疑問が残る中、アリスは一旦二人で別室待機になった時の事を思い出す。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――学院長室から離れた一部屋の別室にて。
アリスとエリスが向かい合って椅子に座っており、扉近くにてお目付け役のタツミが壁に寄りかかっていた。
「で、よく分からないが何故か意識が戻ったら、学院長室で倒れてたと?」
「そうなんですよ、もう全然分けわからないですよ。ついさっきまで女子寮の自室近くに居たんですよ」
「本気で言ってるのかそれ?」
「本当ですよ。じゃなきゃスニークなんかに抑えつけられたりしませんし、仮に私がオービンたちを攻撃するならそんな堂々と正面から行きませんよ。彼らの事をよく知ってますしね」
何故かそれに対してタツミは納得する。
エリスは拘束された両手を見ながら、小さくため息をつく。
「まあ私の方はどうにでもなるしいいんだけど、タツミ先生はアリスの事いつから知っていたんですか?」
と、話題をそこで切り替えアリスの話しへと変わる。
この場にはアリスの事情を先に知っていた者しかおらず、立場はあるにしろ心配はしていたのだった。
その後エリスとタツミの互いの情報交換を終え、今後どのような処分が下されるかの話しになる。
「現状身分を偽った件は変わらず、このまま学院にいる事は無理だろうな。ルークの方はそのよく分からない記憶だよりだが、それが認められれば重いものはないと思うな」
「『退学』は確定なんですね。これまで色々とやって来たけど、自分の知らない所でバレるっていうのはちょっときついね」
アリスはエリスの言葉に小さく頷きながら「はい」と呟いた。
だがそのまま俯く事なく今の現状を少しずつ受け入れて先を考えている表情を向ける。
「こういう日がこないとは思っていませんでしたし、少しは心の準備をしていたのでそんなに落ち込んではないです。ただ、区切りを決めていたのでそこまではここに居たかったという気持ちはあります」
アリスはそこで二人に対し、三月まででこの学院を自主的に退学するつもりで既に学院長には伝えていたと告白するのだった。
自分がして来た事は決して正しい事でなく、人を騙し嘘を付いて来た良くない事だったがここで学べた事生活出来た時間が、自分を変え新しい道へ進むべきだと考えさせてくれたとアリスは口にする。
「とか言いましても、新しい目標とか夢とかまだ固まってないんですけどね。あははは……」
「心配しなくても大丈夫よアリス。夢や目標は、意外な形で埋まったりする事もあるわ。今の貴方はもやっとした感じでその辺があるけれど、無理に形にしようとして型にはめようとしているんだと思うわ」
「そんな意識はないですけど」
「そう? これをやるなら、こんな職につかないといけない。これを実現する為には、あんな事をしてこんな道を辿らないといけないって考えたりしてない?」
「え、ダメなんですかその考え方」
「ダメじゃないわ。ただ、まだそんなにガチガチに道を固める段階にしなくていいんじゃないって事。徐々に形にしていけばいいと思うわ、私は。方向が決まっているならそっちをうろうろと放浪しながらでもいいんじゃないかしら。まあ所詮は他人の言葉、私の考えはこうだと参考にでもして」
そこまで聞いてアリスは軽く腕を組みながら「そんな考え方ですか」と口にする。
するとエリスは何を思い出し再び口を開く。
「そういえば、前に大図書館でだけれど面白い本があったわよ。古い感じだけれど、夢は魔法の様に未知のままでいいって一文が今でも印象的だわ」
「どんな本なんです、それは?」
「数十ページしかない薄い冊子見ないな感じで、たしか著者は何とかロードリヒって人だった気が」
「ロードリヒ? エリス、もしかしてその本の著者リリエル・ロードリヒとかじゃないか?」
タツミがそこで急に口を開くが、問いかけに対しエリスはもやっとしていた箇所が晴れた表情で「たしかそれです」と返事をする。
その答えにタツミは自身のメモ帳を取り出し開ける。
リリエル・ロードリヒ……何だろ聞いた事がある気がするは、なんでだろう。
初めて聞いた名前じゃないような、知っている人のような気がする。
「よく知ってますねタツミ先生。もしかして、その本読んだ事あったりその人のファンですか?」
「いや、その人物が本を書いていたのは初めて知った。ちょっと誰だか調べていた人物でな、もしかしてと思って訊いたんだ。でも、まさか本の著者だったとは」
いや違う、その人はどうしてかそんな人じゃないような気がする。
もっとこう何て言えばいいんだろ、別の何かだったはず……? どうして私そんな風に思えるんだ? 初めて聞いたはずの人の名なのに。
「調べていたって、何処で知ったんですかその人のこと。私の記憶もちょっと曖昧でたぶんその人だと思いますけど」
「これも不思議な事で、エリスの様に自分の記憶のない時に書いていた名前でな。わざわざ書き残すくらいだ、知り合いな気はするが全く誰だか知らないんだよ」
「……それ本気でいってます?」
ここでエリスがタツミに言われた事を同じ様に訊き返し、自分の発言がまさか自分に返って来るとは思わず軽く頭を抱えた。
少しにやけているエリスに対しタツミは「さっきは悪かった。そういうこともあったな」と口にした。
「たまたま似た境遇だったので使わせてもらっただけですよ。にしても、誰なんですかねリリエル・ロードリヒっていう女性は。もしかして、タツミ先生の恋人だったりして」
「違う。それだけは確信して――って、待てエリス。何で女性だといいきれる? 俺はどちらかなんて知らないぞ」
「あれ? どうしてですかね、何となく女性な気がして流れで口にしてました。でもたぶん、女性な気がしますよその人。理由は特にないですけど、しいていえば女の勘ってやつです」
「女の勘ね」
そう口にしながらタツミはアリスに視線を向けると、アリスは何かを考え込んでいる表情をしていた。
エリスもそんなアリスに気付き声を掛けると、アリスは顔を上げエリスの方を見る。
「何か凄い考え込んでいた感じだったけど、大丈夫?」
「え、あっはい。すいません、大丈夫です」
「私の言葉で変に考え込ませていたらごめんね」
「いやそっちに関してはいい考え方を貰えたので参考にします。考えていたのはちょっと気になったでして」
「それならいいけど」
それから暫くしてアリスたちは学院長室に再び呼ばれ戻って行ったのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「リリエル・ロードリヒ。あれから何か知っている人かと思って、荷物のノートとか確認したけど全然そんな人の名前はなかったんだよね。やっぱり、知っている気がしたのは勘違いかな」
既に個室には寮の部屋に置いていた荷物などが運び込まれていた。
荷物といっても、教科書など勉強道具がメインで持ち込んだ荷物の大半は未だ寮の部屋である。
徐々にこちらに持って来るとタツミから話を聞いていたのであった。
アリスはモヤモヤした状態で、一度その人の事は考えるのをやめようとベッドに横になりひと眠りしようとするも、そう簡単に切り替えられず眠れずに起き上がる。
「ダメだな。どうしようか」
そんな時にタツミに持って来てもらった大図書館の本が目につき、それを読んで気を紛らわせようと決め手に取り読み始める。
初めはやはりそれでも何処かで気になってしまっていたが、徐々に本に対して意識が向いて行き気にせずに没頭するのだった。
そしてあっという間に時間は過ぎて行き、夕食の時間を終え、就寝時間を迎えようとしていた。
アリスは読んでいた本を読み終え明りを消して寝ようとした時だった。
突然部屋の扉が小さくノックされた事に気付くが、気のせいかと思い無視するがもう一度ノックされ気のせいではないと気付く。
そのままベッドに入らずアリスは扉の方へと向かった。
「タツミ先生?」
とアリスが扉越しに声を掛けると、思わず人物からの返事が返って来る。
「アリス? 僕だよ、レオン」
そのまま個室へと入り、準備されていたベッドに腰かけそのまま天井を眺める。
「つい勢いで言ってしまったけど、検討してくれるとは。言ってみるものだ」
今回出された結論に対し、情状酌量となった事は自分でも驚きながらも自分として悔いが残りそうであった最終期末への参加が検討された事でどこかほっとしていた。
退学に関しては覚悟していた事であり、一度自ら選択していたからか思っていたよりすんなりと受け入れられたのだった。
「でもまさか、マイナ学院長にオービン先輩から全て話すとは思ってなかったな。それにルークの件も、皆に乗っ取られたという事実が伝わったというか、理解された事でこうなったのは良かったと捉えるべきかな?」
未だにエリスが起こした行動に疑問が残る中、アリスは一旦二人で別室待機になった時の事を思い出す。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――学院長室から離れた一部屋の別室にて。
アリスとエリスが向かい合って椅子に座っており、扉近くにてお目付け役のタツミが壁に寄りかかっていた。
「で、よく分からないが何故か意識が戻ったら、学院長室で倒れてたと?」
「そうなんですよ、もう全然分けわからないですよ。ついさっきまで女子寮の自室近くに居たんですよ」
「本気で言ってるのかそれ?」
「本当ですよ。じゃなきゃスニークなんかに抑えつけられたりしませんし、仮に私がオービンたちを攻撃するならそんな堂々と正面から行きませんよ。彼らの事をよく知ってますしね」
何故かそれに対してタツミは納得する。
エリスは拘束された両手を見ながら、小さくため息をつく。
「まあ私の方はどうにでもなるしいいんだけど、タツミ先生はアリスの事いつから知っていたんですか?」
と、話題をそこで切り替えアリスの話しへと変わる。
この場にはアリスの事情を先に知っていた者しかおらず、立場はあるにしろ心配はしていたのだった。
その後エリスとタツミの互いの情報交換を終え、今後どのような処分が下されるかの話しになる。
「現状身分を偽った件は変わらず、このまま学院にいる事は無理だろうな。ルークの方はそのよく分からない記憶だよりだが、それが認められれば重いものはないと思うな」
「『退学』は確定なんですね。これまで色々とやって来たけど、自分の知らない所でバレるっていうのはちょっときついね」
アリスはエリスの言葉に小さく頷きながら「はい」と呟いた。
だがそのまま俯く事なく今の現状を少しずつ受け入れて先を考えている表情を向ける。
「こういう日がこないとは思っていませんでしたし、少しは心の準備をしていたのでそんなに落ち込んではないです。ただ、区切りを決めていたのでそこまではここに居たかったという気持ちはあります」
アリスはそこで二人に対し、三月まででこの学院を自主的に退学するつもりで既に学院長には伝えていたと告白するのだった。
自分がして来た事は決して正しい事でなく、人を騙し嘘を付いて来た良くない事だったがここで学べた事生活出来た時間が、自分を変え新しい道へ進むべきだと考えさせてくれたとアリスは口にする。
「とか言いましても、新しい目標とか夢とかまだ固まってないんですけどね。あははは……」
「心配しなくても大丈夫よアリス。夢や目標は、意外な形で埋まったりする事もあるわ。今の貴方はもやっとした感じでその辺があるけれど、無理に形にしようとして型にはめようとしているんだと思うわ」
「そんな意識はないですけど」
「そう? これをやるなら、こんな職につかないといけない。これを実現する為には、あんな事をしてこんな道を辿らないといけないって考えたりしてない?」
「え、ダメなんですかその考え方」
「ダメじゃないわ。ただ、まだそんなにガチガチに道を固める段階にしなくていいんじゃないって事。徐々に形にしていけばいいと思うわ、私は。方向が決まっているならそっちをうろうろと放浪しながらでもいいんじゃないかしら。まあ所詮は他人の言葉、私の考えはこうだと参考にでもして」
そこまで聞いてアリスは軽く腕を組みながら「そんな考え方ですか」と口にする。
するとエリスは何を思い出し再び口を開く。
「そういえば、前に大図書館でだけれど面白い本があったわよ。古い感じだけれど、夢は魔法の様に未知のままでいいって一文が今でも印象的だわ」
「どんな本なんです、それは?」
「数十ページしかない薄い冊子見ないな感じで、たしか著者は何とかロードリヒって人だった気が」
「ロードリヒ? エリス、もしかしてその本の著者リリエル・ロードリヒとかじゃないか?」
タツミがそこで急に口を開くが、問いかけに対しエリスはもやっとしていた箇所が晴れた表情で「たしかそれです」と返事をする。
その答えにタツミは自身のメモ帳を取り出し開ける。
リリエル・ロードリヒ……何だろ聞いた事がある気がするは、なんでだろう。
初めて聞いた名前じゃないような、知っている人のような気がする。
「よく知ってますねタツミ先生。もしかして、その本読んだ事あったりその人のファンですか?」
「いや、その人物が本を書いていたのは初めて知った。ちょっと誰だか調べていた人物でな、もしかしてと思って訊いたんだ。でも、まさか本の著者だったとは」
いや違う、その人はどうしてかそんな人じゃないような気がする。
もっとこう何て言えばいいんだろ、別の何かだったはず……? どうして私そんな風に思えるんだ? 初めて聞いたはずの人の名なのに。
「調べていたって、何処で知ったんですかその人のこと。私の記憶もちょっと曖昧でたぶんその人だと思いますけど」
「これも不思議な事で、エリスの様に自分の記憶のない時に書いていた名前でな。わざわざ書き残すくらいだ、知り合いな気はするが全く誰だか知らないんだよ」
「……それ本気でいってます?」
ここでエリスがタツミに言われた事を同じ様に訊き返し、自分の発言がまさか自分に返って来るとは思わず軽く頭を抱えた。
少しにやけているエリスに対しタツミは「さっきは悪かった。そういうこともあったな」と口にした。
「たまたま似た境遇だったので使わせてもらっただけですよ。にしても、誰なんですかねリリエル・ロードリヒっていう女性は。もしかして、タツミ先生の恋人だったりして」
「違う。それだけは確信して――って、待てエリス。何で女性だといいきれる? 俺はどちらかなんて知らないぞ」
「あれ? どうしてですかね、何となく女性な気がして流れで口にしてました。でもたぶん、女性な気がしますよその人。理由は特にないですけど、しいていえば女の勘ってやつです」
「女の勘ね」
そう口にしながらタツミはアリスに視線を向けると、アリスは何かを考え込んでいる表情をしていた。
エリスもそんなアリスに気付き声を掛けると、アリスは顔を上げエリスの方を見る。
「何か凄い考え込んでいた感じだったけど、大丈夫?」
「え、あっはい。すいません、大丈夫です」
「私の言葉で変に考え込ませていたらごめんね」
「いやそっちに関してはいい考え方を貰えたので参考にします。考えていたのはちょっと気になったでして」
「それならいいけど」
それから暫くしてアリスたちは学院長室に再び呼ばれ戻って行ったのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「リリエル・ロードリヒ。あれから何か知っている人かと思って、荷物のノートとか確認したけど全然そんな人の名前はなかったんだよね。やっぱり、知っている気がしたのは勘違いかな」
既に個室には寮の部屋に置いていた荷物などが運び込まれていた。
荷物といっても、教科書など勉強道具がメインで持ち込んだ荷物の大半は未だ寮の部屋である。
徐々にこちらに持って来るとタツミから話を聞いていたのであった。
アリスはモヤモヤした状態で、一度その人の事は考えるのをやめようとベッドに横になりひと眠りしようとするも、そう簡単に切り替えられず眠れずに起き上がる。
「ダメだな。どうしようか」
そんな時にタツミに持って来てもらった大図書館の本が目につき、それを読んで気を紛らわせようと決め手に取り読み始める。
初めはやはりそれでも何処かで気になってしまっていたが、徐々に本に対して意識が向いて行き気にせずに没頭するのだった。
そしてあっという間に時間は過ぎて行き、夕食の時間を終え、就寝時間を迎えようとしていた。
アリスは読んでいた本を読み終え明りを消して寝ようとした時だった。
突然部屋の扉が小さくノックされた事に気付くが、気のせいかと思い無視するがもう一度ノックされ気のせいではないと気付く。
そのままベッドに入らずアリスは扉の方へと向かった。
「タツミ先生?」
とアリスが扉越しに声を掛けると、思わず人物からの返事が返って来る。
「アリス? 僕だよ、レオン」
0
あなたにおすすめの小説
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です
オレンジ方解石
恋愛
結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。
離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。
異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。
そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。
女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。
※追記の追記を少し直しました。
枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉
狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。
「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。
フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。
対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。
「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」
聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。
「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」
そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。
イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。
ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼
そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ!
イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。
しかし……。
「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」
そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。
異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。
和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……?
しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし!
危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。
彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。
頼む騎士様、どうか私を保護してください!
あれ、でもこの人なんか怖くない?
心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……?
どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ!
人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける!
……うん、詰んだ。
★「小説家になろう」先行投稿中です★
多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】
23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも!
そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。
お願いですから、私に構わないで下さい!
※ 他サイトでも投稿中
9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです
志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑!
10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。
もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。
(頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる