とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第520話 本の著者

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 アリスは学院長室での話し合いを終え、タツミに連れられ競技場の地下に戻って来ていた。
 そのまま個室へと入り、準備されていたベッドに腰かけそのまま天井を眺める。

「つい勢いで言ってしまったけど、検討してくれるとは。言ってみるものだ」

 今回出された結論に対し、情状酌量となった事は自分でも驚きながらも自分として悔いが残りそうであった最終期末への参加が検討された事でどこかほっとしていた。
 退学に関しては覚悟していた事であり、一度自ら選択していたからか思っていたよりすんなりと受け入れられたのだった。

「でもまさか、マイナ学院長にオービン先輩から全て話すとは思ってなかったな。それにルークの件も、皆に乗っ取られたという事実が伝わったというか、理解された事でこうなったのは良かったと捉えるべきかな?」

 未だにエリスが起こした行動に疑問が残る中、アリスは一旦二人で別室待機になった時の事を思い出す。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ――学院長室から離れた一部屋の別室にて。


 アリスとエリスが向かい合って椅子に座っており、扉近くにてお目付け役のタツミが壁に寄りかかっていた。

「で、よく分からないが何故か意識が戻ったら、学院長室で倒れてたと?」
「そうなんですよ、もう全然分けわからないですよ。ついさっきまで女子寮の自室近くに居たんですよ」
「本気で言ってるのかそれ?」
「本当ですよ。じゃなきゃスニークなんかに抑えつけられたりしませんし、仮に私がオービンたちを攻撃するならそんな堂々と正面から行きませんよ。彼らの事をよく知ってますしね」

 何故かそれに対してタツミは納得する。
 エリスは拘束された両手を見ながら、小さくため息をつく。

「まあ私の方はどうにでもなるしいいんだけど、タツミ先生はアリスの事いつから知っていたんですか?」

 と、話題をそこで切り替えアリスの話しへと変わる。
 この場にはアリスの事情を先に知っていた者しかおらず、立場はあるにしろ心配はしていたのだった。
 その後エリスとタツミの互いの情報交換を終え、今後どのような処分が下されるかの話しになる。

「現状身分を偽った件は変わらず、このまま学院にいる事は無理だろうな。ルークの方はそのよく分からない記憶だよりだが、それが認められれば重いものはないと思うな」
「『退学』は確定なんですね。これまで色々とやって来たけど、自分の知らない所でバレるっていうのはちょっときついね」

 アリスはエリスの言葉に小さく頷きながら「はい」と呟いた。
 だがそのまま俯く事なく今の現状を少しずつ受け入れて先を考えている表情を向ける。

「こういう日がこないとは思っていませんでしたし、少しは心の準備をしていたのでそんなに落ち込んではないです。ただ、区切りを決めていたのでそこまではここに居たかったという気持ちはあります」

 アリスはそこで二人に対し、三月まででこの学院を自主的に退学するつもりで既に学院長には伝えていたと告白するのだった。
 自分がして来た事は決して正しい事でなく、人を騙し嘘を付いて来た良くない事だったがここで学べた事生活出来た時間が、自分を変え新しい道へ進むべきだと考えさせてくれたとアリスは口にする。

「とか言いましても、新しい目標とか夢とかまだ固まってないんですけどね。あははは……」
「心配しなくても大丈夫よアリス。夢や目標は、意外な形で埋まったりする事もあるわ。今の貴方はもやっとした感じでその辺があるけれど、無理に形にしようとして型にはめようとしているんだと思うわ」
「そんな意識はないですけど」
「そう? これをやるなら、こんな職につかないといけない。これを実現する為には、あんな事をしてこんな道を辿らないといけないって考えたりしてない?」
「え、ダメなんですかその考え方」
「ダメじゃないわ。ただ、まだそんなにガチガチに道を固める段階にしなくていいんじゃないって事。徐々に形にしていけばいいと思うわ、私は。方向が決まっているならそっちをうろうろと放浪しながらでもいいんじゃないかしら。まあ所詮は他人の言葉、私の考えはこうだと参考にでもして」

 そこまで聞いてアリスは軽く腕を組みながら「そんな考え方ですか」と口にする。
 するとエリスは何を思い出し再び口を開く。

「そういえば、前に大図書館でだけれど面白い本があったわよ。古い感じだけれど、夢は魔法の様に未知のままでいいって一文が今でも印象的だわ」
「どんな本なんです、それは?」
「数十ページしかない薄い冊子見ないな感じで、たしか著者は何とかロードリヒって人だった気が」
「ロードリヒ? エリス、もしかしてその本の著者リリエル・ロードリヒとかじゃないか?」

 タツミがそこで急に口を開くが、問いかけに対しエリスはもやっとしていた箇所が晴れた表情で「たしかそれです」と返事をする。
 その答えにタツミは自身のメモ帳を取り出し開ける。
 リリエル・ロードリヒ……何だろ聞いた事がある気がするは、なんでだろう。
 初めて聞いた名前じゃないような、知っている人のような気がする。

「よく知ってますねタツミ先生。もしかして、その本読んだ事あったりその人のファンですか?」
「いや、その人物が本を書いていたのは初めて知った。ちょっと誰だか調べていた人物でな、もしかしてと思って訊いたんだ。でも、まさか本の著者だったとは」

 いや違う、その人はどうしてかそんな人じゃないような気がする。
 もっとこう何て言えばいいんだろ、別の何かだったはず……? どうして私そんな風に思えるんだ? 初めて聞いたはずの人の名なのに。

「調べていたって、何処で知ったんですかその人のこと。私の記憶もちょっと曖昧でたぶんその人だと思いますけど」
「これも不思議な事で、エリスの様に自分の記憶のない時に書いていた名前でな。わざわざ書き残すくらいだ、知り合いな気はするが全く誰だか知らないんだよ」
「……それ本気でいってます?」

 ここでエリスがタツミに言われた事を同じ様に訊き返し、自分の発言がまさか自分に返って来るとは思わず軽く頭を抱えた。
 少しにやけているエリスに対しタツミは「さっきは悪かった。そういうこともあったな」と口にした。

「たまたま似た境遇だったので使わせてもらっただけですよ。にしても、誰なんですかねリリエル・ロードリヒっていう女性は。もしかして、タツミ先生の恋人だったりして」
「違う。それだけは確信して――って、待てエリス。何で女性だといいきれる? 俺はどちらかなんて知らないぞ」
「あれ? どうしてですかね、何となく女性な気がして流れで口にしてました。でもたぶん、女性な気がしますよその人。理由は特にないですけど、しいていえば女の勘ってやつです」
「女の勘ね」

 そう口にしながらタツミはアリスに視線を向けると、アリスは何かを考え込んでいる表情をしていた。
 エリスもそんなアリスに気付き声を掛けると、アリスは顔を上げエリスの方を見る。

「何か凄い考え込んでいた感じだったけど、大丈夫?」
「え、あっはい。すいません、大丈夫です」
「私の言葉で変に考え込ませていたらごめんね」
「いやそっちに関してはいい考え方を貰えたので参考にします。考えていたのはちょっと気になったでして」
「それならいいけど」

 それから暫くしてアリスたちは学院長室に再び呼ばれ戻って行ったのだった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「リリエル・ロードリヒ。あれから何か知っている人かと思って、荷物のノートとか確認したけど全然そんな人の名前はなかったんだよね。やっぱり、知っている気がしたのは勘違いかな」

 既に個室には寮の部屋に置いていた荷物などが運び込まれていた。
 荷物といっても、教科書など勉強道具がメインで持ち込んだ荷物の大半は未だ寮の部屋である。
 徐々にこちらに持って来るとタツミから話を聞いていたのであった。
 アリスはモヤモヤした状態で、一度その人の事は考えるのをやめようとベッドに横になりひと眠りしようとするも、そう簡単に切り替えられず眠れずに起き上がる。

「ダメだな。どうしようか」

 そんな時にタツミに持って来てもらった大図書館の本が目につき、それを読んで気を紛らわせようと決め手に取り読み始める。
 初めはやはりそれでも何処かで気になってしまっていたが、徐々に本に対して意識が向いて行き気にせずに没頭するのだった。
 そしてあっという間に時間は過ぎて行き、夕食の時間を終え、就寝時間を迎えようとしていた。
 アリスは読んでいた本を読み終え明りを消して寝ようとした時だった。
 突然部屋の扉が小さくノックされた事に気付くが、気のせいかと思い無視するがもう一度ノックされ気のせいではないと気付く。
 そのままベッドに入らずアリスは扉の方へと向かった。

「タツミ先生?」

 とアリスが扉越しに声を掛けると、思わず人物からの返事が返って来る。

「アリス? 僕だよ、レオン」
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