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第522話 同じ道を進む
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レオンは競技場外に出て街灯に照らされた道を歩いていると、街灯に寄りかかりレオンの帰りを待っていた人物が声を掛けた。
「どうだった――いや、その雰囲気で何となく察せるわ」
「ジュリル様」
少し俯ていて歩いていたレオンはジュリルの声に顔を上げる。
「慰めたりなんてしないわよ。誰にでもあることなのですから」
「あははは……意外とぐっと心に来るもんなんですね。初めてで、どうしていいか分からないですよ」
「気持ちは分かるわ。私も――いえ、聞いた話ですが初恋は実らない事が多いらしいですわよ」
「初めて聞きましたよそんな事。誰から聞いたんです?」
ジュリルは少し黙った後、執事長や人生経験が長い人たちがそんな事を話していたのを聞いたと答える。
レオンはジュリルなりにあまり思い詰めないようにしているのだろうかと感じるのだった。
「ジュリル様、こんな時間まで付き合っていただきありがとうございます」
そう口にしレオンはジュリルに頭を下げる。
ジュリルは腕を組みながら少しだけそっぽを向いて答える。
「本当ですわ。主が従者の我儘を聞く人なんていませんわよ。でも、ここではその関係は適用されませんし、ただの知り合いからの我儘を聞いてあげただけですわ」
「本当にありがとうございます。失敗してしまって面目ないですけれど」
「ハイナンス家の執事は基本失敗は許されませんのよ。失敗しないように鍛錬し、己を磨き、成長しなければいけませんわ」
「やっぱり僕はまだ、見習いですね」
苦笑いするレオンにジュリルは近付き片手でレオンの両頬を掴み上げる。
まさかの行動にレオンも驚き目を丸くする。
「見習いだろうと貴方は既にハイナンス家の執事なのですわよ。いつまでもそんな顔せず前を向きなさい。一度断られたくらいで折れないでくださいまし!」
「っ!」
「先程も言いましたが気持ちは分かりますわ。ですが、一度断られたからなんだというのです。諦める理由にはなりませんわ! 相手が振り向いてくれるまで、気にしてくれるまで己を磨き成長すればいいのです!」
そう口にしたジュリルの目が少し潤む。
ジュリル自身もそれに気付きレオンから手を離すと、すぐに背を向けた。
レオンはジュリルの言葉を噛みしめながら、無意識に下げていた視線や顔を上へと向ける。
「すいません、ジュリル様。僕はやはりまだまだ見習いです。初めての事で動揺し少し腑抜けてしまいました。あれで終わったのだと、諦めなければいけないと」
ジュリルがレオンの言葉に再び振り返る。
「でもそれは僕が勝手に決めつけていただけだったんですね。この気持ちに決められたルールはないのなら、僕は貴方と同じ道を行きますジュリル様」
「そう。貴方も物好きですわね」
「僕は貴方の執事ですから」
互いに小さく笑った後、ジュリルの後をレオンが一歩離れて付いて行くのだった。
そんな二人の姿を茂みの奥で銜えたばこしながら見つめる人物がいた。
「(あれが青春ってやつか)」
そこでその人物はたばこの煙でむせ返してしまい、たばこを手にとり握りつぶす。
「全くやっぱりこれは身体に合わねえわな。飴がねえから久しぶりに口にしたが、やっぱりダメだな」
そう口にしながら満点の星空と満月を目にした後、競技場の方へと白衣をなびかせながら帰って行くのだった。
――同時刻。
――オービン寮の209号室にて。
「おいルーク、何処に行く気だ」
「決まってるんだろそんなの」
部屋から出て行こうとするルークをトウマが止めようとするも、言葉だけでは止まらないのを見てトウマがルークの腕を掴む。
ルークは掴んで来たトウマを睨みつける。
だがトウマは怯むことなくルークを掴んだ手を離さず見つめ返す。
「今お前が出て行った所で何が変わる? 事態が余計にひどくなったらどうするんだ?」
「じゃお前は、何もせずにこのまま黙ってろっていうのかトウマ」
「っ、そこまで言うなら聞くが、お前が出て行って何が出来るんだよ。あいつの正体が皆の前でバレてしまった以上、俺たちには何の弁明も出来ない。逆に知っていたのを知られたらよけいにあいつの立場が悪くなるかもしれない」
そこでルークは黙ったまま掴まれた腕を振りほどき、自分の席の方へと戻る。
「お前が傷を負われた一件は、お前の一言でどうにかなるかもしれない。既にそれはやってるんだろ」
「ああ。あの時のアリスはアリスじゃなかった。それは覚えているが、その後どうなったかを全然覚えてないんだよ」
トウマたち含め生徒たちは、アリスの正体を聞いてしまっており更にはルークを刺した相手と認識されていた。
ルーク自身は刺されたような記憶があり、何故かその辺が曖昧になっており何か忘れている、抜け落ちている様な感覚はありつつもアリスに罪はないと聴取の時に発言していたのだった。
またアリスの状況についても特に生徒たちには何も伝えられていないのであった。
「(くそ、何なんだこの微妙に合わない記憶は。強引に辻褄を合わせた感じがするが、妙に納得出来てしまう。誰か、誰か結界内の時に居た気がするんだが、思い出せない)」
「とりあえず明日から最終期末試験が始まるんだ。アリスの件も試験中は進展は特にしないだろう、たぶんだが」
「でも今日、学院長室に呼び出されたんだろ? って事は何かしらの処分が決まったって考えるのが妥当だろ」
「まだ聞き取りの可能性だってあるだろ。まだあれから三日だぞ? さすがに早すぎるだろ? それに試験もあるし、現状の学院状況とか色々考えるとアリスの件は後回しにされないか?」
「いや、問題が多いからこそ今回の一件は早く片付けたいという方針もありえる」
と、二人が論議をかわしていると突然部屋の扉がノックされ二人は驚く。
黙ったまま扉の方を見つめていると、もう一度扉がノックされる。
「誰だこんな時間に」
「ちょ、出るのかルーク」
小声で話すトウマにルークは「気になるだろ」と口にし扉に近付いて行く。
その間にも再び扉がノックされる。
ルークはノブに手をかけるも、扉の向こう側に誰がいるのか少し不安になりながらもノブをまわし扉を引いた。
そして月明かりに照らされ扉の前に立っていた人物にルークは驚く。
トウマは離れた場所におり、誰が居るのかまだ見えずにいた。
「ルーク? 誰だったんだ?」
問いかけても返事がないルークにトウマは気になって近付いて行くと、扉の前に立っていた人物が少しだけ開けられた扉を押し部屋の中に入る。
「悪いね、こんな遅い時間に」
「えっ嘘!?」
「何の用で来たんだよ、兄貴」
部屋にやって来た人物は、ルークの兄でもあるオービンであった。
扉を完全に閉めた後、オービンは二人の顔を交互に見る。
「彼女、アリス・フォークロスの件で話があって来たんだよ」
「どうだった――いや、その雰囲気で何となく察せるわ」
「ジュリル様」
少し俯ていて歩いていたレオンはジュリルの声に顔を上げる。
「慰めたりなんてしないわよ。誰にでもあることなのですから」
「あははは……意外とぐっと心に来るもんなんですね。初めてで、どうしていいか分からないですよ」
「気持ちは分かるわ。私も――いえ、聞いた話ですが初恋は実らない事が多いらしいですわよ」
「初めて聞きましたよそんな事。誰から聞いたんです?」
ジュリルは少し黙った後、執事長や人生経験が長い人たちがそんな事を話していたのを聞いたと答える。
レオンはジュリルなりにあまり思い詰めないようにしているのだろうかと感じるのだった。
「ジュリル様、こんな時間まで付き合っていただきありがとうございます」
そう口にしレオンはジュリルに頭を下げる。
ジュリルは腕を組みながら少しだけそっぽを向いて答える。
「本当ですわ。主が従者の我儘を聞く人なんていませんわよ。でも、ここではその関係は適用されませんし、ただの知り合いからの我儘を聞いてあげただけですわ」
「本当にありがとうございます。失敗してしまって面目ないですけれど」
「ハイナンス家の執事は基本失敗は許されませんのよ。失敗しないように鍛錬し、己を磨き、成長しなければいけませんわ」
「やっぱり僕はまだ、見習いですね」
苦笑いするレオンにジュリルは近付き片手でレオンの両頬を掴み上げる。
まさかの行動にレオンも驚き目を丸くする。
「見習いだろうと貴方は既にハイナンス家の執事なのですわよ。いつまでもそんな顔せず前を向きなさい。一度断られたくらいで折れないでくださいまし!」
「っ!」
「先程も言いましたが気持ちは分かりますわ。ですが、一度断られたからなんだというのです。諦める理由にはなりませんわ! 相手が振り向いてくれるまで、気にしてくれるまで己を磨き成長すればいいのです!」
そう口にしたジュリルの目が少し潤む。
ジュリル自身もそれに気付きレオンから手を離すと、すぐに背を向けた。
レオンはジュリルの言葉を噛みしめながら、無意識に下げていた視線や顔を上へと向ける。
「すいません、ジュリル様。僕はやはりまだまだ見習いです。初めての事で動揺し少し腑抜けてしまいました。あれで終わったのだと、諦めなければいけないと」
ジュリルがレオンの言葉に再び振り返る。
「でもそれは僕が勝手に決めつけていただけだったんですね。この気持ちに決められたルールはないのなら、僕は貴方と同じ道を行きますジュリル様」
「そう。貴方も物好きですわね」
「僕は貴方の執事ですから」
互いに小さく笑った後、ジュリルの後をレオンが一歩離れて付いて行くのだった。
そんな二人の姿を茂みの奥で銜えたばこしながら見つめる人物がいた。
「(あれが青春ってやつか)」
そこでその人物はたばこの煙でむせ返してしまい、たばこを手にとり握りつぶす。
「全くやっぱりこれは身体に合わねえわな。飴がねえから久しぶりに口にしたが、やっぱりダメだな」
そう口にしながら満点の星空と満月を目にした後、競技場の方へと白衣をなびかせながら帰って行くのだった。
――同時刻。
――オービン寮の209号室にて。
「おいルーク、何処に行く気だ」
「決まってるんだろそんなの」
部屋から出て行こうとするルークをトウマが止めようとするも、言葉だけでは止まらないのを見てトウマがルークの腕を掴む。
ルークは掴んで来たトウマを睨みつける。
だがトウマは怯むことなくルークを掴んだ手を離さず見つめ返す。
「今お前が出て行った所で何が変わる? 事態が余計にひどくなったらどうするんだ?」
「じゃお前は、何もせずにこのまま黙ってろっていうのかトウマ」
「っ、そこまで言うなら聞くが、お前が出て行って何が出来るんだよ。あいつの正体が皆の前でバレてしまった以上、俺たちには何の弁明も出来ない。逆に知っていたのを知られたらよけいにあいつの立場が悪くなるかもしれない」
そこでルークは黙ったまま掴まれた腕を振りほどき、自分の席の方へと戻る。
「お前が傷を負われた一件は、お前の一言でどうにかなるかもしれない。既にそれはやってるんだろ」
「ああ。あの時のアリスはアリスじゃなかった。それは覚えているが、その後どうなったかを全然覚えてないんだよ」
トウマたち含め生徒たちは、アリスの正体を聞いてしまっており更にはルークを刺した相手と認識されていた。
ルーク自身は刺されたような記憶があり、何故かその辺が曖昧になっており何か忘れている、抜け落ちている様な感覚はありつつもアリスに罪はないと聴取の時に発言していたのだった。
またアリスの状況についても特に生徒たちには何も伝えられていないのであった。
「(くそ、何なんだこの微妙に合わない記憶は。強引に辻褄を合わせた感じがするが、妙に納得出来てしまう。誰か、誰か結界内の時に居た気がするんだが、思い出せない)」
「とりあえず明日から最終期末試験が始まるんだ。アリスの件も試験中は進展は特にしないだろう、たぶんだが」
「でも今日、学院長室に呼び出されたんだろ? って事は何かしらの処分が決まったって考えるのが妥当だろ」
「まだ聞き取りの可能性だってあるだろ。まだあれから三日だぞ? さすがに早すぎるだろ? それに試験もあるし、現状の学院状況とか色々考えるとアリスの件は後回しにされないか?」
「いや、問題が多いからこそ今回の一件は早く片付けたいという方針もありえる」
と、二人が論議をかわしていると突然部屋の扉がノックされ二人は驚く。
黙ったまま扉の方を見つめていると、もう一度扉がノックされる。
「誰だこんな時間に」
「ちょ、出るのかルーク」
小声で話すトウマにルークは「気になるだろ」と口にし扉に近付いて行く。
その間にも再び扉がノックされる。
ルークはノブに手をかけるも、扉の向こう側に誰がいるのか少し不安になりながらもノブをまわし扉を引いた。
そして月明かりに照らされ扉の前に立っていた人物にルークは驚く。
トウマは離れた場所におり、誰が居るのかまだ見えずにいた。
「ルーク? 誰だったんだ?」
問いかけても返事がないルークにトウマは気になって近付いて行くと、扉の前に立っていた人物が少しだけ開けられた扉を押し部屋の中に入る。
「悪いね、こんな遅い時間に」
「えっ嘘!?」
「何の用で来たんだよ、兄貴」
部屋にやって来た人物は、ルークの兄でもあるオービンであった。
扉を完全に閉めた後、オービンは二人の顔を交互に見る。
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