とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
532 / 564

第531話 初戦の相手

しおりを挟む
「おいあれって」
「クリスじゃなないか? 何で試験会場に?」
「いやそれは偽名で本当の名は」

 などとアリスがタツミと共に試験会場に姿を現しただけ、他の生徒らがざわつき出す。
 そんな中二人は特に立ち止まる事なく、試験会場内を進んで行く。
 他の生徒らも特に立ち塞がったり、ヤジを投げたりする事なくざわざわとするだけであった。
 様子を先に見に来たシンリとマックスもアリスの姿を目にするが、大きく驚くことなく騒ぎの原因に納得した表情だった。
 アリスは視線を気にするもきょろきょろと周りを見る事無くタツミの後ろを付いて行くと、一つの対戦場前に辿りく。
 そこはまだ誰も使用していない対戦場であり、二名の教員が控えておりタツミが何かを話し終えるとアリスの元に戻って来る。

「アリス、お前の試験会場はここだ。このまま何かに入り、担当試験官から説明を受けるように」
「タツミ先生が試験官じゃないんですね」
「俺はこの場では付き添いだ。改めて説明を受けた後、試験を開始するらしいから気持ちは緩めすぎるなよ」
「はい。ありがとうございます」

 そう返事をし軽く頭を下げてからアリスは担当試験官が待つ、対戦場の結界内へと向かって行くのだった。
 アリスが入って行った対戦場結界周辺には、遠くから生徒たちらが野次馬の様に見つめていたが見回りで歩いている教員らが「自分の試験に集中する様に」と軽く注意し分散させる。
 こうなるであろうと既に予測していたのか教員らの対応が素早く、タツミも軽くこちらを気にする生徒に視線を向けるなどしアリスの方を極力気にさせないようにするのだった。

「(流石に見るなとは言えないが、気にはなるよな。まだ実力試験も序盤だが、終盤になればこちら側が気になって集まる生徒は増えそうだな。その前にアリスの試験が終わりあまり騒ぎにならないのがベストだが、どうなるやら)」

 最初は時間をずらしてアリスの実力試験実施を考えていたが、そうすると対戦相手の調整やその為だけに時間を使わせるとなり同時間内での実施が検討されたのだ。
 特例な参加である為対戦相手をどうするのかも議論を交わした結果、同クラス内で決める事になりアリスがいたクラスには前日にアリスが試験に特例で参加する事が伝えれていた。
 そして、その場でアリスと対戦してくれる者を募集したのである。
 あくまで強制ではなく、挙手性という形にしたのは生徒たち側にも戦うか戦いたくないかの自由はあるとした結果であった。
 一人も挙手者は出ないという可能性もあったが、彼女と戦いたいという者がいるかもしれないというこれまでの彼女が残した実績からその方法をとっていた。
 その結果三名の挙手が上がるのだった。

 だが、試験上四名必要でありもう一名挙手者が出てくれれば丸く収まると思われたが、それ以降は誰一人とも挙手する者は現れず先に三名との対戦が決まる。
 再度三名に対戦の意思がある事を確認した上で、当日の組み合わせを考慮し順にアリスと対戦する事が伝えられる。
 残り一名に関しては、再度協議を行った後マイナ学院長やミカロスらの寮長・副寮長らの意見を元に直接交渉を行い残り一名を決めるのだった。
 こうしてアリスの対戦相手四名が決定するも、アリス側には決定した経緯などは伝えられずあくまで教員らサイドで決定したものとしてアリスには伝えられる。
 一方でシンリとマックスが自分らのクラスの待機場所に戻って来ると、騒ぎの原因がアリスだったと皆に共有していた。

「昨日話では聞いていたが、まさか同じ会場でやるとはね」
「ガッチガチに規制されている訳じゃないけど、こっちは気にせず自分の方に集中しろ的な雰囲気だったね」
「つうか、今でもクリスが女子だったなんて信じられないぜ。普通に同性として話してたし、それが当たり前でそれが嘘でしたとか頭おかしくなるぜ」

 ライラックの言葉にリーガが頷く。
 他の皆も似た様に未だ動揺しているのが表情に出ていた。
 今のアリスにどう接すればいいのか、どう声を掛けるか、そもそも接していいものなのかなどと頭を悩ましており自然と距離をとり冷たい態度をとっていたのだった。
 これまで共に過ごした時間やクリスという人物を身近で見て来たからこそ、全てが嘘とは思えずにいる一方でヴァンの様に裏切られた騙されていたという気持ちが全く湧かないという訳ではない為、クラスの皆も複雑な心境なのであった。
 既にどういう態度をとるのか、どう割り切るのかを決めきっている者もいたが決めきれない者が大半であった。
 アリスの一件で待機場所の雰囲気が少し重くなると、トウマが皆に声を掛けようとした所で第二戦目の試合が終わり始め終了の合図が各所で鳴り響く。
 その音でトウマも発そうとした言葉を一度飲み込んでしまう。
 続々と対戦場から生徒らが出てき始め、第三戦目へ向け生徒らが動き始める。
 トウマも三戦目は試合がある為、対戦場へ向かい同じくルークも対戦場へと向かうとその道中二戦目を終えたニックと再びすれ違う。
 その時何らかの言葉を交わし、そのまま足を止めず進んで行くのだった。

 そして各所で第三戦目の準備が行われている中で、アリスは担当試験官から試験の説明を受け終わり初戦の相手の到着を待ちながら準備運動を行っていた。
 対戦相手に関してアリスは全員は伝えれておらず、一戦ごと前に誰かを教えられる事となっていた。
 また今回の試験上、アリスは参考記録であるが相手に関しては勝敗がそのまま試験点数になるルールとなっていると聞かされるのだった。
 私との試合結果がそのまま試験点数になるのね。
 そう考えると相手が手を抜いてきたりする事はなさそうね。試験の結果がかかっているのだから。
 するとそこへ最初の対戦相手が到着する。

「こうして直接やり合うのは、第一期以来だな」
「そうね、ニック」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です

オレンジ方解石
恋愛
 結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。  離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。  異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。  そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。  女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。 ※追記の追記を少し直しました。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。 ※後日談を更新中です。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

処理中です...