とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第544話 最後の相手

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 トウマの言葉にアリスは驚いてしまう。
 内心アリスは最後の相手は勝手にルークではないかと思っていたからであった。
 まさかトウマが最後の相手になるとはね。
 いやいや、私が勝ってにルークだと思い込んでいたのもいけないでしょ。
 たしかに例外的なゲイネスはあったけれど、基本的にはクラスの中から対戦相手が選ばれているんだから。

「本当なら、ここにいるのは俺じゃないんだけどな」
「え? どういうこと?」

 そこに遅れて担当試験官らが到着する。

「アリス・フォークロス。最終試合の相手が変更になった。目の前にいるトウマ・ユーリスが君の最終試合の相手だ」
「あの、どうして変更になったんですか?」
「相手の都合によるものだ」

 それだけ告げると担当試験官は試験の準備を他の教員と共に行い始める。
 都合って、その都合が知りたいんだけれども。
 アリスが少し不服そうな顔をしているとトウマが近付いて来て小声で声を掛けて来た。

「試合前にこんな感じで話すのも緊張感ないのかもしれないけれどよ、さっきの話の続き。あれ、アリスの最後の相手は本当はルークだったんだよ」
「っ!? ルークになにかあったの?」
「少し前なんだが、ニックとの試合があってなそこで凄い試合をしてよ、かなり疲弊したらしく今倒れてるらしいんだ」
「倒れてるって大丈夫なのルーク?」

 トウマも実際にその場面を見た訳ではないらしく、人伝で聞いた内容だと明かす。
 現状どうなっているかも分からないまま、担当試験官からルークの代わりにアリスと試合をしてくれと言われこちらに来たのであった。
 そんなことになっていたなんて……倒れていたらそりゃ相手も出来ないよね。
 トウマからの言葉にアリスは納得した表情で「ありがとう教えてくれて」と返す。

「代打だけどよ、俺も本気でやるからなアリス」

 そう口にし、トウマは指定された場所へと戻って行くのだった。
 アリスも両頬を軽く叩き気持ちを切り替え、トウマとの試合に気持ちを入れる。
 両者が指定場所についた所で、試験準備が完了した担当試験官が改めて話し出す。

「これより、アリス・フォークロスとトウマ・ユーリスの実力試験を開始する。両者、試合方式の希望は?」
「俺は対人で」

 トウマは対人と来たか。
 魔法が強力な訳でも魔力のうちどれかが凄く秀でてる訳でもなく、平均的に強いのはたしかだが一番はトウマの目の力だ。
 特殊体質の分類になるあの目、一時的な魔法無効やシールドといった力があったはず。
 具体的なところまでは分からないが、魔法が無効化される以上ゴーレム武装がどこまで通用できるかの問題があるな。
 だからといってゴーレム勝負でもその力が使えない訳でもないので、どちらにしてもトウマの目の力が壁にはなってくるわよね。
 そう考えた上でアリスの試合方式希望は――

「私も対人でお願いします」
「両者対人方式を希望ということで、この試合は対人方式にて行う。ルールは分かっているな?」

 担当試験官からの問いかけに二人は軽く頷く。
 その反応を見てから担当試験官は、片腕を振り上げるとすぐさま勢いよく振り下げ「試合開始!」と宣言するのだった。
 二人は開始の合図と共に魔法を展開した時だった。
 突然結界に対して魔法攻撃が行われ、その場にいた全員が驚き動きを止めた。

「な、なんだ!?」
「攻撃? どこから?」

 担当試験官も含めまさかの出来事に緊張感が走ると、遠くから一人の生徒が歩いて来る。

「勝手に俺の試合を代理で始めるんじゃねぇよ。それは俺の試合だぞ! 代理なんて許した覚えはない!」

 そう声を上げて結界前に現れたのは倒れているはずのルークであった。

「ルーク!」
「ルーク? え、倒れ動けないんじゃ?」
「どうして貴方がここにいるんです、ルーク・クリバンス」
「どうしてって、俺の最後の試合だからですよ。どこの誰が勝手に代理で試合を進めると決めたか知りませんけど、この試合は誰にも譲れないんですよ」

 担当試験官と教員らが集まり話し合いを始めると、ルークの近くにタツミが遅れてやって来た。

「タツミ先生、これはどういうことですか? ルーク・クリバンスは重症と伺っていましたが」
「たしかに重症だったが、今は一時的に治っているんだ。さっきの攻撃音聞けば分かるだろ? 魔力は十分回復済み、傷もほとんど癒えている。試合に臨むには十分な体調だ」
「立てない程だった彼がここまで短時間で回復したんですか? 信じられません」

 結界を挟みそんなやりとりをしている間にルークは結界内へと入って行く。

「ルーク、大丈夫なのかよ」
「ああ、大丈夫だ。大丈夫じゃなきゃ、ここにはいない」
「そうだよな。よか――」
「トウマ、悪いが出てってくれるか? お前も誰かに頼まれてここに来ているのは分かるが、これは俺の試合だ」

 ルークはトウマを追い抜きながらそう声をかけ、振り返ることなく既に視線はアリスの方を向いていた。
 すれ違った時に見えたルークの表情は、これまでのどの試合よりも真剣な表情をしているとトウマは感じたのだった。
 そしてトウマはルークの背を見ながら軽く肩をすくめた。

「ああ、分かってるよ。この試合、俺じゃお前の代理は務まらないからな」
「……悪いトウマ」

 そう小さく謝る声がトウマには聞こえた。
 トウマはそのまま文句もいうことなく、結界外へと出て行く。
 それと同時に担当試験官らとタツミとのやり取りも終わり、渋々な表情で担当試験官が口を開く。

「試験対象者の変更を行う。トウマ・ユーリスに代わりルーク・クリバンスとする。試験方式は現在対人方式だが、ルーク・クリバンス希望はあるか?」
「そのまま対人方式で構いません。俺もそれを希望していたので」
「分かった。では試験方式はそのままとする。それと先程ルーク・クリバンスが攻撃した結界箇所の確認を行う為、数分間待機を命じる」

 そう告げて担当試験官と教員が一旦その場を離れ外から結界の確認を行い始める。
 結界に残った二人は黙ったままその場で待機していると、アリスがルークに声を掛けた。

「ルーク、身体は本当に大丈夫なの?」
「ああ、問題ない。タツミがこの試合は持つように治療してくれたからな」
「もしかしてだけど一度拒否されたけど、強引に押し通した感じ?」
「この試合だけは絶対にやりたかったんだよ。お前と決着つけるためにな。その為なら無茶もいうさ」

 その言葉からルークはやはりかなりのダメージを身体に負って来ているのだとアリスは思うのだった。
 いくら治療をしていても、その影響が試合中に出てしまうんではないかと心配し始める。

「心配なんてして、手でも抜いたら一瞬で勝負つくぞアリス」
「っ」
「言ったろ、この試合だけは身体が持つように治療してくれたって」
「でもそうはいっても、そんな無理して私と試合をしなくても」
「じゃいつ決着つけるんだ? 次の機会があるのか今のお前の立場で」
「それは……」
「迷う必要なんてない。これまでやって来た試合の様に俺とも向き合ってくれ。俺はお前に勝つために来てるんだ、本気で掛かって来いアリス!」

 ルークの気迫に押されるアリス。
 そこで自分もルークと勝負をしたい、勝ちたいという欲が自分の中で大きく前に出て来る。
 あいつはいつだってそうさ。
 私の前に立ちはだかって、上からものをいうし、ムカつく。
 なおかつ戦えば強いし勉強も何だかんだできる。
 対戦的にもこれまで負け続きで、一度もあいつに勝ったことがない。
 だからこそあいつに、ルークには絶対に勝ちたい。
 もうこれが最後のチャンスなんだ! それを自分から棒に振るな私! ルークも本気で向き合ってくれてるんだ、これまでの全てをぶつけろ私!
 アリスはそこで大きく息を吸って吐いた。
 そしてルークの方へと視線を向ける。

「ルーク、勝つのは私だ!」
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