とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第545話 アリス VS ルーク①

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 遡ること数十分前。
 ――診察場のタツミ診察室にて。

 簡易ベッドの上で眠っていたルークが目を覚ます。

「起きたかルーク」
「……タツ、ミ?」
「無理に起き上がるな。まだ治療中には変わりないからな」

 だがルークはタツミの言葉を無視し身体を起こす。
 その影響で身体に貼り付けていた湿布が数カ所剥がれる。

「起きるなと言ったろ」

 机で診療録を書いていたタツミは、その手を止めて立ち上がりルークに近付く。
 部屋の時計を見て何処かに行こうとするルークであったが、身体を動かした際に想像以上の激痛に動きが止まってしまう。

「分かったろルーク。今のお前は起きれる状態ですらないんだ。おとなしく寝てろ」

 タツミがルークの肩を軽く押し寝かそうとするも、ルークはその場で抵抗し倒れようとしない。
 その態度にタツミはムキになり少し力を入れてルークを寝かすのだった。

「お前な、自分でも今の状態がどれだけ良くないか分かるだろうが。医師としての判断だ、何もせずに安静にしてろ」
「嫌だ。医師なら今の俺を一試合だけでも動ける様にしてくれよ、タツミ」
「わがまま言うな。俺は天才医師じゃねんだ」

 ルークに背を向け席に戻ろうとするタツミに手を伸ばし、袖口を掴み身体を再び起こす。
 その際に激痛が走るもそれでもルークは止まらず身体を起こした。

「お願いします……タツミ先生。後一試合だけでいいんだ、それ以降は倒れていようと構わないんだ」
「無理だ」
「お願いします。なんとかしてください」

 ここまで引き下がって来るルークにタツミは無言のまま、ルークの手を振り張らずに立ち止まっていた。
 そのまま暫く動かずにいたが、急に振り返りルークの方を見つめる。

「どうしてそこまであいつにこだわる? 好きだからか? 最後に一目でも会いたいからか?」
「こんな形で負けたくないからです。特別な想いがあるのは否定しませんが、それ以前にあいつとの関係は勝負から始まっているんです。約束を果たすために行くんです俺は! あいつと最後の勝負をつけるために!」
「約束ね……」

 タツミはそう呟くと、掴み掛かって来ていたルークの手を振りほどきその場から立ち去って行くのだった。
 ルークは立ち去って行くタツミを何度も呼び頼み込むが、一度たりともタツミが振り返ることはなかった。
 そして部屋に残されたルークはその場でうなだれてしまう。
 こうなってしまってはもう自力で行こうとするも、身体が思うように動かず更には視界もねじ曲がり始めてしまう。

「(くそっ、何で、何でこうなるんだ。あいつとの対戦ではたしかに熱くなりすぎたが、ここまでの影響がでるとは思ってなかった……疲労の蓄積があったとしてもここまでの状態になるはずじゃ)」

 今日の行動を振り返りつつ、あそこでこうしてなければというたらればの思いがこみ上げてき始める。
 その直後、ベッドから手を滑られてしまい地面に落ちて仰向けになってしまう。

「くそっ……」

 ルークの目が潤み出し、一筋の涙が溢れる。

「なんだ、泣くほどベッドから落ちたのが痛かったのか」
「っ!?」

 そこに現れたのは立ち去ったはずのタツミであった。
 タツミの声に咄嗟にルークは目元を袖で拭き、身体を起こそうとする。

「それ以上今の身体に無理させるな」

 するとタツミはルークに近付きしゃがむと、手に持ったいくつかの錠剤をルークの口へと叩き込んだ。

「次は水だ」

 タツミは持って来ていた水をルークの口へと流し入れ、錠剤を強制的に飲み込ませた。

「げほっ、げほっ」
「よし飲んだな。次は注射だ、腕出せ」
「はぁ!?」

 次にタツミが取り出したのは、スタンプ型の注射器であった。
 ルークの腕を掴むと、自分の方へと引っ張りルークの腕にその注射器を押印する様に刺した。
 痛さはそこまでなく注射が終わると、すぐにそれを引き抜きポケットへとしまう。
 直後、別のポケットから筒状の魔道具を取り出す。

「最後はこの魔道具を持て」
「ちょ、ちょっと待て。さっきから何を」
「試合をしたくないのか?」

 その言葉にルークは口をつぐむ。

「……これで、あいつと試合できるのか?」
「出来るかどうかは、お前次第だ」

 ルークはその言葉とタツミの真剣な表情から差し出された魔道具を握った。
 するとタツミはルークが握った魔道具に対し、片手を突き出す。

「今から俺の魔力をお前に流す。その魔道具は魔力変換機だ、お前の身体に合う魔力に勝手に変えてくれる。あとは、その魔力がお前の身体に溜まるかどうかってところだ」

 そしてタツミが魔力を流し始めると、ルークの手にした魔道具が淡く光り始める。
 暫くしてタツミが魔力を流すのを止めると、魔道具から出ていた光も遅れて消える。

「薬も入れたし、魔力の方はどうだ? さっきよりも身体の痛みはないだろ」
「いわれてみれば、動かしても痛くもなし視界も問題ない」

 ルークは立ち上がり軽く身体を動かす。
 タツミは魔力量測定道具を近くの机からとってくると、ルークに握らせ魔力量を測定する。

「魔力量も回復してきている。荒治療だったが、ひとまず成功したようだな」
「何だかよく分からないままだが、ありがとうタツミ。これなら問題なく試合が出来る」
「いいかルーク、今の状態は決して身体が回復した訳じゃない。回復した様に身体に思わせているだけで、一時的な状態だ。魔力も尽きたらそれで終わりだ、それだけは覚えておけ。このつけは必ず後で帰ってくるからな」
「ああ、それでも構わない。試合が出来ればそれでいい」

 その後、ルークはタツミが付き添う形でアリスの対戦場へと急いで向かうのであった。

 ――時間は戻り、アリスとルークが向き合う対戦場。
 担当試験官が結界の確認から戻って来ると、改めて試験内容を告げ片腕を上げる。

「では、これよりアリス・フォークロス対ルーク・クリバンスの実力試験を開始する。両者準備を……では、試合開始!」

 上げた腕を担当試験官は、一気に振り下げ二人の試合が開始する。
 直後、アリスは瞬時に万能型のゴーレム武装を身に付けルークへと突っ込んで行く。
 一方でルークも開始の合図と共に両手に魔力の塊を創り出すと、弓と矢へと形状を変え弓を引いた。
 放たれた魔力の矢は、一直線にアリス目掛け向かう。
 その矢は以前第二期末試験の際に最後に受けた攻撃と類似しているとアリスは瞬時に判断する。
 高速で放たれた矢であったが、今のアリスの目には軌道の分かるただの矢としか映らず、回避行動を取ろうとした時だった。
 突然向かっていた矢がその場で爆発したのだ。

 ぶつかり何かしら衝撃が発生するものだと考えていたアリスからすれば、それは予想外の展開であった。
 既に回避行動をとっていた為、直撃はしなかったがその場で足が止まってしまう。
 ルークはアリスに息つく暇も与えずに新たな魔力の矢を放つ。
 それを目にしたアリスは、その矢はどっちなのかと考え始める。
 以前の様に強力な威力を持ったものなのか、それとも先程と同じものかと。
 一瞬の迷いながらもアリスは、ここで後手に回る訳にはいかないとし向かって来る矢から距離をとり、そこから回り込み突っ込んでいく作戦を取り始める。
 が、ルークはアリスを追うように矢を放ち続ける。
 放たれた矢は先程の様に爆発するものもあれば、また違った氷結するものもあったがスピード型へとゴーレム武装を変化させ一気にかわしルークへの背後へと回る。
 そして拳に魔力を込め『バースト』の魔法を発動させつつ、ルークの背後に拳を叩き込んだ。
 直後大きな爆発が発生するも、ルークは無傷であった。

「!?」
「俺が背後を無防備にする訳ないだろ、アリス」

 そう口にしながら振り返るルーク。
 ルークの周囲には風の護りが発生しており、それによりアリスの攻撃を完全に防いでいたのだった。
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