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第559話 退学日の朝
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アリスは、タツミとの約束通り六時ギリギリに競技場に辿り着くとそのまま駆け込む様に自室へと戻りベッドに座り込む。
暫くしてベッドに横たわると、睡魔が襲って来る。
それに対しアリスは逆らうことなくゆっくりと瞳を閉じるのだった。
次に目を覚ましバッと起き上がり付けっぱなしにしていた腕時計を見ると、時刻は八時半過ぎを指していた。
「もっと時間が経っちゃってかと思ったけど、そうでもなかったか」
ベッドから降り、アリスはシャワーを浴びに行く準備をし扉に向かうと、足元に紙切れが挟まっているのに気付く。
紙切れを手にするとそこにはタツミから朝食についての書置きであった。
そこには「九時までに起きたら部屋に朝食を取りに来い」と書かれていた。
アリスは一度自身のにおいを気にしつつ、朝食は食べておきたいと思い先にタツミの部屋に向かうのであった。
部屋に辿り着き、ノックすると眠そうなタツミが出て来る。
書置きの件を伝えると、朝食のトレイを渡される。
さすがにそこでシャワーを浴びに行くから後で取りに来るとは言いづらく、アリスはトレイを受けより一度部屋に戻りトレイを置きシャワー室に向かった。
シャワー後部屋に戻り、アリスは温まった身体で少し冷えてしまった朝食を食べる。
食後トレーはいつも通りタツミが回収に来るまで別の場所に置き、退学前日となった今日をどう過ごそうかと考え始める。
特に特別な一日にしたいという気持ちもなく、ふとまだ読みかけの積まれた本に目がいき手を伸ばしていた。
そのままアリスはこれまで通り読書に自然と没入していくのだった。
そしてその時手にしていた本は『世界旅日記』というタイトルで、著者部分は一度かすれて消えていたが上からマジックでなぞるように『リリエル・ロードリヒ』と書かれていたのだった。
時間も忘れて読書を続けていると、突然肩を叩かれアリスは驚き勢いよく振り返る。
そこにはタツミが昼食のトレイを持って立っていた。
「楽しんでいる所悪いが、昼食だ」
「あ、ありがとうございますタツミ先生。気付かなくてすいません」
「いや謝るのはこっちだ。夜勤明けで昼食を持って来るのが遅れたからな」
そういわれアリスはそこで久しぶりに机の上に置いた腕時計を見る。
時計は既に十三時を過ぎた時刻を指していた。
タツミから昼食のトレイを受け取り、朝食のトレイを回収したタツミは一時間後に回収に来ると告げ部屋を後にした。
アリスは読みかけの本にしおりを挟んだ所で、身体も昼食を思い出しかの様にお腹が鳴る。
その後ゆっくりと昼食を食べて、タツミが回収に来た所で食後の運動をしたいと相談し一時間程室内訓練場で身体を動かすのであった。
シャワーで汗を流し、部屋に戻って来ると改めて明日の退学日に向け準備し忘れがないか確認し始める。
荷物も纏め、部屋も最低限の物しか残しておらずすぐに片づけられる状態を保っていた。
「うん。チェック漏れもないし、大丈夫かな」
ふと時刻に視線を向けると十八時を少し過ぎていた。
「たしか昼食が遅かったから、少し遅めに夕食を持って来るて言ってたから十九時前くらいかな?」
そんなことを口にしながら椅子に座るアリス。
「にしても、もう明日退学か。早かった様な気がするな。いや、本当ならもっと前にバレて退学になってたかもしれないから、遅い方かな」
苦笑いしながら机に置いてあるカレンダーを見つめ、手にとる。
自分がこの学院に来た四月まで戻り、一枚づつめっくていき元の月に戻す。
「これでお別れか……誰かお見送りとか来てくれるかな。なんて、あり得ないか」
その時トウマの言葉を思い出し、くすりと笑う。
「いや、期待し過ぎないでおこう」
小さくそう呟くと再び読みかけの本に手を伸ばし、しおりを挟んだページを開き読書を再開したのだった。
時刻が十九時になるとタツミが夕食を持ってやって来た。
その時に明日の事とまとめた荷物についての話をし始めた
退学日である明日は朝の七時に迎えに来て、そのまま正門へと向かう流れとなり学院から少し離れた場所で迎えの馬車が待機していると聞かされる。
荷物については明日持って行ける最低限の物以外は、今日の夜に廊下に出して起きタツミが正門近くの保管場所まで運ぶ流れで、明日迎えの者が先にその荷物を受け取りに来る手筈となっていた。
タツミは連絡事項を告げ終わり、特にアリス側から質問もなかった為部屋を後にする。
アリスは受けった夕食を食べ始め、食べ終わると先に廊下にまとめた荷物を出し始める。
一時間後にはタツミがいつものようにトレイを回収に来て、その際に荷物の確認をアリスと行う。
「悪いな、先に出してもらって」
「いえ。後部屋に残しているはバックで持って行ける量なので」
「分かった。大図書館から持って来てまだ返してない本はそのままでいい。忘れものだけないようにしておいてくれ」
「分かりました」
そしてタツミは自室へと戻るためにアリスに背を向け歩き出した時、一度足を止め振り返った。
「今読んでいる本、面白いか?」
「はい。とても」
「そうか。さすが、リリエルが書いた本なだけあるな」
最後は呟くように言った為、アリスには聞こえていなかった。
タツミは再び自室へ向け歩き始める。
アリスは自室へと入り、もう少しで読み終わるリリエルが書いた本を手にとり、眠くなるまでその本を何度も読み返すのであった。
そうして、アリスの退学日前日の夜は更けて行き日付が変わる。
アリスは日付が変わった所で読んでいた本を閉じ、就寝するのだった。
次に目を覚ますと時刻は目覚まし時計をセットした五分前の午前五時五十五分であった。
いつもならこのまま二度寝してしまうアリスであるが、今日は二度寝せず身体を起こした。
そのまま顔を洗い、服を着替える。
着替えた服は今日で着るのが最後になる、王都メルト魔法学院の男子服であった。
「今日で最後って思うと、ほんの少しだけ名残惜しいな。今までがおかしかっただけだけどね」
鏡の前で自身の姿を見ながら苦笑した。
長い髪は両サイドの耳から前の毛を後ろに向かってねじり、後ろで一つにまとめる。
そしてリボンの飾りをつけ一つ結びにした。
タツミが来るまでは、昨日の寝る前まで読んでいた本を再び開き読み始める。
七時になると約束通りタツミが部屋の扉をノックする。
アリスの返事を聞き、タツミが扉を開けるとアリスは既に準備出来ており読んでいた本を机に置く。
「アリス。その本、そんなに好きならあげるぞ」
「えっ……いやいや、だってこれ大図書館のやつじゃないですか」
「そうだが、誰にも読まれてないからな。お前が昨日からずっと読んでいるのは知っているし、このまままた誰も読まれない大図書館に持って行くよりお前が持っていた方がいい気がしてな」
「そんなのタツミ先生が決めていいんですか?」
「大丈夫さ。管理している人も、その本いやその本を書いた著者の本だけはいつからあったのか分からないと言ってたからな。一つないくらい大丈夫さ。好きなんだろ、それ」
「好きですけど……いいんですか、本当に貰って」
「いいよ。ほら、早くそれも持って行くぞ」
少しためらうアリスだったが、そう言われてしまい一度机に置いた本を手にとりバックを持って部屋を出た。
そして部屋に一礼しタツミの後を付いて行くのだった。
競技場を出ると外は少し肌寒かったが、雲一つない空に朝日が昇っていた。
タツミと共に特に会話もなく校舎の方へと向かって行く。
朝早い事もあり、誰かに会う事なく校舎に辿り着き校舎内へと入り正門へと向かう。
校舎内も誰もおらず静かで朝日が差し込む校舎内を歩き続け、校舎内を出て暫く歩くと正門が見えて来た。
するとその近くの校舎付近に誰かが待っているのが目に入る。
近付いて行くとその正体が、学院長であるマイナだと分かる。
「おはよう、アリスさん。タツミ先生。アリスさん似合っているわよその格好」
「おはようございますマイナ学院長。ありがとうございます」
タツミはマイナが待っていたのを知っていたのか特に驚くことなく軽く頭を下げる。
「今日は最後の日だからね。お見送りに来たの」
「そうですか。すいません、朝早くから」
アリスの言葉にマイナは首を横に振る。
「最後がタツミ先生と二人ってのもさみしいでしょ」
「いえ、誰もいないより居てくれるだけで私は嬉しいです。タツミ先生にもすごくお世話になりましたし」
「ここに来てから、生徒の中でお前が一番関わった時間が長くなったが、一番充実していた一年間だったよ」
そう答えたタツミをマイナが肘でつつき、その姿にアリスはくすりと笑う。
アリスは正門側へと歩き、足を止め二人の方を振り返る。
「今日まで本当にお世話になりました。色々とご迷惑をおかけしましたが、本当に楽しくこの学院で過ごせました。タツミ先生、マイナ学院長ありがとうございました。他の先生方にもお世話になりましたとお伝えください」
「分かりました。私から伝えておきます」
「お願いします」
「それともう一つ、寮の皆にこれを」
そう言いながらアリスが内ポケットから何かを取り出そうとした時だった。
「ちょっと、待ったー!」
遠くからそんな声が聞こえて来て、その場に居た全員が後ろを振り返る。
すると遠くから誰かがこちらに走ってやって来る姿があった。
その人物がアリスたちの近くに辿り着くと、息を切らし膝に手を当てながら下を向くがすぐに顔を上げた。
「間に、あった。はぁー、はぁー。約束通り、見送りに来たぞアリス」
息を切らしながらそう口にしたのは制服を来たトウマであった。
トウマの登場にマイナとタツミは特に何も言わず見守り続けた。
「っ……トウマ。本当に来てくれたんだ」
「その言い方、来ないと思ったな。行くって約束したろうが」
色々とあったが今まで通りのトウマにアリスも変に考えず今まで通り接する。
「ごめん」
「一緒に過ごした仲間の最後くらい、しっかり見送るっての。これでも次期寮長だぞ」
「ここでそれ言うの」
「いいだろ別に。それに本当ならこんなに走る予定じゃなかったんだよ」
「? 寝坊したとかじゃないの」
「まあそれも一要因だが、それだけじゃないんだよ。あいつらの準備が遅いから」
「あいつらって」
「見送りは俺だけじゃないんだよ、アリス。言ったろ、今の俺は次期寮長なんだよ」
そう言うとトウマは走って来た方へと振り返ると、遠くからトウマと同じ様に制服を来たクラスメイトたちが歩いて来ていたのだった。
暫くしてベッドに横たわると、睡魔が襲って来る。
それに対しアリスは逆らうことなくゆっくりと瞳を閉じるのだった。
次に目を覚ましバッと起き上がり付けっぱなしにしていた腕時計を見ると、時刻は八時半過ぎを指していた。
「もっと時間が経っちゃってかと思ったけど、そうでもなかったか」
ベッドから降り、アリスはシャワーを浴びに行く準備をし扉に向かうと、足元に紙切れが挟まっているのに気付く。
紙切れを手にするとそこにはタツミから朝食についての書置きであった。
そこには「九時までに起きたら部屋に朝食を取りに来い」と書かれていた。
アリスは一度自身のにおいを気にしつつ、朝食は食べておきたいと思い先にタツミの部屋に向かうのであった。
部屋に辿り着き、ノックすると眠そうなタツミが出て来る。
書置きの件を伝えると、朝食のトレイを渡される。
さすがにそこでシャワーを浴びに行くから後で取りに来るとは言いづらく、アリスはトレイを受けより一度部屋に戻りトレイを置きシャワー室に向かった。
シャワー後部屋に戻り、アリスは温まった身体で少し冷えてしまった朝食を食べる。
食後トレーはいつも通りタツミが回収に来るまで別の場所に置き、退学前日となった今日をどう過ごそうかと考え始める。
特に特別な一日にしたいという気持ちもなく、ふとまだ読みかけの積まれた本に目がいき手を伸ばしていた。
そのままアリスはこれまで通り読書に自然と没入していくのだった。
そしてその時手にしていた本は『世界旅日記』というタイトルで、著者部分は一度かすれて消えていたが上からマジックでなぞるように『リリエル・ロードリヒ』と書かれていたのだった。
時間も忘れて読書を続けていると、突然肩を叩かれアリスは驚き勢いよく振り返る。
そこにはタツミが昼食のトレイを持って立っていた。
「楽しんでいる所悪いが、昼食だ」
「あ、ありがとうございますタツミ先生。気付かなくてすいません」
「いや謝るのはこっちだ。夜勤明けで昼食を持って来るのが遅れたからな」
そういわれアリスはそこで久しぶりに机の上に置いた腕時計を見る。
時計は既に十三時を過ぎた時刻を指していた。
タツミから昼食のトレイを受け取り、朝食のトレイを回収したタツミは一時間後に回収に来ると告げ部屋を後にした。
アリスは読みかけの本にしおりを挟んだ所で、身体も昼食を思い出しかの様にお腹が鳴る。
その後ゆっくりと昼食を食べて、タツミが回収に来た所で食後の運動をしたいと相談し一時間程室内訓練場で身体を動かすのであった。
シャワーで汗を流し、部屋に戻って来ると改めて明日の退学日に向け準備し忘れがないか確認し始める。
荷物も纏め、部屋も最低限の物しか残しておらずすぐに片づけられる状態を保っていた。
「うん。チェック漏れもないし、大丈夫かな」
ふと時刻に視線を向けると十八時を少し過ぎていた。
「たしか昼食が遅かったから、少し遅めに夕食を持って来るて言ってたから十九時前くらいかな?」
そんなことを口にしながら椅子に座るアリス。
「にしても、もう明日退学か。早かった様な気がするな。いや、本当ならもっと前にバレて退学になってたかもしれないから、遅い方かな」
苦笑いしながら机に置いてあるカレンダーを見つめ、手にとる。
自分がこの学院に来た四月まで戻り、一枚づつめっくていき元の月に戻す。
「これでお別れか……誰かお見送りとか来てくれるかな。なんて、あり得ないか」
その時トウマの言葉を思い出し、くすりと笑う。
「いや、期待し過ぎないでおこう」
小さくそう呟くと再び読みかけの本に手を伸ばし、しおりを挟んだページを開き読書を再開したのだった。
時刻が十九時になるとタツミが夕食を持ってやって来た。
その時に明日の事とまとめた荷物についての話をし始めた
退学日である明日は朝の七時に迎えに来て、そのまま正門へと向かう流れとなり学院から少し離れた場所で迎えの馬車が待機していると聞かされる。
荷物については明日持って行ける最低限の物以外は、今日の夜に廊下に出して起きタツミが正門近くの保管場所まで運ぶ流れで、明日迎えの者が先にその荷物を受け取りに来る手筈となっていた。
タツミは連絡事項を告げ終わり、特にアリス側から質問もなかった為部屋を後にする。
アリスは受けった夕食を食べ始め、食べ終わると先に廊下にまとめた荷物を出し始める。
一時間後にはタツミがいつものようにトレイを回収に来て、その際に荷物の確認をアリスと行う。
「悪いな、先に出してもらって」
「いえ。後部屋に残しているはバックで持って行ける量なので」
「分かった。大図書館から持って来てまだ返してない本はそのままでいい。忘れものだけないようにしておいてくれ」
「分かりました」
そしてタツミは自室へと戻るためにアリスに背を向け歩き出した時、一度足を止め振り返った。
「今読んでいる本、面白いか?」
「はい。とても」
「そうか。さすが、リリエルが書いた本なだけあるな」
最後は呟くように言った為、アリスには聞こえていなかった。
タツミは再び自室へ向け歩き始める。
アリスは自室へと入り、もう少しで読み終わるリリエルが書いた本を手にとり、眠くなるまでその本を何度も読み返すのであった。
そうして、アリスの退学日前日の夜は更けて行き日付が変わる。
アリスは日付が変わった所で読んでいた本を閉じ、就寝するのだった。
次に目を覚ますと時刻は目覚まし時計をセットした五分前の午前五時五十五分であった。
いつもならこのまま二度寝してしまうアリスであるが、今日は二度寝せず身体を起こした。
そのまま顔を洗い、服を着替える。
着替えた服は今日で着るのが最後になる、王都メルト魔法学院の男子服であった。
「今日で最後って思うと、ほんの少しだけ名残惜しいな。今までがおかしかっただけだけどね」
鏡の前で自身の姿を見ながら苦笑した。
長い髪は両サイドの耳から前の毛を後ろに向かってねじり、後ろで一つにまとめる。
そしてリボンの飾りをつけ一つ結びにした。
タツミが来るまでは、昨日の寝る前まで読んでいた本を再び開き読み始める。
七時になると約束通りタツミが部屋の扉をノックする。
アリスの返事を聞き、タツミが扉を開けるとアリスは既に準備出来ており読んでいた本を机に置く。
「アリス。その本、そんなに好きならあげるぞ」
「えっ……いやいや、だってこれ大図書館のやつじゃないですか」
「そうだが、誰にも読まれてないからな。お前が昨日からずっと読んでいるのは知っているし、このまままた誰も読まれない大図書館に持って行くよりお前が持っていた方がいい気がしてな」
「そんなのタツミ先生が決めていいんですか?」
「大丈夫さ。管理している人も、その本いやその本を書いた著者の本だけはいつからあったのか分からないと言ってたからな。一つないくらい大丈夫さ。好きなんだろ、それ」
「好きですけど……いいんですか、本当に貰って」
「いいよ。ほら、早くそれも持って行くぞ」
少しためらうアリスだったが、そう言われてしまい一度机に置いた本を手にとりバックを持って部屋を出た。
そして部屋に一礼しタツミの後を付いて行くのだった。
競技場を出ると外は少し肌寒かったが、雲一つない空に朝日が昇っていた。
タツミと共に特に会話もなく校舎の方へと向かって行く。
朝早い事もあり、誰かに会う事なく校舎に辿り着き校舎内へと入り正門へと向かう。
校舎内も誰もおらず静かで朝日が差し込む校舎内を歩き続け、校舎内を出て暫く歩くと正門が見えて来た。
するとその近くの校舎付近に誰かが待っているのが目に入る。
近付いて行くとその正体が、学院長であるマイナだと分かる。
「おはよう、アリスさん。タツミ先生。アリスさん似合っているわよその格好」
「おはようございますマイナ学院長。ありがとうございます」
タツミはマイナが待っていたのを知っていたのか特に驚くことなく軽く頭を下げる。
「今日は最後の日だからね。お見送りに来たの」
「そうですか。すいません、朝早くから」
アリスの言葉にマイナは首を横に振る。
「最後がタツミ先生と二人ってのもさみしいでしょ」
「いえ、誰もいないより居てくれるだけで私は嬉しいです。タツミ先生にもすごくお世話になりましたし」
「ここに来てから、生徒の中でお前が一番関わった時間が長くなったが、一番充実していた一年間だったよ」
そう答えたタツミをマイナが肘でつつき、その姿にアリスはくすりと笑う。
アリスは正門側へと歩き、足を止め二人の方を振り返る。
「今日まで本当にお世話になりました。色々とご迷惑をおかけしましたが、本当に楽しくこの学院で過ごせました。タツミ先生、マイナ学院長ありがとうございました。他の先生方にもお世話になりましたとお伝えください」
「分かりました。私から伝えておきます」
「お願いします」
「それともう一つ、寮の皆にこれを」
そう言いながらアリスが内ポケットから何かを取り出そうとした時だった。
「ちょっと、待ったー!」
遠くからそんな声が聞こえて来て、その場に居た全員が後ろを振り返る。
すると遠くから誰かがこちらに走ってやって来る姿があった。
その人物がアリスたちの近くに辿り着くと、息を切らし膝に手を当てながら下を向くがすぐに顔を上げた。
「間に、あった。はぁー、はぁー。約束通り、見送りに来たぞアリス」
息を切らしながらそう口にしたのは制服を来たトウマであった。
トウマの登場にマイナとタツミは特に何も言わず見守り続けた。
「っ……トウマ。本当に来てくれたんだ」
「その言い方、来ないと思ったな。行くって約束したろうが」
色々とあったが今まで通りのトウマにアリスも変に考えず今まで通り接する。
「ごめん」
「一緒に過ごした仲間の最後くらい、しっかり見送るっての。これでも次期寮長だぞ」
「ここでそれ言うの」
「いいだろ別に。それに本当ならこんなに走る予定じゃなかったんだよ」
「? 寝坊したとかじゃないの」
「まあそれも一要因だが、それだけじゃないんだよ。あいつらの準備が遅いから」
「あいつらって」
「見送りは俺だけじゃないんだよ、アリス。言ったろ、今の俺は次期寮長なんだよ」
そう言うとトウマは走って来た方へと振り返ると、遠くからトウマと同じ様に制服を来たクラスメイトたちが歩いて来ていたのだった。
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