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魔女っ娘、旅立つ
しおりを挟む春の柔らかい日差しを浴びて私は目を覚ます。大きく伸びをして固まった身体をほぐす。
眠気の誘惑を何とか振り払ってベッドから降り、洗面所へ向かう。歯を磨き、顔を洗ってようやく眠気が薄れてきた。
「さてと、行きますか」
私は自分の髪と同じ真っ黒なローブを着て薔薇の形の宝石がついた腕輪と指輪をはめて外に出る。
深い森の中にポツンとひらけた場所があり、そこに私の家はある。
え?私が誰かって?私はロゼ。今年で15歳になった。“薔薇の魔女”なんて言われてるの。
まぁ、言ったのは今は亡き私のママなんだけど。ママは“百合の魔女”って言われてたらしい。
ママは綺麗な長い金髪に緑色の瞳。優しく、スタイルも抜群でおっぱいなんかGはあったなあれは。
とにかく、その姿はまさに百合の花の如し。
ママには絶対勝てないなぁ……。
対して私は真っ黒な髪に赤い瞳。ママほどじゃないけどスタイルには自信がある。
15歳にしてはおっぱいも大きいよ。Dはあるかな。
ママはいつも「ロゼの髪も瞳もとっても綺麗よ。流石私の娘ね」って言ってくれてそれがすごく嬉しかった。
私とママの容姿が違うと思うだろうけど、それにはわけがある。まぁそれは追い追いね。
それはさておき、“魔女”っていうのは全ての魔法を操り、何にも縛られず世界を見守る存在……らしい。
よくわからないと言うとママは笑いながら「ロゼは好きに生きなさい。あなたを縛るものは何もないのだから」と言った。
そんなママの言葉に従い、私は好きに生きている。
力を蓄え、今日、この森を出る。
ママとの思い出がいっぱいあるけど二度と帰って来れない訳じゃないし。
目の前に子どもと同じくらいの大きさで緑色の肌をしたブサイクな魔物が現れる。
「ゴブリンかぁ。相変わらずブサイクだよね~。倒しても倒しても出てくるし」
私は手を前に翳し左腕の腕輪に魔力を通す。腕輪についた赤い薔薇の宝石が輝き、腕輪が形を変える。
光が消えると私の手には銀色の棒が握られていた。長さは2メートル程で中央に赤い薔薇の装飾、そこから出た茨が左右に伸びている。
これが私の武器。さっき腕輪の形をしていたのは“魔女の水銀”と呼ばれるもので、魔女の魔力に反応して様々な形になる万能金属なの。
ママが私の為に作ってくれた特別製で普段は腕輪に、戦う時は棍にしている。剣とか槍とかにも出来るけど私は主に棍を選ぶ。え?魔女っぽくない?ほっとけ。
私が武器を手にしたことで敵と見做したのかゴブリンは持っている棍棒を振り上げて向かってくる。頭が悪いから自分と相手の実力を測ることもできない。でも数だけは多い。本当にめんどくさい。
私はゴブリンが棍棒を振り上げた瞬間、ゴブリンの頭に棍を叩き込む。
それだけでゴブリンの頭蓋は砕け死んだゴブリンは倒れこむ。
私は人差し指から炎の玉を出し、ゴブリンに飛ばす。炎の玉はゴブリンに当たると燃え広がりゴブリンの身体を焼く。こうしておかないと別の魔物が寄ってくるからね。
本来なら魔物を倒して皮など売れそうな素材を剥ぎ取るんだけどゴブリンはどこも売れないからこうしてすぐに燃やす。
ゴブリンの肉が焼ける匂いに釣られて来たのか草むらから大きなイノシシが現れた。
ワイルドボアって呼ばれる魔物で新人の冒険者なんかはこいつに勝てて一人前って言われてるらしい。そんなカッコイイ名前はこいつに勿体無いと思う。
ただのイノシシで十分だ。
イノシシは私に狙いを定め突進してくる。
「はい。お疲れさん」
そう言った瞬間、イノシシに向けた手から雷が迸る。雷が直撃したイノシシは身体の内側を焼かれて絶命。前のめりに倒れこみ、地面を滑る。
そして私の足元で止まった。
「勝てないのによく来るよ」
ため息を吐いた私は“魔女の水銀”をナイフに変形させ、イノシシを解体していく。
皮を剥ぎ、肉を切る。大きいから解体に時間かかるんだよねぇ。手汚れるし。切った皮や肉は全部指輪行き。
あぁこの指輪もママにもらったもので異空間の倉庫になっている。
もっとわかりやすく言うとどんなものでもしまっておける指輪っていうこと。生き物はしまえないけど。こうして指輪に収納しておけば食べ物は腐らないし、とっても便利。
私の6歳の誕生日にママがくれたんだ。ママは“ローズリング”って言ってたけどなんか自分の名前呼んでるみたいでなんか恥ずかしいので私は指輪って呼んでる。
ちなみに“魔女の水銀”は5歳の誕生日にもらったの。そろそろ戦闘訓練するからって。
それはさておき、イノシシの解体が終わったので一旦家に帰る。
「よし。準備完了」
帰宅して食事した後、家具を全部指輪に収納した。
え?何でって?森を出るのに家をこのままにしておけないでしょ。ママとの思い出の品ばかりだもん。だから全部持っていく。
準備を終えてママとの思い出の家を出る。
森から出たところで街道が見える。確かこの街道を進むとクルムっていう町に着くはず。
ママと二人で何度か言った覚えがある。とりあえずそこに向かおうかな。
街道を歩いてしばらくして、何やら先の方が騒がしいことに気づく。
よく見ると馬車を人が囲んでいる。
盗賊かな?私はそのまま歩いていく。
近づくにつれて会話が聞こえてくる。
「おらぁ!金目のもん出せや!」
「早くしねぇとぶっ殺すぞ!」
下卑た笑みを浮かべた汚い格好の男たち。
馬車の御者をしている身なりの良い男。商人かな。
「わかった!金ならやる!だから命は助けてくれ!」
「あぁ。金さえ貰えりゃ文句はねぇからな」
嘘だ。この商人を見逃して町に行かせたら通報されて討伐隊が組まれるかもしれない。
そんなリスクを犯すなら殺してしまった方が楽だもんね。まぁ私には関係ない。
私はそのままゆっくりと歩いていく。盗賊の後ろ姿が見えてくる。身体を洗っていないのか臭い。
「通行の邪魔」
目の前にいた盗賊を棍で殴り飛ばす。殴り飛ばされた盗賊はそばにあった木に激突し気絶したようだ。
一応手加減したから死んではいないだろう。突然仲間をやられた盗賊たちは皆驚いて私と仲間を交互に見ている。
商人は私を凝視している。ジロジロ見るなよ。
「てめぇ、何もんだ!」
「答える義理はない」
「何だと!」
「道の真ん中でやらないで邪魔。どいて」
「てめぇふざけんな!」
怒った盗賊が剣を振り下ろしてくるけど、棍で腹部を突くと悶絶し蹲る。
「早くどいて」
「てめぇ……」
「おい!小娘!助けてくれ!金ならやる!」
私が強いとわかったからか偉そうにのたまう商人。なので一言。
「やだ」
「なっ!」
「私には関係ないし」
「貴様私が誰か知らんのか!私は……」
「知らないし、興味ないから。私はここを通りたいだけ。あなたがどうなろうと知ったこっちゃないの」
そこまで言われて流石になりふり構っていられなくなったようで頭を下げ始める。
「頼む!!助けてくれ!!私はまだ死ぬわけにはいかんのだ!」
盗賊たちは私たちの様子を見ている。その間に襲ってくればいいのに。負けないけど。
さてどうしようかな。めんどくさいけど、助けてやるか。
「いいよ。じゃあ、はい」
商人に向けて手を出す私。きょとんとした顔をする商人。
「お金。そうだな……200000で良いよ」
「え?」
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