魔女っ娘珍道中~薔薇の魔女は好き勝手に生きていきます~

にわかオタクと犬好き

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魔女っ娘、町に到着する

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「い、今か!?」

「当然。こいつら倒した後にやっぱりなしって言われたらたまらないし」

こういうときの先払いは基本だ。私はタダ働きはしない。ママは「ロゼはしっかりしてるわね~」と頭を撫でてくれた。

「お前がこいつらを倒せる保証もないじゃないか!」

  さっきのを見てなかったのかな?それよりも状況を見て言っているのだろうか。

「状況わかってる?私は別にこのまま立ち去ることも出来るんだよ?」

  そう私が言うと顔を蒼褪めさせる。バカなのかな?
私が立ち去ろうとするそぶりを見せると慌てて引き止めてくる。

「わかった!払うから行かないでくれ!」

  そう言って袋を差し出してくる。中を確認すると銀色の硬貨が20枚入っていた。
  ちなみにお金の単位はシエルで

鉄貨     1シエル
小銅貨 10シエル
銅貨     100シエル
小銀貨 1000シエル
銀貨     10000シエル
小金貨 100000シエル
金貨     1000000シエル
大金貨 10000000シエル
黒金貨 100000000シエル

  こんな感じ。今回は200000シエルでこの商人は銀貨で払ったので10000シエルが20枚ということだ。
  一般の人が使うのはせいぜい小金貨まで。金貨以上は商人とか国の外交とかでしか使われないってママが言ってた。
ママは何故か黒金貨をいっぱい持ってたけど「昔、色々あってね~」としか言ってくれなかった。
  ちなみにそのお金は私の指輪の中に入っている。ママが亡くなった時に引き継いだ。使う機会はないだろうけど、大事に使おうと思ってる。

「確かに200000シエル。じゃあ、さっさと済ませようか」

  ローブのポケットにしまうふりして指輪に収納する。これで私しか取り出せない。
  盗賊の方を見ると身構える。もう遅いけどね。
  私は魔法を発動する。盗賊たちの足元から茨が飛び出し、身体に巻きつく。

「何だこりゃあ!?」

「痛え!」

  突然のことに驚く者と茨を引き千切ろうとして棘が刺さり血を流す者。
どんなに頑張っても千切れないよ。

「はい、おしまい」

  商人の方を見ると口を開けて呆然としている。まぁ、わからないでもないけど。

「こいつらどうする?」

「え?」

「殺す?町まで連れて行く?」

  殺すと言ったときの盗賊たちの顔がちょっと面白かった。

「町まで連れて行けば褒賞が出るかもよ?いくらかは知らないけど」

  そう言うと、商人の表情が明るくなる。褒賞と聞いてお金のことでも考えているんだろうな。私が200000シエルも取ったから。

「ならば町まで連れて行くことにしよう」

「そう。じゃあ頑張って。町に着くまでその茨が解けないようにしておくから」

  立ち去ろうとする私を商人が慌てて引き止める。

「待て!!どこに行くんだ!」

「町まで行くんだけど」

「こいつらはどうするんだ!」

「知らないよ。自分でどうにかしなよ」

  私の言葉にしばし呆然とした後、顔を真っ赤にして怒鳴り始める商人。
うるさいなぁ。

「私は高い金を払ったんだぞ!」

  と、意味のわからないことを言いだす。

「何言ってるの?さっきのお金はこの盗賊たちからあなたを助ける為の対価でしょう?盗賊を捕まえてあなたの命を助けたんだからそれで契約はおしまい」

「なっ!?そんなバカな話があるか!200000シエルも払ったんだぞ!」

「あなたは私を助けろ、金は払うって言ったんだよ?そして私は助ける対価に200000シエルを提示した。そしてあなたはそれを了承した。以上」

「ふざけるな!こんなのは詐欺だ!!金を返せ!」

  大きな声を出さないでよ。それにお金は既に指輪の中に収納済みだ。そもそも私はやることをやったんだから文句を言われる筋合いはない。
とはいえ、これ以上文句を言われてもめんどくさいし。ちょっとだけサービスしてやるか。
  私は魔法を発動し、土を操る。しばらくして檻の底に車輪のついた物が出来上がる。
そこに茨で縛られたままの盗賊たちを放り込む。衝撃で茨が食い込み、痛がる盗賊たちを無視して檻を閉める。
その檻を商人の馬車にくっつける。これで町まで運べるだろう。

「これでいいでしょ。じゃあね」

  そのまま更に怒鳴る商人を無視して街道を歩いていく。
  あんなにサービスしてあげたのに怒るなんて、なんて恩知らずな商人だろう。二度と会いたくない。


  街道を進み続け、やっと町が見えてきた。途中、あの商人が追いついてきて横で喚き散らすので、走って振り切った。馬車より速く走れるわけないって?そこは“魔女”だからとしか言えない。
  走ったので予定より早く着いてしまったがまぁいいか。
門まで歩いていくと門番のオジさんが話しかけてくる。

「おや、お嬢ちゃん。町に入るなら住民証か組合証を出してね。なければ通行料で500シエルかかるよ」

「はい」

  住民証も組合証も持っていないがローブのポケットに手を入れ指輪から通行証を出してオジさんに渡す。
  住民証はその名の通りこの町に住む住民が役所に発行してもらうもので、組合証は商人組合や冒険者組合の登録者がそれぞれの組合で発行してもらうもののこと。
  500シエル払うと通行証が貰えて、それを見せれば発行された町に限り自由に出入り出来るようになる。
ママと来た時に発行したものがあったのでそれを出した。

「うん。確かに。ようこそクルムへ」

  オジさんから通行証を受け取り町に入る。
大きな通りに色々な店が軒を連ねる。
せっかくだから冷やかしながら今日泊まる宿を探そう。
  歩いていると香ばしい匂いがしてくる。見ると何かの串焼きを焼いている店があった。自然と足が向いた。

「オジさん、一本ちょうだい」

「おう!いらっしゃい!!一本50シエルだ」

  小銅貨を一枚渡して串焼きを受け取る。タレのついた肉が食欲をそそる匂いを放つ。その場で噛り付いて咀嚼する。タレの甘辛い味が口いっぱいに広がる。美味しい。
  あっという間に食べ尽くしてしまった。

「オジさん、もう二本ちょうだい」

  銅貨を差し出しながらオジさんに言う。

「ハハハ!気に入ってもらえて何よりだ。ほら嬢ちゃんは可愛いから、サービスしといたぜ!」

  そう言って串焼きを二本差し出してくるオジさん。
先程のは肉が三つ刺さっていたけど、今回は一本の串に肉が四つついている。

「ありがとうオジさん。でも後ろで奥さんが怒ってるから謝ったほうがいいよ」

  ギギギと壊れたおもちゃのように後ろを振り返るオジさん。そこにはとってもいい笑顔のおばさん。
いかついオジさんには不釣り合いな綺麗な人だ。ママほどしゃないけど。

「あ・な・た?」

「いや、フローラ、待て、待ってくれ!誤解だ、ただうちの串焼きを気に入ってくれた嬢ちゃんにサービスを……ギャー!」

  その場で起こったことはオジさんの名誉のために言わないでおこう。
しっかり奥さんの尻に敷かれているとだけ言っておく。

「ゴメンね、うちの主人が。また来てね」

  と、帰り際に言われ、串焼きを一本サービスしてくれた。
お得な気分だが、特に私は迷惑をかけられてないんだけどな。まぁいいか。

  その後も色々と買い食いしながら進み、一軒の宿を見つける。ここでいいか。

「いらっしゃいませ!」

  中に入ると栗色の髪をした少女が迎えてくれた。10歳くらいかな?少女は私の顔を見て顔を赤らめる。どうしたんだろう?

「お泊まりですか?お食事ですか?」

  ここは食堂も兼ねているらしい。
そこで食事をしている客たちもこちらを見ている。ジロジロ見ないでほしい。

「泊まりで。とりあえず一泊、延長するときはその時に払うよ」

「はい。一泊650シエルです」

  思ったより安いけど、まぁ安いに越したことはないしいいか。
  銅貨6枚と小銅貨5枚を差し出す。1枚ずつ数えて確認する少女。

「はい、ありがとうございます。お部屋の鍵を渡すのでこちらへどうぞ。お母さーん」

  小さいのにしっかりしてるなぁ。毎日お手伝いしてるんだろうな。
少女の後についていこうとした私の前に突然、男が立ち塞がる。

「よぉ~嬢ちゃん。可愛いな。ちょっと酌してくれよ」

  酒臭い息を吐きながら話しかけてくる男。こんな時間から飲んでいるんだから碌な奴じゃないな。
ママもよく絡まれてたっけ。その度にぶっ飛ばしてたけど。

「しないよ。邪魔だからどいて」

「つれねぇな~。ちょっとくらいいいじゃねぇか」

  そう言って近づいてくる男。

「お客さん、困ります。そちらのお客さんも困っていますので」

  先に行った少女が引き返して来てこの酔っ払いを注意する。
本当にしっかりしてるなぁ。いい子だね。

「うるせぇ!」

「きゃっ!」

  男は腕を振って少女を突き飛ばす。幸い尻餅をついただけで済んだけど、こいつ許さん。
  私の中でぷつんと音がした。





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