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魔女っ娘、一泊して魔物を狩りに行く
しおりを挟む騒ぎを聞きつけて少女と同じ栗色の髪をした女性がやってくる。お母さんかな?
尻餅をついている少女を見て驚き駆けてくる。
「アンナ!どうしたの!?」
私は少女のもとへ歩いていき、立たせる。
「平気?怪我してない?」
「はい。大丈夫です」
アンナちゃんって言うんだね。私はアンナちゃんの頭を撫でて微笑む。少女は顔を赤らめて俯く。恥ずかしかったのかな?
私は酔っ払いの方を向き、魔力を込めた瞳で睨みつける。
「ひっ!」
私に睨まれて一気に酔いが覚めたらしく先程とはうってかわって顔を真っ青にしながら尻餅をつく。
私がやったのは“威圧の魔眼”というもので、魔女が使える魔眼の一種。
歴代の魔女はそれぞれ魔眼を使うことができた。私の魔眼の効果は「威圧」。相手を威圧し、恐怖させる効果がある。格上には効果が薄いんだけどね。ママとの訓練で使ったときは全く効かなかったし。
ちなみにママの魔眼の効果は「魅惑」。他者を自分の虜にする効果。自分の容姿が美しければ美しい程、効果が高い。
ママが使うと男女問わずママの虜になってたな。私は使われたことないから詳しくはわからないけど。
「さて……そこの酔っ払いさん?何か言うことがあるんじゃないですか?」
とびっきりの笑顔で言ってやる。「相手を威圧するなら笑顔が一番よ♪」とママが言っていた。ママはけっこうお茶目さんなんだ。
酔っ払いは青を通り越して白くなった顔で後ずさる。他の客は何が起きているのかわからない様子だ。
私が“威圧の魔眼”をこの酔っ払いにしか向けてないからなんだけど。
「ひぃぃぃぃぃ!」
私の魔力に当てられて我慢出来なくなったのか外に転がるように飛び出して行った。まぁ少しは懲りただろう。
「あの……」
声をかけられて振り返るとアンナちゃんとアンナちゃんのお母さんが立っている。
「娘を助けていただいてありがとございました」
「ありがとうございました」
お母さんに続いてお礼を言うアンナちゃん。可愛いね。私はアンナちゃんの頭を撫でる。くすぐったそうにするアンナちゃん。
私は彼女に微笑みながら回復魔法をかける。大した怪我はないだろうけど一応ね。
「気にしないで。もともと私が絡まれたんだしね」
「あ!そうでした。お部屋の鍵を渡さないと!」
アンナちゃんはカウンターの向こうへと姿を消し、すぐに戻ってくる。手にはプレートのついた鍵。
「これ、お姉ちゃんのお部屋の鍵です!」
「ありがとう」
アンナちゃんから鍵を受け取って部屋に行こうとするとアンナちゃんのお母さんに呼び止められる。
「あの、今回のお礼に夕食をサービスしますので、食べるときにこの子に声をかけてください」
「わかりました」
「お部屋に案内します」
アンナちゃんが先導してくれるようなのでついていく。
階段を上がる途中、アンナちゃんが改めて自己紹介をしてくれた。私も名乗った。そしたら
「ロゼお姉ちゃん!」
って呼んでくれたのでまた頭を撫でといた。さっきまでのしっかりした感じは消え、今は年相応な感じになってる。
お母さんの名前はアナベルさん。35歳なんだって。もうちょっと若く見えたけど。
アンナちゃんは10歳かと思ったらまだ9歳になったばかりなんだって。
しっかりしてるから10歳だと思ったけど、思ったより幼かった。
お父さんは今、隣町まで食材を仕入れに行ってるんだって。なんでも珍しいもので今回を逃したら次はいつ出るかわからない程の貴重品らしい。
「ここがロゼお姉ちゃんのお部屋だよ」
鍵を開けて部屋に入る。ベッドと小さな机、それと小さなクローゼット。
これまた小さな窓が一つ。平均的な宿に置いてある調度品だね。お値段相応って感じ。
食事は下の食堂で取ることになってるし、トイレは協同。特に不満もない。よっぽど高い宿でもない限り、どこも作りは似たようなもんだしね。
「ありがとうアンナちゃん」
もう一度頭を撫でてあげる。嬉しそうにするアンナちゃん。随分懐いてくれたもんだ。
「ここにお洋服入れてね。ご飯は下の食堂で、おトイレはあっちにあるよ」
それぞれの場所を指差しながら教えてくれるアンナちゃん。可愛いなぁ。
「それじゃあ私、戻るね。ご飯食べるときは声かけてね」
そう言ってアンナちゃんはお母さんのお手伝いに戻っていった。いい子だね。私もよくママのお手伝いしてたなぁ~。「ありがとう。偉いね。」って褒められると嬉しくていっぱいお手伝いした。
「さてと。まずはベッドだね」
私は部屋に置いてあるベッドを指輪に収納する。そして私が家で使っていたベッドを出す。置いてあったベッドよりもふた回りほど大きい。
部屋のほとんどがベッドで埋まってしまったけど、まぁいいよね。
ローブを脱いで指輪にしまい、ベッドにダイブする。ほどよい柔らかさで私を押し返してくる。枕に顔を埋め、目を瞑る。私はそのまま夢の世界に旅立った。
目を覚ますと、部屋が薄暗かった。目をこすってなんとか目を覚ます。
魔法で小さな光の玉を空中に浮かべる。ふわふわと浮かぶ玉が部屋を明るく照らす。
私は指輪から替えの服を取り出して着替える。着替え終わった服を指輪にしまってローブを出して着込む。
着替え終わったところで私のお腹がきゅるると音を立てる。
「……お腹すいた」
ご飯を食べるため食堂に向かうことにする。部屋を出て鍵をかけ、鍵を指輪にしまう。本当にこの指輪便利だなぁ。
下に降りるとお手伝い中のアンナちゃんがこちらにやってくる。
「ロゼお姉ちゃん!ご飯食べに来たの?」
「うん。お腹すいたからね」
「ちょっと待っててね。お母さんに行ってくる!好きなところに座ってて。お母さーん」
アンナちゃんがカウンターへ行くのを見送り近くの空いてる席に座る。夕食時だからか半分くらい席が埋まってる。けっこう人気なのかな?
しばらくお客さんの間を忙しく走り回るアンナちゃんを見ながら時間を潰す。お客さんもアンナちゃんを微笑ましそうに見ている。可愛いもんねアンナちゃん。
30分程経って大きなお盆を持ったアンナちゃんがこちらにやってくる。
「ロゼお姉ちゃんお待たせしました」
置かれたお盆にはパンとスープ、それと何かの肉料理。デザートに果物。
「山菜のスープとクワトロコッコのステーキ、あとデザートのポンカです」
あぁ、この肉はクワトロコッコだったんだ。クワトロコッコは足と羽が4つある鶏で、安価でそこそこの美味しさ、そして色んな応用が利く庶民の味方。
一応、魔物だけど戦闘能力は皆無で人に食用として飼われてきた。
ポンカはミカンとリンゴを足したような形の果物。味はグレープフルーツに近いかな。家の近くに生えてたからよく食べた。
「ありがとうアンナちゃん。いただきます」
料理に手をつけ始めた私を見てアンナちゃんは仕事に戻って行った。
味は美味しかった。
クワトロコッコのステーキにかけるソースを工夫して作ってあるらしく、コッコの脂っぽさを緩和してくれるさっぱりしたものだった。
スープも出汁が効いていて美味しかった。30分ほどで平らげた私はアンナちゃんに一言言ってから部屋に戻った。
ベッドに寝ながら明日からのことを考える。
「やっぱり手っ取り早いのは魔物の討伐かな~」
お金に困っているわけじゃないけど、とりあえず働かないとね。そうなると魔物の討伐が手っ取り早いんだ。
「でも冒険者登録はめんどくさいな」
手続きとか色々めんどくさいから冒険者組合に登録するのは嫌なんだよなぁ。
「ん?別に登録しなくてもいいのか」
登録しなくても魔物を狩って売りに行けばいいんだ。そうだ、そうしよう。
「そうと決まれば早く寝よっと」
翌朝、目を覚ました私は門を出て近くの草原に行くことにした。
風に揺られてさわさわと靡く草。深呼吸して朝の空気を取り込む。
「よし!行きますか!」
草原を歩いて獲物を探す。ゴブリンとかはどうせ売れないから無視。
そこそこの稼ぎになる奴を探す。途中、昨日狩ったイノシシのことを思い出した。後で売りに行かなくちゃ。
「グオォォォォォォォォ!」
突然、私の耳に何かの雄叫びが聞こえてきた。辺りを見回すと冒険者らしき男女4人がゴリラと戦っていた。
あのゴリラは確か……ブラッドコングだったかな。血の色をした毛が特徴で性格は獰猛。
私が昨日倒したイノシシなんかをあのでっかい腕で殴り殺して食べるんじゃなかったかな。まぁ雑食らしいからなんでも食べるみたいだけど。
あのゴリラならけっこういい稼ぎになるかもね。戦ってる4人も頑張ってるけど、ゴリラには全然効いてないみたいだし。よし私がもらっちゃおうっと。
私は棍を手に走り出した。
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