4 / 17
魔女っ娘、冒険者組合に行く
しおりを挟む「クソ!!刃が全然通らない!」
「私の魔法も効果が薄いわ!」
「諦めるな!何とか隙を見て撤退するんだ!」
「んなこと言ったって、全然隙なんかねぇよ!」
ゴリラと戦ってる4人の声が聞こえる。やっぱり苦戦してるみたいだ。これなら私がゴリラを倒しても文句は言われないよね。
4人の冒険者たちの間をすり抜けゴリラの懐に入る。突然現れた私に一瞬、動きを止めるゴリラと4人。その隙を見逃さず棍でゴリラの身体をぶん殴る。殴られたゴリラは転がるように吹き飛んで行く。唖然とする4人に振り返る。
「あのゴリラもらっていい?」
「え、あ、あぁ」
リーダーっぽい青年に話しかけると未だ状況が飲み込めていない様子。
まぁ言質はとったしいいや。私は4人を放置してゴリラのところまで歩いて行く。
「グオォォォォォォォォ!」
起き上がったゴリラが雄叫びをあげる。
「うるさいよ」
「グ、グオォ……」
“威圧の魔眼”でうるさいゴリラを黙らせる。“威圧の魔眼”は人間よりも本能で生きている動物や魔物の方が効果が高い。
先程の威勢はどこへやらゴリラは完全に私に恐れを抱いている。あまり怖がらせると逃げようとするのですぐに解除してゴリラに棍を叩きつける。
最初に足を砕き動きを封じる。そして膝をつくゴリラの頭を砕いてトドメを刺す。地面に倒れ臥すゴリラ。
ゴリラを指輪にしまって振り返ると冒険者4人はまだ呆然と立ち竦んでいた。逃げる隙を探してたのにいざそのタイミングになると行動できないのは未熟な証拠。よく見ると装備も新人が身につけるような量産品みたいだしね。
まぁ、私には関係ないか。もう少し魔物を狩ってから帰ろうかな。帰ろうとすると冒険者たちに呼び止められる。
「待ってくれ。君は一体……」
「誰でもいいでしょ。たまたまあなたたちが襲われている所に私が居合わせた。それだけよ」
「しかし、何かお礼を……」
「いらない。たまたまって言ったでしょ。私はこれからまだ魔物を倒さなきゃいけないから、これで」
「あ、ちょっと……」
呼び止める声を無視して進む。ああいうタイプの男はあんまり好きじゃないし。
ゴリラはこの辺じゃけっこう強い魔物に分類される筈だからそうそう出くわすこともないかと思ったけど、よく出会う。
ゴリラなのに群れない魔物だから少し不思議だけど、まぁ気にしないようにしよう。
その後、昼頃までにゴリラを5匹程倒して町に帰ることにする。これだけ倒せばそこそこの稼ぎになるよね。
帰り際またあの4人を見かけた。
先程と違ってゴブリン4匹と問題なく戦えていたので気にせず私は町まで帰り着いた。
門を通って冒険者組合に向かう。昨日のオジさんの店で串焼きを買っていく。ちょっとハマったかもこれ。
しばらくして剣と盾の看板が見えてくる。確かあれが冒険者組合の看板だった筈。いくらで売れるかなゴリラ。
中に入って正面にあるカウンターに向かう。
そこに座ってるお姉さんに話しかける。
「こんにちは」
「こんにちは。ご依頼ですか?」
「魔物の買い取りをお願い」
「え?」
「魔物の買い取りをお願い」
「えっと……」
「もういいです」
どうせ私みたいな女の子が魔物を倒したなんて信じられないんだろうな。
人を見た目で判断するのはプロとしてどうかと思う。別の所で売ろうっと。
「あっ、ちょっと……。」
今日はよく呼び止められるな。まぁ無視するけど。
外に出ようとすると、1人の女性が私の前にやってくる。そして頭を下げた。
「この度はうちの新人が申し訳ありません。私が担当致しますので、よろしければ買い取りをさせていただけませんでしょうか」
メガネをかけたいかにもできる女って感じのお姉さん。私の横を抜けカウンターまで歩いていくお姉さんを追う。
空いているカウンターの椅子に座るお姉さん。
「買い取りに際し、注意事項をご説明します。まず組合員でない方からの買い取りは原則として組合員から買い取るよりも二割程安くなります。また買い取る魔物の状態によっては買い取りをお断りさせていただく場合があります。これは組合員でもそうでなくても関係ありません。よろしいですか?」
一息で説明を終えるお姉さん。要点だけを説明するという彼女の姿勢は好ましい。
私が組合員じゃないのもわかってるみたいだし。
「いいよ」
「ありがとうございます。つきましては冒険者の登録を推奨していますが如何なさいますか?」
「いい。めんどくさいから」
「そうですか。わかりました」
即答した私に特に表情を動かさずに頷くお姉さん。事務的に聞いただけなんだろうな。
「それでは査定を致しますので別室にご案内致します」
立ち上がり、先導するお姉さんについていく。少し広めの倉庫みたいな場所に行くと40歳くらいのオジさんがいた。
「バッカスさん。魔物の買い取り査定をお願いします」
「おう。じゃあそこに頼むわ」
オジさん改めバッカスさんはお姉さんに言われると私に向かってそう言って広めのスペースを指差す。
私はそこまで歩いて行き、イノシシの皮と肉、ゴリラ5匹を指輪から出す。
「やっぱり収納魔法使いだったか。便利だよなぁ」
そう感心しながら呟くバッカスさん。収納魔法はその名の通り、物を収納する魔法。それを利用した鞄なんかもある。私の指輪との違いは入る量。
収納魔法に入る量は使い手の魔力に依存するのであまり多く入らない。市販されている鞄は最初から入る量が決まっているので、ママの造った指輪がどれだけすごいかわかる。
「ブラッドコング5匹にこれはワイルドボアか。状態もいい……いい腕してんな嬢ちゃん」
「ありがとう。オジさん」
「バッカスさんどうですか?」
「そうだな。これなら正規の値段にすこし色つけてもいいくらいだ。ワイルドボアの皮が12000シエル、肉が1キロ300シエルで、ブラッドコングは1匹40000シエルだな」
おお。ゴリラだけで200000シエルになった。肉も100キロはあるから皮も合わせて合計242000シエルか。
けっこう儲かったなぁ。あ、でもここから二割引かれるんだっけ。こうやって考えるとけっこう痛いなぁ。
「了解しました。では後はお任せします。お金をお渡ししますので戻りましょう」
そう言って歩き出すお姉さん。またカウンターまで戻る。
「それではこちらが査定額から二割引いた193600シエルです。ご確認下さい」
お姉さんに渡された袋に入っているお金を数える。
小金貨1枚に銀貨が9枚、小銀貨3枚、銅貨が6枚。うん、あってる。
「大丈夫」
「それではこれで終了とさせていただきます。またのご利用をお待ちしております」
一礼するお姉さん。仕事も早いし、また来た時はこのお姉さんに頼もうっと。外に出て買い食いしながらぶらぶらする。
「あ、あのお姉さんの名前聞かなかったな。まぁ次回聞けばいいか」
「あ、君」
「ん?」
後ろを振り向くとゴリラに苦戦していた冒険者たちがいた。
「何か用?」
「ちゃんとお礼を言ってなかったと思って。さっきはありがとう」
「どういたしまして。それじゃあ」
「あ、待って!お礼に食事でもどうかな?」
「いらないってさっき言ったよね。私、忙しいの」
「暇そうに見えたけど?」
最初に話しかけてきたリーダーとは別の槍を背負ってる男がそう言ってくる。勝手に決めないでほしい。私は今、買い食いで忙しいんだから。
「勝手に決めないで。私が忙しいって言ってるんだから。ナンパしてる暇があったら訓練でもしてなさい」
「ちょっと!そんな言い方!」
今度は魔法使いの少女が突っかかってくる。めんどくさいなぁ。
「よさないか。アディ、レーナ。彼女にも予定があるんだから無理を言っちゃいけない」
突っかかってきた2人を窘めるリーダーの青年。爽やかな笑顔でこちらに微笑んでくる。私こういうタイプ苦手。
「そういうことだから。この話はこれでおしまい。お礼も言ってもらったし、もういいから」
私はそのまま彼らと別れた。突っかかってきた2人は不満そうだったが知らない。私は悪くない。1人は全然喋らなかったな。なんか影薄かったし。
あのリーダーらしき青年はなんかヤダ。ああいう好青年みたいなタイプは苦手なんだよね。爽やかな笑顔を見ると鳥肌立つもん。私がひねくれてるだけ?いや、絶対わかってくれる人はいる。
まだ買い食いしようと思ったけど、気分が乗らないから宿に戻ってアンナちゃんを愛でよう。朝出るときに宿も延長したしね。
明日は何しようかなぁ~。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる