魔女っ娘珍道中~薔薇の魔女は好き勝手に生きていきます~

にわかオタクと犬好き

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魔女っ娘、依頼される

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  冒険者組合の中に入ると随分騒がしい。冒険者がバタバタと受付に行く者、私の横を通り過ぎて出て行く者などどう見ても平時の状態じゃないな。
  レミィはいるかな~あ、いた。でもなんか忙しそう。出直した方がいいかな。あ、レミィと目があった。
  なんかすごい目で訴えてくるんだけど……待ってた方がいいのかな。とりあえず邪魔になるから入り口から移動しよう。
  併設されてる酒場の空いてる席に座る。とりあえずオレンジジュースを頼んでおく。ジュースを飲みながらレミィのいる受付が空くのを待つ。ジュースを飲み終わる頃、レミィの受付が空いてきたので席を立つ。

「忙しそうだね」

「ロゼ……えぇ。ちょっと困ったことが起きまして」

  声をかけると珍しく疲れた表情で嘆息するレミィ。大変なんだね受付って。

「なんか忙しそうだから日を改めることに……」

  めんどうな話になりそうだったので踵を返そうとした私の腕をレミィがしっかりと掴む。

「まぁ、そう言わず。せっかく来たんですから少しお話をしましょう」

「仕事の邪魔しちゃ悪いし……」

「大丈夫です。もう落ち着いたので」

  私は一刻も早くこの場を立ち去りたかった。だってレミィがすっごい笑顔なんだもん。なんかもう怖いよ。

「……なんかあったの?」

  結局、レミィの怖い笑顔に負けて聞いてしまった私。

「実は町の近くの森でゴブリンの巣が見つかりまして」

「ヤダからね」

「まだ何も言ってないですよ」

  どうせゴブリンの討伐に協力しろって言うんでしょ。絶対ヤダ。めんどくさいもん。
  半目で睨む私を意に介さずレミィは話を続ける。

「ロゼに折り入ってお願いが「ヤダ」あるんです」

「冒険者に募集をかけているんですが、もう少し戦力が欲しいんです。そこで是非ロゼに力を貸して欲しいんですよ」

  ヤダって言ってるのに話を聞かないレミィ。

「私、組合員じゃないし」

「そこは大丈夫です。善意の協力者ということで私が上に掛け合います」

「私一人が加わっても大した戦力にならないよ」

「ロゼなら問題ありません」

「めんどくさい」

「そこをなんとか」

  こんなに拒否してるのに全然引いてくれないレミィ。あーあ、完全に来るタイミング間違えたなぁ~。

「……ゴブリンの数は?」

「先程届いた報告ではおよそ300程だそうです」

  300かぁ。その数だとほぼ確実にゴブリンキングがいるなぁ。
  ゴブリンキングはゴブリンの上位種であるゴブリンナイト、ゴブリンメイジ、ゴブリンアーチャーなどが進化した魔物で、手下のゴブリンを統率して集落を作ったりする。ゴブリンキングがいる集落では通常の3倍のスピードで仲間のゴブリンが増えるらしい。
  現時点で300ってことは明日には500位にはなってるかもね。
それくらいキングのいる集落のゴブリンたちは繁殖力がすごい。
  そしてある程度数が揃うとなぜか近くの人間の町や村に侵攻してくる。理由はしらないけど人間に何か恨みでもあるのかな?

「キングは?」

「残念ながら確認されています」

  やっぱりかぁ。めんどくさいな~。何でこう次から次とトラブルが起こるかな。

「討伐隊はいつ出発するの?」

「夕方に出発して早朝、奇襲をかける予定です」

「戦闘が始まる頃にはもっと増えてるんじゃない?」

「仕方ありません。しっかりと準備してからでないと危険ですし、これでも随分急いでいるんですよ」

  まぁそれはそうだろうけど。なんの準備も無しにいきなりゴブリンキングを倒せって言われても普通は無理だよね。

「そこでロゼにお願いがあるんです」

  笑顔で言うレミィ。まためんどくさいことを言ってきそうな予感。

「先行してゴブリンを間引いて来て欲しいんです」

  やっぱりキタァァァァ無茶振り!

「レミィ、自分が何言ってるかわかってる?」

「無茶なことを言っているのはわかっています。しかしこんなことを頼めるのはロゼだけなんです」

  そりゃそうでしょうよ。というか随分とレミィは私を過大評価してるみたいだ。
ゴリラを数匹倒したからってこんな無茶振りをするのはどう考えてもおかしい。

「レミィは何で私にそこまで期待するの?ゴリラ数匹倒したくらいでするには無茶な要求だと思うんだけど」

「……ロゼの身体に内包する魔力は他の冒険者とは比べものにならないくらいの量だからです。だからロゼなら可能だと思いました」

  なるほど、魔力……ね。極稀に魔力を感じることが出来る人間がいる。
魔女である私は当たり前に出来るけど。私は普段、魔力を抑えているのでレミィが感じた私の魔力は私にとっては微々たるものなんだろうけど、普通の人間から見ればすごい魔力なんだろう。
  話がズレたけどレミィが私を過大評価する理由はわかった。

「まぁ理由はわかったよ。で?報酬はもらえるのよね?」

「もちろんです。500000シエルでどうですか?」

「1000000シエル。それが最低ラインだよ」

「……わかりました。上に掛け合います。ロゼも付いてきてもらえますか」

  ふっかけた……とは思わない。本来ならこれでも足りないくらいだ。普通の人間なら確実に死ぬ。レミィに続いて建物の二階へ上がる。二階は会議室とか職員の休憩室とかがあるみたい。
  二階の一番奥の部屋でレミィが止まる。ドアをノックすると中から応答があり、ドアを開けて中に入っていく。私もそれに続いた。
  中にいたのは少し神経質そうな顔の男。40代くらいかな。痩せていてツリ目がちな顔が神経質そうな印象を高める。レミィはその男に一礼すると前置きも無しに話し出した。

「支部長、先程提案された作戦について善意の協力者を得ることが出来ましたので作戦遂行の承認と報酬についてお話をさせていただきたく」

「あぁ、あの作戦か……善意の協力者というのは彼女かな?」

「はい。以前、ブラッドコングを倒し、素材を売却したのが彼女です」

  レミィの報告に支部長と呼ばれた男の眉がピクリと反応する。

「なるほど、彼女が……。初めまして、冒険者組合クルム支部支部長サムエルだ。協力ということだが本気かね?」

  肩書きを名乗っているときに自慢気な顔をし、その後私を嘲るように聞いてくる支部長。うん。ムカつく。

「どうしてもと頼まれたからね」

  そう言う私の表情は随分と冷めていたことだろう。意識してやっているので問題ない。しかし支部長は気に入らなかったようだ。私の表情にか自分に敬意を払わないことに関してかはわからないけど、どっちでもいい。

「随分と自信がお有りのようだ。で?いくら欲しいんだ?」

「2000000シエル」

  ムカつくからレミィに言った倍の金額を提示する。

「話にならんな。そんな金を払えるか」

  呆れたように嘆息する支部長。

「まぁ、別に私はどっちでもいいの。ただもし討伐が失敗してゴブリンたちが町を蹂躙したとき、その責任は誰にいくのかしら」

  そう言った瞬間、支部長の表情が険しくなる。

「私を脅すつもりか?」

「いいえ。ただ私は可能性の話をしただけよ。討伐が成功するといいわね」

  さらに挑発する私を睨む支部長。

「だいたい、貴様にこの作戦が遂行できるのか?小娘の冗談で済む話ではないのだぞ!」

  だんだん声を荒げ始める支部長。私は余裕の表情で見返すと支部長の顔がどんどん赤くなっていく。
組織のトップに立つには冷静さが足りないと思う。

「出来なければここには来ないわよ。で?どうするの?払うの?払わないの?私は別にどっちでもいいのよ?ゴブリンが来る前に町を出ればいいだけなんだから」

「一般人を見捨てると言うのか!」

  ついに沸点に到達したのか机を叩いて怒鳴る支部長。

「私もその一般人なんだけど?」

  私の反論に押し黙る支部長。

「一般人に協力を仰がないと町を守れないくせに偉そうなこと言わないでくれる?」

「貴様!冒険者組合を侮辱するか!」

「だったらなんなの?」

  そこで私は支部長に“威圧の魔眼”を発動する。赤かった顔が一気に青褪める。

「別に私はあんたらのメンツとか最悪、町がどうなろうと知ったこっちゃないのよ。ただ町が破壊されてめんどくさいことになるのが嫌だから協力してやるって言ってるの。冒険者組合を侮辱?当たり前でしょ?魔物を倒すのを生業にしながらいざという時にまともに戦うことも出来ないカスどもが偉そうなこと言える立場?身の程を知れ」

「…………」

  青い顔で言葉も出ない様子の支部長。よくこんなんで組織のトップが務まるな。
  ため息を吐いて“威圧の魔眼”を解除する。

「……わ、わかった。報酬は払う。だから「3000000よ」は?」

「3000000シエル払いなさい」

「な!?なんで金額が上がっているんだ!」

「あんたの態度が気にくわないからよ」

「ふざけるな!だいたい、貴様が作戦を遂行する保証もないのにそんな大金払えるか!」

  そのとき、勢いよくドアが開いて息を切らした女性が入って来る。

「何事だ!」

「支部長、大変です!ゴブリンの巣を偵察に行っていた冒険者の一人がゴブリンたちに見つかって殺されました!」

「何だと!?」

  あらら。これは結構マズいんじゃないかな。
  そして案の定、その女性は最悪の事実を突きつけてくる。

「生き残った冒険者に寄りますとゴブリンたちは森を移動しまっすぐにこちらを目指しているようです!」

「…………」

  支部長は完全に血の気の引いた顔で頭を抱える。

「それと……」

「まだあるのか!」

「町を目指してくるゴブリンは500を超えるそうです……」

  あら~。報告が間違ってたのか繁殖力が予想以上だったのか、とにかく大変だね。

「どうやら巣の奥の方にいて発見が遅れたらしく……」

  支部長は頭を抱えてぶつぶつと何か言っている。もうこれはダメだな。私はレミィに視線を移すと目が合った。

「ロゼ、お願い出来ますか?」

「いいの?」

「はい。支部長がこうなってしまった以上、誰かが指揮するしかありません。報酬の方は私が何としても出させます。この状況を何とか出来る可能性があるのはもうロゼしかいません。お願いします」

  そう言って頭を下げるレミィ。まぁそこまで言われればやってあげなくもないけどね。

「いいよ」

「ありがとうございます」

「じゃあ、さっさと終わらせてくるからお金用意して待ってて」

  転移魔法を発動して一瞬でその場から消える。
  次に私が立っていたのは門の外だった。

「お嬢ちゃん!?」

  いつものオジさんが驚いて声を上げる。まぁ急に人が現れたら驚くよね。

「オジさん見回りは?」

「そんなこと言ってる場合か!ゴブリンたちが攻めてくるんだぞ!」

「オジさんは逃げなくていいの?」

「俺は住民の避難と門を守らねぇとよ」

  オジさんは自分の職務に忠実なんだね。自分の命を投げ打つ覚悟か。まぁその必要はないけどね。

「ここの町って兵士とかいないの?」

「いないことはないが、町の治安を維持する程度だ。今回みたいな事態には領都の方から援軍を頼むことになっている。既に要請はしてるが……間に合わんだろうな」

  なるほどね。まぁ今回は運が悪かったってことだね。

「じゃあオジさんは門の警護ヨロシクね」

  ゴブリンたちが来るであろう方向に歩きながら手をひらひらと振る。

「おい、お嬢ちゃん!どこ行くんだ!」

  オジさんを無視して歩く私。さて、さっさとゴブリンを倒しに行きますかね。




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