魔女っ娘珍道中~薔薇の魔女は好き勝手に生きていきます~

にわかオタクと犬好き

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魔女っ娘、ゴブリンを駆除する

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  私は町から離れ、ゴブリンたちを迎え撃つための広い草原にやって来た。ゴブリンたちが町に向かうときこの草原を必ず通る。ここなら町に被害が出ることもないだろう。
  目を瞑って探知魔法を発動。みつけた。数は……だいたい500。報告とも一致する。まっすぐこちらに向かって来てるな。
  後方に一つだけ他とは違う魔力を感じるからあれがゴブリンキングかな。目を開け森を見つめる。腕輪を棍に変える。
  しばらくして森から子どもくらいの大きさで緑色の肌をした魔物が姿を現わす。続々と現れるゴブリンたち。視界のほとんどをゴブリンが埋め尽くす。
  後方には上位種のゴブリンナイト、メイジ、アーチャー、そしてゴブリンキング。どうやら今回のキングはゴブリンメイジが進化した個体のようだ。ボロボロのローブに木を荒く削って作ったような杖。
ゴブリンたちは私の姿を見つけると獲物を見つけたと思ったのか嬉しそうに笑う。耳障りな声。

「グオォォォォォォォォ!」

  ゴブリンキングが雄叫びを上げる。それを合図に私に向かってゴブリンたちが我先にと殺到する。手柄が欲しいのだろう。そういうやつから先に死んで行くんだけどね。

「さっさと終わらせたいから私にとっては好都合だけどね」

  右手を上に挙げる。その瞬間、空中に直径2m程の光球が出現する。眩い光に思わず目を瞑るゴブリンたち。
  私は挙げていた右手を左から右に薙ぎ払うように振る。それと連動するように光球から光線が発射される。
  左から右へ光線によってゴブリンたちが焼き尽くされる。声を上げる暇もなく、あっという間に消滅した仲間を見て流石に動揺するゴブリンたち。
  今のは光魔法。光を収束し、熱線として発射したのだ。

「うーん、半分くらいかな?」

  次に発動する魔法はこれ。さっきと同じ動作で空中に作られたのは小さな太陽……のような火球。こちらは直径5m程。このまま落とすことも出来るけど、今回はこう使う。

「爆ぜろ」

  私の命令に従うように火球が弾ける。5mの火球は無数の小さな火の玉となって上空からゴブリンたちに降り注ぐ。

「ギィィィィィィ!」

  降り注ぐ火の雨に身体を焼かれのたうち回るゴブリンたち。これで普通のゴブリンは殲滅出来たかな。上位種も残っているのはナイトとメイジのみ。アーチャーは弓を射る前に死んじゃったみたい。
じゃあ次の魔法いってみよ~。
  次に発動したのは風魔法。ゴブリンたちの足元から巨大な竜巻を発生させる。竜巻に呑み込まれ空に舞うゴブリンたち。
  ただ上空に飛ばすだけでなく、この魔法は竜巻の内部が風の刃となっている。竜巻の内部を回転しながら風の刃に斬り刻まれる。残るのはミンチになったゴブリンだけ。
  竜巻が収まると残ったのはゴブリンたちであろう肉片のみ。後はゴブリンキングとたまたま竜巻に巻き込まれずに済んだキングの護衛10体程。
  ゴブリンがこの草原にやって来てまだ5分も経っていない。魔女である私には戦闘とすら呼べない。これは駆除。私の生活を脅かす害獣を駆除しているだけ。
  ゴブリンキングが火球を10個程飛ばしてくる。火球は右や左、上など違う方向から私に向かってくる。ゴブリンにしてはコントロールがいいね。

「でもムダ」

  火球は私に当たることなく霧散する。盗賊の親玉と同じように。

「グオォ!?」

  ゴブリンキングは驚いたがすぐに火球を作り出し私に発射する。しかし先程同様、火球は私に当たることなく霧散する。
  え?何で魔法が当たらないのかって?答えは簡単、私が魔女だから。魔女は全ての魔法を司る者。だから魔女である私に魔法は効かないんだよね~。え?そんなの反則だって?そんなこと言われてもそれが魔女だし。魔女はそういうものなんだよ。
  そもそも魔法を創り出したのは魔女だしね。私じゃなくて初代魔女だけどさ。何代も経て様々な魔法を創ってきたんだから。自分たちが創ったものだもん効かなくて当然でしょ?
  そんなわけで魔女の名はそれだけ重いし、私もママから魔女の名を受け継いだ以上、ゴブリンなんかに手こずっちゃダメなのさ。
  そんなことを考えている間もゴブリンキングは火球を放ってくる。だから効かないって。やっぱりキングになってもゴブリンはゴブリンか。おっと、護衛のゴブリンナイトたちが斬りかかってきた。剣を躱し、棍で殴る。それだけでゴブリンナイトの頭蓋は砕ける。崩れ落ちるゴブリンナイト。
  しかしそれに構わず他の個体が斬りかかってくる。棍で腹を突き、動きの止まったゴブリンナイトを振り回すようにして別のゴブリンナイトへ投げる。ちょうど剣を振り下ろすタイミングだったようで投げられたゴブリンナイトは仲間によって斬り殺される。
  仲間を斬ったことに動揺するゴブリンナイトを殴る。

「はい、お疲れさん」

  最後のゴブリンナイトが倒れ、残されたのはゴブリンキングだけ。私が一歩踏み出すと一歩後ずさる。“威圧の魔眼”を発動。恐怖で動けなくなるゴブリンキング。いやぁホント魔物によく効くわこれ。さらに茨魔法を発動。地面から出てきた茨がゴブリンキングを拘束する。

「グオォォォォォォォォ!」

  なんとか抜け出そうとしてるけどムリだよ。
  今回使った茨は盗賊に使ったのとはちょっと違う。茨自体も盗賊のときより太く、棘も鋭い。そして今回の茨は棘で傷ついて血を流す程、その血を吸って強固になり、絞めつける。

「グオォォォ……」

  血を吸われ、意識が朦朧としてきているんだろう。更にこの茨は棘が刺さった部分から魔力も吸い取る。
  そして血と魔力を吸い尽くすと綺麗な赤い薔薇が咲く。

「グオォ……」

  血と魔力を吸い、絞めつける茨。ミシミシと軋む音が聞こえる。そろそろいいか。私はゴブリンキングに掌を向け、ゆっくりと握っていく。それに合わせて絞めつける力が増していく。骨が折れる音が聞こえ始めた。

「おやすみ」

  完全に手を握った瞬間、ゴブリンキングを絞め殺す。砕けた果物の果汁が飛び散るようにゴブリンキングの身体から血が噴き出す。
  血の雨が降り注ぐ中、恵の雨を喜ぶように茨には輝くほど綺麗な赤い薔薇が咲いていた。




  茨を解除し、倒れるゴブリンキングとゴブリンナイトの死体を指輪にしまう。ゴブリンはお金にならないけどゴブリンキングとナイトは買い取りが出来る。
  残ったのは焼け焦げたゴブリンの死体だけ。これは火球によって焼かれたゴブリンたちだ。
  私は棍で地面を軽く突く。すると地面が割れていきゴブリンの死体を呑み込んでいく。
ギザギザと割れた地面は竜の顎のようだ。全てのゴブリンの死体を呑み込んでゆっくりとしまっていく地面。
  完全に閉じた時にはゴブリンの死体は跡形もなく消えていた。
  棍を腕輪に戻して伸びをする。これで依頼は達成だ。まだゴブリンが残ってるかもしれないけど、それは冒険者とか援軍の兵士に任せればいいや。

「さて、帰ろうかな。お腹すいたから帰りに串焼きでも買ってこうかな」

  門に向かって歩きだす。そよ風が髪を撫でる。天気もいいし、眠くなっちゃうね。
  門が見えてきた。あ、あれオジさんかな?こっちに手を振ってる。ちゃんと門を守ってたんだね、えらいえらい。

「おーい。お嬢ちゃん、無事だったか!」

「オジさんもちゃんと門を守ってたんだね」

「おう!それより早く避難しねぇと。ゴブリンたちはまだ来てないみたいだが時間の「倒したよ」問題だ……は?」

「だからゴブリン。倒したよ」

「……冗談だろ?」

「ホントだよ。ほら」

  私は門の前にゴブリンキングの死体を指輪から出す。

「こ、こいつは……」

「ゴブリンキング」

「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

  突然、絶叫するオジさん。うるさいなぁもう。耳を塞ぐと気まずそうな顔をするオジさん。

「わりぃ。でもまさかゴブリンキングを倒すなんて……お嬢ちゃんが強いのはわかってたけど、ここまでとは……」

「オジさん、とりあえず私、このまま冒険者組合まで報告に行ってくるから、オジさんは町の人とかに言って来てくれる?まだ残ってるゴブリンがいるかもしれないからその対処も含めて」

「おお、そうだな!わかった!任せてくれ!」

「じゃあ、私は行くから後はヨロシクね」

  ゴブリンキングの死体を再び指輪にしまって冒険者組合へと向かう。転移魔法で行ってもよかったけど、串焼き買って行こうと思ってね。
  いつもの店に行くと、いつも通りオジさんが串焼きを作ってる。

「オジさん、2本ちょうだい」

「おう!ほらよ。嬢ちゃんは逃げなくていいのか?ゴブリンが来るんだろ?」

「オジさんこそ。普通に店やってるけどいいの?」

「へへ。俺はこの町で生まれ育ったからな。死ぬときもこの町って決めてんのさ。ジタバタしてもしょうがねぇからいつも通り店を開こうと思ってよ。昔馴染みはみんなそんな感じだな」

「ふーん。でももうゴブリンたち倒されたみたいだから心配ないよ」

「おっ、そうなのか!?そりゃいいこと聞いたな。何にせよ町が無事でよかったぜ。ありがとうな嬢ちゃん」

  そう言って串焼きを1本差し出してくるオジさん。

「何で私に言うの?」

「何でって、嬢ちゃんがゴブリンを倒してくれたんだろ?バートンのやつが嬢ちゃんがゴブリンを倒しに行ったって騒いでたぜ」

「バートン?」

  そんな名前の人と知り合いになった覚えはないんだけど……私が忘れてるだけ?

「ほら、門のところにいつも立ってるあいつだよ。知り合いなんだろ?」

  あぁ、あのオジさんか。あのオジさん、バートンって名前だったんだ。知らなかった。名前、聞きそびれてたしね。

「そうなんだ。確かに私が倒したけど」

「やっぱりな。嬢ちゃん強かったんだな。可愛いのに大したもんだ!」

  ガハハと笑うオジさん。でもいいの?後ろに般若が立ってるよ?

「あ・な・た?」

「フローラ!?違う、誤解だ。俺は町を救ってくれた嬢ちゃんに……ギャー!」

  あらら。オジさん、ボコボコだね。奥さんもあんなに細い腕でよくあそこまで出来るな。

「私からもお礼を言わせて。ありがとう。えっと……」

「ロゼだよ」

「ロゼちゃんね。私はフローラよ。本当にありがとう。ロゼちゃんのお陰で私も主人も救われたわ」

「お礼なんていいよ。私は自分のためにやっただけだし」

  最悪、町がどうなろうと私には関係ないと思っていた。アンナちゃんとか知り合いだけ助ければいいかなと思ってたくらいだ。だから感謝されると逆に罪悪感を覚える。

「それでも結果的に助けてくれたんだもの。ロゼちゃんは私たちの恩人よ。いつでもうちに来てね。タダにはしてあげられないけど、いっぱいおまけするわ」

「ありがとうフローラさん。また来るよ」

  串焼きも買ったし、冒険者組合に行くかな。でも門のオジさん改めバートンさんが騒いでたらしいから私がゴブリンを倒したことけっこう広まってるかもなぁ。まぁいいか。実害がなければ。
  私は串焼きを両手に冒険者組合の道を歩いていった。



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