村石君の華やかな憂鬱 Remake

A.Y

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交差編

第61話 日曜日③

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鮎川家の屋敷の中では日本舞踊の練習として、最初に講師の説明が行われ、次に練習を行なっている子達の舞が行われた。
やがて一段落すると休憩に入った。雫は長時間の正座で足が痺れて、足を伸ばしていた。

「痛ゥー…」
「あらら…痛そうね」

美穂が面白そうに雫の足を触ろうとする。

「触ったら殴るわよ」

雫が拳を握った構えをする。

「失礼…」

2人が会話をしている中、声を掛けて来た人がいた。2人が振り向くと凛が彼女達の前に現れた。

「あ…どうも、初めまして」

2人は急いで頭を下げる。

「そんなに賢まら無くて良いですよ」

凛は普通に振る舞ってはいるが…2人には気品あるお嬢様と言うオーラ見たいな物が感じられた。

「どうですか、稽古の方は?」
「思った以上に大変ですね」
「初めて日本舞踊の練習を見ました」
「そうですか…楽しんで戴くと嬉しいです」
「あ…あの、鮎川さん」
「凛…と、お呼びください梅木雫さん」

それを聞いた雫は驚いた。

「あ…アレ、自己紹介しましたか?」
「いえ、貴女達の事は近付いた時に分かりました、ちなみに…お隣に居る方は川谷美穂さんですね」

それを聞いた美穂が驚いた表情をする。

「分かるのですか?」
「ええ…断片的ではありますが…」

それを聞いた2人は唖然として互いの顔を見る。凛にとっては、この上無い程の絶好のチャンスだった。竜也の心を完全に自分の物にしようとするが…今ひとつ上手く行かない部分がある。
それは…雫と言う女の事を未だ思っているからだった。

(この女が雫…彼女さえ攻略出来れば、竜也さんは完全にあたしのモノになる)

「もし…良かったら、もっと手前で見てはどうですか?」

そう言って凛は2人に前の方に来る様に差し向ける。
それを見ていた2人は不思議な気持ちになった。

「何か…沙耶の言ってた感じと、少し違うわね」
「結構良い感じかも…」

美穂と雫は呆気に取られながら凛の側へと向かう。



鬼頭家の別棟にある地下には、通信専用のモニタールームがあった。そのモニタールームでは…沙耶と中澤が数名のオペレーターと一緒に鮎川家攻略に力を注いでいた。薫が抱えているバックには360°パノラマビューの機能が設置してあり、オペレーターが常時監視している状態だった。
沙耶は幾つかの映像を調べているが…竜也に関する情報は未だ皆無だった…。
薫は、既に3階の部屋に向かっていた…。

戦後間も無い時期に建て始めて、高度経済成長の時期に出来上がった旅館風の屋敷は、木材と鉄筋を上手く使い分けて作られた建物だった。その後も…様々な箇所を改築させて末長く暮らせる様に工夫が施されていた。
あと100年は暮らせるだろう…と、鮎川家の主人は言う。
そんな屋敷を調べている沙耶には、一握りの不安が現れていた…。

「全然見つからないわね…」
「既に屋敷には、居ない可能性が大きいですね…」

中澤が言うと沙耶も頷き始める。

「そうかもしれない…。でも…屋敷に居ないのなら一体彼は何処へ行ったと言うの?」

沙耶は、竜也が住んでいるアパートにも監視カメラを設置してあった。彼がアパートに近付けば、監視している人から連絡が入る状態にしてあった…。しかし、彼が来た…と言う知らせは鬼頭家には届いて居ない。

「分かりません…」
中澤は頭を下げて答える。

沙耶は、中澤の事を気にせずモニターを眺め続ける。
そんな沙耶達の事など気にせず、鬼頭家の広間では絵里が、鮎川家に少女達を送ったミニバンの車が戻って来るのを見つけて表へと出る。
車内には琴美が乗っていて、彼女から何らかの情報を得ようと思って、停車した車のドアを開ける…が、車内には琴美どころか、運転手以外の人影が見つからない。

「ちょっと、運転手さん…どうして琴美ちゃんが居ないの?」
「え…と、それが…屋敷に居た少女の方が、琴美さんも稽古に参加すると言って…先に戻るように言って来たのです…」
「何それ、そんな話聞いて無いわよ、私達は…?」
「そ…そうだったのですか?」

その異変に気付いた絵里は、急いで別棟に居る沙耶の場所に向かう。
モニターを見続けている沙耶の近くに絵里が向かうと、沙耶に声を掛ける。

「ちょっと、沙耶さん」
「ゴメン、今は話し掛けないで」
「大変なのよ!」
「後にしてくれる?」
「琴美ちゃんが居ないのよ!」

琴美の言葉に気付いた沙耶は振り返り、絵里を見つめる。

「え、どう言う事…それ?」
「あの子が、車の中に居なかったのよ。運転手の話しだと、屋敷にいた子が彼女も残る様に言って来た見たいなの…」
「それって…まさか!」

状況の変化に気付いた沙耶は、急いで美穂のスマホに通話を掛ける。



稽古中、マナーモードにしてある美穂のスマホに着信が入る。電話が掛かった事に気付いた美穂は、その場を離れて通話を始める。

「どうしたの、急に連絡をして来て…?」
「いきなり電話して、ゴメン…琴美ちゃん一緒じゃ無いわよね?」
「ええ…一緒には居ないわよ。彼女帰ったはずでしょう?」
「それが…琴美ちゃんは帰って来て居ないのよ、多分…屋敷に拉致された可能性があるわ、予定を変更して彼女を探して貰える?」

「構わないけど…竜也さんの方は、どうするの?」
「今…薫さんが3階まで見て周っているけど…彼の姿を発見出来無いから、屋敷に居ない可能性は濃厚よ」
「そう…分かったわ、雫に話して琴美ちゃんを探す事に決めるわ」
「ありがとう、お願いね…」

沙耶との通話を切った美穂は、雫の側まで来て小声で話し掛ける。

「ちょっと良い…?」

美穂が雫を部屋の外に連れ出して行くのを見た凛は少し笑みを浮かべていた。

(フフ…面白くなって来たわね)

稽古場から少し離れた場所で2人は話しをしていた。

「え…本当?」

話を聞いた雫が驚いた表情をする。

「多分…ね、取り敢えず屋敷の中を探しましょう」
「う…うん分かった」

2人が行動に出ようとした時、部屋から凛が出て来た。

「何かあった見たいね」

凛が部屋から出て来たのを見た2人は少し戸惑った。

「別に何でも無いわ。お気にせずに…」
「あ…貴女には関係無いので…」

美穂は少し怯えながら答える。

「あら…そう、人探しをしようと、屋敷の中を調べようとしているのに関係無いなんて失礼しちゃうわね」

凛の言葉に2人は驚きを隠せなかった、どうやって自分達の状況を知る事が出来たのか…離れた場所で会話を聞くにしても相当な地獄耳でも無い限り話を聞くのは無理な筈…。雫と美穂は、改めて凛の存在が怖ろしく思えた。
これ以上の誤魔化しは無理と思えた雫は、前に出て凛に話し始める。

「大事な友達が屋敷の中で迷子になっているのよ、一緒に探して貰えますか?」

雫の行動を見た美穂が、彼女の腕を引っ張り少し後ろへと後退させて小声で話す。

「ちょっと、あの子に協力するなんて…彼女は、いわゆる敵のアジトのボスでしょう…」
「だからって…このまま、ずっと逃げていても、いずれ全てバレてしまうでしょう?」

雫の言葉に美穂は返す言葉が無かった、本来なら最も疑うべき相手ではあるが…今は協力すべき相手と思うと、美穂も雫と一緒に並んで凛の側へと向かう。

「協力出来ますか?」

その言葉に凛は微笑んで
「ええ…喜んで協力するわ」

と、答える…雫と美穂は「やった」と、嬉しそうに顔を見合わせる。
意見が合うと、凛がさっそく2人に向かって提案を持ち掛ける。

「そうね…」と、凛は腕を組みながら少し考える。

「あたしと梅木さんは1階の方から探すわ…川谷さんは、3階で屋敷の中を見学している方と合流してから…迷子の子を探して2階で合流しましょうね」

的確な指示に美穂は驚いた。凛は…こちら側の状況を聞く以前に、もう既に薫が屋敷の中を調べている事に気付いていた。一体彼女はどれだけコッチの情報をどれだけ知り尽くしているのか…恐ろしく思えた。

(これは…琴美ちゃんを見つけたら、直ぐにでも退散した方がマシかもしれないわ…)

美穂は、目の前の優雅な姿をした少女に、背筋が凍る様なおぞましさを感じ初めていた。
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