汚部屋へGO!〜戦いの記録

はに丸

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前座。友人の家がヤバかった

第4話 生命は強く儚いことを知った

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 とにかく捨てる。

 まずはシンクなどに近づくために床の上のゴミを袋に放り込んでいく。
 3分もしないうちに一つが満タンになる。

 これは当然で、床に落ちているものは前述したがコンビニなどの袋に入っているものも多く、なおかつかさばっている。つかんで放り込みやすい早さも相まって瞬間でひとつのゴミ袋が限界となる。

 次のゴミ袋と、かさばるものを入れていくと、大きめの袋に入った中途半端な掃除跡が発掘されるが、これも袋ごと放り込む。

 エコとかなんとか言ってられない。このゴミ袋には虫の卵殻や得体のしれない汚れがついているのである。むき出しになっているものはゴミだゴミ!!

 そうすると床が見えてきて、チラシや謎の封筒DM、カップ麺のスープ袋開封済み、カップ麺の薬味袋などが見え

 なにより

 麦の破片か? というほどの、虫の卵の殻が散らばっている。まともに歩けば靴下にくっつくし、なにより砂利道を歩いているようで違和感が強い。

 やはり、平坦な床は人類が産んだ叡智である。ありがとう、先人、ありがとう職人、ありがとう機械やAIロボットたちよ。

 ダイソーのミニほうきちりとりセットの出番である。

 ひたすら虫の卵の殻か卵を集めては捨てる。もうめんどくさいから虫卵の記載でもいいか?

 チラシやレシートなどは手で拾うよりこちらのほうが手っ取り早く固めて捨てられるため、一石二鳥である。

 そうして床を掃除しながら進み、さらなる奥にあるゴミをゴミ袋に入れていく。食器棚も冷蔵庫もゴミに道をふさがれているのである。すべて取り除かなければ、進軍はできないのだ。

 むろん、進みながらシンクに積み上がっていたゴミ回収も忘れていない。道が開いた時点でシンクからコンロまで積み上がっていたゴミをすべて袋へ捨て、最後には炊飯器の釜から作られてた謎のサクラダファミリア弁当箱タワーを撤去したのである。

 こうして、30分ほどで大きく目立つゴミはすべてゴミ袋にイン。この時点で4袋から6袋はあったろう。数なんぞいちいち数えてられん。

 ここからはシンクである。

 まず、無造作に突っ込まれているフライパンが邪魔であると同時に一種のラインであるため、引っこ抜く。

 フライパンの一部に泥がべったりついている。斜めに突っ込んでるわけだから、支点力点位置エネルギー周りの支えで固定されていたフライパンは、『底』となっていた部分に、何の汚れか知らんが、ヘドロか汚物のような泥が鎮座していたのであった。

『あのさあ、フライパン使う? きれいに洗ったとして、これを使う? 心理的な話』

 いわゆる、合理的に使うかケガレとして使えないかである。きれいに掃除したトイレに落ちた100円玉を素手で拾って洗って財布に入れられるか、という感じだろうか。

 たとえ、洗剤を使って洗い、消毒しても心理的なケガレというのは生じる。それが、きたなしへの反応で、きたなしがあるからきよいが生まれ、ケガレがあるから祓いが生まれている。

 友人は少し考えたあと、しばらく料理をしないと結論し、捨てると回答した。彼女はケガレもさながら、今は使わないという理由なので、そのあたりドライで合理的なタイプである。

 フライパンが不要であれば、他もそうである。

 と、言うわけで食器以外の調理道具は全捨てとなった。置きっぱなしのフライ返し、泥沼につっこまれたお玉、虫の卵にまみれたボウルとザル。

 実際、ここまで出来合いを購入してるなら、調理道具そのものを処分し、コンロを使わずレンジだけで生きても、半年は持つ。それ以上は人による。これも栄養でなく心の問題である。

 包丁も布にくるんでぽい。この台所用品は、別の袋に入れた。自治体が違うため、普通ごみとともに捨ててよいか分からなかったからである。(実際、家主も判断がつかず、調べてから捨てることとなった)

 また、茶葉も捨てた。完ぺきに密封されたティーパックや缶で未開封以外は虫の侵入が視認できたからである。

 ちなみに時々生きてる謎の虫がいたが、全部叩き潰してナイナイである。

 わたしはゴキブリサイズになると潰した感触を想像して素手で戦うことはできないが、小さなサイズであれば平気で手でつぶす。我らは共存できないのだ。

 まあ、外で出会って通行の邪魔になるバッタやイモムシやケムシ程度なら、僭越ながらご移動を手伝いはする。わたしはジェノサイドを趣味とはしていない。

 しかし、台所で生まれようとしていた新たな生態系は滅び去ったはずである頼む。

 こうして、シンク周りの棚、壁の新たな生態系は根絶させた。
 油汚れ極厚と書いてある、最も強いシンクやコンロ用ウェットシートの強さのおかげである。やはり、兵器は大切。兵站は大切。

 そうして、ヘドロまみれのシンク、ヘドロに浸かった食器の数々、何やら油やたれ? なんかの野菜?
 などがカピカピになってへばりついているコンロ。

 いわば、台所ごみの本陣に乗り込んだのである。
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